Archive for the ‘暴力事件’ Category

殺人未遂事件で逮捕

2020-09-20

殺人未遂事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
兵庫県相生市に住むAさんは、自宅を訪れた交際相手のVさんから別れ話を切り出され、口論に発展しました。
カッとなったAさんは、Vさんの首を絞めましたが、抵抗したVさんは部屋から逃げ出し、110番通報をしました。
通報を受けて現場に駆け付けた兵庫県相生警察署の警察官は、部屋にいたAさんを殺人未遂の疑いで現行犯逮捕しました。
Aさんは、「別れを切り出され、喧嘩になった。カッとなって首を絞めてしまったが、殺すつもりはなかった。」と供述しています。
(フィクションです)

殺人未遂罪

◇殺人罪◇

第199条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

殺人罪の行為は、人を「殺す」こと、つまり、自然の死期に先立って他人の生命を断絶することです。
「殺す」行為に該当するものとして、刺殺、斬殺、絞殺、撲殺、毒殺、焼殺、溺殺などが含まれます。
殺人行為と言えるためには、その行為自体に、被害者の死の結果を惹起させ得る危険性を有していなければなりません。
当該危険性の判断は、行為時の場面設定において、その行為が行われた場合、一般人の視点で、被害者が死亡する危険性があるか否かに基づいて判断されます。
例えば、人を殺害する目的で、わら人形を作って釘を打ち付ける行為は、殺人行為には該当しません。
他方、人を殺害する目的で、警官から奪取したけん銃を人に向けて引き金を引いたが、偶然弾丸が入っていなかった場合については、一般人の視点では、けん銃を人に向かって発射させる行為は、射殺の危険性が認められ、殺人行為に該当します。
「殺す」という行為を実行に移す時期(実行の着手時期)は、行為者が、殺意をもって、他人の生命に対する現実的危険性のある行為を開始した時であるとされます。
被害者にけん銃で狙いを定めた時や、被害者に刀を振りかざした時に、実行の着手が認められます。

「殺す」という実行行為がなければ被害者が死亡しなかったと言えれば、その途中で結果発生に特異な事情や予想外の事情が関係したとしても、おおむね因果関係が肯定できればよく、被害者が死亡した時に殺人罪は既遂となります。

殺人罪の成立には、「殺意」をもって、人を殺したことが求められます。
人に暴行を加えて死亡させた場合、殺意がなければ、殺人罪ではなく傷害致死罪が成立するにとどまるため、殺意は重要な要素となります。
殺意の認定にあたっては、人の心の中のことなので、客観的な事情に基いて認定されます。
つまり、人の行動に即すれば、人が死ぬ危険性の高い行為をそのような行為であると分かっていて行ったか否かを客観的な事情に基いて認定することになります。
このような客観的な事情には、創傷の部位、創傷の程度、凶器の種類、凶器の用法、動機の有無、犯行後の行動などがあります。

事例においては、AさんはVさんを殺す意図はなかったと供述しています。
しかし、首を絞めるという行為は相手方を直接窒息させる行為であるため、その行為自体が殺意を認定する積極的な要素と判断されるおそれがあります。

殺意がないと判断されば、Vさんの首には痣が残っている可能性が高いですから、傷害罪に問われることになるでしょう。

◇未遂◇

さて、仮にAさんが殺意をもってVさんの首を絞めたが、Vさんが上手く逃れたため、Vさんは死亡するに至らなかった場合、Aさんは殺人未遂罪に問われます。

未遂犯」とは、犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者のことをいいます。
未遂処罰は例外であって、未遂犯を処罰する旨の記載がない限り未遂犯は処罰されません。

殺人罪については、刑法203条で未遂犯も処罰するとされていますので、「殺人未遂罪」について処罰の対象となります。

未遂犯には、遂げなかった態様によって区別した場合、実行行為自体が終了していない場合である着手未遂と、実行行為は終了したが結果が生じなかった場合である実行未遂の2つに分類されます。
また、遂げなかった理由に基づいて区別した場合には、自分の意思によってやめた場合である中止未遂と、それ以外の理由によって結果が発生しなかった場合である障害未遂とがあります。

未遂罪の成立には、「犯罪の実行に着手」することが必要となります。
犯罪の実行行為とは、犯罪の結果を発生させる具体的危険性のある行為のことをいい、犯罪の実行の着手とは、犯罪の結果を発生させる具体的危険性のある行為を開始することを意味します。
殺人罪の場合、他人の生命を侵害する具体的危険(結果の発生する可能性が相当に高い状態)が発生する行為を行った時点で、実行の着手が認められます。
この点、人の首を絞めるという行為は、それ自体他人の生命を侵害する具体的危険が発生する行為だと言えるため、実際に相手方が死亡しなかったとしても、殺人罪の実行行為に着手したことになります。

殺人未遂事件といっても、その態様や被害の軽重は様々あり、計画性がなく、殺意の程度が高くなく、被害者への被害弁償や示談が成立しているなどといった事情があれば、執行猶予付きの判決が言い渡される可能性もありますので、殺人未遂罪に問われている場合にはすぐに弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
弊所では、無料法律相談初回接見サービスについてのお問い合わせ・ご予約をフリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けています。

犯罪の成立を争う

2020-09-06

犯罪成立争う場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
Aさんは、兵庫県神崎郡福崎町の自宅で、父親を包丁で数回突き刺し殺害したとして、兵庫県福崎警察署に殺人容疑で逮捕されました。
Aさんは、逮捕後勾留されましたが、精神鑑定の結果、刑事責任能力を問えないと判断され、神戸地方検察庁は、Aさんについて不起訴処分としました。
(フィクションです)

犯罪が成立するためには

刑法上、犯罪とは「構成要件に該当し、違法であり、かつ有責な行為」であるとされます。
Aさんが、父親を刺殺したことをもって、ただちに「犯罪」が成立するのではなく、Aさんの行為が、犯罪であると定めた規定に当てはまり、当該行為は違法であり、かつAさんの行為は刑事上の責任があると認められる場合にはじめて犯罪(この場合、殺人罪あるいは傷害致死罪)が成立することになるのです。
以下、犯罪成立するための要件について解説します。

