Archive for the ‘暴力事件’ Category
傷害事件で被害届が出されたら
傷害事件で被害届が出された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市垂水区に住むAさんは、通勤通学の時間帯に、自宅付近にあるバス停留所近辺に空き缶を投げたところ、通行人の顔に当たってしまいました。
Aさんは誰かに当てるつもりはありませんでしたが、結果として通行人Vさんに空き缶が当たってしまい、Vさんの額に擦り傷を負わせてしまいました。
Vさんは、立腹しており、その足で兵庫県垂水警察署に傷害事件で被害届を出しに行くと言っています。
Aさんは、わざと怪我させようと思っていなかったのに傷害罪が成立するものなのか疑問に思っています。
(フィクションです)
人の身体を傷害する罪には、「傷害罪」と「過失傷害罪」とがあります。
どちらも「人の身体を傷害する」という結果は同じですが、両者の違いは、故意犯であるか過失犯であるかという点です。
傷害罪
傷害罪は、刑法第204条に規定されています。
第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
◇客体◇
傷害罪の客体は、「人の身体」です。
行為者自身の身体の傷害(自傷)は罪となりません。
◇行為◇
傷害罪の実行行為は、「人の身体を傷害すること」です。
「傷害」の概念についてですが、判例によれば、「人の生理的機能に障害を加えること」であると解されます。
また、傷害の方法は有形であると無形であるとを問いません。
「傷害」に該当する行為として、殴る蹴るなどにより人に怪我を負わせる行為のみならず、怒号等の嫌がらせにより、不安・抑うつ状態に陥れること、性病であることを隠して相手方の性器に自己の性器を押し当て、相手方に性病を感染させたこと、キスマークをつけること、皮膚の表皮を剥離すること、などが含まれます。
◇故意◇
傷害罪は、暴行罪の結果的加重犯であるので、傷害罪の故意は、「暴行の認識」があれば足りると解されます。
つまり、人の身体に対して有形力を行使することの認識であり、未必的認識で足りるのです。
これより、上記ケースに当てはまると、Aさんは積極的に誰かに対して空き缶をぶつけてやろうと思ってはいなかったようですので、一見故意はなかったように思われます。
しかし、通勤通学の時間帯という人が通常よりも多く行き交うであろうと思われる状況において、バス停留所近辺に向かって空き缶を投げるという行為から、「もしかしたら空き缶が誰かに当たるかもしれないけど、いいか。」と思っていた場合には、未必的故意が認められ、傷害罪が成立する可能性があります。
過失傷害罪
過失傷害罪は、刑法第209条に規定されています。
第二百九条 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
◇過失◇
傷害罪との違いは、「過失により」人を傷害する点です。
「過失」とは、不注意に構成要件上保護された法益を侵害することです。
過失傷害罪の場合は、不注意に人を傷害することです。
傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金であるのに対して、過失傷害罪は30万円以下の罰金または科料です。
そして、過失傷害罪は、親告罪であるので、告訴がなければ公訴を提起することができません。
傷害罪は親告罪ではありませんが、被害者との示談が成立した場合、不起訴処分となる可能性が高まり、前科を付けることなく事件を終了させることが期待できるでしょう。
いずれの場合も、怪我をされた被害者の方への適切な対応をとることが、その後の結果にも大きく影響しますので、重要だと言えるでしょう。
傷害事件を起こし、被害者の方との示談交渉にお困りであれば、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談や初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
刑事事件で正当防衛を主張
違法性阻却事由の正当防衛について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県明石市の路上で、いきなり背後から知らない男性に抱きつかれたAさんは、必死に抵抗しようとしました。
しかし、男性は果物ナイフをAさんに突きつけ、「だまらんと、これで殺すぞ。」などと脅し、Aさんを人気のない河川敷に連れて行き、押し倒しました。
男性は、Aさんの身体を触り、服の中にも手を入れてきたので、Aさんは「このままじゃ犯される。」と思った時、男性が果物ナイフを手から離し地面に置いていることに気が付きました。
とっさに、Aさんはその果物ナイフを手に取り、男性の太ももに刺しました。
痛みで男性がひるんだ隙にAさんは急いで逃げ、最寄りの駐在所に駆け込みました。
兵庫県明石警察署が現場に駆け付けた時には、男性はすでに意識がなく、搬送先の病院で死亡が確認されました。
警察は、Aさんを傷害致死の容疑で神戸地方検察庁に送検しました。
(実際の事件を基にしたフィクションです。)
犯罪が成立するには
「犯罪」は、一般的に、「構成要件に該当する、違法で有責な行為」と理解されています。
つまり、犯罪が成立するためには、以下の要件を充たしていなければなりません。
①人の行為であること。
②法律により犯罪として決められた行為類型(構成要件)に該当すること。
③構成要件に該当する行為が違法であること。
④構成要件に該当し、違法である行為が有責に行われたこと。
上記ケースの場合、Aさんに対して傷害致死罪が問えるか否かが問題となっています。
傷害致死罪は、刑法第205条に以下のように規定されています。
第二百五条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。
