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放火事件で逮捕されたら

2019-11-07

放火事件で逮捕されたら

放火事件(現住建造物等放火罪)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県美方郡香美町にある実家に火をつけて全焼させ、不慮の火災を装って保険金の支払いを受けようとしたとして、兵庫県美方警察署はAさんを現住建造物等放火および詐欺未遂の容疑で逮捕しました。
Aさんは、調べに対して、「家を燃やそうと思って火をつけたのではない。脅しのつもりだった。事故だった。」と供述しています。
(フィクションです)

放火罪について

放火罪は、不特定または多数の人の生命、身体、財産に対し、火力によって危険を生じさせる公共危険罪です。
放火罪は刑法に規定されており、放火罪には、幾つかの種類があります。

1.現住建造物等放火罪

第百八条 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

現住建造物等放火罪の構成要件、つまり犯罪として処罰される行為の類型は、
放火して
②現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船または鉱坑を
③焼損したこと
です。

客体:現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑

「人」というのは、犯人以外の者であって、犯人の家族も含まれます。
「住居に使用」とは、放火行為当時現に犯人以外の人が、起臥寝食の場所として日常的に使用することをいい、放火行為の当時犯人以外の人が現在すると否とを問いません。
「建造物」とは、家屋その他これに類似する工作物であって、土地に定着し、人の起居出入に適する構造を有するものをいいます。
建物の一部のように見えても、毀損せずにとり外すことができるものは、「建造物」ではなく、器物損壊罪の「器物」となります。
例えば、布団、畳、障子、襖、カーテン等は「建造物」には含まれません。
上記ケースでは、Aさんが実家に火をつけたと疑われているわけですが、Aさんがこの家に家族と同居しているしていないにかかわらず、火をつけたときに誰もこの家にいなかったとしても、誰かがこの家で日常的に生活をしているのであれば、「現に人が住居に使用する建造物」に当たります。

行為:放火して客体を焼損すること

放火」というのは、故意によって不正に火力を使用し物件を焼損することです。
積極的な放火行為に及んだ場合に放火罪が成立することが通常ですが、そうでない場合にも放火罪が成立する場合もあります。
この点、不作為による放火について、判例は、自己の過失により物件を燃焼させた者が、その既発の火力により建物が焼損してしまうことを認容する意思があるにもかかわらず、あえて必要かつ容易な消化措置をとらない行為は、不作為による放火行為といえるとして、不作為による放火を認めています。(最判昭33・9・9)。

ですので、火の不始末などが原因で着火させてしまった本人が、建物等の火が移り焼損させてしまうおそれがあることを知りながら、消火活動や消防署への通報をせずに、そのままにした結果、建物等が焼損した場合には、放火罪が成立することになります。
上記ケースでは、Aさんは火事は事故だったと言っていますが、仮にAさんが積極的に放火したのではなく、何らかの形で建物や媒介物に着火させてしまったとしても、消火活動を行わなかったり、119番通報しせずに放置した結果、実家を全焼させてしまったのであれば、不作為による放火罪が成立する可能性があります。

現住建造物等の「焼損」によって、現住建造物等放火罪は既遂になります。
この「焼損」の意義については、いくつかの見解が主張されていますが、判例は、独立燃焼説の立場を採っています。
独立燃焼説は、火が媒介物を離れ目的物に移り、独立して燃焼作用を継続しうる状態に達した時点を「焼損」とする、という考え方に基づいています。

現住建造物等放火罪の成立には、人が現に住居として使用していること、または他人が現在する建造物であることの認識、そして放火によりその客体を焼損させることの認識があったことが必要です。

現住建造物等放火罪の法定刑は、死刑、無期又は5年以上の懲役と非常に重い犯罪です。
また、現住建造物等放火罪は、裁判員裁判の対象事件となります。

現住建造物等放火罪を含めた刑事事件でお困りの方は、刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に今すぐご相談ください。
無料法律相談初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。

犯人隠匿等事件で逮捕

2019-11-06

犯人隠匿等事件で逮捕

犯人隠匿等罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
会社役員のAさんは、スピード違反の疑いで兵庫県加古川警察署から呼び出しを受けました。
Aさんは、知人のBさんに身代わり出頭を頼み、Bさんは了承し、兵庫県加古川警察署に出頭しました。
しかし、後日、BさんがAさんの身代わりで出頭したことが明らかになり、Bさんは犯人隠避罪で逮捕されることになりました。
(フィクションです)