(1)構成要件該当性

ある行為が、犯罪であると言えるためには、まずは、当該行為が「犯罪」であると定めた規定に当てはまらなければなりません。
法律で、どのような行為が犯罪に当たるのかが定められているわけですが、この犯罪類型のことを「構成要件」と呼びます。
構成要件の要素には、行為・結果・因果関係のほかに、主体・客体・行為の状況などがあります。
殺人罪の場合、構成要件は「人を殺す」ことです。
客体は「人」であり、行為は「殺す」ことです。
また、殺人罪の成立には、殺意があったことが必要となります。
殺意の認定には、凶器種類、行為態様、創傷の部位・程度、動機の有無、犯行前・犯行時の言動、犯行後の行動等を考慮して判断されます。
Aさんの場合、数回包丁で被害者を突き刺していることから、殺意があったと判断される可能性は高く、Aさんの行為は、殺人罪の構成要件に該当すると言えるでしょう。

(2)違法性

2つめの要件は、構成要件に該当する行為が違法であることです。
通常、構成要件に該当する行為は違法性を帯びていると言えるため、構成要件に該当する行為について、例外的にその違法性が阻却される場合に当たるかが問題となります。
違法性が阻却される理由を「違法性阻却事由」といい、法令行為・正当業務行為、被害者の同意、正当防衛・緊急避難が含まれます。

(3)有責性

犯罪成立要件の3つめは、構成要件に該当する違法な行為につき、行為者が責任を有することです。
「責任」とは、犯罪行為についてその行為者を非難しうること、つまり、行為者に対する非難可能性のことをいいます。
責任があるか否かについての判断は、「責任能力」、「故意・過失」、「適法行為の期待可能性」といった要素で判断されます。
ここでは、「責任能力」について説明します。
「責任能力」とは、物事の是非善悪を弁別し、それに従って行動する能力のことをいいます。
刑法では、39条で心神喪失・心神耗弱、41条で刑事未成年について規定しています。
精神の障害により、行為の是非を弁別し又はその弁別に従って行動する能力がない場合を「心神喪失」といい、精神の障害により、行為の是非を弁別し又はその弁別に従って行動する能力が著しく低い場合を「心身耗弱」といいます。
前者の場合は処罰されず、後者の場合は刑が減軽されます。
「精神の障害」の意義については、総合失調症や躁うつ病などの精神病のほか、酩酊・情動のような一時的な意識障害も、その程度が高い場合には含まれ、知的障害も含まれます。
責任能力の判断においては、精神医学の専門家による精神鑑定が行われることが多いのですが、法廷で最終的に責任能力の有無を判断するのは、裁判官です。
捜査段階において、検察官は、精神鑑定の結果、被疑者が精神上の障害により是非善悪を判断する能力が認められないとする場合には、起訴しない旨の決定をします。
この場合は、起訴されずに事件が処理されたため、刑事裁判は開かれません。

また、14歳に満たない者は、刑事責任を問われません。

以上のように、犯罪成立争うには、犯罪成立に必要な要件すべてを満たしていないことを客観的な証拠に基づいて主張しなければなりません。
そのような弁護活動は、刑事事件に精通する弁護士にお任せください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件の被疑者となったが、犯罪成立を争いたいとお思いの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

少年鑑別所収容の回避

2020-07-19

少年鑑別所収容の回避に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県神戸市垂水区に住む中学生3年生のAさんは、友人Bさんと共謀し、知人のVさんに暴行を加え、所持金3000円を奪ったとして、兵庫県垂水警察署に逮捕されました。
逮捕後、10日間の勾留となったAさんですが、もうすぐ定期試験が控えています。
高校受験を控えたAさんは、家庭裁判所送致後に観護措置がとられ少年鑑別所に収容されれば、定期試験が受けられなくなり、成績に影響するのではないかと心配しています。
(フィクションです。)

少年鑑別所とはどんなところ?

少年鑑別所は、以下のことを行う施設です。
(1)鑑別対象者の鑑別
(2)観護措置等によって収容される者らに対する必要な観護処遇
(3)非行及び犯罪の防止に関する援助

(1)鑑別

少年鑑別所が行う「鑑別」というのは、「医学、心理学、社会学その他の専門的知識及び技術に基づき、鑑別対象者について、その非行又は犯罪に影響を及ぼした資質上及び環境上問題となる事情を明らかにした上、その事情の改善に寄与するため、その者の処遇に資する適切な指針を示すもの」のことです。
少年鑑別所は、様々な観点から、少年がなぜ犯罪・非行に手を染めてしまったのか、その原因について明らかにし、どうすれば再び犯罪・非行に走ることなく更生することができるのかについて見解を示します。

鑑別のために調査すべき事項は、「その者の性格、経歴、心身の状況及び発達の程度、非行の状況、家庭環境並びに交友関係、在所中の生活及び行動の状況」等に関するものです。

少年鑑別所の観護対象者となるのは、以下の者です。
①家庭裁判所、地方更生保護委員会、保護観察所の長、児童自立支援施設の長、児童養護施設の長、少年院の長又は刑事施設の長から鑑別を求められた次の者。
・保護処分または少年法18条2項の措置に係る事件の調査または審判を受ける者。
・保護処分の執行を受ける者。
・懲役または禁錮の刑の執行を受ける20歳未満の者。
②家庭裁判所から次の決定を受けた者
・少年院送致の保護処分。
・少年院仮退院者であって少年院に戻して収容する旨の決定。

(2)観護処遇

少年鑑別所は、観護措置が執られて少年鑑別所に収容される者その他法令の規定により少年鑑別所に収容すべきこととされる者及び収容することができることとされる者を収容し、これらの者に対し必要な観護処遇を行います。

観護措置は、家庭裁判所が少年の調査、審判を行うために、当該少年の心情の安定を図りながら、少年の心身を保護してその安全を図る措置です。
観護措置には、家庭裁判所の調査官の観護に付する在宅観護と、少年鑑別所に送致する収容観護の2種類がありますが、実務上、前者はほとんどとられておらず、観護措置という場合は後者を指すものとされています。

観護措置の要件について、少年法では「審判を行うため必要があるとき」との規定があるのみですが、一般的には、以下の要件を満たす必要があるとされます。
①審判条件があること。
②少年が非行を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること。
③審判を行う蓋然性があること。
④観護措置の必要性が認めあれること。

④の観護措置の必要性については、具体的には、以下のいずれかの事由があるときに認められます。
(a)調査、審判および決定の執行を円滑かつ確実に行うために、少年の身体を確保する必要があること。
(b)緊急的に少年の保護が必要であること。
(c)少年を収容して心身鑑別をする必要があること。

