Archive for the ‘交通事故’ Category

【解決事例】飲酒運転のひき逃げ事件で起訴 執行猶予を獲得~前編~

2022-05-13

【解決事例】飲酒運転のひき逃げ事件で起訴 執行猶予を獲得~前編~

【解決事例】飲酒運転のひき逃げ事件で起訴されるも執行猶予を獲得した事件の解決事例の前編を、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。


事件の概要

派遣社員のAさん(20代後半)は、前日の夕方から友人とともにお酒を飲んでいました。
そして日が変わってしばらく休んだ後、派遣先の工場に仕事に行くために自分の車を運取運転してしまったのです。
そして兵庫県三木市の信号のない交差点において、横断歩道を歩いていた被害者に気付くのが遅れてしまい、被害者に接触する交通事故を起こしてしまいました。
Aさんは、飲酒運転が警察に発覚するのをおそれ、被害者の救護措置をとらぬままその場から逃走し、工場に出勤したのですが、出勤してまもなくして職場を訪ねて来た兵庫県三木警察署の警察官によって警察署に連行され、逮捕されてしまいました。
被害者は外傷性クモ膜下出血で全治3カ月の重傷を負っており、Aさんは20日間の勾留を受けた後に、道路交通法違反(酒気帯び運転)と過失運転致傷、そしてひき逃げの容疑で起訴されてしまいました。
その後弁護士が保釈を請求したことによって、釈放されたAさんは、刑事裁判で執行猶予を獲得することができました。
(実際に起こった事件を基に、一部変更を加えています。)

酒気帯び運転

Aさんが起訴された罪名を解説します。
まず道路交通法違反の酒気帯び運転から解説します。
道路交通法ではいわゆる飲酒運転を、酒気帯び運転と酒酔い運転に分けて規定しています。
酒気帯び運転とは、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上、または血液1ミリリットル中に0.3mg以上のアルコール濃度を含んだ状態で車両を運転する違反です。
その罰則規定は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
飲酒運転による重大な交通事故が後を絶たないことから、警察は飲酒運転を厳しく取り締まっており、飲酒運転で検挙された場合は、こういった刑事罰だけでなく行政の厳しい罰則を科せられることになります。

過失運転致傷罪

車を運転していて交通事故を起こし、人に怪我をさせると過失運転致傷罪となります。
過失運転致傷罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条に定められている法律です。
過失運転致傷罪で起訴されて有罪が確定すると「7年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金」が科せられるおそれがあります。

どういった刑事罰が科せられるかは、過失の程度や被害者の怪我の程度によって左右されますが、今回の事件のように被害者が全治3カ月の重傷を負っていると、酒気帯び運転やひき逃げといった別の違反がなくても起訴される可能性が非常に高いでしょう。

ひき逃げ

交通人身事故を起こしたにも関わらず、警察や救急に通報することなく逃走すれば、ひき逃げ事件として、過失運転致死傷罪だけでなく道路交通法の

①救護義務違反
②報告義務違反

に抵触する可能性があります。

①救護義務違反
交通事故の加害者だけでなく、被害者にも救護義務があり、救護義務のある者が、救急に通報する等の負傷者の救護を怠った場合「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられるおそれがあります。
ただし、事故の原因となった運転手が救護義務を怠ると、より重い罰則「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科せられるおそれがあるのです。

②報告義務違反
交通事故を起こした運転者は、警察に事故の発生を通報、届け出る事が義務付けられています。
これを怠ると、報告義務違反となり「3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金」が科せられるおそれがあります。

~後編に続く~

【解決事例】盗撮目的で女子更衣室に忍び込み 勾留決定に対する準抗告が認容

2022-04-25

【解決事例】盗撮目的で女子更衣室に忍び込み 勾留決定に対する準抗告が認容

女子更衣室に盗撮目的で忍び込んで逮捕され、建造物侵入罪で勾留決定したが、準抗告が認容されて釈放された事件の解決事例を、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。


事件の概要

兵庫県尼崎市にある会員制スポーツクラブでインストラクターをしているAさんは、女子更衣室を盗撮する目的で、盗撮用のカメラを設置するために女子更衣室に忍び込みましたが、カメラを設置する前に見つかってしまい警察に通報されました。
通報で駆け付けた兵庫県尼崎北警察署の警察官によって建造物侵入罪で逮捕されたAさんは、逮捕の翌日には、検察庁に送致されて、その後、建造物侵入罪で勾留が決定してしまいました。
しかしこの勾留決定に対しての準抗告が認容されたAさんは、早期に釈放されました。
(実際に起こった事件を基に、一部変更を加えています。)

