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ネットの中傷書き込みで告訴

2020-04-08

ネット中傷書き込み告訴された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、インターネットの掲示板に、「X社の社長Vは、昔やくざをしていた。今もやくざ関係者とつながっていて、表は貿易会社だが、裏では覚せい剤の密輸を行っていて、その利益でX社をやりくりしている。」などとX社や社長の実名を挙げて書き込みをしました。
この掲示板は誰でも閲覧可能なものでした。
ある日、会社に書き込みについての問い合わせがきたことで事件が発覚し、社長はすぐに兵庫県丹波警察署に相談しました。
後日、兵庫県丹波警察署は、Aさんに連絡し、ネット中傷書き込みの件で任意出頭するよう要請しました。
Aさんは、X社の元社員で、それを知った社長は激怒し、告訴をしたということです。
Aさんは出頭する前に、自分がどのような罪に問われるのか、どのように対応すべきかを弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

他人をインターネットで誹謗中傷した場合

インターネットの掲示板などに、他人を誹謗中傷する内容が書き込まれることがあります。
インターネットの掲示板は、基本的に誰でも閲覧することができますので、不特定または多数人が閲覧できる状態にあると言えます。
このような場合、名誉毀損罪あるいは侮辱罪が成立する可能性があります。

名誉毀損罪とは

名誉毀損罪は、刑法230条に規定されています。

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

名誉毀損罪の客体は、「人の名誉」です。
「人」には、自然人だけでなく、法人や法人格のない団体も含まれます。
「名誉」というのは、「人に対する社会一般の評価」を意味します。(大判昭8・9・6)
名誉には、人の倫理的価値、政治的・学問的・芸術的能力、容貌、健康、身分、家柄など、およそ社会において価値があるとされるものが含まれますが、人の経済的な支払能力に対する評価は、名誉毀損罪の「名誉」には当たらず、信用棄損罪の客体に当たります。(大判大5・6・26)

名誉毀損罪の行為は、「公然と事実を適示し」て「人の名誉を毀損」することです。
「公然」とは、不特定または多数人の認識し得る状態をいいます。
「不特定」は、相手方が特殊な関係によって限定されたものでないことをいい、限定された数名の者にたいしてであっても、その場所の通行や出入りが自由であって、その数名はたまたま居合わせたにすぎない場合は「不特定」に当たります。(大判大6・10・19)
また、「多数人」は、数字によって何人以上と限定することはできないが、単に数名では足りず、相当の員数であることを要します。
「公然」には、適示する相手方は、特定かつ少数であったとしても、伝播して不特定多数人が認識できるようになる場合も含まれます。

適示される「事実」は、人の社会的評価を害するに足りる事実でなければなりません。
人の社会的評価を害するか否かは、相手方の有する名誉によって相対的に決まるとされています。
例えば、医者でない者に「藪医者」といっても名誉毀損にはなりません。
また、適示される事実が、真実か否か、公知か否か、過去のものか否かは問われません。
「適示」とは、「具体的に人の社会的評価を低下させるにたりる事実を示す」ことをいいます。
その方法や手段に制限はありません。

また、「名誉を毀損」するとは、人の社会的評価を低下させるおそれのある状態を作ることをいい、現実に社会的地位が傷つけられたことまでは必要とされません。(大判昭13・2・28)

以上の構成要件に該当し、かつ、公然と事実を適示して人の名誉を毀損することの認識・認容がある場合に、名誉毀損罪が成立することになります。

侮辱罪とは

一方、ネット中傷書き込みが、名誉毀損罪ではなく侮辱罪に当たることもあります。

第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

侮辱罪の客体は、名誉毀損罪のそれと同じく、「人の名誉」です。
本罪の行為は、「公然と人を侮辱する」ことです。
「侮辱」とは、他人の人格を蔑視する価値判断を表示することをいいます。
名誉毀損罪のように、具体的な事実を適示する必要はなく、人の社会的評価を低下させるような抽象的判断、批判を表現することが求められます。(大判大15・7・5)

公然と人の社会的評価を低下させ得ることを示す点で、名誉毀損罪と侮辱罪は共通しています。
しかし、具体的な事実を示す場合には名誉毀損罪に、具体的な事実に至らない抽象的な評価などを示す場合が侮辱罪に該当することになります。

上のケースを検討した場合、Aさんは、「X社の社長Vは、昔やくざをしていた。今もやくざ関係者とつながっていて、表は貿易会社だが、裏では覚せい剤の密輸を行っていて、その利益でX社をやりくりしている。」などとネットの掲示板に書き込んでいますので、適示した事実は、具体的な事実であると言えるでしょう。

名誉毀損罪と侮辱罪は、法定刑や刑事手続に大きな違いがありますので、その区別は重要だと言えるでしょう。
また、どちらの罪も告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪ですので、事件を穏便に解決するには、被害者と示談を成立させる必要があります。

名誉毀損罪や侮辱罪を含めた刑事事件・少年事件を起こし、対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

特殊詐欺の受け子~詐欺罪と窃盗罪~

2020-04-07

特殊詐欺受け子を行い、詐欺罪または窃盗罪で問われる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
先輩から「高額バイトがあるから、やってみないか?」と誘われて、特殊詐欺受け子をやることになったAくん(18歳)は、ある日、指示役から兵庫県芦屋市にある民家に行くように言われました。
警察官と名乗り、高齢女性からキャッシュカードが入った封筒を受け取ったAさんは、女性が電話に対応している間に、持参した封筒とすり替えて戻ってきた女性に封筒を渡しました。
Aさんは、女性宅を出た後、指示された銀行のATMで受け取ったキャッシュカードを使って現金50万円を引き出しました。
50万円のうち5万円を報酬として受け取り、残りは指定されたコインロッカーに入れました。
後日、兵庫県芦屋警察署の警察官がAさん宅を訪れ、窃盗の容疑でAさんを逮捕しました。
(フィクションです)