傷害致死罪の構成要件は、人の身体を傷害した結果、人を死なせることです。
Aさんは、男性が所持していた果物ナイフで男性の太ももを刺し、大量出血で死なせてしまったということであれば、傷害致死罪の構成要件に該当していると考えられるでしょう。
しかし、Aさんは、男性に果物ナイフで脅された上で襲われていたため、どうにかして逃げなければという思いから、視界に入った果物ナイフで男性の太ももを刺した、ということですが、このことは③の違法性の要件を充たさないと言えるのでしょうか。
違法性阻却事由:正当防衛について
構成要件に該当する行為について、刑法上の禁止を解除し、違法性を失わせる特段の事情を「違法性阻却事由」といいます。
違法性阻却事由として刑法に規定されたものとしては、
・正当行為
・正当防衛
・緊急避難
があります。
ほとんどの方が「正当防衛」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
正当防衛については、刑法第36条に次のように規定されています。
第三十六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
つまり、正当防衛とは、「急迫不正の侵害」に対して、「自己又は他人の権利を防衛するため」「やむを得ずにした行為」です。
1.急迫不正の侵害
◇侵害◇
「侵害」とは、権利を侵害する危険をもたらすものをいいます。
◇急迫性◇
「急迫」とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味します。
◇不正な侵害◇
ここでいう「不正」というのは、違法であることを意味します。
2.自己又は他人の権利
「自己又は他人の権利」の「権利」は、明確な権利性を有するものだけでなく、法律上保護に値する利益であれば足りると理解されています。
3.防衛の意思
正当防衛は、「防衛するため」の行為でなければなりません。
しかし、防衛行為であるためには、客観的に防衛行為としての性質をゆうしていればよいのか、それとも、防衛の意思で当該行為がなされなければならないのか、という問題となります。
判例は、防衛の意思を正当防衛の要件と解しており、憤激・逆上したからといって防衛の意思は直ちに失われず、攻撃の意思が併存していても防衛の意思は認められ得るとしています。
ただし、「攻撃を受けたのに乗じ積極的な加害行為に出たなどの特別な事情」があるときには防衛の意思は否定され、「防衛に名を借りて新会社に対し積極的に攻撃を加える行為」は防衛の意思を欠くと解しています。
4.やむを得ずにした行為
「やむを得ずにした行為」の意義について、正当防衛の成立要件として、必要性および相当性の両方を必要とするのが判例および通説です。
◇必要性◇
「やむを得ずにした行為」というためには、必ずしもその行為が唯一の方法であることまで必要ではなく、また、厳格な法益の権衡も要求されませんが、少なくとも相手に最小の損害を与える方法を選ぶことが求められます。
◇相当性◇
相当性に関して、判例は、どのような「結果」が生じたのかという点よりも、どのような「手段」がとられたのかという点に着目して判断しています。
「素手」対「素手」であったのか、「凶器」対「凶器」であったのか、といったように、行為様態と防衛行為の危険性の比較衡量によって相当性を判断しているものが多くなっています。
相当性については、武器の対等性の他、侵害者・防衛行為者の身体的条件、加害行為の態様、防衛行為の危険性・性質、代替手段の有無等の事情を考慮して判断されます。
上記ケースにおいて、Aさんが正当防衛を主張した場合、「やむを得ずにした行為」の相当性の点が争われるのではないかと考えられます。
ですので、上述した相当性について判断する際に考慮される事情について、被疑者・被告人側に有利な事情を示し、正当防衛が認められるよう動くことが重要です。
そのような活動は、刑事事件に精通した弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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殺人事件で故意否認
殺人罪に問われ故意を否認している場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aさんは、ある夜、神戸市東灘区にある交際相手のVさん宅を訪れました。
しかし、Vさんから別れ話を切り出されたことに腹を立て、Vさんの首を絞めるなどの暴行を加えました。
我に返ったAさんは、Vさんの首から手を放しましたが、Vさんは意識を失っていました。
Aさんは怖くなりその場を後にしました。
後日、兵庫県東灘警察署がAさん宅を訪れ、殺人の容疑でAさんを逮捕しました。
Aさんは、「感情的になり暴力を振るってしまったことは認めるが、Vさんを殺すつもりはなかった。」と容疑を一部否認しています。
(フィクションです)
殺人罪について
殺人罪は、ご存知の通り、「人を殺す」犯罪です。
殺人罪については、刑法第199条に次のように規定されています。
第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
◇客体◇
殺人罪の客体は、「人」です。
行為者を除く自然人を指します。
さて、ここで、客体である「人」であることが、いつから始まりいつ終わるのか、が問題となります。
①人の始期について
人がいつ「出生」したと言えるか、という点については、「一部露出説」という考え方が通説だとされており、判例も同様の立場をとっています。
「一部露出説」というのは、一部が母体から露出した時点で「人」とする考え方です。
②人の終期について