勾留決定に対する準抗告

警察に逮捕されると、逮捕から48時間以内に検察庁に送致されます。
そして送致を受けた検察官が裁判所に勾留を請求し、裁判所が勾留を決定すれば、その日から10日から20日の期間、身体拘束を受けることになります。
実は、この裁判官の勾留決定に対して、弁護士が異議申し立てをすることができます。
この申し立てを「準抗告」と言います。
準抗告は、裁判所に対して書面を提出するかたちで申し立てるのですが、勾留決定に対する準抗告を申し立てると、裁判所は、勾留決定した裁判官以外の3名の裁判官で、再度勾留決定の有無を判断します。
勾留決定に対する準抗告を分かりやすく表現すれば「裁判官の勾留決定の判断が間違っているので再度審査してください。」という趣旨の申し立てになるので、なかなか認められるものではないと思われがちですが、被疑者の生活環境や、ご家族の監視監督体制を整えることによって、認容される可能性も十分にあります。
このコラムをご覧の方で、ご家族、ご友人の勾留が決定してしまったという方は、一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部にご相談ください。

逮捕されている方の早期釈放を求めるのであれば・・・

このコラムをご覧の方で、逮捕等によって警察に身体拘束を受けている方の早期釈放を求めるのであれば、早期に弁護士を選任する必要があります。
よく「刑事弁護活動はスピードが命」と言われますが、遅くなったからといって諦めてはいけません。
今日紹介したような「準抗告」という制度によって裁判官の決定を覆すこともできるので、一度、刑事事件に精通した弁護士に相談することをお勧めします。

兵庫県尼崎市の刑事事件でお困りの方、ご家族、ご友人が勾留されている方は、「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部」にご相談ください。

無料法律相談、身体拘束を受けてる方に弁護士を派遣する初回接見サービスのご予約は

フリーダイヤル0120-631-881(24時間、年中無休)

にて承っております。

【弁護士にインタビュー①】死亡事故で2回目の不起訴が決定

2021-12-02

死亡事故を起こした男性に対して神戸地検が2回目の不起訴を決定した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部の弁護士にインタビューしました。

Q 先生、死亡事故を起こした男性が2回目の不起訴を獲得した事件をご存知ですか?
A 数日前の新聞に掲載されていた事件ですね。
  確か、今年の2月に、神戸市内の路上に寝転がっていた男性が駐車場から出てきた車に轢かれて死亡した事故ですね。
  車を運転していた40代の男性が過失運転致死罪で警察に逮捕されて捜査を受けていましたが、一度は嫌疑不十分を理由に不起訴処分となっ   ていました。
  しかし10月に検察審査会で、不起訴処分は不当だと判断されて再び捜査が行われており、今回はこの再捜査の結果をもって不起訴となったようです。

 

Q どうして不起訴になったのですか?
A 過失運転致死傷罪というのは、自動車等の運転手が必要な注意義務を怠って事故を起こし人を死傷させることによって成立する犯罪です。
  事故を起こして相手を死傷させたからといって、絶対に過失運転致死傷罪に問われるわけではありません。
  十分な安全確認を果たしながら運転していたのに、予期せぬ出来事が原因で起こった事故に関しては、過失運転致傷罪に問われない可能性もあるのです。
  まさに今回の事件は、そういった理由で不起訴になったのではないでしょうか。

 

Q つまり、今回の事故は、十分に注意しながら運転しても防ぐのが難しかったということですか?
A はい。少なくとも検察庁はそのように判断したということになります。

 

Q 死亡事故を起こした方が不起訴になるというのは、よくあるのですか?
A 人が死亡するといった結果の重大性から、死亡事故で不起訴処分というのは珍しいことだと思います。
  特に今回は、検察審査会で不起訴不当だと議決されて再捜査が行われての2回目の不起訴処分なので極めて珍しいケースではあります。

 

Q 先生は交通事故を起こした方の弁護活動も行っているのですか?
A はい。
  一言で「交通事故」と言っても、誰も怪我していない軽微な物損事故もあれば、今回の事故のように、人が亡くなるような大きな事故もありますが、人身事故は刑事事件として扱われますので、刑事事件を専門に扱っている弊所でもお取り扱いできます。

 

Q 交通事故を起こした方で注意すべきことはありますか?
A よくある話しですが、被害者対応を保険会社に任せてしまって刑事手続きに関する対処を何もしないのは危険です。
  加入している保険会社が被害者対応をしているので大丈夫だと思っている方が多いかと思いますが、保険会社の補償で満足する被害者はほとんどいませんし、特約がない限り、保険会社が、刑事手続きで有効となる示談までしてくれることはありませんので、事故を起こしてしまった方で刑事罰の軽減を望むのであれば、専門の弁護士に相談することをお勧めします。

 

Q 車を運転される方に何かメッセージはありますか?
A 車やバイクを運転する方であれば、誰しもが交通事故を起こす可能性がありますし、どんなに注意していても予期せぬことが起こって事故に巻き込まれてしまうこともあります。
大切なのは安全運転をして事故を起こさないように、事故に巻き込まれないようにすることですが、事故を起こしてしまった場合は、負傷者を救護し、警察に事故を届け出て、そして弁護士に相談することです。

ひき逃げ事件を起こしました・・・で逮捕されますか?