観護措置の期間は、法律上は2週間を超えることはできず、特に継続の必要があるときに1回に限り更新することができるとされていますが、実務上はほとんどの事件で更新がなされているので、通常は4週間となります。

また、家庭裁判所送致前である少年の被疑事件において、検察官は、勾留請求に代えて裁判官に対し観護措置の請求をすることができます。
これを「勾留に代わる観護措置」といいます。
この措置がとられた場合、請求の日から10日間、少年鑑別所に収容されます。
その後、家庭裁判所に送致され、通常はそのまま観護措置がとられ、更に1か月ほど少年鑑別所に収容されることとなります。

少年鑑別所の収容を避けるためには

観護措置がとられると、1か月ほど少年鑑別所に収容されることになります。
その間、少年は学校や職場に行くことはできませんので、少年の社会復帰を妨げてしまうことにもなりかねません。
そこで、観護措置の必要性がない場合や観護措置を避ける必要がある場合には、観護措置を避けるための活動を行う必要があります。

家庭裁判所は、事件が係属している間、いつでも観護措置をとることができます。
しかし、捜査段階から逮捕・勾留されている少年の場合、家庭裁判所に少年が到着してから24時間以内に観護措置をとらなければならないため、送致された日に観護措置がとられることがあります。

そこで、弁護士は、家庭裁判所に送致されるタイミングを見計らい、開廷裁判所に付添人届を提出し、少年について観護措置の要件・必要性がないことや、観護措置を避けるべき事情があることを述べた意見書を提出します。
裁判官や調査官との面談を行い、観護措置の要件・必要性がないこと、観護措置を避けるべき理由を提出した意見書を補充する形でしっかりと主張します。
そうすることで、家庭裁判所に送られてくる書類からでは分からない少年の事情を裁判官や調査官に伝えることができ、観護措置をとるべきか否かを判断する際に考慮してもらえる可能性があります。

捜査段階で身体拘束を受けていない少年が、家庭裁判所に送致された後に観護措置がとられることもあります。
そのため、家庭裁判所に送致される時に、観護措置をとらないよう家庭裁判所に働きかけることも必要でしょう。

このような活動は、少年事件に精通する弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件を数多く取り扱う法律事務所です。
お子様が家庭裁判所に送致され、少年鑑別所に収容されるのではとお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。

殺人と傷害致死の境界線~殺意の有無~

2020-05-31

殺人傷害致死の境界線について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース①~
兵庫県朝来市に住むAさんは、長年Vさんと交際しており結婚の話も出ていました。
しかし、ある日突然、Vさんが他の人と結婚するから別れてほしいと言われ、AさんはVさんに対して激しい憎悪を抱きました。
Aさんは、倉庫に置いてあったバットを持ち出し、そのバットでVさんの頭部や顔面、腹部を十数回にわたって殴打しました。
その結果、Vさんは脳挫滅などにより死亡しました。
Aさんは、Vさんを殺すつもりはなかったと供述しています。
(フィクションです。)

~ケース②~
兵庫県朝来市に住むAさんは、長年Vさんと交際しており結婚の話も出ていました。
しかし、ある日突然、Vさんが他の人と結婚するから別れてほしいと言われ、AさんはVさんに対して激しい憎悪を抱きました。
Aさんは、鉄拳でVさんの頭部や顔面、腹部を十数回にわたって殴打したところ、Vさんはその場に倒れ、脳挫傷などにより死亡しました。
Aさんは、Vさんを殺すつもりはなかったと供述しています。
(フィクションです。)

殺人と傷害致死の境界線は?

上のケースでは、どちらもAさんがVさんに暴行を加えたことにより、Vさんが死亡しています。
Vさんを死亡させてしまったあという結果は同じです。

生じる結果は同じであっても、成立し得る罪が同じとは限りません。
ケース①では殺人罪が、ケース②では傷害致死罪が成立するものと考えられます。
同じ被害者の死という結果にもかかわらず、殺人罪と傷害致死罪が成立する場合とがあるのは、どのような違いによるのでしょうか。

それは、「殺意」を有していたか否かの違いによるものです。

殺人罪は、人を殺す犯罪です。
殺人罪の成立には、犯行時に殺意を有していることが必要です。
殺意というのは、人が死ぬ危険性の高い行為を、そのような行為と分かって行ったことです。
細かく言えば、相手が確実に死ぬとわかって、あるいは、相手が確実に死ぬとまではわかっていないけれども、もし死んでしまうとしてもかまわないと思っていた場合です。

殺意は、人の心の内のことですが、内心は行動などに客観面に表れることから、客観的な事情に基づいて認定されます。
つまり、人が死ぬ危険性の高い行為をそのような行為であると分かって行ったか否かを客観的な事情に基づいて認定していくことになるのです。

殺意の認定における客観的な事情としては、次のようなものがあります。

①創傷の部位

創傷の部位が、胸部(特に心臓部)、頭部、顔面、腹部、頸部などにあれば、これらの部位は、人体のその損傷が生命に影響を大きく与える部分であることから、殺意を認定する要素となります。

このような部位に傷があれば、人が死ぬ危険性の高い行為であると分かって行ったと認めやすいのですが、行為者が、その部位を認識しないで傷を生じさせた場合は、消極要素となります。

②創傷の程度

加えられた攻撃の程度やその回数の大小で、その程度や回数が大きければ大きいほど殺意を認定する要素となります。

例えば、刃物で被害者を刺し殺した場合、刺された箇所が多ければ多いほど、攻撃の回数は多く、また、刺された傷の長さが10センチを超え、刃物の刃体と比較してその割合が高い場合は、その攻撃の程度は強く、人が死ぬ危険性の高い行為であると認識して行ったと認められやすくなります。

③凶器の用法

力を込めたり、繰り返し凶器を使用した場合は、殺意を認定する要素となります。

④動機の有無

行為者と被疑者との行為前後の行動状況、両者の性格、両者の知己の程度や交際関係などから、殺意を抱く合理的な理由、つまり、動機がある場合は、動機に基づいて殺意が発生したとして、殺意を認定する要素となります。

⑤犯行後の行動

犯行後、被害者をそのまま置き去りにする場合は、死亡の結果発生に沿う行動であるので、殺意の認定要素となります。
他方、被害者に救命措置を講じる場合には、死亡の結果を阻止する行動であるので、殺意の認定の消極要素となります。