前回のブログで取り上げた「逃亡の罪」とも関連する「犯人隠匿等罪」。
あおり運転で指名手配されていた男をかくまったとして、犯行時に車に同乗していた女が「犯人隠匿等罪」で逮捕されたニュースは、記憶に新しいところではないでしょうか。

犯人隠匿等罪とは

刑法第103条 
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

犯人隠匿等罪は、罰金以上の刑にあたる罪を犯した者または拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた場合に成立する犯罪です。
犯人隠匿等罪について規定する刑法第103条の保護法益は、国家の刑事司法作用の適正な運用です。
犯人や拘禁中の者を蔵匿・隠避する行為は、そのような者の発見や身柄確保を妨げ、捜査や審判、刑の執行などに支障をきたすことになり、刑事司法作用が適切に運用できなくおそれを生じさせるからです。

客体

犯人隠匿等罪の客体は、①罰金以上の刑にあたる罪を犯した者、または、②拘禁中に逃走した者、です。

①罰金以上の刑にあたる罪を犯した者
「罰金以上の刑にあたる罪」とは、法定刑に罰金以上の刑が含まれている罪をいいます。
法定刑として拘留や科料だけが規定されている侮辱罪や軽犯罪法違反といった軽微な罪は除外されます。
「罪を犯した者」の意義については、判例は、司法作用を妨害する者を処罰する立法目的に照らし、犯罪の嫌疑によって捜査中の者も含むと解しています。

②拘禁中に逃走した者
逃走罪の主体として処罰の対象となる者である必要はなく、被拘禁者奪取罪の客体として奪取された者をも含みます。
つまり、法令により拘禁された者であって、出入国管理及び難民認定法により入国者収容所等に収容された者も含みます。

行為

犯人隠匿等罪の実行行為は、犯人等を①蔵匿し、または②隠避させることです。

①蔵匿
「蔵匿」とは、官憲の発見・逮捕を免れるべき隠匿場を供給してかくまうことをいいます。

②隠避
「隠避」は、蔵匿以外の方法により官憲の発見・逮捕を免れさせる一切の行為です。
判例によれば、隠避にあたる行為としたものに、逃走するための資金を供与すること、情報を提供したりすること、犯人が偽名を使えるように他人の戸籍謄本等を供与すること、犯人をハイヤーに載せて潜伏予定場所まで送ること、犯人の所在について警察官に虚偽の陳述をすること、参考人が犯人に依頼されて捜査官に虚偽の供述をすること、身代わり犯人として自首すること、などがあります。

故意

客体である被蔵匿者が罰金以上の刑にあたる罪を犯した者であること、または、拘禁中逃走した者であることを認識し、かつ、これを蔵匿・隠避することを認識していなければ、犯人隠匿等罪は成立しません。
罰金以上の刑にあたることの認識については、判例は、単に、実際上、罰金以上の刑にあたる犯人(例えば、殺人犯人、窃盗犯人など)であるといった認識があれば足りるとしています。

上記ケースのような身代わり出頭は、Aさんがスピード違反(速度違反の程度により、法定刑が罰金以上となります)で警察から呼び出されていることを知っていたにもかかわらず、BさんはAさんと偽って、もしくは、Bさんが自分が運転していたと虚偽の供述をして、真犯人であるAさんの発覚を妨げる行為を行っていますので、犯人を隠避したと言え、犯人隠避罪に問われることになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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逃走の罪で逮捕されたら

2019-11-05

逃走の罪で逮捕されたら

逃走の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

保釈中の逃走、刑務所や留置場からの逃走など、昨今は「逃走」に関するニュースが大きく世間を騒がせました。
今回は、刑法に規定されている逃走の罪についてご紹介していきたいと思います。

逃走の罪は、国家の拘禁作用を保護法益としています。
逃走の罪には、被拘禁者が自ら逃走する場合と、被拘禁者を他者が逃走させる場合とがあります。

1.単純逃走罪

第九十七条 裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、一年以下の懲役に処する。

単純逃走罪は、期待可能性の程度が低いため、法定刑は低くなっています。

単純逃走罪の主体は、「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者」です。
「裁判の執行により拘禁された既決の者」というのは、確定判決によって、刑事施設に拘禁されている者のことです。
具体的に言えば、懲役・禁錮・拘留に処せられ拘禁されている者、死刑の言渡しを受けて執行に至るまでの間拘置されている者、罰金又は科料を納めることができず一定期間労役場に留置されている者です。
「裁判の執行により拘禁された未決の者」とは、勾留状によって、刑事施設又は警察留置場に拘禁されている被告人又は被疑者をいい、逮捕された者は含まれません。