人の終期、つまり、人が死亡したと、いつ言えるのか、という点については、争いがあります。
伝統的には、呼吸・脈拍の不可逆的停止、瞳孔拡大を起訴に総合的に判定する「三徴候説(心臓死説)」が通説とされてきましたが、生命維持・組成の為の技術が発達し、脳幹を含む全脳の機能が喪失しても相当期間、呼吸・循環を人工的に維持することが可能となり、脳機能の喪失をもって死とする「脳死説」が提唱されるようになりました。
◇行為◇
殺人罪の構成要件的行為は、「人を殺す」ことです。
「殺す」とは、自然の死期以前に人の生命を断絶する行為をいい、その手段・方法は問われません。
包丁で人を刺殺するといった方法でも、精神的に追い詰めて被害者に自らを死亡させる現実的危険性の高い行為に及ばせる方法や嬰児に食事を与えず死亡させる行為も「人を殺す」行為に当たります。
◇故意◇
法律に特別の規定がない限り、罪を犯す意思がない行為は処罰されません。
この「罪を犯す意思」というのが、「故意」と呼ばれるものです。
殺人罪の場合、「罪を犯す意思」というのは「人を殺す意思」、つまり、「殺意」があったことが本罪の成立には必要となります。
客体である「人」の認識については、単に「人」であることの認識で足ります。
また、行為の認識については、殺人の手段となる行為により、死の結果が発生可能であることを認識していればよいとされます。
故意は、未必的なもの、つまり、「相手は死ぬかもしれない」という認識や、条件付きのものでも構いません。
故意がなければ、結果として人を死亡させてしまったとしても、殺人罪は成立せず、傷害致死罪が成立するにとどまります。
故意(殺意)の認定は、具体的事情を考慮しつつ行われます。
例えば、凶器の種類、行為態様、創傷の部位・程度といった客観的な事情、動機の有無、犯行前・犯行時の言動、犯行後の言動などを総合的に考慮して判断されます。
また、殺す意思があった場合でも、自分の命を守るためにやむを得ずした行為であった場合には、違法性が阻却され、殺人罪は成立しません。
人を死亡させてしまった場合であっても、必ずしも殺人罪が成立するわけではありません。
しかし、その主張を裁判官や裁判員に適切に伝えることは、刑事事件に精通した弁護士なくして行うことは容易ではないでしょう。
ですので、ご家族が殺人罪に問われ、殺人罪の成立を争いたいとお考えであれば、刑事事件に精通する弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件・少年事件を起こしお困りであれば、弊所の弁護士に今すぐご相談ください。
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公務執行妨害で現行犯逮捕
公務執行妨害で現行犯逮捕
公務執行妨害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aさんは、兵庫県神戸市西区の駅で駅員に暴行したとして兵庫県神戸西警察署に公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕されました。
Aさんは、当時酒に酔っており、ICカードをかざしても改札が開かないことに腹を立て、対応した駅員に対して殴るなどの暴行を加えたということです。
逮捕の知らせを受けたAさんの家族は、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探しています。
(実際の事件を基にしたフィクションです)
公務執行妨害罪について
公務執行妨害罪は、刑法第95条1項に規定されており、公務員によって執行される職務を保護法益とするものです。
刑法第九十五条 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
公務執行妨害罪は、①公務員が、②職務を執行するにあたり、③公務員に対して暴行又は脅迫を加えた、場合に成立する罪です。
①公務員
「公務員」は、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員です。
外国の公務員は、含まれません。
さて、上記ケースでは駅員に対して暴行を加えたことが問題となっていますが、この場合、駅員は「公務員」に該当するのでしょうか。
昔はJRは国鉄で、駅員も公務員でしたが、今は民間となっていますので、公務員には該当しません。
一方、市営地下鉄などの公営交通は、地方自治体の交通局が運営しており、その職員は、基本的に公務員となります。
但し、ところによっては業務を外部に委託している場合もあります。
②職務を遂行するにあたり
「職務」の範囲については、権力的公務に限るか、それとも非権力的公務をも含むのかが問題となります。
この点、判例は、公務執行妨害罪における「職務」は、権力的・強制的なものであることを必要とせず、ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれるとしています。
「執行するに当たり」の意義について、職務を執行する際にという意味と理解されています。
判例は、具体的・個別的に特定された職務の執行の開始から終了までの時間的範囲、及びまさに当該職務の執行を開始しようとしている場合のように当該職務の執行と時間的に接着しこれと切り離し得ない一体的関係にあるとみることができる範囲内の職務行為に限るとしています。
③暴行・脅迫
公務執行妨害罪における「暴行」とは、公務員の身体に対し直接であると間接であるとを問わず、公務員の身体に向けられた不法な有形力の行使をいいます。
例えば、司法巡査が現行犯逮捕の現場で証拠物として差し押さえ、同所に置いた覚せい剤注射液入りアンプルを足で踏みつけて損壊する行為は、司法巡査の職務の執行を妨害するに足る暴行であり、その暴行は間接的に司法巡査に対するものというべきであるとして、暴行に当たるとした判例があります。