特殊詐欺の受け子

特殊詐欺と言えば、少し前には、「オレオレ詐欺」が代表的なものでした。
突然、電話がかかってきた、「オレ、オレだよ。」と切り出し、電話に対応した家族の息子からの電話であるかのように装い、「交通事故を起こしたから、示談金が必要。」だとか、「会社のお金を横領したから、返済にお金が必要。」などと言って、相手からお金を騙し取ろうとする手口です。
要求した金の受領方法は、振込先を指定して振り込ませるやり方から、郵便で指定した住所へ送らせるものまで広範囲に及びます。
しかし、警察の取り締まりが厳しくなるにつれて、特殊詐欺の手口は巧妙化・多様化しています。
最近では、銀行員、警察官、弁護士などを語り、「あなたの口座が特殊詐欺グループに不正に使用されている。停止するために、キャッシュカードと暗証番号が必要。今から自宅に行くので対応してほしい。」などと言って、相手からキャッシュカードを騙し取るやり口が横行しています。
キャッシュカードを騙し取る方法も、キャッシュカードを相手から受け取る方法から、キャッシュカードを封筒に入れさせ、確認すると受け取り、電話か何かに相手が対応している隙に、事前に用意しておいた別の封筒と入れ替え、別の封筒を相手に渡し、キャッシュカードを取得する方法へと移行してきているようです。
どちらの方法も、相手に自分は銀行員・警察官・弁護士だと偽り、嘘の理由でやってきたと信じ込ませている分には変わりありませんが、キャッシュカードを取得した方法が異なるため、成立し得る犯罪も変わってくるのです。

(1)詐欺罪

人を欺いて財物を交付させた場合、詐欺罪が成立します。
「人を欺いて財物を交付させる」という行為であるためには、①相手を騙し、②相手が騙されて嘘を本当のことと信じ、③相手が行為者に財物を渡し、④行為者側が財物を入手する、といった一連の流れが必要となります。
この①欺罔→②錯誤→③財産的処分行為→④財物の交付という行為の流れをとることが、詐欺罪の本質であり、特に③財産的処分行為は、窃盗罪との区別において重要です。
財産的処分行為が成立するためには、財産を処分する事実と処分する意思が必要です。
なので、自分の行動の意味が分かっていない幼児や精神障害者を騙して、その財物を取得したとしても、幼児や精神障害者に財物を処分する意思が認められないので、財産的処分行為がなく、その財物の取得は詐欺罪ではなく窃盗罪となります。

(2)窃盗罪

窃盗罪は、他人の財物を窃取する犯罪です。
「窃取」というのは、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
さきほど述べたように、詐欺罪の成立に重要なポイントである「相手の財産的処分行為」は、相手が財物を処分する事実と処分する意思が含まれます。
ですので、相手が自分の意思で財物を処分するということが詐欺罪では必要になるのに対して、窃盗罪においては、財物の占有者の意思に反して、その財物を自分(または第三者)の物にすることが求められますので、財物の占有を相手(被害者)から自分や第三者に移転させるという点では共通していますが、その移転が財物の占有者の意思に反していたか否かが異なります。

特殊詐欺受け子の件について検討しますと、被害者に対して嘘の話をして、被害者が自分の口座が悪用されているから、自分の財産を守るためにも、自宅にやってきた者(つまり、受け子)にキャッシュカードを渡さなければならないと信じ込ませ、キャッシュカードを自ら受け子に渡しています。
例えば、被害者がキャッシュカードを銀行員と称する受け子に渡したら、後日新しいキャッシュカードが郵送されてくると信じて、当該キャッシュカードを受け子に渡したのであれば、「錯誤に基づく被害者の財産的処分行為がある」ということになります。
さらに言えば、特殊詐欺グループが被害者に対してついた嘘の内容が、財産的処分行為に向けられたものであった、ということになります。
よって、この場合は、詐欺罪が成立すると考えられます。

一方、被害者が受け子にキャッシュカードを確認させるためだけに、封筒に入れたキャッシュカードを受け子に渡したのですが、共犯者と共謀し、共犯者がタイミングよく被害者に電話をし、電話に応対するために被害者が席を外した隙をみて、事前に用意した他のカードなどが入った封筒と入れ替え、その封筒を被害者に返し、キャッシュカードを入手する行為については、先ほどのケースとは異なります。
なぜなら、特殊詐欺グループは、キャッシュカードを他の物とすり替えるために、被害者の隙をつくるために嘘の電話をかけたのですから、その嘘は、被害者の財産的処分行為(キャッシュカードを受け子に渡す行為)に向けられたものではないからです。
そのため、被害者は自分の意思でキャッシュカードを受け子に渡したのではなく、その意思に反して勝手に持っていかれたことになります。
よって、この場合は、窃盗罪が成立することになるでしょう。

特殊詐欺事件は、組織犯罪であることが多く、また、複数件行っていることが多いため、身体拘束が長期化し、接見禁止に付される可能性が高くなっています。

ご家族が特殊詐欺事件で逮捕されたのであれば、今すぐ刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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近隣トラブルで刑事事件に

2020-04-06

近隣トラブル刑事事件に発展する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県宝塚市に住むVさん家族は、1年前に引っ越してきました。
道を挟んだ向かいにあるAさんとも、良好な関係にありました。
しかし、子供がまだ小さいVさんの妻が、町内のイベントの準備に積極的に参加しないことに腹を立てたAさんは、Vさん宅の玄関前で、嫌味を言うようになりました。
最初は嫌味だけでしたが、だんだんとVさん家族の人格を否定するような内容の暴言を吐くようになり、Vさんの妻は怖くて家から出るのもためらうようになりました。
さすがに困ったVさんは、市役所に相談しました。
市役所からAさんに連絡が行った後も、Aさんの嫌がらせ行為は続き、とうとうVさん家族は兵庫県宝塚警察署に相談することにしました。
(フィクションです)

近隣トラブルから刑事事件に発展するのか?

