銃砲刀不法所持罪で任意同行を求められた場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県美方郡香美町の路上に車を停車させて休憩していたところ、兵庫県美方警察署の警察官から職務質問の後に車内捜索を受けることになりました。
すると、刃渡り20センチほどのナイフが見つかり、Aさんは警察署まで任意同行を求められました。
(フィクションです)
銃砲刀不法所持罪について
銃砲刀不法所持罪とは、銃刀法で定められている、一定の法外の除外事由に該当する場合を除いて、銃砲または刀剣類を所持する犯罪です。
「銃砲」とは、けん銃、小銃、機関銃、砲、猟銃その他金属製弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲および空気銃をいいます。
「刀剣類」とは、刃渡り15㎝以上の刀、やりおよびなぎなた、刃渡り5.5㎝以上の剣、あいくち並びに45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛び出しナイフをいいます。
銃刀法の刀剣類に該当するには、その物品が、社会通念上、刀・やり・なぎなた・剣・あいくち及び飛び出しナイフの類型のいずれかにあてはまる形態・実質を備える刃物であることが必要となります。
銃砲刀不法所持罪において、所持の禁止となる刀剣類は、人畜を殺傷する機能を有し、社会通念上、刀・やり・なぎなた・剣・あいくち・飛び出しナイフの各類型にあてはまる類型を備え、その罪質が銅質性で、かつ、次の形式を有する刀剣類を所持の禁止対象としています。
「刀」は、通常つば及び柄を付けて用いる片刃の銅質性の刃物であって、本来殺傷の用具としての機能を有するものです。
「やり」とは、長い棒状の柄を付けて、突きやすいように作られた銅質性の刃物であって、本来殺傷の用具としての機能を有するものをいいます。
「なぎなた」は、長い柄を付けて用いる中子の長い片刃の銅質性の刃物であって、本来殺傷の用具としての機能を有するものを指します。
「剣」とは、柄を付けて用いる左右均整の計上を下諸刃の銅質性の刃物であって、先端部分が著しく鋭く、本来殺傷の用具としての機能を有するものをいいます。
「あいくち」は、つばのない柄を付けて用いる刃渡りがおよそ15㎝未満の銅質性の短刀で、本来殺傷の用途に供されるものです。
「飛び出しナイフ」とは、ばねの弾力等を利用し、45度以上に自動的に開刃する装置を有するナイフのことです。
これらいずれにも該当しないものは、人畜を切断刺突できるとしても銃刀法における「刀剣類」には当たらないことになります。
しかし、形態上刀剣類に類似するものは模造刀剣類の携帯禁止に触れる可能性はあります。
「所持」の意義について、銃刀法上に定義規定はありませんが、判例は、「所定の物の保管について実力支配関係をもつこと」をいうとしています。
この「実力支配関係」というのは、具体的には、物に対して事実上の支配を及ぼしている客観的な支配関係のことをいい、現実に物を直接または間接に手で持ったり、服に隠すなどして体に帯びるなど、直ちに使用し得る状態で事故の身辺に置く場合を含みます。
銃砲刀不法所持罪が成立するためには、銃砲刀剣類を所持したという行為についての故意が必要となります。
ここでの所持の故意とは、所持という行為を認識していることです。
つまり、その物を保管する上での事故の実力支配関係を有している事実を認識していることが必要となります。
所持の動機や目的は関係ありません。
けん銃等の所持の罰則は、1年以上10年以下の懲役です。
けん銃等と一緒に実包や弾丸・火薬を所持していた場合は、3年以上の有期懲役と加重されます。
刀剣類の所持については、3年以下の懲役または50万円以下の罰則です。
職務質問の後に、警察署まで任意同行を求められた場合、どのように対応してよいものか悩まれる方も多いでしょう。
任意同行は、あくまでも「任意」ですので、これに応じる義務はなく、断ることもできます。
しかし、任意同行を拒否すれば、警察官はますます怪しみ、しつこく対応を迫ってきますので、素直に指示に応じるのがよいでしょう。
上のケースのように、車の中にナイフを置き忘れていたような場合、ナイフが発見されたからといって逮捕される可能性はそう高くはありません。
しかし、身柄不拘束のまま捜査は進められることになりますので、取調べ対応やその後の流れ、見込まれる処分などについて刑事事件に詳しい弁護士に一度ご相談されるのがよいでしょう。
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