汚職事件を起こし収賄罪で逮捕される場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
汚職の罪について
刑法の第25章は、汚職の罪と題して、職権濫用の罪および賄賂の罪について規定しています。
これらの罪は、いずれも公務員による犯罪で、公務執行の公正およびそれに対する国民の信頼を国家機関の内部から侵害する罪と言われています。
「職権濫用の罪」は、公務員がその職権を濫用することにより国民の権利・自由を侵害する罪で、「公務員職権乱用罪」、「特別公務員職権濫用罪」、「特別公務員暴行陵虐罪」、そして、「特別公務員職権濫用等致死傷罪」により構成されます。
「賄賂の罪」は、公務員の職務に関して賄賂を受供与することによって、公務の公正さを侵害する犯罪です。
賄賂の罪は、「収賄罪」、「受託収賄罪」、「事前収賄罪」、「第三者供賄罪」、「加重収賄罪」、「事後収賄罪」、「あっせん収賄罪」、「贈賄罪」から成ります。
収賄罪について
第百九十七条 公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。
「収賄罪」は、公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をした場合に成立する罪です。
本罪は、収賄罪の基本類型であり、「単純収賄罪」とも呼ばれます。
◇主体◇
本罪の主体は、「公務員」です。
刑法において「公務員」とは、「国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員」をいうと定義されています。(刑法第7条)
◇行為◇
本罪の構成要件的行為は、「賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をすること」です。
「賄賂」の意義についてですが、判例によれば、「賄賂」とは、「公務員の職務に関連する不正の報酬としての一切の利益」をいうとされます。(大判明43・12・19)
賄賂としての利益は、人の需要または欲求を充たすものであれば足りるとされます。
また、賄賂は、「職務行為または職務と密接に関連する行為の対価として提供されたもの」でなければなりません。
この対価関係は、一定の職務に対する抽象的・包括的な反対給付としての性質が認められれば足りるとされており、個々の職務行為とその利益との間に対価関係があることまでも要されません。
中元や歳暮といった社交儀礼としての贈与については、社交的慣習・儀礼の範囲内であれば、価値が比較的軽微であったり、職務との対価性が認められないため、賄賂には当たらないとされます。
しかし、それが公務員の職務に関して授受されるときは、賄賂性が生じることになります。
この賄賂性については、公務員の職務内容、その職務と利益供与者との関係性、当事者間の親疎、利益の種類や多寡、利益授受の経過などといった事情を考慮して判断されます。
「収受」とは、供与された賄賂を自己の物とする意思で取得することをいいます。
賄賂の「要求」というのは、賄賂の供与を求める意思表示を意味しますが、これは、相手方が認識し得る程度になされれば足り、現実にそれが認識されたことを要しません。
また、賄賂の「約束」は、賄賂の供与・収受について贈賄者・収賄者間で合意することをいいます。
◇主観的要件◇
本罪の主体である公務員は、収受等した賄賂が職務行為と対価関係に立つものであること、つまり賄賂性を認識していることが必要となります。
職務の正当な報酬であると誤信しておれば、故意が阻却されることになります。
収賄事件は、賄賂を贈った側と受け取った側が存在する共犯事件です。
共犯事件の場合、逮捕された後も、共犯者と口裏を合わせるなど罪証隠滅のおそれがあると認められ、勾留となる可能性があります。
汚職事件を起こし、収賄罪で逮捕されてしまったのであれば、早期に刑事事件に強い弁護士に接見を依頼し、取調べ対応についてのアドバイスを受けるのがよいでしょう。
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