以上のような客観的事情に基づいて、殺意の有無が判断されます。

ここで、上のケースについて考えてみましょう。

ケース①において、AさんはVさんに対し、頭部や顔面、腹部という人体の枢要部に対し、十数回にわたってバットで殴打し、その結果、Vさんに脳挫滅を負わせ、Vさんを死亡させています。
そして、これらの行為は、突然Vさんから別れを切り出されたことに対する憎悪に基づくものです。
創傷の部位、バットという凶器の種類、用法、脳挫滅という創傷の程度、動機から、Aさんは、Vさんが死ぬ危険性の高い行為をそのような行為であると分かっていながら行った、つまり、殺意が認定でき、Aさんは殺人罪の罪責を負うのもと考えられます。

次に、ケース②についてですが、AさんはVさんに対し、頭部や顔面、腹部という人体の枢要部に対し、十数回にわたって攻撃し、その結果、Vさんに脳挫傷の結果を生じさせ死亡させています。
そして、動機がVさんに対する憎悪であることは、ケース①と同じです。
しかし、ケース②では、Aさんの攻撃方法は鉄拳ですので、鉄拳での攻撃は凶器を用いた攻撃よりもその程度は弱く、一般的に鉄拳による攻撃から死亡の結果を生じさせる可能性は低く、死亡に至る危険性は低いといえるでしょう。
もちろん、行為者が格闘家のような場合は例外は考えられます。
以上の点から、Aさんが、人が死ぬ危険性の高い行為をそのような行為であると分かって行った=殺意を認定することは困難であり、Aさんは、傷害致死罪の罪責を負うと考えられます。

殺人罪と傷害致死罪の法定刑は大きく異なりますで、殺意の認定の如何により科される刑罰にも大きな違いが生じますので、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。

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裁判員裁判にも対応する弁護士

2020-05-17

裁判員裁判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県川西警察署は、傷害致死の容疑でAさんを逮捕しました。
逮捕されたAさんは、この先どのような手続を踏むことになるのか分からず不安です。
担当の取調官からは、裁判員裁判に付される可能性について聞きました。
Aさんは、家族が手配した刑事事件専門の弁護士に、裁判員裁判について聞いています。
(フィクションです)

裁判員裁判について

裁判員裁判が導入されてから、はや11年が経とうとしています。
私たちも、裁判員として裁判に参加する可能性があるのですが、みなさんはどのぐらい裁判員裁判についてご存じでしょうか。
今回は、裁判員裁判、そして、裁判員裁判の対象となる刑事事件における弁護活動について解説します。

裁判員裁判とは

通常の刑事裁判は、検察官、そして、被告人・弁護人が提出した証拠に基づいて、被告人が罪を犯したことが合理的な疑いを入れない程度に立証されたか、つまり、有罪であるか否か、そして、有罪である場合には、どのような刑罰を科すべきかについて、法律の専門家である裁判官が判断します。
これに対して、裁判員裁判は、裁判官に加えて、一般市民が裁判員として裁判に参加し、被告人の有罪無罪、そして量刑の判断も行います。
もちろん、参加する裁判員は、法律の専門家ではありませんので、裁判が円滑に進むよう、裁判員裁判には、通常の刑事裁判とは異なる手続がとられます。

まずは、どのような事件が裁判員裁判の対象となるのかについてみていきましょう。

全ての刑事事件が裁判員裁判の対象となるわけではなく、ある一定の重大な事件のみが裁判員裁判の対象となります。
裁判員裁判の対象事件は、
①死刑または無期も懲役もしくは禁固にあたる罪にかかる事件
②法定合議事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪にかかる事件
です。
法定合議事件というのは、数人の裁判官で審理される事件のことです。

裁判員裁判の対象となる具体的な罪名をあげると、殺人、現住建造物等放火、通貨偽造・同行使、強制性交等致死傷、身代金目的略取等、強盗致傷、強盗致死、強盗殺人、傷害致死、危険運転致死などです。

裁判員裁判では、原則として、裁判員6名と裁判官3名が1つの事件を担当します。

裁判員は、公判期日に出頭し、刑事裁判の審理に出席します。
公判期間は、できる限り連日となるようにし、集中して審理ができるようにします。
そのため、公判期間に先立って、裁判官、検察官、被告人・弁護人が「公判前整理手続」を行います。
この公判前整理手続では、検察官が手持ちの証拠を開示した上で、裁判でどういった点が争われるのかについて予め明らかにし、審理の進行予定が決められます。
争点を予め明らかにしておくことで、短期間での審理が可能となります。
また、法律に明るくない裁判員も、予め争点が明らかにされていることで、落ち着いて事件を審理することができます。

公判の流れとしては、通常の刑事事件と同様です。
まず、検察官が起訴状を朗読し、裁判で立証したい事実について確認します。
その後、検察官と弁護人がそれぞれが証明しようとする事件のストリートについて説明した上で、証拠の取調べを行います。
検察官、弁護人は、裁判員に分かりやすい方法で、それぞれの主張を展開し、証拠調べを行います。
証拠調べは、主に証人尋問が中心となります。
証拠調べが終わると、検察官、弁護人それぞれが最後に意見を述べます。
これで、公判審理が終了します。

公判審理が終わると、裁判員と裁判官は、被告人が有罪か無罪か、有罪の場合にはどのような刑罰を宣告するかについて話し合います。
そして、後日、裁判員立ち合いのもと、裁判長が判決の宣告を行います。

以上が、裁判員裁判のおおまかな流れます。
裁判員裁判の大きな特徴のひとつに、公判前整理手続に付されるということです。
公判前整理手続に付されることで、公判期日では、裁判での争点が明らかになり、裁判が円滑に進むという利点があります。
その反面、公判前整理手続をうまく利用することができず、相手の主張をよく理解することができなければ、的確な反論をすることができず、争点があやふやになってしまうおそれがあります。
争点があやふやになると、証人尋問や被告人質問で適切な対応ができなくなってしまいます。
裁判員裁判では、公判前の段階から裁判の結果に大きく影響しかねません。

それゆえ、公判が始まる前から弁護士の力量が大きく問われることになるのです。

また、裁判員裁判では、一般市民である裁判員が出席するため、裁判員に理解・納得してもらえるような言葉や証拠で、主張を展開していく必要があります。

裁判員裁判で無罪判決や減刑、執行猶予判決を目指すのであれば、裁判員裁判の経験・実績が豊富な弁護士に任せるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
裁判員裁判の経験・実績のある弁護士も所属しておりますので、裁判員裁判の対象となる事件を起こし対応にお困りであれば、弊所の弁護士に今すぐご相談ください。
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近隣トラブルで刑事事件に