刑事事件というと、殺人や傷害、性犯罪に窃盗などといった犯罪をイメージされる方が多いのではないでしょうか。
刑事事件となると、警察が動き出して大事になる。
犯人は逮捕され、裁判にかけられて刑務所に入る。
そのようなイメージからすると、近隣トラブルのような揉め事には警察は介入しないのではないか。

実は、そうでもありません。
一昔前までは、家庭内トラブルや近隣トラブルといった問題には、警察は積極的に介入しようとはしなかったと言われていますが、トラブルの内容によっては刑事事件として立件することもあり、隣人トラブルから刑事事件に発展するケースは少なくありません。
近隣トラブルで多いのが、隣人からの執拗な嫌がらせ行為です。
何らかの出来事がきっかけとなり、隣人からの嫌がらせを受けているケースが多く、嫌がらせを回避するために荷物をまとめて出ていくなんてことが気軽にはできるものではありませんので、被害者は長年に渡って嫌がらせ行為に悩まされ続けていることがよく見受けられます。

このような隣人からの嫌がらせ行為は、迷惑防止条例違反に該当する可能性があります。

迷惑防止条例は、各都道府県により制定されているもので、兵庫県には、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」と題する条例があります。
この条例の第10条の2は、嫌がらせ行為の禁止について定めています。

正当な理由なく、特定の者に対して、執拗に又は反復して「嫌がらせ行為」をすることを禁止しています。
ここでいう「嫌がらせ行為には、次の8つの行為が含まれます。

①つきまとい・待ち伏せ・見張り・押し掛け
人の後を尾行する行為、行く先々で待ち伏せをする行為、自宅や勤務先などで見張る行為、自宅や勤務先などに押し掛ける行為。

②監視していると告げる行為
帰宅直後に「おかえり」などと電話やメールをする行為、その日の行動や服装などを電話やメールで告げる行為。

③面会などの要求
面会などの義務のないことを行うよう要求する行為。

④乱暴な言動
著しく粗野・乱暴な言動をすること。

⑤無言電話、電子メールなどの送付
無言電話や意味不明な声を上げるだけの電話、拒否しているにもかかわらず電話・メールなどを送る行為。

⑥汚物などの送付
汚物、動物の死体、その他の著しく不快・嫌悪の情を催させるような物を送付したり、その知り得る状態に置くこと。

⑦名誉を害する行為
名誉を傷つけるような内容を告げたり、文書などを届けたりする行為、名誉を傷つけるような文章をネットに掲載して伝えようとする行為など。

⑧性的羞恥心を害する行為
性的羞恥心を害する事項を告げたり、その知り得る状態に置いたり、その性的羞恥心を害する文書・図画その他の物を送付、またはその知り得る状態に置くこと。

上のケースでは、AさんがVさん宅の玄関前で暴言を吐くという行為を繰り返しています。
Aさんの行為は、④の嫌がらせ行為、内容によっては、⑦や⑧にも当たる可能性があります。
④の「著しく粗野又は乱暴な言動」というのは、場所柄や一般に期待される礼儀をわきまえないぶしつけな言動や動作または不当にあらあらしい言語動作であって、刑法の暴行や脅迫などに至らない程度のものをいいます。
大声で「バカ」「くそ」などの粗野な言葉を浴びせる行為、家の前で大声を出したり、車のクラクションをうるさく鳴らす行為等が該当します。

このような「嫌がらせ行為」は、ストーカー規制法における「つきまとい等」と類似していますが、「つきまとい等」は、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」をもって行われる必要があります。
迷惑防止条例の「嫌がらせ行為」は、そのような恋愛感情目的がなく、特定の人に対して、執拗・反復して問題の行為を行うことで足ります。

嫌がらせ行為を行い迷惑防止条例に違反した場合、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

このように、迷惑防止条例違反に当たる場合、近隣トラブルから刑事事件に発展する可能性はあります。
迷惑防止条例違反で刑事事件の被疑者となり対応にお困りであれば、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に一度ご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

示談成立で起訴猶予獲得

2020-04-05

示談起訴猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県神戸市北区の路上で、タクシー運転手に暴力を振るって怪我を負わせたとして、会社員のAさんが、兵庫県神戸北警察署に傷害の容疑で逮捕されました。
Aさんは、当時酒にかなり酔っていたようで、タクシー代金を巡って言い争いになり、Aさんが運転手に手を出したとのことですが、Aさんは酔っていて記憶がありません。
しかし、車内のレコーダーの映像からもAさんの犯行は確認されており、Aさんも容疑を認めています。
被害者と早期に示談して不起訴にならないかと、Aさんは弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

起訴猶予とは

被害者や目撃者などからの通報を受けた警察は、刑事事件として捜査を開始します。
身体拘束が必要な場合には、犯人を逮捕することもあります。
警察は、捜査を一通り済ませると、事件を検察に送ります。
これを「送致」といいます。
犯人が逮捕されている場合では、逮捕から48時間以内に送致するか、犯人を釈放するかを決めなければなりません。
警察からの送致を受けた検察官は、捜査を遂げた後、事件を処理します。
検察官が行う終局的な事件処理には、「起訴処分」、「不起訴処分」、「家庭裁判所送致」があります。
「不起訴処分」というのは、問題の事件について起訴しないとする処分のことです。
起訴するかどうかは、検察官が決めることになっています。

不起訴処分には、不起訴とする理由により様々なものがありますが、主な4つを以下でご紹介します。

①嫌疑なし
被疑者が犯人でないことが明らかなとき、または、犯罪を認定する証拠がないことが明らかな場合には、「嫌疑なし」として不起訴処分となります。

②嫌疑不十分
犯罪が立証するだけの証拠が不十分なため、起訴したとしても有罪となる可能性が低い場合には、「嫌疑不十分」で不起訴処分となります。

③起訴猶予
犯罪を証明する証拠は十分にあり、起訴すれば有罪となる可能性は高いけれど、犯罪の重さや被害者の処罰感情、更生の見込みなど、様々な事情を考慮して、今回は起訴しないとする場合です。
不起訴処分となる多くが、起訴猶予だと言われています。

④親告罪の告訴取消し
告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪について、告訴が取り消された場合には、不起訴処分となります。