2021-11-04

ひき逃げ事件を起こした場合の身体拘束の可能性について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
兵庫県洲本市で車を運転していたAさんは、車線変更をしたところ、後方から走行していたバイクと接触し、バイクは転倒してしまいました。
Aさんは、バイクが転倒したことをサイドミラーで確認しましたが、気が動転してそのまま少し先まで車を走らせました。
我に返ったAさんは、現場に戻ってきましたが、バイクの運転手は怪我をしているようで、すでに目撃者が救急通報していました。
現場に駆け付けた兵庫県洲本警察署の警察官に事情を聴かれたAさんは、正直に一度現場から走り去ったことを述べています。
警察官からは、Aさんの行為がひき逃げに当たると言われ、Aさんは今後どのような処分を受けるのか心配でなりません。
(フィクションです)

ひき逃げで問われる罪とは

芸能人をはじめとする有名人が交通事故を起こした場合、メディアで大きく取り沙汰されますが、なかでも「ひき逃げ事件」については一大ニュースとして扱われていますよね。
単なる交通事故よりも、ひき逃げ事件がそのように扱われるのは、事故を起こした人物の知名度にもよるところではありますが、後者のほうが重い罪となる場合が多いことも一因と言えるかもしれません。

交通事故を起こし、相手方に怪我を負わせてしまったり、死亡させてしまった場合には、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下、「自動車運転処罰法」といいます。)に規定される「過失運転致死傷罪」、もしくは「危険運転致死傷罪」という罪が成立することになります。
ですので、通常、人身事故を起こした場合には、過失運転致死傷罪、または危険運転致死傷罪に問われることになります。

これに対して、ひき逃げ事件の場合には、上の罪に加えて、道路交通法違反の罪にも問われることになります。
いわゆる「ひき逃げ」というのは、交通事故を起こし、相手方に怪我を負わしているにもかかわらず、救護などの必要な措置をとることなく、その場を後にする行為のことを言います。
このような行為は、道路交通法で定められている義務に違反することになります。

道路交通法第72条 交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

この条文は、救護義務を当該交通事故に係る車両等の運転手その他の乗務員に課していますが、「車両等」には自転車などの軽車両も含まれます。
条文前段は、交通事故に係る車両等の運転手等に、その車両等を停止させ、負傷者に対して応急の手当てをしたり、医師への急報、救急車の要請、病院へ負傷者を運ぶなどといった救護を行い、車両等や負傷者を安全な場所に移動させるなどの措置をとることを要求しています。
このような行為を怠った場合には、救護義務に違反することになり、道路交通法違反が成立するというわけです。
救護義務違反についての罰則は、人身事故を起こした者による違反の場合には、10年以下の懲役または100万円以下の罰金です。

ひき逃げ事件では、先の過失運転致死傷罪(7年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金)、あるいは危険運転致死傷罪(人を負傷させた場合:15年以下の懲役、人を死亡させた場合:1年以上の有期懲役)といった罪と道路交通法違反(救護義務違反)の2つの罪が成立する可能性があり、その場合、2つの罪は併合罪の関係となり、併合罪を有期懲役に処する場合は、最も重い罪について定めた刑の長期に2分の1を加えたものを長期とします。
そのため、仮に、過失運転死傷と道路交通法違反(救護義務違反)の2罪が成立する場合、裁判官は懲役15年を超える判決を下すことはできません。
しかしながら、過失運転運転致傷単体で処罰されるよりも罪は重くなります。

ひき逃げ事件を起こしたら

一度現場から逃亡しているため、ひき逃げ事件においては、逮捕・勾留といった身体拘束を受ける可能性が高いと言えます。
しかし、ひき逃げの態様によっては、例えば、一度その場を後にしたものの、すぐに現場に戻ってきたなどであれば、身体拘束からの解放の可能性も少なくありません。
勾留に付されれば、逮捕から最大で23日間の身体拘束となる可能性もあり、勾留により被り得る不利益は計り知れません。
そのような事態を回避するためにも、早期に弁護士に相談・依頼し、身体拘束からの解放を目指した活動を行うことが重要です。
弁護士は、勾留の要件を充たしていないことを客観的な証拠に基づき検察官や裁判官に説得的に主張し、勾留をしないよう働きかけます。
勾留が決定した後であっても、勾留の裁判に対する不服申し立てを行い、早期の釈放を目指します。