2020-04-06

近隣トラブル刑事事件に発展する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県宝塚市に住むVさん家族は、1年前に引っ越してきました。
道を挟んだ向かいにあるAさんとも、良好な関係にありました。
しかし、子供がまだ小さいVさんの妻が、町内のイベントの準備に積極的に参加しないことに腹を立てたAさんは、Vさん宅の玄関前で、嫌味を言うようになりました。
最初は嫌味だけでしたが、だんだんとVさん家族の人格を否定するような内容の暴言を吐くようになり、Vさんの妻は怖くて家から出るのもためらうようになりました。
さすがに困ったVさんは、市役所に相談しました。
市役所からAさんに連絡が行った後も、Aさんの嫌がらせ行為は続き、とうとうVさん家族は兵庫県宝塚警察署に相談することにしました。
(フィクションです)

近隣トラブルから刑事事件に発展するのか?

刑事事件というと、殺人や傷害、性犯罪に窃盗などといった犯罪をイメージされる方が多いのではないでしょうか。
刑事事件となると、警察が動き出して大事になる。
犯人は逮捕され、裁判にかけられて刑務所に入る。
そのようなイメージからすると、近隣トラブルのような揉め事には警察は介入しないのではないか。

実は、そうでもありません。
一昔前までは、家庭内トラブルや近隣トラブルといった問題には、警察は積極的に介入しようとはしなかったと言われていますが、トラブルの内容によっては刑事事件として立件することもあり、隣人トラブルから刑事事件に発展するケースは少なくありません。
近隣トラブルで多いのが、隣人からの執拗な嫌がらせ行為です。
何らかの出来事がきっかけとなり、隣人からの嫌がらせを受けているケースが多く、嫌がらせを回避するために荷物をまとめて出ていくなんてことが気軽にはできるものではありませんので、被害者は長年に渡って嫌がらせ行為に悩まされ続けていることがよく見受けられます。

このような隣人からの嫌がらせ行為は、迷惑防止条例違反に該当する可能性があります。

迷惑防止条例は、各都道府県により制定されているもので、兵庫県には、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」と題する条例があります。
この条例の第10条の2は、嫌がらせ行為の禁止について定めています。

正当な理由なく、特定の者に対して、執拗に又は反復して「嫌がらせ行為」をすることを禁止しています。
ここでいう「嫌がらせ行為には、次の8つの行為が含まれます。

①つきまとい・待ち伏せ・見張り・押し掛け
人の後を尾行する行為、行く先々で待ち伏せをする行為、自宅や勤務先などで見張る行為、自宅や勤務先などに押し掛ける行為。

②監視していると告げる行為
帰宅直後に「おかえり」などと電話やメールをする行為、その日の行動や服装などを電話やメールで告げる行為。

③面会などの要求
面会などの義務のないことを行うよう要求する行為。

④乱暴な言動
著しく粗野・乱暴な言動をすること。

⑤無言電話、電子メールなどの送付
無言電話や意味不明な声を上げるだけの電話、拒否しているにもかかわらず電話・メールなどを送る行為。

⑥汚物などの送付
汚物、動物の死体、その他の著しく不快・嫌悪の情を催させるような物を送付したり、その知り得る状態に置くこと。

⑦名誉を害する行為
名誉を傷つけるような内容を告げたり、文書などを届けたりする行為、名誉を傷つけるような文章をネットに掲載して伝えようとする行為など。

⑧性的羞恥心を害する行為
性的羞恥心を害する事項を告げたり、その知り得る状態に置いたり、その性的羞恥心を害する文書・図画その他の物を送付、またはその知り得る状態に置くこと。

上のケースでは、AさんがVさん宅の玄関前で暴言を吐くという行為を繰り返しています。
Aさんの行為は、④の嫌がらせ行為、内容によっては、⑦や⑧にも当たる可能性があります。
④の「著しく粗野又は乱暴な言動」というのは、場所柄や一般に期待される礼儀をわきまえないぶしつけな言動や動作または不当にあらあらしい言語動作であって、刑法の暴行や脅迫などに至らない程度のものをいいます。
大声で「バカ」「くそ」などの粗野な言葉を浴びせる行為、家の前で大声を出したり、車のクラクションをうるさく鳴らす行為等が該当します。

このような「嫌がらせ行為」は、ストーカー規制法における「つきまとい等」と類似していますが、「つきまとい等」は、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」をもって行われる必要があります。
迷惑防止条例の「嫌がらせ行為」は、そのような恋愛感情目的がなく、特定の人に対して、執拗・反復して問題の行為を行うことで足ります。

嫌がらせ行為を行い迷惑防止条例に違反した場合、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

このように、迷惑防止条例違反に当たる場合、近隣トラブルから刑事事件に発展する可能性はあります。
迷惑防止条例違反で刑事事件の被疑者となり対応にお困りであれば、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に一度ご相談ください。
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示談成立で起訴猶予獲得

2020-04-05

示談起訴猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県神戸市北区の路上で、タクシー運転手に暴力を振るって怪我を負わせたとして、会社員のAさんが、兵庫県神戸北警察署に傷害の容疑で逮捕されました。
Aさんは、当時酒にかなり酔っていたようで、タクシー代金を巡って言い争いになり、Aさんが運転手に手を出したとのことですが、Aさんは酔っていて記憶がありません。
しかし、車内のレコーダーの映像からもAさんの犯行は確認されており、Aさんも容疑を認めています。
被害者と早期に示談して不起訴にならないかと、Aさんは弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

起訴猶予とは

被害者や目撃者などからの通報を受けた警察は、刑事事件として捜査を開始します。
身体拘束が必要な場合には、犯人を逮捕することもあります。
警察は、捜査を一通り済ませると、事件を検察に送ります。
これを「送致」といいます。
犯人が逮捕されている場合では、逮捕から48時間以内に送致するか、犯人を釈放するかを決めなければなりません。
警察からの送致を受けた検察官は、捜査を遂げた後、事件を処理します。
検察官が行う終局的な事件処理には、「起訴処分」、「不起訴処分」、「家庭裁判所送致」があります。
「不起訴処分」というのは、問題の事件について起訴しないとする処分のことです。
起訴するかどうかは、検察官が決めることになっています。