示談とは

示談」というのは、刑事事件の文脈においては、加害者が被害者に対して一定の賠償金を支払う代わりに、被害者が被害届を提出しないなど、当事者間で今回の事件は解決したとする約束のことです。
示談が成立したことによる処分への影響ですが、③の起訴猶予でも述べたように、検察官が処分を決める上で考慮する事情に、被害者の処罰感情があります。
示談が成立しており、被害者が加害者に対して刑事罰を望まない場合には、検察官もそれを考慮し起訴猶予とする場合があります。
もちろん、親告罪ではないのであれば、告訴がなくても公訴を提起することはできますが、その他の事情も考慮した上で、検察官が不起訴処分とする可能性は高いでしょう。

つまり、被害者との間で示談を成立させることができれば、起訴猶予となる可能性を高めることができるということです。
そのため、被害者がいる事件では、被害者との示談交渉が不起訴処分を獲得するための重要な弁護活動のひとつと言えます。

被害者との示談交渉は、弁護士を介して行うのが一般的です。
それは、被害者と加害者がもともと知り合いだった場合を除けば、警察や検察などを通じて相手方の連絡先を教えてもらうことになりますが、加害者が直接被害者と連絡をとり、被害者に供述を変えるように迫るなどの行為に及ぶことをおそれ、捜査機関から被害者の連絡先を教えてもらうことはあまりありません。
仮に、教えてもらうことができたとしても、被害者が恐怖や嫌悪感から加害者と直接連絡をとることを嫌がったり、感情論的になり交渉が難航することがあります。
ですので、代理人である弁護士は、弁護人限りで連絡先を教えてもらうといった被害者に配慮した連絡方法を提案したり、加害者の謝罪の気持ちや示談の意向を冷静に伝えた上で、示談のメリットデメリットを丁寧に説明するなど、被害者の気持ちに寄り添いながら粘り強く示談交渉を行うことが期待されます。

被害者との示談交渉は、刑事事件に精通する弁護士に任せるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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量刑不当で控訴

2020-04-04

量刑不当を理由とした控訴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
傷害罪で神戸地方検察庁に起訴されたAさんに対して、4月4日、神戸地方裁判所は懲役5年の有罪判決を言い渡しました。
Aさんは、判決を量刑不当を理由に控訴するつもりですが、第一審の弁護人に控訴審もお願いするのか、刑事事件を専門とする弁護士に控訴審の弁護人をお願いすべきか悩んでいます。
(フィクションです)

控訴とは

裁判官といえども、人間である以上、裁判の内容に誤りがあったり、手続上の違法があったりする可能性も否定できません。
そのため、そのような誤りを是正する手段を講じる必要があります。
そのような手段の一つに、「上訴」があります。
「上訴」というのは、裁判を受けて不利益を被る者が、その裁判が確定してしまう前に、上級の裁判所に不服を申し立て、原裁判の変更や取消しを求めることです。

裁判に対する不服申立という点で、身柄解放活動として行う勾留に対する準抗告のような「準抗告」とも共通しますが、「上訴」は「上級の裁判所」に対する不服申立であるのに対して、「準抗告」は、「上級の裁判所」ではなく、「原裁判所とは違う裁判所」に対して行う点で異なります。

「上訴」のうち、第一審判決を不服として高等裁判所へ不服申立を行うものを「控訴」といいます。
控訴の申立てをすることができるのは、第一審判決を受けた当事者である検察官と被告人です。
他にも、被告人の法定代理人や保佐人、第一審の代理人や弁護人は、被告人のために控訴を行うことができます。
検察官は、不当と判断した全ての判決について控訴することができますが、被告人は、自己に利益な内容を主張して申し立てなければなりません。
つまり、原判決よりも重い刑を主張して控訴を申し立てることはできないのです。

控訴ができるのは、第一審判決が宣告された日から14日以内です。
上のケースであれば、4月4日に判決が言い渡されていますので、翌日の5日から数えて14日目である18日までであれば、控訴を申し立てることができます。

控訴が申立てられると、原判決の確定は阻止され、その執行は停止されます。
そして、事件は控訴審に係属します。

控訴を申立てると、定められた期限内に、控訴趣意書を控訴裁判所に提出しなければなりません。
控訴趣意書」とは、控訴の理由を簡潔に明示した書面です。
控訴審は、書面審理であるため、この控訴趣意書が審理を決する重要な要素となります。
控訴理由は刑事訴訟法377条以下に定められており、法定の控訴理由を主張しなかった場合、決定で控訴が棄却されます。

控訴理由

(1)訴訟手続の法令違反

刑事訴訟法277条および378条に列挙されている訴訟手続の法令違反については、原判決への影響の有無を問わず控訴の理由となります。
このような控訴理由を「絶対的控訴理由」と呼びます。
それ以外の訴訟手続の法令違反は、判決に影響を及ぼすことが明らかであるときに控訴の理由とすることができます。
絶対的控訴理由に対して、後者は「相対的控訴理由」と呼ばれます。

(2)法令適用の誤り

認定された事実に対する実体法の適用を誤った場合、法令適用の誤りに該当します。
認定された事実に対して、適用すべき法令を適用しなかった場合、適用すべきてはない法令を適用した場合、法令の解釈を誤って適用した場合などです。
認定された事実に対する実体法の適用を誤ったことに加えて、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかである場合に、控訴の理由とすることができます。

(3)刑の量刑不当

処断刑の範囲内での刑の量定が不当であることを理由に控訴することができます。
情状事実の誤認や評価の誤りといった裁量的加重減免、酌量減軽、刑種の選択や刑期の長短、刑の執行猶予、罰金の換刑処分、選挙権・被選挙権の停止・不停止等も量刑問題となります。

(4)事実の誤認

原判決の事実認定が論理即、経験則等に照らして不合理である場合であり、その誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであるときに、控訴の理由とすることができます。