公務執行妨害罪における「脅迫」は、人を畏怖させる害悪の告知を広く含みます。
公務執行妨害罪における暴行・脅迫は、それによって現実に職務執行妨害の結果が発生したことを必要とせず、妨害となるべきものであればよいとされます。
公務執行妨害事件は、酔っ払って気が大きくなっていたり、ついカッとなり感情的に公務員に手を出してしまうケースが多く、そのような場合には、その現場で現行犯逮捕されるケースも多くなっています。
相手が警察官である場合はなおさら、その場で逮捕されることになります。
飲酒や一時的な感情により犯してしまいやすいため、本人がちきんと反省し、証拠隠滅や逃亡のおそれがない場合には、逮捕に引き続き長期の身体拘束となる可能性は高くはないでしょう。
しかし、逮捕から勾留までの間は、被疑者の家族であっても面会することはできませんので、逮捕された方はどのように対応すればよいのか、今後どのような流れになるのか非常に不安な気持ちでいらっしゃるでしょう。
そのような場合であっても、弁護士であればいつでも制限なく逮捕された方と面会(接見)することができます。
ご家族が公務執行妨害で逮捕されお困りであれば、いますぐ刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談や初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。
検察官の事件処理~起訴処分~
検察官の事件処理~起訴処分~
~ケース~
兵庫県加古川市の居酒屋で隣同士になったAさんとBさんは、些細なことから言い争いになりました。
Bさんは、Aさんに「やれるもんやったらやってみい!」と挑発的な言葉を発したため、AさんはBさんの脚を蹴りました。
それに対してBさんもAさんの左腕を殴るなど、両者殴り合いの喧嘩となりました。
店員が止めに入りましたが、喧嘩はおさまる様子はなかったので、店長は兵庫県加古川警察署に通報しました。
警察からは、Aさんと示談することを勧められましたが、AさんはBさんも自分を殴っていたのだからBさんに謝罪する気持ちなどありませんでした。
ある日、Aさんは検察官から呼び出され、略式手続について説明を受けました。
(フィクションです)
検察官による事件処理
警察から検察に送致された事件は、検察官が処理することになります。
検察官による処理には、中間処分と終局処分とがあります。
中間処分とは、終局処分にむけて処理を保留し、または別の検察官に処理をゆだねる処分のことで、中止処分と移送処分とがあります。
終局処分とは、検察官による終結的な処理のことで、成人の刑事事件の場合、起訴処分、そして不起訴処分とがあります。
起訴処分
起訴するかどうかを決定するのは、検察官です。
捜査の結果、有罪を立証するのに十分な証拠があると判断した場合に、検察官は公訴を提起します。
公訴の提起とは、裁判所に対して審判を求める意思表示をいいます。
検察官が裁判所に対して起訴状を提出することによって行います。
公訴の提起には、次のような種類があります。
①公判請求
②即決裁判手続の申立て
③略式命令の請求
(1)公判請求
検察官が公訴を提起し、公判を請求することです。
検察官が公判を請求すると、正式な裁判が開かれ、有罪無罪が審理され、有罪の場合には刑事罰を言い渡されます。
(2)即決裁判手続の申立て
即決裁判手続とは、争いのない簡易明白な事件につき、簡易かつ迅速な裁判を可能とする簡易な手続です。
検察官は、事案が明白かつ軽微であること、証拠調べの速やかな終了が見込まれることなどの事情を考慮して相当と認める場合に、即決裁判手続の申立てを行います。
検察官が公判請求すると同時に、即決裁判手続が申し立てられます。
当該手続を申し立てるには、事前に被疑者の同意と弁護人の同意を得ておかなければなりません。
「即決」裁判で、即日判決が原則です。
また、懲役・禁錮を言い渡す場合は、刑の執行を猶予しなければなりません。
(3)略式命令の請求
検察官の請求を受けて、簡易裁判所は、公判を開かずに書面審理によって、簡易裁判所が管轄する事件について、100万円以下の罰金または科料を科すことができます。(略式手続)
簡易裁判所が言い渡す裁判を「略式命令」といい、検察官が行う請求を「略式命令請求」といいます。
略式手続の特徴は、公判を開くことなく、書面だけの審理が行われる点です。
略式手続を踏むためには、検察官は、あらかじめ被疑者に対して、略式手続について説明し、略式手続で行うことに異議がないか確認し、書面にて異議がないことを明らかにしなければなりません。
検察官に公訴を提起され、有罪判決により刑が言い渡されると、「前科」がつくことになります。
「前科」というのは、法律的には定まった定義はありませんが、一般的に「前に刑に処せられた事実」を指します。
「前に刑に処せられた」というのは、全ての有罪の確定判決をいい、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料だけでなく、刑の免除、刑の執行免除が言い渡された場合も含みます。
検察官に起訴されて前科が付くことを回避するためには、検察官が不起訴処分とすることが望ましいでしょう。
そのためには、早期に弁護士に相談・依頼し、被害者との示談を成立させる等、不起訴処分となるよう動くことが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件でお困りの方は、一度弊所の弁護士にご相談ください。
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刑事事件で逮捕~緊急逮捕~
刑事事件で逮捕~緊急逮捕~