不起訴処分には、不起訴とする理由により様々なものがありますが、主な4つを以下でご紹介します。

①嫌疑なし
被疑者が犯人でないことが明らかなとき、または、犯罪を認定する証拠がないことが明らかな場合には、「嫌疑なし」として不起訴処分となります。

②嫌疑不十分
犯罪が立証するだけの証拠が不十分なため、起訴したとしても有罪となる可能性が低い場合には、「嫌疑不十分」で不起訴処分となります。

③起訴猶予
犯罪を証明する証拠は十分にあり、起訴すれば有罪となる可能性は高いけれど、犯罪の重さや被害者の処罰感情、更生の見込みなど、様々な事情を考慮して、今回は起訴しないとする場合です。
不起訴処分となる多くが、起訴猶予だと言われています。

④親告罪の告訴取消し
告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪について、告訴が取り消された場合には、不起訴処分となります。

示談とは

示談」というのは、刑事事件の文脈においては、加害者が被害者に対して一定の賠償金を支払う代わりに、被害者が被害届を提出しないなど、当事者間で今回の事件は解決したとする約束のことです。
示談が成立したことによる処分への影響ですが、③の起訴猶予でも述べたように、検察官が処分を決める上で考慮する事情に、被害者の処罰感情があります。
示談が成立しており、被害者が加害者に対して刑事罰を望まない場合には、検察官もそれを考慮し起訴猶予とする場合があります。
もちろん、親告罪ではないのであれば、告訴がなくても公訴を提起することはできますが、その他の事情も考慮した上で、検察官が不起訴処分とする可能性は高いでしょう。

つまり、被害者との間で示談を成立させることができれば、起訴猶予となる可能性を高めることができるということです。
そのため、被害者がいる事件では、被害者との示談交渉が不起訴処分を獲得するための重要な弁護活動のひとつと言えます。

被害者との示談交渉は、弁護士を介して行うのが一般的です。
それは、被害者と加害者がもともと知り合いだった場合を除けば、警察や検察などを通じて相手方の連絡先を教えてもらうことになりますが、加害者が直接被害者と連絡をとり、被害者に供述を変えるように迫るなどの行為に及ぶことをおそれ、捜査機関から被害者の連絡先を教えてもらうことはあまりありません。
仮に、教えてもらうことができたとしても、被害者が恐怖や嫌悪感から加害者と直接連絡をとることを嫌がったり、感情論的になり交渉が難航することがあります。
ですので、代理人である弁護士は、弁護人限りで連絡先を教えてもらうといった被害者に配慮した連絡方法を提案したり、加害者の謝罪の気持ちや示談の意向を冷静に伝えた上で、示談のメリットデメリットを丁寧に説明するなど、被害者の気持ちに寄り添いながら粘り強く示談交渉を行うことが期待されます。

被害者との示談交渉は、刑事事件に精通する弁護士に任せるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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量刑不当で控訴

2020-04-04

量刑不当を理由とした控訴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
傷害罪で神戸地方検察庁に起訴されたAさんに対して、4月4日、神戸地方裁判所は懲役5年の有罪判決を言い渡しました。
Aさんは、判決を量刑不当を理由に控訴するつもりですが、第一審の弁護人に控訴審もお願いするのか、刑事事件を専門とする弁護士に控訴審の弁護人をお願いすべきか悩んでいます。
(フィクションです)

控訴とは

裁判官といえども、人間である以上、裁判の内容に誤りがあったり、手続上の違法があったりする可能性も否定できません。
そのため、そのような誤りを是正する手段を講じる必要があります。
そのような手段の一つに、「上訴」があります。
「上訴」というのは、裁判を受けて不利益を被る者が、その裁判が確定してしまう前に、上級の裁判所に不服を申し立て、原裁判の変更や取消しを求めることです。

裁判に対する不服申立という点で、身柄解放活動として行う勾留に対する準抗告のような「準抗告」とも共通しますが、「上訴」は「上級の裁判所」に対する不服申立であるのに対して、「準抗告」は、「上級の裁判所」ではなく、「原裁判所とは違う裁判所」に対して行う点で異なります。

「上訴」のうち、第一審判決を不服として高等裁判所へ不服申立を行うものを「控訴」といいます。
控訴の申立てをすることができるのは、第一審判決を受けた当事者である検察官と被告人です。
他にも、被告人の法定代理人や保佐人、第一審の代理人や弁護人は、被告人のために控訴を行うことができます。
検察官は、不当と判断した全ての判決について控訴することができますが、被告人は、自己に利益な内容を主張して申し立てなければなりません。
つまり、原判決よりも重い刑を主張して控訴を申し立てることはできないのです。

控訴ができるのは、第一審判決が宣告された日から14日以内です。
上のケースであれば、4月4日に判決が言い渡されていますので、翌日の5日から数えて14日目である18日までであれば、控訴を申し立てることができます。

控訴が申立てられると、原判決の確定は阻止され、その執行は停止されます。
そして、事件は控訴審に係属します。

控訴を申立てると、定められた期限内に、控訴趣意書を控訴裁判所に提出しなければなりません。
控訴趣意書」とは、控訴の理由を簡潔に明示した書面です。
控訴審は、書面審理であるため、この控訴趣意書が審理を決する重要な要素となります。
控訴理由は刑事訴訟法377条以下に定められており、法定の控訴理由を主張しなかった場合、決定で控訴が棄却されます。

控訴理由

(1)訴訟手続の法令違反

刑事訴訟法277条および378条に列挙されている訴訟手続の法令違反については、原判決への影響の有無を問わず控訴の理由となります。
このような控訴理由を「絶対的控訴理由」と呼びます。
それ以外の訴訟手続の法令違反は、判決に影響を及ぼすことが明らかであるときに控訴の理由とすることができます。
絶対的控訴理由に対して、後者は「相対的控訴理由」と呼ばれます。

(2)法令適用の誤り

認定された事実に対する実体法の適用を誤った場合、法令適用の誤りに該当します。
認定された事実に対して、適用すべき法令を適用しなかった場合、適用すべきてはない法令を適用した場合、法令の解釈を誤って適用した場合などです。
認定された事実に対する実体法の適用を誤ったことに加えて、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかである場合に、控訴の理由とすることができます。