(3)量刑不当、および、(4)事実の誤認を控訴理由として申し立てる場合、第一審の訴訟記録および証拠に現れている事実に加えて、一定の限度で控訴審での新証拠に基づく事実を主張することができます。
やむを得ない事由によって第一審の弁論終結前に取調を請求することができなかった証拠によって証明することのできる事実、あるいは、第一審の弁論取穴後判決前に生じた事実であり、量刑不当または事実誤認の控訴理由がある場合には、訴訟記録および原裁判所において取り調べた証拠に現れている事実以外の事実であっても、控訴趣意書に援用することができます。
量刑不当を主張する場合、原判決後に被害者との示談が成立したことは、被告人の有利に働きます。

単に、第一審で主張した事情を繰り返すことでは意味がありません。
量刑相場との対比、余罪の評価が適切であるか、前提事実に誤認がないか、原審の事情で正当に評価されなかったものはないか、被告人に有利となる弁論終結後の事情はないか、など注意深く検討する必要があります。

刑事裁判、控訴についてお悩みであれば、一度刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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少年交通事件で弁護士に相談

2020-04-03

少年交通事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
深夜、赤信号にもかかわらず兵庫県三田市の交差点に侵入したとして、兵庫県三田警察署の警察官に停止を求められたAくん(15歳)。
警察官に運転免許証の提示を求められましたが、Aくんは「持っていません。」と正直に無免許運転であることを告げました。
Aくんは、道路交通法違反の容疑で現行犯逮捕されましたが、Aくんの両親が身元引受人として警察署に迎えに来て釈放されました。
Aくんと両親は、この先どのような流れとなるのか不安です。
(フィクションです)

少年交通事件について

少年交通事件は、少年による危険運転致死傷、過失運転致死傷、重過失致死傷、道路交通法違反事件などの交通関係事件のことです。
このような少年交通事件のうち、道路交通法違反事件については、成人の場合と同じく、交通反則通告制度が存在します。
交通反則通告制度というのは、自動車、原動機付自転車等の運転者の違反行為のうち、無免許運転や飲酒運転等の悪質な違反を除く、比較的軽微な違反について、交通事故を起こしていないなどの一定の条件を満たす場合にとられる制度で、反則金を納付することで、事件を終了させ、家庭裁判所の審判に付されることがなくなります。
交通反則通告制度の対象となる交通事件は、速度超過(一般道においては時速30キロ未満、高速道路においては時速40キロ未満の超過に限る)、信号無視や駐停車違反などです。

しかし、無免許運転、酒気帯び運転、速度超過、共同危険行為などの事件は、反則通告制度の対象とはならず、家庭裁判所に送致されることになります。

少年交通事件の審判手続の特徴

事件が家庭裁判所に送致されると、通常の事件と同様に、調査官による調査が行われます。
調査の一環として、少年交通事件では、家庭裁判所は、少年に対して集団での交通講習を実施することがあります。
個通安全に関する講義や講話、ビデオの視聴、保護者参加の討論会などが実施されます。
この集団講習への少年の取込む姿勢は、少年に対する処遇を決める上での判断材料となります。
調査の結果、審判を開始するか否かが決定され、審判開始決定がなされると、審判を経て、不処分・保護処分・検察官送致等の処分がなされます。

少年交通事件では、非行内容や要保護性の共通点、予想される処分に鑑みて、複数の少年が集団で審判を受ける集団審判が行われることがあります。
集団審判では、通常の審判とは異なり、個別事件の審理はほとんど行われず、事件類型に合わせた裁判官による訓戒が審判の中心となります。
しかし、個別に主張がある場合、重大な結果を生じさせた事件、否認事件などは、個別に審理されます。

少年交通事件の処分

(1)交通保護観察

交通事件における保護観察は、「交通保護観察」と「交通短期保護観察」とがあります。
「交通保護観察」は、交通事件を専門とする保護観察官と交通法規に通じた保護司を指名しるようにしたり、必要な場合には交通法規・運転技術・車両の構造に関する指導をすること、特別遵守事項に保護観察所長の定める交通に関する学習をすること等を定めること、保護観察官の直接担当や集団処遇の併用も考慮すべきこととされています。
「交通短期保護観察」は、一般非行性がない、一般非行性が深くない、交通関係の非行性が固定化していない、資質に著しい偏りがない、対人関係に問題がない、集団処遇への参加が期待できる、保護環境が特に不良でない、改善更生のために特に必要と認められる事項がなく特別遵守事項を定めない少年に対してとられる処分です。

(2)検察官送致

少年交通事件のうち重大な結果が生じた事件で、少年の年齢が高い場合には、刑事処分相当として検察官送致となるケースが少なくありません。

以上のように、少年交通事件では、通常の少年事件と異なる点もありますが、少年の更生に向けた活動は、他の少年事件と共通することが多くあります。
特に、環境調整においては、保護者と協力して家庭環境を改善することや、非行に走るようになった原因である交遊関係の見直しなど、少年が再び非行を犯さないように少年の周囲の環境を整えることが重要です。

少年事件では、事件内容の軽重だけでなく、少年の更生可能性も重要なポイントとなりますので、少年事件に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
お子様が交通事件を起こして対応にお悩みであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

少年事件と検察官送致

2020-04-02

検察官送致について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県加古川市に住むAくん(18歳)は、高性能爆薬を製造したなどとして、爆発物取締罰則違反などの非行内容で神戸家庭裁判所姫路支部に送致されました。
神戸家庭裁判所姫路支部は、刑事処分が相当として、検察官送致する決定を出しました。
AくんとAくんの家族は、今後どのように対応すべきか困っています。
(フィクションです)

検察官送致について

少年の被疑事件は、原則すべての事件が家庭裁判所に送致されることになっています。
これを「全件送致主義」といいます。
しかし、家庭裁判所での審判までに少年が既に20歳に達していることが判明した場合や、家庭裁判所が刑事処分相当だと判断した場合には、家庭裁判所は事件を検察官に送致し、刑事手続に付すことになります。
これを「検察官送致」と呼んでいます。

家庭裁判所が検察官に送致するのは、次の3つの場合です。
(1)少年が20歳以上であることが判明したとき
(2)刑事処分が相当であると認めるとき
(3)故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって、その罪を犯したときに少年が16歳以上であったとき