このような活動は、刑事事件に精通する弁護士に任せるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件をはじめとした刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が逮捕されてお困りであれば、弊所の弁護士に今すぐご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で2

あおり運転の厳罰化

2020-09-13

あおり運転厳罰化について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
兵庫県加東市の高速道路で、Vさんが運転する乗用車に左右から幅寄せしたり前方で急制動したりして、Vさんの車を停車させるなどした疑いで、兵庫県警察高速隊は、Aさんを道路交通法違反(妨害運転罪)の容疑で逮捕しました。
Aさんは、「運転の仕方が気に入らず、イラっとしてあおった。」と容疑を認めています。
警察からの連絡で夫の逮捕を知ったAさんの妻は、ニュースであおり運転厳罰化が特集されていることを思い出し、Aさんに対してどのような処分が下されるのか不安で仕方ありません。
(フィクションです)

交通事故に繋がりかねない危険な運転行為である「あおり運転」は、これまで道路交通法や刑法の暴行罪などを適用して対処されてきました。
あおり運転が引き起こす交通事故の危険性・重大性を鑑み、あおり運転に対する厳罰化が求められてきました。

道路交通法改正~妨害運転罪の創設~

令和2年6月10日に公布された道路交通法の一部を改正する法律により、「妨害運転」に対する罰則が創設されました。

道路交通法第117条の2の2第11号は、「他の車両等の通行を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であって、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者」を、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処すとしています。
本条の対象となる行為は、
①通行区分違反:右折や左折などをする場合に、方向別に区分された車線を通らない。
②急ブレーキ禁止違反:不必要に車を急停止させたり、急激な減速をするような急ブレーキをかける。
③車間距離保持違反:前の車との距離を極端に詰める。
④進路変更禁止違反:みだりにその進路を変更する。
⑤追い越し方法違反:追い越し車線ではない通行帯で追い越す。
⑥車両等の灯火違反:ハイビームでの威嚇。
⑦警音器等使用違反:むやみやたらにクラクションを鳴らす。
⑧安全運転義務違反:幅寄せや蛇行運転。。
⑨最低速度違反:高速道路での最低速度より遅い速度での進行。
⑩停車・駐車禁止違反:高速道路での駐停車。

また、道路交通法第117条の2の2第11号の罪を犯し、よって高速道路において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた者は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。(道路交通法第117条第6号)

このように、あおり運転自体を行った場合には、新たに創設された妨害運転罪に該当する可能性があります。

自動車運転処罰法改正~危険運転致死傷罪の対象~

あおり運転を行った結果、人身事故を起こした場合には、自動車運転処罰法の危険運転致死傷罪に該当することがあります。

危険運転致死傷罪は、自動車の危険な運転によって人を死傷させた場合に成立する犯罪です。
自動車運転処罰法に関する改正法が7月2日に施行され、高速道路などで走行中の車両前方に停止するなど、他の車の通行を妨害する行為が危険運転致死傷罪に追加されました。

法改正以前では、あおり運転による人身事故に危険運転致死傷罪が適用されるのは、「人や車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に侵入し、その他通行中の人や車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」を行い、その結果、人を死傷させた場合でした。
つまり、あおり運転に高速度での運転という要件が課されていたため、適用範囲が限定されていました。

改正後は、先の類型に加えて、「車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為」と「高速道路・自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為」も危険運転致死傷罪の対象となりました。
前者は、走行している車の前で急ブレーキをし、その車を停止させたり、極端に接近したりした結果、交通事故を起こし、人を死傷させた場合が該当し、高速道路のような路上で駐停車していることが予想されていないような場所で、前方に割り込んだり、極端に接近したりして走行中の車を停止・徐行させたことで、人を死傷させた場合は後者に当たるでしょう。

以上の様に、危険なあおり運転については、これまで以上に厳しい処罰が科されることになります。

あおり運転で逮捕された方、あおり運転で事故を起こした方、交通事件で対応にお困りの方は、交通事件を含めた刑事事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。