刑事事件の緊急逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県洲本警察署は、殺意を持ち、ゴルフクラブで男性Vさんの頭部を殴ったとして、兵庫県洲本市に住む少年Aくんを殺人未遂容疑で緊急逮捕しました。
Aくんは、「Vさんとトラブルになりカッとなって殴ってしまったが、殺すつもりはなかった。」と供述しています。
逮捕の連絡を受けたAくんの家族は、急いで接見に行ってくれる弁護士を探しました。
(フィクションです)
被疑者の身柄を拘束し、引き続き短時間その拘束を続ける強制処分である「逮捕」には、3種類あり、前回はそのうちの「通常逮捕」について説明しました。
今回は、「緊急逮捕」についてみていきたいと思います。
「逮捕」や「現行犯逮捕」というワードは、ニュースなどで頻繁に耳にしているとは思いますが、「緊急逮捕」についてはあまり聞き慣れない言葉ではないでしょうか。
緊急逮捕とは、一定以上の重大な罪の嫌疑が高い場合、急速を要して、裁判官に対して逮捕状を請求することができないため、ひとまず被疑者の身柄を確保した上で、その後、直ちに逮捕状を請求するものです。
緊急逮捕については、刑事訴訟法第210条に次のように規定されています。
第二百十条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
○2 第二百条の規定は、前項の逮捕状についてこれを準用する。
当該条項の趣旨は、現行犯以外の場合で、犯人であることが明らかであるが、事前に逮捕状が必要であるとすると、その手続をしている間に被疑者が逃亡し、その後の逮捕が極めて困難になる場合もあるため、事実発見の観点から、一定の重い罪について厳重な制限の下に無令状の逮捕を認めた点にあります。
この緊急逮捕は、令状主義との関係で、憲法に反しているのではないかとの議論がありましたが、この点、最高裁判所は、「厳格な制約の下に、罪状の重い一定の犯罪のみについて、緊急やむを得ない場合に限り、逮捕後直ちに裁判官の審査を受けて逮捕状の発行を求めることを条件都市、被疑者の逮捕を認めることは、憲法33条規定の趣旨に反するものではない」とし、その合憲性を認めています。(最大判昭30・12・14)
緊急逮捕をする際には、被疑者に「その理由を告げて」行わなければならないとありますが、「その理由」には被疑事実の要旨および急速を要する事情にあることが含まれます。
緊急逮捕の要件は次の通りです。
①一定の重大犯罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があること。
死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁固に当たる罪が対象となります。
この「罪」は特定されている必要があります。
そして、そのような重大犯罪を犯したことに対して、単なる疑いがあるだけでは足りず、通常逮捕においては「相当な」とあるのに対して、緊急逮捕では「充分な」とあるため、より高い嫌疑が必要です。
②急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないこと。
「急を要し」とは、被疑者が逃走しまたは証拠を隠滅するおそれが高く、逮捕状を請求している時間的余裕がないことをいいます。
③理由の告知をすること。
④逮捕後、直ちに逮捕状請求の手続をすること。
⑤逮捕の必要性があること。
通常逮捕と同様に、逮捕時に逮捕の必要があることが前提となります。
このように、緊急逮捕の要件は通常逮捕よりも厳しいものになっています。
通常逮捕や現行犯逮捕と比べると、緊急逮捕で身柄確保となる件数は少なくなっています。
しかし、緊急逮捕された後の流れも、他の逮捕と同様に、逮捕から48時間以内に警察は被疑者を釈放するか、検察に送致するかを決めます。
警察が検察に被疑者の身柄と証拠書類等を送致した場合、検察官は被疑者を取り調べた上で、被疑者の身柄を受けてから24時間以内に被疑者を釈放するか、裁判官に対して勾留請求を行うかを決定します。
検察官が勾留請求をすると、裁判官は被疑者と面談をし、被疑者を勾留するか、釈放するかを判断します。
裁判官が勾留を決定した場合、検察官が勾留請求をした日から原則10日間、延長が認められれば最大で20日間身柄が拘束されることになります。
そのような長期の身体拘束を避けるためにも、逮捕されたら早期に弁護士に相談し、身柄解放活動に動くのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が刑事事件で逮捕されてお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
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しつけと虐待
しつけと虐待
しつけと虐待について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県美方郡新温泉町に住むAさんは、息子のVくん(10歳)が学校で教師に対して暴言を吐くなどしたため、学校から呼び出しを受けていました。
Aさんは自宅でVくんと話をし、態度を改めるよう言いました。
しかし、Vくんは反抗的な態度を取り続けたため、AさんはVくんの両手を針金で緊縛し、自宅の階段下の物置に居れ、中から出られないように外側から戸を固定し、トイレや食事の時以外は1日そこに閉じ込めていました。
すると、どこから話を聞いたのか、兵庫県美方警察署の警察官がAさん宅を訪れ、Aさんの行為はしつけではなく虐待に当たる可能性があると言われました。
Aさんは、反抗的な子供を更生させるためにやったことであって虐待ではないと考えています。
(フィクションです)
親のしつけ~懲戒権の行使~
親として子供を懲戒することは民法上認められています。
第820条(監護及び教育の権利義務)