(1)年齢超過による検察官送致

家庭裁判所は、調査を行った結果、少年が20歳以上であることが判明したときは、審判が開けないので、検察官送致を決定しなければなりません。
年齢の基準は、行為時ではなく、調査・審判時です。
家庭裁判所に送致されたときには20歳にはなっていなくても、審判が開かれるころには20歳になっている可能性がある少年(「年齢切迫少年」といいます。)については、審判までに20歳に達した場合、自動的に検察官送致となってしまうので、対応に注意が必要です。

(2)刑事処分相当による検察官送致

家庭裁判所は、死刑、懲役または禁錮に当たる罪の事件について、調査を行った結果、「罪質及び情状に照らして」刑事処分を相当と認めるときは、検察官送致を決定しなければなりません。

「刑事処分を相当と認めるとき」とは、保護処分では少年の矯正の見込みがないと判断される場合をいいますが、その他にも、事案の重大性、悪質性、社会に与える影響、被害感情なども考慮し、保護処分に振ることが社会的に許容されない場合も、刑事処分相当の場合に含むとされます。

実務においては、保護処分が不相当な場合だけでなく、交通事件等で罰金刑が見込まれる事件のように、刑事処分の方が有効な処遇であるといえる場合にも、検察官送致が行われています。

(3)原則検察官送致

殺人などの重大事件について、原則として検察官送致を行うことを義務付ける規定が、平成12年の少年法改正により新たに設けられました。
行為時に16歳以上の少年が、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件については、家庭裁判所は、原則として、検察官送致の決定をしなければなりません。
ただし、調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、検察官に送致せずに保護処分を選択することができます。

検察官送致になった場合

検察官に送致されると、保護処分手続から刑事手続に移行することになります。
嫌疑が存在する限り、成人と同様に起訴され、公判審理を経て、家庭裁判所に再度送致されない限りは、判決により刑罰が科されることになります。
刑事手続に付されると、被告人として再び勾留されることになります。
判決までの間、保釈の可能性はありますが、拘置所で勾留されることとなります。
また、公判は、少年審判とは異なり、公開で審理されます。
そのため、少年の氏名、容貌、事件の内容などが傍聴人や報道関係者に対して明らかにされることとなります。
公判での審理の結果、有罪となり少年に実刑が科されると、少年は少年刑務所に収容されることとなります。
少年刑務所は、刑罰を執行する行政施設であり、矯正教育施設である少年院とは目的が異なります。
刑罰が必ずしも少年の更生に資するとは限りませんので、少年の成長発達や更生にとっての阻害要因となってしまうおそれがあるでしょう。

このような少年にとっての不利益を考えると、可能な限り検察官送致を回避することが望ましいでしょう。

お子様が事件を起こし対応にお困りであれば、今すぐ刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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児童と性交類似行為に及んだ場合

2020-04-01

児童性交類似行為に及んだ場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース①~
会社員のAさんは、出会い系サイトで知り合った高校生のVさん(16歳)とカラオケに行きました。
Vさんは「家出中なので、しばらく家に泊めてほしい。そうしてくれるなら、口ならいいよ。」と言われ、口淫に及びました。
その後、Aさんは2日間、Vさんを自宅に泊めました。
(フィクションです)

~ケース②~
会社員のAさんは、出会い系サイトで知り合った高校生のVさん(16歳)とカラオケに行きました。
Aさんは、Vさんと話をしているうちに劣情を催し、Vさんに口淫をするように頼むと、Vさんが応じたため、口淫に及びました。
(フィクションです)

児童と性交類似行為に及んだ場合に成立する罪とは?

18歳未満の者(以下、「児童」といいます。)との性交や性交類似行為をする場合、その対価として現金等を渡すケースが少なくありません。
対価の提供やその約束がある場合には、児童買春に該当することになります。
しかし、そのような対価がない場合には、各都道府県が規定する条例違反が成立します。

1.児童買春

「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(以下、「児童買春法」といいます。)は、児童買春を禁じ、違反者に対して5年以下の懲役または300万円以下の罰金を科すものとしています。

児童買春法における「児童買春」というのは、児童児童に対する性交等を周旋した者、または児童の保護者に対して、対償を供与し、またはその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等をすることと定義しています。(児童買春法2条2項)

「性交等」には、性交、性交類似行為、自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等を触る若しくは児童に自己の性器等を触らせる行為をいいます。
性交類似行為には、手淫、口淫などが含まれます。

2.兵庫県青少年愛護条例違反

各都道府県において、18歳未満の者とのみだらな性交・性交類似行為を禁止する内容の条例が制定されています。
兵庫県では、「青少年愛護条例」において、その21条は、青少年(=18歳未満の者)とのみだらな性行為等を禁止しています。
青少年との性交等一切を禁止したものではなく、「みだらな」と限定されており、18歳未満の者を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不正な手段により行うものや、単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしかみえないようなものについて禁止しています。
そのため、真摯な交際中の場合、例えば、親公認であったり、性交に至るまで相当の期間があった場合などは、「みだらな」とは言えず、条例違反に当たらないことがあります。

児童買春、条例違反ともに、18歳未満の者に対し、みだらな性交や性交類似行為等を行うことを禁止する点でおおむね共通しています。
両者の違いは、性交等に対する対価を与えたか、もしくは対価を与える約束をしたか否か、です。
対価の供与や対価供与の約束をした場合には、児童買春にあたることになりますが、「対価」とはどういったものをいうのでしょうか。

「対価」は、児童に対して性交等をすることに対する反対給付としての経済的利益を供与する、又は、その約束をすることです。
現金を渡すほかにも、食事を御馳走することや、プレゼントを渡すこと、親の雇用を約束することなどが対価に当たります。

ケース①の場合、Vさんを自宅に泊める代わりに口淫していますし、行為後、実際にVさんを自宅に泊めています。
自宅に泊めることも、口淫したことへの反対給付としての経済的利益の供与に当たります。
よって、Aさんは、児童買春の罪責を負うものと考えられます。