過失運転致傷事件で略式手続

2020-08-16

略式手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、兵庫県宍粟市の交差点を右折する際、横断中の自転車に気付くのが遅れ、自転車と衝突し、運転手の女性に怪我を負わせてしまいました。
Aさんは、すぐに女性の様子を確認し、通報しました。
幸い女性の怪我は軽く、Aさんは、通報を受けて駆け付けた兵庫県宍粟警察署の警察官に逮捕されることもなく、取調べを受けた後、帰宅を許されました。
Aさんは、裁判になるのではないかと心配していますが、相談した弁護士から、略式手続がとられる可能性があることを聞きました。
(フィクションです)

略式手続とは

ある犯罪に関し、犯人の処罰について判断するための一連の手続を「刑事手続」といいます。
刑事手続は、捜査に始まり、公訴の提起を経て、第一審の公判手続、そして上訴審の手続と段階的に処理されていきます。
捜査段階では、すべての事件が検察官のもとに集まり、これらの事件を検察官が処理をすることになります。
検察官による処理は、終局処分と中間処分とに分けられます。
終局処分には、起訴処分、不起訴処分、そして家庭裁判所送致とがあります。
起訴処分、つまり公訴提起には、①公判請求、②即決裁判手続の申立て、③略式命令の請求、④交通事件即決裁判の請求、の4種類あります。

検察官の略式命令の請求により、簡易裁判所が、その管轄事件につき、公判手続を経ないで、主として検察官の提出した証拠を審査して、一定額以下の罰金又は科料を科す簡易裁判手続を「略式手続」といいます。

略式手続をとるためには、次の要件を満たす必要があります。

①簡易裁判所の管轄に属する事件であること。
簡易裁判所の管轄する事件についてのみ略式手続によることができます。
簡易裁判所は、罰金以下の刑に当たる罪、選択刑として罰金が定められている罪または刑法第186条、第252条もしくは第256条の罪に係る訴訟についての第1審の裁判権を有しています。

②公訴提起と同時の、書面による検察官の請求があること。
略式命令の請求は、公訴の提起と同時に書面でしなければなりません。

③検察官による説明、正式裁判を受ける権利の告知、略式手続に異議がない旨の書面による確認があること。
検察官は、略式命令の請求に際し、被疑者に対してあらかじめ、略式手続を理解させるために必要な事項を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げた上、略式手続によることについて異議がないかどうかを確かめなければなりません。
被疑者は、略式手続によることについて異議がないときは、書面でその旨を明らかにしなければなりません。

④検察官による略式命令の請求と同時に書類・証拠が差し出されていること。
起訴状一本主義の適用はなく、必要な書類や証拠物も裁判所に差し出さなければなりません。

⑤略式手続によることの相当性
略式手続よることができるのは、略式命令をすることができるものであり、かつ、略式命令をすることが相当であるものです。
例えば、事案が複雑で、公判手続において慎重な審理をするのを相当と認めるときや、100万円以下の罰金又は科料以外の刑を科すべきものと認めたときなど、通常手続に移して審判しなければならない場合は、不相当とされます。

略式手続のメリットは、正式裁判に比べて身体拘束期間が短くなることや、刑罰が罰金で済むことが挙げられます。
一方、デメリットは、有罪判決を受けていることになるので、前科がつくこと、そして、略式起訴される場合、審理は書面だけで行われるので、法廷で自分の言い分を述べるということができないということです。

このように、略式手続にはメリットとデメリットがあります。
事件によっては、略式手続が最善の場合も、そうでない場合もあります。
過失運転致傷事件でも、被害者の怪我の程度が軽く、被害弁償等もきちんと行っているような場合には、略式手続がとられることがあります。
略式手続についてお悩みであれば、一度弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

少年交通事件で弁護士に相談

2020-04-03

少年交通事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
深夜、赤信号にもかかわらず兵庫県三田市の交差点に侵入したとして、兵庫県三田警察署の警察官に停止を求められたAくん(15歳)。
警察官に運転免許証の提示を求められましたが、Aくんは「持っていません。」と正直に無免許運転であることを告げました。
Aくんは、道路交通法違反の容疑で現行犯逮捕されましたが、Aくんの両親が身元引受人として警察署に迎えに来て釈放されました。
Aくんと両親は、この先どのような流れとなるのか不安です。
(フィクションです)

少年交通事件について

少年交通事件は、少年による危険運転致死傷、過失運転致死傷、重過失致死傷、道路交通法違反事件などの交通関係事件のことです。
このような少年交通事件のうち、道路交通法違反事件については、成人の場合と同じく、交通反則通告制度が存在します。
交通反則通告制度というのは、自動車、原動機付自転車等の運転者の違反行為のうち、無免許運転や飲酒運転等の悪質な違反を除く、比較的軽微な違反について、交通事故を起こしていないなどの一定の条件を満たす場合にとられる制度で、反則金を納付することで、事件を終了させ、家庭裁判所の審判に付されることがなくなります。
交通反則通告制度の対象となる交通事件は、速度超過(一般道においては時速30キロ未満、高速道路においては時速40キロ未満の超過に限る)、信号無視や駐停車違反などです。