(3)刑の量刑不当

処断刑の範囲内での刑の量定が不当であることを理由に控訴することができます。
情状事実の誤認や評価の誤りといった裁量的加重減免、酌量減軽、刑種の選択や刑期の長短、刑の執行猶予、罰金の換刑処分、選挙権・被選挙権の停止・不停止等も量刑問題となります。

(4)事実の誤認

原判決の事実認定が論理即、経験則等に照らして不合理である場合であり、その誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであるときに、控訴の理由とすることができます。

(3)量刑不当、および、(4)事実の誤認を控訴理由として申し立てる場合、第一審の訴訟記録および証拠に現れている事実に加えて、一定の限度で控訴審での新証拠に基づく事実を主張することができます。
やむを得ない事由によって第一審の弁論終結前に取調を請求することができなかった証拠によって証明することのできる事実、あるいは、第一審の弁論取穴後判決前に生じた事実であり、量刑不当または事実誤認の控訴理由がある場合には、訴訟記録および原裁判所において取り調べた証拠に現れている事実以外の事実であっても、控訴趣意書に援用することができます。
量刑不当を主張する場合、原判決後に被害者との示談が成立したことは、被告人の有利に働きます。

単に、第一審で主張した事情を繰り返すことでは意味がありません。
量刑相場との対比、余罪の評価が適切であるか、前提事実に誤認がないか、原審の事情で正当に評価されなかったものはないか、被告人に有利となる弁論終結後の事情はないか、など注意深く検討する必要があります。

刑事裁判、控訴についてお悩みであれば、一度刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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喧嘩で刑事事件に~犯罪の成立:違法性阻却事由~

2020-03-31

構成要件該当性が肯定された後に問題となる第2の犯罪成立要である違法性(違法性阻却事由)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
仲間内の揉め事が原因で、AさんとVさんとの間で激しい言い争いに発展しました。
次第に、二人は殴り合いの喧嘩に発展しました。
見かねた周囲の人間が二人の間に入り、二人を引き離し、いったん殴り合いは納まりました。
しかし、怒りが納まらないVさんは、なおもAさんに対して執拗に殴り続けてきたため、Aさんは反撃に一発Vさんの顔を殴りました。
すると、Vさんは地面に倒れ動かなくなりました。
すぐに救急車を呼び、Vさんは病院に搬送されましたが、意識不明の重体となっています。
駆け付けた兵庫県西脇警察署の警察官は、Aさんや目撃者らから事情を聞いています。
Aさんは、「Vが喧嘩続けてきたから反撃しただけ。正当防衛になりませんか。」と話しています。
(フィクションです)

犯罪が成立するためには

犯罪は、法律の条文に該当し(これを「構成要件該当性」といいます。)、社会的に許されず(「違法性」)、社会的に非難される(「有責」)行為です。
犯罪が成立するか否かを判断するにあたっては、①構成要件に該当するかどうか、②違法であるかどうか、③有責であるかどうか、と順に検討していく必要があります。

前回のブログでは、構成要件該当性について検討しました。
構成要件に該当するのであれば、次に、違法性や責任を否定する何か特別の事情があるか否かについて検討することになります。

構成要件に該当する行為が認められると、違法性を有することも推定されますが、具体的な事情を検討すると、違法性を欠く場合があり、違法性が阻却される事由があるか否かを検討することとなります。

2.違法性について

「違法性」というのは、形式的には、問題となる行為が法規範に反することをいいます。
構成要件は違法行為類型であると理解する限り、構成要件に該当する行為は、原則として違法であることになります。
しかし、この原則の例外となる特別の事情がある場合には、その違法性が否定され、犯罪は成立しないことになります。
そのような違法性を失わせる特段の事情を「違法性阻却事由」といいます。

違法性阻却事由として刑法に規定されているものとしては、「正当行為」、「正当防衛」、「緊急避難」があります。
ここでは、正当防衛についてみていきましょう。

違法性阻却事由:正当防衛とは

「正当防衛」とは、(1)急迫不正の侵害に対して、(2)自己又は他人の権利を防衛するため、(3)やむを得ずにした行為、のことをいいます。

(1)急迫不正の侵害

①急迫性
侵害は、「急迫」したものでなければなりません。
「急迫」とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味します。
すでに侵害が終了しているときは、その直後であっても急迫性は認められませんが、一旦法益が侵害されても、新たな侵害がさらに加えられる状況があれば、侵害の急迫性を肯定することができます。
また、侵害が予期されたものであった場合でも、判例は、侵害の急迫性は直ちに失われるものではないとする立場をとっています。(最判昭46・11・16)
しかしながら、予期された侵害の機会を利用し、積極的に相手方に対して加害行為を加える意思で侵害に臨んだときには、侵害の急迫性の要件は充たされないとしています。

②不正
「不正」は、違法であることを意味します。
侵害者の行為は有責である必要はなく、構成要件該当行為である必要もないとされています。
要保護性を備えた利益に対する侵害であれば足りると解されます。

(2)自己又は他人の権利の防衛

正当防衛は、「自己又は他人の権利」を「防衛」するために認められます。
正当防衛として許されるのは、侵害者の法益を侵害する場合に限られます。
正当防衛は、防衛行為でなければなりません。
防衛行為といえるためには、客観的に防衛行為としての性質を有していることに加えて、防衛の意思でその行為がなされることが必要となります。
判例は、防衛意思の内容について、相手の加害行為に対し憤慨・逆上して反撃をしたからといって、直ちに防衛の意思を欠くものではなく(最判昭11・12・7)、攻撃の意思が併存していても防衛の意思は認められる(最判昭50・11・28)と、防衛の意思についての解釈を示しています。
しかしながら、攻撃を受けたのに乗じ積極的な加害行為にでたなどの特別な事情がある場合には防衛の意思が否定され(最判昭46・11・16)、防衛の名を借りて侵害者に対し積極的に攻撃を加える行為は防衛の意思を欠く(最判昭50・11・28)、としています。

(3)やむを得ずにした行為

正当防衛として違法性が阻却されるためには、防衛するために「やむを得ずにした行為」であることが必要です。
正当防衛の成立要件として、①必要性と②相当性の両方を必要とされます。

①必要性
「やむを得ずにした行為」というためには、必ずしもその行為が唯一の方法である必要はなく、また、厳格な法益の権衡も要求されませんが、少なくとも相手方に最小の損害を与える方法を選ぶことを要するものと理解されています。