一方、ケース②では、出会い系サイトで知り合ったVさんと、交際も経ずに性交類似行為を行っています。
よって、Aさんは、条例違反の罪責を負うことになります。

どちらのケースも、AさんがVさんを18歳未満だと分かっていながら行為に及んだことが前提です。
Vさんが、偽造の免許証を提示するなど、年齢を18歳以上と偽っており、Aさんも誤信したことに過失がない場合は、犯罪が成立しないことになります。
ただし、「相手が18歳以上と言ったから信じた」というだけでは足らず、身分証明書を見せてもらうなどして相手の年齢を確認する必要があります。

このように、児童性交類似行為に及んだ場合には犯罪が成立する可能性があります。

児童買春事件や条例違反事件でお困りの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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喧嘩で刑事事件に~犯罪の成立:違法性阻却事由~

2020-03-31

構成要件該当性が肯定された後に問題となる第2の犯罪成立要である違法性(違法性阻却事由)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
仲間内の揉め事が原因で、AさんとVさんとの間で激しい言い争いに発展しました。
次第に、二人は殴り合いの喧嘩に発展しました。
見かねた周囲の人間が二人の間に入り、二人を引き離し、いったん殴り合いは納まりました。
しかし、怒りが納まらないVさんは、なおもAさんに対して執拗に殴り続けてきたため、Aさんは反撃に一発Vさんの顔を殴りました。
すると、Vさんは地面に倒れ動かなくなりました。
すぐに救急車を呼び、Vさんは病院に搬送されましたが、意識不明の重体となっています。
駆け付けた兵庫県西脇警察署の警察官は、Aさんや目撃者らから事情を聞いています。
Aさんは、「Vが喧嘩続けてきたから反撃しただけ。正当防衛になりませんか。」と話しています。
(フィクションです)

犯罪が成立するためには

犯罪は、法律の条文に該当し(これを「構成要件該当性」といいます。)、社会的に許されず(「違法性」)、社会的に非難される(「有責」)行為です。
犯罪が成立するか否かを判断するにあたっては、①構成要件に該当するかどうか、②違法であるかどうか、③有責であるかどうか、と順に検討していく必要があります。

前回のブログでは、構成要件該当性について検討しました。
構成要件に該当するのであれば、次に、違法性や責任を否定する何か特別の事情があるか否かについて検討することになります。

構成要件に該当する行為が認められると、違法性を有することも推定されますが、具体的な事情を検討すると、違法性を欠く場合があり、違法性が阻却される事由があるか否かを検討することとなります。

2.違法性について

「違法性」というのは、形式的には、問題となる行為が法規範に反することをいいます。
構成要件は違法行為類型であると理解する限り、構成要件に該当する行為は、原則として違法であることになります。
しかし、この原則の例外となる特別の事情がある場合には、その違法性が否定され、犯罪は成立しないことになります。
そのような違法性を失わせる特段の事情を「違法性阻却事由」といいます。

違法性阻却事由として刑法に規定されているものとしては、「正当行為」、「正当防衛」、「緊急避難」があります。
ここでは、正当防衛についてみていきましょう。

違法性阻却事由:正当防衛とは

「正当防衛」とは、(1)急迫不正の侵害に対して、(2)自己又は他人の権利を防衛するため、(3)やむを得ずにした行為、のことをいいます。

(1)急迫不正の侵害

①急迫性
侵害は、「急迫」したものでなければなりません。
「急迫」とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味します。
すでに侵害が終了しているときは、その直後であっても急迫性は認められませんが、一旦法益が侵害されても、新たな侵害がさらに加えられる状況があれば、侵害の急迫性を肯定することができます。
また、侵害が予期されたものであった場合でも、判例は、侵害の急迫性は直ちに失われるものではないとする立場をとっています。(最判昭46・11・16)
しかしながら、予期された侵害の機会を利用し、積極的に相手方に対して加害行為を加える意思で侵害に臨んだときには、侵害の急迫性の要件は充たされないとしています。

②不正
「不正」は、違法であることを意味します。
侵害者の行為は有責である必要はなく、構成要件該当行為である必要もないとされています。
要保護性を備えた利益に対する侵害であれば足りると解されます。

(2)自己又は他人の権利の防衛

正当防衛は、「自己又は他人の権利」を「防衛」するために認められます。
正当防衛として許されるのは、侵害者の法益を侵害する場合に限られます。
正当防衛は、防衛行為でなければなりません。
防衛行為といえるためには、客観的に防衛行為としての性質を有していることに加えて、防衛の意思でその行為がなされることが必要となります。
判例は、防衛意思の内容について、相手の加害行為に対し憤慨・逆上して反撃をしたからといって、直ちに防衛の意思を欠くものではなく(最判昭11・12・7)、攻撃の意思が併存していても防衛の意思は認められる(最判昭50・11・28)と、防衛の意思についての解釈を示しています。
しかしながら、攻撃を受けたのに乗じ積極的な加害行為にでたなどの特別な事情がある場合には防衛の意思が否定され(最判昭46・11・16)、防衛の名を借りて侵害者に対し積極的に攻撃を加える行為は防衛の意思を欠く(最判昭50・11・28)、としています。

(3)やむを得ずにした行為

正当防衛として違法性が阻却されるためには、防衛するために「やむを得ずにした行為」であることが必要です。
正当防衛の成立要件として、①必要性と②相当性の両方を必要とされます。

①必要性
「やむを得ずにした行為」というためには、必ずしもその行為が唯一の方法である必要はなく、また、厳格な法益の権衡も要求されませんが、少なくとも相手方に最小の損害を与える方法を選ぶことを要するものと理解されています。