しかし、無免許運転、酒気帯び運転、速度超過、共同危険行為などの事件は、反則通告制度の対象とはならず、家庭裁判所に送致されることになります。

少年交通事件の審判手続の特徴

事件が家庭裁判所に送致されると、通常の事件と同様に、調査官による調査が行われます。
調査の一環として、少年交通事件では、家庭裁判所は、少年に対して集団での交通講習を実施することがあります。
個通安全に関する講義や講話、ビデオの視聴、保護者参加の討論会などが実施されます。
この集団講習への少年の取込む姿勢は、少年に対する処遇を決める上での判断材料となります。
調査の結果、審判を開始するか否かが決定され、審判開始決定がなされると、審判を経て、不処分・保護処分・検察官送致等の処分がなされます。

少年交通事件では、非行内容や要保護性の共通点、予想される処分に鑑みて、複数の少年が集団で審判を受ける集団審判が行われることがあります。
集団審判では、通常の審判とは異なり、個別事件の審理はほとんど行われず、事件類型に合わせた裁判官による訓戒が審判の中心となります。
しかし、個別に主張がある場合、重大な結果を生じさせた事件、否認事件などは、個別に審理されます。

少年交通事件の処分

(1)交通保護観察

交通事件における保護観察は、「交通保護観察」と「交通短期保護観察」とがあります。
「交通保護観察」は、交通事件を専門とする保護観察官と交通法規に通じた保護司を指名しるようにしたり、必要な場合には交通法規・運転技術・車両の構造に関する指導をすること、特別遵守事項に保護観察所長の定める交通に関する学習をすること等を定めること、保護観察官の直接担当や集団処遇の併用も考慮すべきこととされています。
「交通短期保護観察」は、一般非行性がない、一般非行性が深くない、交通関係の非行性が固定化していない、資質に著しい偏りがない、対人関係に問題がない、集団処遇への参加が期待できる、保護環境が特に不良でない、改善更生のために特に必要と認められる事項がなく特別遵守事項を定めない少年に対してとられる処分です。

(2)検察官送致

少年交通事件のうち重大な結果が生じた事件で、少年の年齢が高い場合には、刑事処分相当として検察官送致となるケースが少なくありません。

以上のように、少年交通事件では、通常の少年事件と異なる点もありますが、少年の更生に向けた活動は、他の少年事件と共通することが多くあります。
特に、環境調整においては、保護者と協力して家庭環境を改善することや、非行に走るようになった原因である交遊関係の見直しなど、少年が再び非行を犯さないように少年の周囲の環境を整えることが重要です。

少年事件では、事件内容の軽重だけでなく、少年の更生可能性も重要なポイントとなりますので、少年事件に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
お子様が交通事件を起こして対応にお悩みであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

あおり運転に対する罰則強化

2020-03-20

あおり運転に対する罰則強化について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県佐用郡佐用町の高速道路を走行していたVさんは、後方車両に車間距離を極端に詰められていたため、左車線に車線変更しました。
しかし、後方車両もすぐさま車線変更しVさんの車の後ろにつけ、再び車間距離を極端に詰めてきました。
あおり運転だと思ったVさんは、危険を感じ、途中のサービスエリアで降り、警察に通報しました。
Vさんから報告を受けた兵庫県高速道路交通警察隊は、あおり運転をしたと思われる車を発見し、運転手のAさんから事情を聞いています。
(フィクションです)

あおり運転が原因で痛ましい事故が発生するケースが増えたことをうけ、あおり運転に対する罰則強化の動きが強まりました。
そして、今月には、あおり運転に懲役刑を科す道路交通法改正案が閣議決定されました。
早ければ今年の夏までに施行される見通しだということです。

現行法におけるあおり運転に対する罰則

現行法は、「あおり運転」の定義を定めていませんが、あおり運転は、一般に、道路を走行する自動車等に対して、周囲の運転手が嫌がらせ等の目的で運転中に煽ることにより、道路における交通の危険を生じさせる行為のことをいいます。
現在、道路交通法は、急ブレーキや車間距離を極端に詰める行為、幅寄せなどの行為を禁止しており、違反者に対しては、反則金の他に、罰則も設けています。