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
第822条(懲戒)
親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。
子の監護及び教育に必要な範囲内での懲戒は民法上認められているわけで、当該規定に基づく懲戒であれば、それは法令に基づく行為ということになり、違法性が阻却され、犯罪は成立しないことになります。
例えば、親子間ではなく教師と生徒の間の事例ではありますが、過去の裁判では、教師の生徒に対する軽微な暴行は体罰には当たらず、正当な懲戒権の行使の許容限度内にある行為であるとされてものがあります。
被告人の「本件行為の動機・目的は、生徒の軽率な言動に対してその非を指摘して注意すると同時に、同人の今後の自覚を促すことにその主眼があったものとみられ、また、その態様・程度も平手及び軽く握った右手の拳で同人の頭部を数回軽くたたいたという軽度のものにすぎ」ず、懲戒権の範囲内にとどまることを理由に違法性が阻却されるとしています。(東京高裁判決昭和56・4・1)
これに対して、懲戒という目的を超えて、対象者の身体の機能等、他の利益を侵害した場合には、懲戒行為の違法性は阻却されません。
子供に対する暴行が「しつけ」であると主張するケースは多くありますが、この「しつけ」が懲戒権の適切な行使に当たるかどうかといった線引きが問題となります。
問題の懲戒行為の内容や対象の子供の年齢等により異なりますが、当該行為が子供の監護・教育に必要であったのかどうか、その行為は懲戒権の行使として適当であったか、度を越していなかったかどうかが判断基準となります。
例えば、子供に対するしつけの一環として暴力を振るった事件において、父親が子供(3歳)を叱った際に子供が反抗的な態度をとったことに激昂し、子供に対して、顔面を鉄拳や平手で数回殴打した上、腹部を数回足蹴りするなどの暴行を加えた事案で、「その体罰は、およそしつけとは無縁の感情に任せたものであり、思慮を欠くこと甚だしく、同情する点はない。」などとして、しつけのための懲戒であるとする主張を認めなかったもの(横浜地裁判決平成14・1・24)、また、盗むをはたらく9歳児へのしつけとして、当該児童の両手をしばりあげ、押入に10数時間監禁した事件において、判決は、「親権者たる実父が子の性行、悪癖を矯正する目的で、制縛、監禁等の方法を用いてその子の自由をある程度拘束することは、法が親権者の懲戒権を認めた趣旨に鑑み許されるべきものであろうが、その懲戒の方法、程度は、その親子の社会的地位、境遇、子の年令、体格、性質並びに非行の種類、態様及び性質等により個々の場合の具体的事情に基き一般社会人において妥当適切と首肯できるものでなければならない」とし、子供の非行行為の内容や年令・体格と父親が行った懲戒行為の程度とを比較検討し、到底一般社会人の首肯できる妥当な懲戒行為とは認められないとして、逮捕監禁罪の成立を認めています。(東京高裁判決昭和35・2・13)
このように、しつけの必要性や相当性を判断し、当該しつけが懲戒権の妥当な行使であったか否かが判断されることになります。
しかし、この懲戒権について、児童虐待問題が相次ぐ昨今、懲戒権が親から子への虐待を正当化する口実として利用されているとの指摘もあり、懲戒権の見直しが検討されています。
しつけは子供のために必要ではありますが、度を超すようなしつけ、少なくとも子供に大きな怪我を負わせるようなしつけは、適切な行為とは認められることは難しいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
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児童虐待で逮捕
児童虐待で逮捕
児童虐待で逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神崎郡市川町に住むAさんは、娘のVちゃん(3歳)と交際相手のBさんと暮らしていました。
ある日、Vちゃんの様子がおかしいことに気が付いたAさんは、慌てて救急車を呼びましたが、搬送先の病院で死亡が確認されました。
Vちゃんの身体に複数のあざがあることを不審に思った病院は、兵庫県福崎警察署に虐待されていた可能性があると通報しました。
AさんとBさんは兵庫県福崎警察署で事情を聞かれていますが、AさんはBさんがしつけで何度かVちゃんに手を挙げていたことがあると供述しています。
Aさんは、Bさんが刑事責任を問われるのか、また自分も何らかの罪に問われるのか心配しています。
(フィクションです)
残念ながら、児童虐待により幼い子供が亡くなるという悲惨な事件が後を絶ちません。
虐待していた大人の多くが、「しつけのつもりだった。」と供述しているようですが、子供に大けがを負わせたり死亡させてしまうようなものは「しつけ」とは言えないでしょう。
児童虐待の防止等に関する法律は、「児童虐待」を、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するもの)がその監護する児童(18歳に満たない者)に対し、次に掲げる行為をすることと定義しています。(同法第2条)
①身体的虐待
児童の身体に外傷を生じ、又は生じさせるおそれのある暴行を加えること。
②性的虐待
児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
③ネグレクト
児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による①、②、④の行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
④心理的虐待
児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