②相当性
許容される防衛行為には限度があり、防衛行為としてどのような手段がとられたのかという点に着目して、その相当性が判断されます。

喧嘩闘争における正当防衛について

さて、喧嘩においても正当防衛が成立し得るのでしょうか。
喧嘩が発展し、双方が、攻撃や防御を繰り返す連続的行為となった場合、「喧嘩両成敗」として正当防衛は成立しません。
しかし、攻撃や防御を繰り返す連続的行為が崩れた場合、例えば、当初は素手で喧嘩していた相手方が、急に刃物を持ち出して攻撃したことに対して反撃した場合や、けんかが一旦収まったにもかかわらず、相手方がなおも攻撃を続けてきたことに対して反撃した場合などは、正当防衛が成立する余地があるとされます。
喧嘩の一部分だけを切り取って判断するのではなく、一連の事態を全体的に観察し正当防衛が成立する余地があるか否かが判断されるのです。

上のケースでは、いったん喧嘩が収まったにもかかわらず、Vさんが再度Aさんを執拗に殴り始めたため、これに反撃するためにAさんがVさんを殴った、というものです。
喧嘩が一度収まっているところ、攻撃と防御の連続的行為が崩れたとみて、さらにAさんの加害行為が急迫不正の侵害に対して、自己の権利を防御するためにやむを得ずにした行為であると判断されれば、Aさんの正当防衛が認められ犯罪は成立しないことになります。

正当防衛が成立する余地があるかについては、事件の内容によりますので、刑事事件に強い弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

傷害事件で被疑者となり対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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喧嘩で刑事事件に~犯罪の成立:構成要件該当性~

2020-03-30

殴り合いの喧嘩犯罪成立する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
仲間内の揉め事が原因で、AさんとVさんとの間で激しい言い争いに発展しました。
次第に、二人は殴り合いの喧嘩に発展しました。
見かねた周囲の人間が二人の間に入り、二人を引き離し、いったん殴り合いは納まりました。
しかし、怒りが納まらないVさんは、なおもAさんに対して執拗に殴り続けてきたため、Aさんは反撃に一発Vさんの顔を殴りました。
すると、Vさんは地面に倒れ動かなくなりました。
すぐに救急車を呼び、Vさんは病院に搬送されましたが、意識不明の重体となっています。
駆け付けた兵庫県西脇警察署の警察官は、Aさんや目撃者らから事情を聞いています。
Aさんは、「Vが喧嘩続けてきたから反撃しただけ。正当防衛になりませんか。」と話しています。
(フィクションです)

犯罪が成立するためには

社会的に許されず、避難されるべき行為は、多々ありますが、その中でも刑罰を加えるとしたものについては、あらかじめ法律の条文という形で私たち国民に提示されています。
芸能人の不倫騒動が、ニュースで大きく取り沙汰されている昨今ですが、不倫自体は社会的に許されず、社会的に避難されるべき行為ではありますが、犯罪ではありません。

犯罪は、法律の条文に該当し(これを「構成要件該当性」といいます。)、社会的に許されず(「違法性」)、社会的に非難される(「有責」)行為です。
犯罪成立するか否かを判断するにあたっては、①構成要件に該当するかどうか、②違法であるかどうか、③有責であるかどうか、と順に検討していく必要があります。

1. 構成要件該当性

構成要件の意義については、様々な見解がありますが、「立法者が犯罪として法律上規定した行為の類型」をいうとするのが基本的な理解となっています。
構成要件は、それを構成する構成要件要素により成り立っています。
構成要件要素は、個別の犯罪ごとに異なりますが、一般的には、①行為の主体、②行為、③結果、④行為と結果との間の因果関係、⑤故意・過失、です。

喧嘩の場面では、通常、暴行罪や傷害罪が成立することが多いでしょう。
喧嘩の末に、相手方が亡くなってしまった場合には、傷害致死罪、場合によっては殺人罪が適用されることがあります。
ここでは、傷害罪の構成要件に該当するか否かを検討します。

傷害罪

傷害罪は、刑法204条に規定されています。

第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

傷害罪は、他人の身体に対する侵害を内容とする犯罪です。
ですので、本罪の客体である「人の身体」は「他人の身体」であるのた、後者自身の身体の傷害は罪とはなりません。

さて、傷害罪の行為は、人の身体を「傷害」することです。
「傷害」というのは、人の生理的機能に障害を加えることです。
傷害は暴行によって生じることが多いのですが、暴行によらない傷害もあり、怒号等の嫌がらせによって、不安・抑うつ状態に陥れることも傷害に当たります。
傷害の方法については、有形無形を問いません。

また、傷害罪は故意犯です。
「故意」とは、「罪を犯す意思」のことをいいます。
傷害罪の場合、暴行罪の結果的加重犯の場合も含むと解する立場が通説となっており、傷害罪の故意は暴行の認識があれば足りるとされます。

殴り合いの喧嘩の場合、相手を殴るという暴行を加えていますが、積極的に相手方に怪我を負わせてやろうと思っていないとしても、殴ることで怪我を負っても構わないと思っていたのであれば傷害の故意が認められます。
そもそも、傷害罪の場合には暴行の認識があれば足りますので、相手に手を出していることで傷害の故意が認められます。
上のケースでは、双方が殴り合う喧嘩ですので、両者ともに暴行を加えていますが、AさんがVさんを殴り、そのことが原因で意識障害に陥ったのであれば、Aさんの行為は、傷害罪の構成要件該当することになるでしょう。

構成要件該当するのであれば、次に、違法性や責任を否定する何か特別の事情があるか否かについて検討することになります。

構成要件該当する行為が認められると、違法性を有することも推定されますが、具体的な事情を検討すると、違法性を欠く場合があり、違法性が阻却される事由があるか否かを検討することとなります。

違法性阻却事由として刑法が定めるものに、「正当防衛」があります。
この言葉は、みなさんもご存知だと思います。
次回は、この正当防衛について解説します。

喧嘩から刑事事件に発展することは少なくありません。
目撃者や被害者が警察に通報することで、事件が警察に発覚することが多いようです。
相手が因縁をつけてきたからかっとなって…、相手が手を出してきたから…、など様々な事情がその背景にあることもありますが、喧嘩で相手に怪我を負わせた場合、傷害事件の被疑者となる可能性も大いにありますので、一時の感情で動くことには注意しましょう。

傷害事件で被疑者となり対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

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