以下、あおり運転に該当する主な違反について説明します。

1.車間距離保持義務違反

あおり運転の典型は、他車との車間距離を極端に詰めるものです。
このような行為は、道路交通法上の車間距離保持義務違反となります。

第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

自分の車と前を走行している車との間は、万が一前の車が急に停止した場合であっても、その車に衝突することがないよう、しっかり空けておかなければなりません。
しかし、前を走る車との距離を極端に詰めて煽る運転は、この義務に違反することになります。

車間距離保持義務違反の罰則は、高速自動車道上の違反については3月以下の懲役または5万円以下の罰金、一般道では5万円以下の罰金です。

2.進路変更禁止違反

急に車線変更などして、後ろから進行してくる車が急ブレーキや急ハンドルで避けなければならないようにするあおり運転は、進路変更禁止違反となります。

第二十六条の二 
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない

道路交通法第26条の2第2項の進路変更禁止違反の罰則は、5万円以下の罰金です。

3.急ブレーキ禁止違反

危険防止を理由としない、不必要な急ブレーキをかけるあおり運転は、道路交通法上の急ブレーキ禁止違反に当たります。

第二十四条 車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。

急ブレーキ禁止違反の罰則は、3月以下の懲役または5万円以下の罰金です。

道路交通法改正案におけるあおり運転に対する罰則

今月閣議決定された道路交通法改正案は、あおり運転を妨害運転罪として新たに定めます。

同案には、他車の通行を妨害する目的で、交通の危険を生じさせるおそれのある方法で、通行区分違反、急ブレーキ禁止違反、車間距離保持義務違反、進路変更禁止違反、安全運転義務違反等の一定の違反行為をした場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金とする内容が盛り込まれています。
また、妨害運転により、高速自動車道等において他車を停止させるなどして道路における著しい交通の危険を生じさせ場合には、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される旨も規定されています。

以上の様に、あおり運転に対する罰則強化された場合、逮捕・勾留で身体拘束が長期化する可能性や、略式手続ではなく公式裁判が請求される可能性も高くなるでしょう。

あおり運転や交通事件で対応にお困りの方は、交通事件も取り扱う刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

無免許運転で人身事故

2020-03-13

無免許運転人身事故をした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、免許の更新を受けずに車の運転を続けていました。
ある日、Aさんは車で外出をしていた際、兵庫県朝来市の交差点で右折しようとしたところ、左側からきたバイクと衝突してしまいました。
幸い、Aさんもバイクの運転手も大きな怪我を負わずに済みましたが、通報を受けて駆け付けた兵庫県朝来警察署の警察官に免許の提示を求められ、免許を提示したところ、Aさんの免許が有効期限切れであることが発覚しました。
(フィクションです)

無免許運転で人身事故を起こしたら

無免許運転について

無免許運転とは、公安委員会の運転免許を受けていないにもかかわらず自動車や原付自転車を運転する行為をいい、運転免許を取得したことがない場合だけでなく、免許停止中の運転や、免許取り消し処分後に免許の再取得なく運転している場合も無免許運転に含まれます。

Aさんの場合、運転免許の更新をし忘れています。
つまり、運転免許の更新を受けず、運転資格が停止した人が運転することになるので、Aさんの場合も無免許運転に該当します。

無免許運転は、道路交通法で次のように禁止されています。

第六十四条 何人も、第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第九十条第五項、第百三条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項若しくは第三項又は同条第五項において準用する第百三条第四項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。

無免許運転に対する罰則は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
無免許運転について、交通反則通告制度は適用されませんので、反則金を支払って終わることはできません。

無免許運転による人身事故の場合の刑の加重

上の規定は、無免許運転を行ったことに対するものです。
無免許で人身事故を起こした場合には、無免許運転による罪が加重されることになります。

まずは、人身事故を起こした場合に問われる罪についてみていきましょう。
人身事故を起こした場合、自動車運転処罰法に規定される「過失運転致死傷罪」または「危険運転致死傷罪」が成立する可能性があります。

(1)過失運転致死傷罪

第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

過失によって交通事故を起こし、人を死傷させてしまった場合に成立します。
前方不注意などのちょっとした不注意が原因で人身事故を起こした場合には、過失運転致死傷罪となることが多いのです。

(2)危険運転致死傷罪

第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
五 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
六 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
第三条 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。
2 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。

人身事故でも、飲酒運転、薬物使用運転、技能不足での運転、高速度での運転など、特に悪質な運転が原因である場合には、危険運転致死傷罪が適用される可能性があります。

無免許運転の場合には、過失運転致死傷罪または危険運転致死傷罪よりも刑が加重されることになります。

第六条 第二条(第三号を除く。)の罪を犯した者(人を負傷させた者に限る。)が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、六月以上の有期懲役に処する。
2 第三条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は六月以上の有期懲役に処する。
3 第四条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十五年以下の懲役に処する。
4 前条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十年以下の懲役に処する。