このように、児童虐待の防止等に関する法律は、「児童虐待」を定義し、児童虐待を禁止しています。(同法第3条)
しかし、本法は、児童虐待行為に対しては罰則を設けていません。
児童虐待の防止等に関する法律に定義される「児童虐待」に当たる行為を行った場合、虐待内容により以下のような犯罪に当たる可能性があります。
①身体的虐待
殴る蹴るといった身体的虐待を行った場合の多くは、暴行罪や傷害罪が適用されます。
暴行を加えた結果、児童が死亡した場合には、傷害致死罪、そして殺意があったと認められれば殺人罪が成立する可能性もあります。
②性的虐待
児童に対してわいせつな行為をしたり、裸の写真を撮るなどの行為により、監護者性交等罪や監護者わいせつ罪、児童買春・児童ポルノ法違反が成立する可能性があります。
監護者性交等罪および監護者わいせつ罪は、平成29年7月13日から施行された刑法の一部改正により新設されたものです。
18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者による影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者や性交等をした者は、暴行や脅迫を用いない場合であっても、強制わいせつ罪や強制性交等罪と同様に処罰されます。
「現に監護する者」とは、実際に児童の生活全般にわたって衣食住などの経済的な観点、生活上の指導監督などの精神的な観点から依存、被依存ないし保護・被保護の関係が認められ、かつ、その関係性に継続性が認められることが必要となります。
実親や養親は「現に監護する者」に該当し得るのですが、教師やコーチなどは生活全般にわたった関係性がないので「現に監護する者」には当たらないと考えられています。
③ネグレクト
保護責任者遺棄罪、その結果死亡させてしまうと保護責任者遺棄致死罪が成立するでしょう。
④心理的虐待
身体的虐待でなくとも、暴言を児童に吐き捨てたりすることにより、精神的に障害を負った場合には傷害罪が成立することになります。
上記ケースでは、BさんがVちゃんに対して、しつけと称して暴力を振るっていたとAさんが証言していますので、BさんはVちゃんに対する暴行罪や傷害罪、Vちゃんの死因とBさんの暴行の因果関係が立証できれば傷害致死罪や殺人罪に問われる可能性があります。
一方、Aさんはというと、Aさん自身がVちゃんに暴力を振るうことはなかったとしても、BさんがVちゃんに暴力を振るっていたことを知っておきながら何もしなかった場合には、共同正犯もしくは幇助犯として暴行罪や傷害罪、傷害致死罪などに問われる可能性があるのです。
どのような罪に問われ得るのかは、事案によって異なりますので、児童虐待を疑われているのであれば、刑事事件に詳しい弁護士に今すぐご相談ください。
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動物虐待で起訴
動物虐待で起訴
動物虐待事件での起訴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県相生市に住むAさんは、市内の路上にいた飼い猫1匹を連れ去り、自宅で虐待死させたとして、兵庫県相生警察署に器物損壊と動物愛護法違反の容疑で逮捕されました。
その後、Aさんは神戸地方検察庁姫路支部に同罪で起訴されました。
(実際の事件を基にしたフィクションです)
動物虐待で成立し得る犯罪とは?
上記ケースのように、動物に対して虐待を行った場合には、どのような犯罪が成立するのでしょうか。
人間に対して行った場合には、虐待の内容にもよりますが、暴行罪や傷害罪、保護責任者遺棄罪など、また、相手方が死亡してしまったのであれば、傷害致死罪や殺人罪、保護責任者遺棄致死罪が成立する可能性があります。
それでは、「動物」に対して行った場合も同様の罪が成立し得るのでしょうか。
実は、これらの罪は、客体が「人」に限定されているため、虐待の対象が「動物」である場合には成立しないのです。
しかし、以下の罪が成立する可能性がありますので、それらについてみていきましょう。
器物損壊罪
刑法第261条(器物損壊等)
前3条[公用文書等毀棄、私用文書等毀棄、建造物等損壊及び同致死傷]に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料の処する。
器物損壊罪の客体は、「前3条に規定した以外の他人の物」です。
これには、動産・不動産だけでなく、ペットなどの動物も含まれます。
器物損壊罪の行為は、「損壊」または「傷害」することです。
「損壊」というのは、物理的に壊す行為に限定されず、広く物本来の効用を失わしめる行為を含みます。
過去の裁判例では、他人の飲食器に放尿する行為(大判明42・4・16)、荷物から荷札をとりはずす行為(最判昭32・4・4)、公選法違反のポスターにシールを貼る行為(最決昭55・2・29)などが「損壊」に該当するとしています。
また、「傷害」は、客体が動物の場合に用いられます。
動物を物理的に殺傷する以外に、本来の効用を失わせる行為を含みます。
例えば、鳥かごを開けて他人の飼っていた鳥を逃がす行為や、池に飼育されている他人の鯉をいけすの柵を外して流出させる行為などです。
動物愛護条例違反
動物愛護法は、「動物の愛護及び管理に関する法律」の略称です。
動物愛護法では、愛護動物の保護として、虐待や不十分な保護について罰則を規定しています。
ここで言う「愛護動物」とは、飼育されている哺乳類・鳥類・爬虫類、そして野生の指定11動物です。(動物愛護法第44条4項)
・みだりに殺す、傷つける行為をした場合には、2年以下の懲役または200万円以下の罰金、
・給餌・給水しない、酷使する、健康・安全環境の悪い状態で拘束・衰弱させる、飼育中に疾病・負傷した場合に適切な保護をしない、遺棄した場合には、100万円以下の罰金が科される可能性があります。