単純逃走罪の行為である「逃走」とは、拘禁から離脱すること、つまり、看守者の実効的支配から脱することを意味します。
刑事施設等の外へ脱出するなど、看守者の実効的支配を脱した時点で既遂となります。

2.加重逃走罪

第九十八条 前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、三月以上五年以下の懲役に処する。

加重逃走罪の主体は、①刑法97条(単純逃走罪)に規定する者、又は②勾引状の執行を受けた者、です。
②については、一定の場所に引致するために発せられる勾引状の執行を受けた被告人、身体検査の対象者、証人などが該当します。
ここでいう「勾引状」は、一定の場所で身体の自由を拘束する令状を広く指すとの理解より、逮捕状により逮捕された被疑者、収容状・勾留状の執行を受けたが拘禁される以前の者などを含むとの見解が有力とされています。

加重逃走罪の行為は、①拘禁場若しくは拘束の為の器具を損壊し、②暴行若しくは脅迫により、又は③2人以上通謀して、逃走することです。

3.被拘禁者奪取罪

第九十九条 法令により拘禁された者を奪取した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

「法令により拘禁された者」とは、確定判決により刑事施設に拘禁されている者、勾留状によって刑事施設・警察留置場に留置されている被疑者・被告人、勾引状の執行を受けた者、逮捕状により逮捕された被疑者、収容状・勾留状の執行を受けた者、現行犯逮捕された被疑者、緊急逮捕され逮捕状が発せられる前の者、逃亡犯罪人引渡法上の拘禁・仮拘禁に付された者、出入国管理及び難民認定法により入国者収容所等に収容された者などが含まれます。
「奪取」は、被拘禁者を自己又は第三者の実力的支配化に移すことをいいます。

4.逃走援助罪

第百条 法令により拘禁された者を逃走させる目的で、器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為をした者は、三年以下の懲役に処する。
2 前項の目的で、暴行又は脅迫をした者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

逃走援助罪は、法令により拘禁された者を逃走させる目的で、器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為をした場合に成立します。
現実に逃走させたことは必要ではなく、逃走の危険を有する行為が行われたことで足ります。

5.看守者等による逃走援助罪

第百一条 法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者を逃走させたときは、一年以上十年以下の懲役に処する。

看守者や護送者が拘禁者の逃走を援助したさいに成立する罪で、看守者・護送者を主体とする逃走援助罪の加重的形態です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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公務執行妨害で現行犯逮捕

2019-11-04

公務執行妨害で現行犯逮捕

公務執行妨害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、兵庫県神戸市西区の駅で駅員に暴行したとして兵庫県神戸西警察署公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕されました。
Aさんは、当時酒に酔っており、ICカードをかざしても改札が開かないことに腹を立て、対応した駅員に対して殴るなどの暴行を加えたということです。
逮捕の知らせを受けたAさんの家族は、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探しています。
(実際の事件を基にしたフィクションです)

公務執行妨害罪について

公務執行妨害罪は、刑法第95条1項に規定されており、公務員によって執行される職務を保護法益とするものです。

刑法第九十五条 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

公務執行妨害罪は、①公務員が、②職務を執行するにあたり、③公務員に対して暴行又は脅迫を加えた、場合に成立する罪です。

①公務員

「公務員」は、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員です。
外国の公務員は、含まれません。
さて、上記ケースでは駅員に対して暴行を加えたことが問題となっていますが、この場合、駅員は「公務員」に該当するのでしょうか。
昔はJRは国鉄で、駅員も公務員でしたが、今は民間となっていますので、公務員には該当しません。
一方、市営地下鉄などの公営交通は、地方自治体の交通局が運営しており、その職員は、基本的に公務員となります。
但し、ところによっては業務を外部に委託している場合もあります。

②職務を遂行するにあたり

「職務」の範囲については、権力的公務に限るか、それとも非権力的公務をも含むのかが問題となります。
この点、判例は、公務執行妨害罪における「職務」は、権力的・強制的なものであることを必要とせず、ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれるとしています。