危険運転致傷罪の法定刑は、15年以下の懲役ですが、無免許運転である場合には、6月以上の有期懲役と刑が加重されます。
また、過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金ですが、無免許運転であれば、10年以下の懲役となります。

このように、無免許運転人身事故を起こした場合、通常の人身事故を起こした場合よりも重い刑が科せられる可能性があります。
刑の減軽や執行猶予の獲得でお困りであれば、交通事件を含む刑事事件に強い弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

道路交通法違反事件:罰金と反則金の違い

2020-03-04

道路交通法違反事件における罰金反則金の違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

前回のブログにおいて、あおり運転が道路交通法違反となる可能性があることを説明しました。
車間距離不保持違反、急ブレーキ禁止違反、安全運転義務違反ともに罰則が設けられています。
しかし、必ずしもこれらの義務違反により刑事罰が科されるとは限りません。

交通反則通告制度について

自動車や原動機付自転車の運転者がした違反行為のうち、反則行為については、一定期間内に反則金を納めることにより、その行為につき刑事裁判、少年の場合は家庭裁判所の審判を受けることなく事件が処理される制度を「交通反則通告制度」といいます。

この制度は、交通手段として自動車が普及するようになり、道路交通法違反事件の件数が増大したことで、検察庁や裁判所の仕事を圧迫するようになったため、関係機関の負担を軽減するために設けられました。

交通反則通告制度の対象となる「反則行為」とは、車両等の運転者が行った道路交通法の第8章の罪に当たる行為のうち、道路交通法の別表第2の上欄に掲げるものをいいます。
つまり、別表第2の上欄に掲げるもののうち、犯罪として成立する行為のことです。
別表第2の上欄に掲げるものとは、比較的軽微なものであって、おおむね現認、明白、典型的なものです。
例えば、一時停止違反、駐車違反、時速30キロ未満の速度超過などです。
無免許運転や酒酔いといった危険性の高いものや警察官の指示命令に違反する行為のような特殊のものについては、除外されます。

車間距離不保持違反に関しては、一般道であれば普通自動車等で反則金は6千円、高速道路では普通自動車等の反則金は9千円です。
急ブレーキ禁止違反の反則金は7千円、安全運転義務違反は9千円です。

交通反則通告制度の対象となる違反をした場合、警察官から現場で「交通反則告知書」、いわゆる「青キップ」と「反則金仮納付書」が交付されます。
告知を受けた日の翌日から7日以内に反則金を納付すれば、手続が終了します。
納付期限を過ぎてしまった場合、通告センターに出頭し、通告書と納付書の交付を受けます。
出頭できなかった場合、通知書と納付書が送付されます。
通告を受けた日の翌日から10日以内に反則金を納付すれば、手続は終了しますが、期限内に納付しない場合には、刑事手続がとられ、交通裁判所または検察庁に呼び出しを受けることになります。
未成年者の場合は、家庭裁判所もしくは検察庁から呼び出されます。

刑事手続がとられた場合

交通反則通告制度が適用されない場合、刑事手続がとられます。
この場合、違反者は「被疑者」となります。
捜査機関による捜査が終了すると、検察官は被疑者を起訴するか否かを判断します。
起訴には、①公判請求、②即決裁判手続の申立て、③略式命令の請求があります。
実際には、事件のほとんどが③の略式手続によって処理されます。

①公判請求は、裁判所に対し、特定の犯罪事実について特定の被告人に対する実体的審理および有罪の判決を求める意思表示です。
公判請求されると、公の裁判で審理され、有罪か無罪か、有罪の場合にはどのような刑罰を受けるべきなのかが決められることになります。

検察官の請求があるとき、簡易裁判所は、公判を開かずに書面審理によって、簡易裁判所が管轄する事件について、100万円以下の罰金または科料を科すことができます。
この手続を「略式手続」といい、簡易裁判所が言い渡す裁判を「略式命令」と呼びます。
公判を開かずに非公開の簡易な手続きで迅速に行われる点がその特徴です。
交通事件のほとんどが略式手続で処理されます。
この略式手続に基づき、略式命令が出されると、刑の言渡しを受けた者は、「罰金」を納めなければなりません。
罰金」は、刑事罰の一種ですので、有罪判決を受けたことが前提となります。
ですので、交通反則通告制度が適用された場合とは異なり、前科が付くことになります。

交通事件で刑事手続がとられ、対応にお困りであれば、交通事件にも対応する刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に一度ご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

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