このように、飼い猫を虐待の末殺してしまったAさんは、器物損壊罪及び動物愛護条例違反の罪で起訴されてしまったというわけです。
起訴されると
Aさんは神戸地方検察庁に起訴されてしましましたが、「起訴」されるとどうなるのでしょうか。
「起訴」というのは、「公訴の提起」のことで、裁判所に対して審判を求める意思表示のことをいいます。
公訴の提起は、検察官が裁判所に対して起訴状を提出することによって行われます。
公訴の提起には、正式裁判の手続と簡易裁判の手続(略式手続、即決裁判手続)とがあります。
検察官が裁判所に対して正式裁判を求めることを「公判請求」といい、検察官が公判請求せずに略式手続による裁判を請求することを「略式請求(起訴)」といいます。
公判請求されると、公判手続に移行し、公開法廷での裁判が行われます。
事実を争う場合には無罪判決を、事実を認める場合には執行猶予判決の獲得に向けて入念に公判準備をする必要があります。
一方、略式請求となれば、簡易裁判所が、原則として、検察官の提出した資料のみに基づいて、公判を開かずに、略式命令により罰金又は科料を科す手続に移行します。
公判が開かれませんので、公判の準備に時間をさく必要もなく、公開法廷に出席することもないという点で被疑者・被告人にとってメリットがあると言えるでしょう。
また、身柄が拘束されている場合には、解放されるので、被疑者・被告人の早期社会復帰を実現させることもできます。
ただ、略式手続では、被疑者・被告人が自身の主張をする機会はなく、事実を認めていることを前提に有罪判決を下されることに留意が必要です。
略式手続であっても有罪判決が言い渡されることに変わりはありませんので、前科が付くことになります。
略式請求する際には、検察官が被疑者にそれで良いか必ず聞かれますので、どうすればよいか分からない時は、弁護士に相談するのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする法律事務所です。
あなたやあなたの家族が刑事事件の被疑者・被告人となってしまいお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
職務強要事件で逮捕
職務強要事件で逮捕
職務強要罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県加西警察署は、兵庫県加西市に住むAさんを職務強要の容疑で逮捕しました。
Aさんは、同市にある処理施設で、焼却炉の検査に来た県保健所の職員に対して、県の許可が必要ない小型焼却炉として認めさせようと、「これで通せ。殺してやる。」などと脅迫し、職務を強要した疑いがあるとのことです。
Aさんは容疑を否認しています。
(読売新聞オンライン2019年8月7日掲載記事を基にしたフィクションです)
職務強要罪について
職務強要罪は、刑法第95条第2項に規定されています。
第九十五条 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。
本条の第1項には、ニュースでもよく聞く「公務執行妨害罪」が規定されています。
職務強要罪は、公務執行妨害罪と同じく、公務の円滑な遂行をその保護法益(法律によって保護される利益)とするものです。
職務強要罪は、公務員の将来の職務執行に向けられる点で、職務の現実の執行に向けられる公務執行妨害罪とは異なります。
職務強要罪の構成要件は、
①公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、
②暴行又は脅迫を加えたこと
となります。
①「公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために」
職務強要罪の客体である「公務員」とは、「国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員」をいいます。
強要の対象となる処分は、当該公務員の職務に関係のある処分であればよく、職務権限外の処分でもよいとされています。(最判昭28・1・22)
また、職務強要罪の成立には、結果として目的(ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるという目的)が達成されたことは必要ありません。
②「暴行又は脅迫を加えた」
「暴行」とは、人に対する不法な有形力の行使をいい、「脅迫」は、恐怖心を起こさせる目的で他人に害悪の告知をすることをいいます。
職務強要罪と似た犯罪として、「強要罪」があります。
強要罪は、刑法223条に規定されています。
第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。
このように、強要罪は、暴行・脅迫により、人に義務のないことを行わせる等する犯罪です。
職務強要罪と異なるのは、強要罪は結果として被害者において義務のないことを行われたことが必要である点です。
強要罪は未遂犯も処罰されますが、職務強要罪は、例え結果として目的を達成できなかったとしても未遂犯ではなく既遂犯として成立します。
所定の目的で暴行・脅迫を加えた時点で既遂となりますので、上記ケースにおいて、Aさんは保健所の職員に対して、小型焼却炉として自己若しくは会社所有の焼却炉を許可するよう脅迫を用いて強要していますので、既遂となり職務強要罪が成立するものと考えられるでしょう。
兵庫県の刑事事件でお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお気軽にご相談ください。
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