「執行するに当たり」の意義について、職務を執行する際にという意味と理解されています。
判例は、具体的・個別的に特定された職務の執行の開始から終了までの時間的範囲、及びまさに当該職務の執行を開始しようとしている場合のように当該職務の執行と時間的に接着しこれと切り離し得ない一体的関係にあるとみることができる範囲内の職務行為に限るとしています。

③暴行・脅迫

公務執行妨害罪における「暴行」とは、公務員の身体に対し直接であると間接であるとを問わず、公務員の身体に向けられた不法な有形力の行使をいいます。
例えば、司法巡査が現行犯逮捕の現場で証拠物として差し押さえ、同所に置いた覚せい剤注射液入りアンプルを足で踏みつけて損壊する行為は、司法巡査の職務の執行を妨害するに足る暴行であり、その暴行は間接的に司法巡査に対するものというべきであるとして、暴行に当たるとした判例があります。

公務執行妨害罪における「脅迫」は、人を畏怖させる害悪の告知を広く含みます。

公務執行妨害罪における暴行・脅迫は、それによって現実に職務執行妨害の結果が発生したことを必要とせず、妨害となるべきものであればよいとされます。

公務執行妨害事件は、酔っ払って気が大きくなっていたり、ついカッとなり感情的に公務員に手を出してしまうケースが多く、そのような場合には、その現場で現行犯逮捕されるケースも多くなっています。
相手が警察官である場合はなおさら、その場で逮捕されることになります。
飲酒や一時的な感情により犯してしまいやすいため、本人がちきんと反省し、証拠隠滅や逃亡のおそれがない場合には、逮捕に引き続き長期の身体拘束となる可能性は高くはないでしょう。
しかし、逮捕から勾留までの間は、被疑者の家族であっても面会することはできませんので、逮捕された方はどのように対応すればよいのか、今後どのような流れになるのか非常に不安な気持ちでいらっしゃるでしょう。
そのような場合であっても、弁護士であればいつでも制限なく逮捕された方と面会(接見)することができます。

ご家族が公務執行妨害で逮捕されお困りであれば、いますぐ刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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少年に対する処分③~検察官送致~

2019-11-03

少年に対する処分③~検察官送致~

少年に対する処分のうちの検察官送致について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aくん(17歳)は、無免許でしたが、友人B(18歳)の車を借りて、兵庫県宝塚市の県道を車で走っていました。
山道の大きなカーブに差し掛かったところ、スピードを出しすぎて曲がり切れず、対向車線にはみ出し、対向車に衝突してしまいました。
幸い、対向車の運転手に命の別状はありませんでしたが、全治3か月の大けがを負わすことになりました。
Aくんは、兵庫県宝塚警察署に過失運転致傷および道路交通法違反の疑いで現行犯逮捕されました。
Aくんは、接見に訪れた弁護士から「検察官送致」という言葉を初めて耳にしました。
(フィクションです)

検察官送致について

捜査機関は、少年の被疑事件について、捜査の結果、犯罪の嫌疑がある場合、及び犯罪の嫌疑が認められないが家庭裁判所の審判に付すべき事由がある場合には、すべての事件を家庭裁判所に送致しなければなりません。
事件を受理した家庭裁判所は、少年に対して適切な処分を決定します。
家庭裁判所が決定する処分のひとつに「検察官送致」というものがあります。

検察官送致は通称「逆送」と呼ばれ、少年に保護処分ではなく刑事処分を科すことが相当であると判断した場合、家庭裁判所が検察官に事件を送致することをいいます。

捜査機関により犯罪の嫌疑と審判の必要性が認められ、いったんは家庭裁判所に事件を送ったものの、家庭裁判所が調査・審判を行った結果、やはり当該少年には保護処分よりも刑事処分のほうが適切だと判断され、もう一度捜査機関に事件が送られるというものです。

検察官送致は、次の2つに分けられます。

(1)刑事処分相当を理由とする検察官送致

犯行時14歳以上の少年の事件で、死刑・懲役・禁錮に当たる罪を犯した少年について、その罪質・情状に照らして刑事処分が相当と認める場合、家庭裁判所は逆送の決定をすることができます。
また、家庭裁判所は、犯行時に16歳以上の少年で、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に該当する事件は、原則、検察官送致としなければなりません。
しかし、この場合でも、調査の結果、犯行の動機・態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認める場合は、検察官送致以外の処分を決定することができます。