②相当性
許容される防衛行為には限度があり、防衛行為としてどのような手段がとられたのかという点に着目して、その相当性が判断されます。

喧嘩闘争における正当防衛について

さて、喧嘩においても正当防衛が成立し得るのでしょうか。
喧嘩が発展し、双方が、攻撃や防御を繰り返す連続的行為となった場合、「喧嘩両成敗」として正当防衛は成立しません。
しかし、攻撃や防御を繰り返す連続的行為が崩れた場合、例えば、当初は素手で喧嘩していた相手方が、急に刃物を持ち出して攻撃したことに対して反撃した場合や、けんかが一旦収まったにもかかわらず、相手方がなおも攻撃を続けてきたことに対して反撃した場合などは、正当防衛が成立する余地があるとされます。
喧嘩の一部分だけを切り取って判断するのではなく、一連の事態を全体的に観察し正当防衛が成立する余地があるか否かが判断されるのです。

上のケースでは、いったん喧嘩が収まったにもかかわらず、Vさんが再度Aさんを執拗に殴り始めたため、これに反撃するためにAさんがVさんを殴った、というものです。
喧嘩が一度収まっているところ、攻撃と防御の連続的行為が崩れたとみて、さらにAさんの加害行為が急迫不正の侵害に対して、自己の権利を防御するためにやむを得ずにした行為であると判断されれば、Aさんの正当防衛が認められ犯罪は成立しないことになります。

正当防衛が成立する余地があるかについては、事件の内容によりますので、刑事事件に強い弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

傷害事件で被疑者となり対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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喧嘩で刑事事件に~犯罪の成立:構成要件該当性~

2020-03-30

殴り合いの喧嘩犯罪成立する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
仲間内の揉め事が原因で、AさんとVさんとの間で激しい言い争いに発展しました。
次第に、二人は殴り合いの喧嘩に発展しました。
見かねた周囲の人間が二人の間に入り、二人を引き離し、いったん殴り合いは納まりました。
しかし、怒りが納まらないVさんは、なおもAさんに対して執拗に殴り続けてきたため、Aさんは反撃に一発Vさんの顔を殴りました。
すると、Vさんは地面に倒れ動かなくなりました。
すぐに救急車を呼び、Vさんは病院に搬送されましたが、意識不明の重体となっています。
駆け付けた兵庫県西脇警察署の警察官は、Aさんや目撃者らから事情を聞いています。
Aさんは、「Vが喧嘩続けてきたから反撃しただけ。正当防衛になりませんか。」と話しています。
(フィクションです)

犯罪が成立するためには

社会的に許されず、避難されるべき行為は、多々ありますが、その中でも刑罰を加えるとしたものについては、あらかじめ法律の条文という形で私たち国民に提示されています。
芸能人の不倫騒動が、ニュースで大きく取り沙汰されている昨今ですが、不倫自体は社会的に許されず、社会的に避難されるべき行為ではありますが、犯罪ではありません。

犯罪は、法律の条文に該当し(これを「構成要件該当性」といいます。)、社会的に許されず(「違法性」)、社会的に非難される(「有責」)行為です。
犯罪成立するか否かを判断するにあたっては、①構成要件に該当するかどうか、②違法であるかどうか、③有責であるかどうか、と順に検討していく必要があります。

1. 構成要件該当性

構成要件の意義については、様々な見解がありますが、「立法者が犯罪として法律上規定した行為の類型」をいうとするのが基本的な理解となっています。
構成要件は、それを構成する構成要件要素により成り立っています。
構成要件要素は、個別の犯罪ごとに異なりますが、一般的には、①行為の主体、②行為、③結果、④行為と結果との間の因果関係、⑤故意・過失、です。

喧嘩の場面では、通常、暴行罪や傷害罪が成立することが多いでしょう。
喧嘩の末に、相手方が亡くなってしまった場合には、傷害致死罪、場合によっては殺人罪が適用されることがあります。
ここでは、傷害罪の構成要件に該当するか否かを検討します。

傷害罪

傷害罪は、刑法204条に規定されています。

第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

傷害罪は、他人の身体に対する侵害を内容とする犯罪です。
ですので、本罪の客体である「人の身体」は「他人の身体」であるのた、後者自身の身体の傷害は罪とはなりません。

さて、傷害罪の行為は、人の身体を「傷害」することです。
「傷害」というのは、人の生理的機能に障害を加えることです。
傷害は暴行によって生じることが多いのですが、暴行によらない傷害もあり、怒号等の嫌がらせによって、不安・抑うつ状態に陥れることも傷害に当たります。
傷害の方法については、有形無形を問いません。

また、傷害罪は故意犯です。
「故意」とは、「罪を犯す意思」のことをいいます。
傷害罪の場合、暴行罪の結果的加重犯の場合も含むと解する立場が通説となっており、傷害罪の故意は暴行の認識があれば足りるとされます。

殴り合いの喧嘩の場合、相手を殴るという暴行を加えていますが、積極的に相手方に怪我を負わせてやろうと思っていないとしても、殴ることで怪我を負っても構わないと思っていたのであれば傷害の故意が認められます。
そもそも、傷害罪の場合には暴行の認識があれば足りますので、相手に手を出していることで傷害の故意が認められます。
上のケースでは、双方が殴り合う喧嘩ですので、両者ともに暴行を加えていますが、AさんがVさんを殴り、そのことが原因で意識障害に陥ったのであれば、Aさんの行為は、傷害罪の構成要件該当することになるでしょう。

構成要件該当するのであれば、次に、違法性や責任を否定する何か特別の事情があるか否かについて検討することになります。

構成要件該当する行為が認められると、違法性を有することも推定されますが、具体的な事情を検討すると、違法性を欠く場合があり、違法性が阻却される事由があるか否かを検討することとなります。

違法性阻却事由として刑法が定めるものに、「正当防衛」があります。
この言葉は、みなさんもご存知だと思います。
次回は、この正当防衛について解説します。

喧嘩から刑事事件に発展することは少なくありません。
目撃者や被害者が警察に通報することで、事件が警察に発覚することが多いようです。
相手が因縁をつけてきたからかっとなって…、相手が手を出してきたから…、など様々な事情がその背景にあることもありますが、喧嘩で相手に怪我を負わせた場合、傷害事件の被疑者となる可能性も大いにありますので、一時の感情で動くことには注意しましょう。

傷害事件で被疑者となり対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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