(2)年齢超過を理由とする検察官送致

審判時に少年が20歳に達している場合、家庭裁判所は検察官送致の決定をしなければなりません。
家庭裁判所に送致された時点では20歳未満であっても、終局処分が決定する前に20歳に達してしまった場合には、審判時に20歳未満ではなくなってしまい審判条件を欠くため、家庭裁判所で審判を受けることができません。

家庭裁判所から検察官送致された事件について、一定の場合を除いて、検察官は起訴しなければなりません。
しかし、検察官が起訴した場合でも、裁判所は、事実審理の結果、少年を保護処分に付するのが相当であると認めるときには、事件は再び家庭裁判所に送致され、保護処分がなされる可能性もあります。

検察官送致となれば、ほとんどの場合、起訴されることになります。
起訴されると、有罪となる可能性は高く、有罪となれば前科が付くことになります。
ですので、検察官送致となるのを回避し、保護処分となるよう家庭裁判所に働きかけることが必要となります。
一方、家庭裁判所の終局処分が少年院送致となり、長期の身体拘束を強いられるよりも、検察官送致により略式手続で罰金刑となるほうが、前科は付くものの、身体拘束の期間が短く、より早く社会復帰できるという点もあります。
どのような処分少年の更生に適しているのかは、事件の内容や少年の性格や周りの環境によっても異なりますので、少年事件でお困りであれば、一度少年事件に詳しい弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件・刑事事件を専門とする法律事務所です。
お子様が事件を起こしお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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少年に対する処分②~保護処分~

2019-11-02

少年に対する処分②~保護処分~

少年に対する処分保護処分)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

前回のブログでは、少年に対する処分のうち、中間処分である試験観察、そして終局処分の審判不開始決定および不処分決定について紹介しました。
今回は、終局処分である保護処分について解説していきます。

保護処分

家庭裁判所に送致された少年を構成させるために行われる少年法上の処分です。
保護処分には、①保護観察、②少年院送致、③児童自立支援施設または児童養護施設送致、の3つがあります。

1.保護観察

保護観察処分は、少年が保護観察官や保護司の指導監督の下、社会内で更生できると判断された場合に付される保護処分です。
保護観察に付された場合、少年は決められた遵守事項を守りながら家庭等で生活し、保護観察官や保護司と定期的に面会し現状報告した上で、彼らから生活や交友関係などについて指導を受けることになります。

保護観察の期間は、原則として、少年が20歳に達するまでです。
ただし、決定時から少年が20歳になるまでの期間が2年に満たない場合は、2年となります。
また、少年の改善更正に役立つと判断される場合には、期間を定めて保護観察を一時的に解除することもあり、保護観察継続の必要性がなくなったと認められるときは、保護観察は解除されます。

2.少年院送致

少年院送致は、再非行のおそれが高く、社会内での更生が期待できない場合に、少年院に収容して矯正教育を受けさせる保護処分です。
収容される少年院は、第1~4種少年院があり、どの少年院に収容されるかは、保護処分として少年院送致となる少年の入院時の年齢、犯罪的傾向の程度、心身の状況等に応じて家庭裁判所が決定します。

●第1種少年院
保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がないおおむね12歳以上23歳未満の者が収容されます。

●第2種少年院
保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がない犯罪傾向が進んだおおむね16歳以上23歳未満の者が収容されます。

●第3種少年院
保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害があるおおむね12歳以上26歳未満の者が収容されます。

●第4種少年院
少年院において刑の執行を受ける者が収容されます。

少年院に収容することができる期間は、原則として少年が20歳に達するまでですが、少年院送致決定時に少年が19歳を超えている場合には、決定の日から1年間に限り、収容を継続することができます。
収容期間は本来不定期ですが、標準的な期間は2年以内とされており、第1種少年院については、6ヶ月以内とするものもあります。
家庭裁判所が、収容期間について処遇勧告を行う場合があります。
家庭裁判所から短期間または特別短期間の処遇勧告があった場合には、少年院はこれに従うとされています。
特段、収容期間について勧告がなされていない場合には、収容期間はおおむね1年となる傾向にあります。
①特別短期間
収容期間は、4か月以内で、一般短期処遇の少年よりも非行の傾向が進んでいない少年が該当します。
②短期間
収容期間は、原則6ヶ月以内で、少年が抱く問題がそれほど大きいものではなく、短期間の少年院での矯正教育により、矯正と社会復帰が期待できる少年が対象となります。
③長期間
収容期間は、原則2年以内です。第1種少年院で家庭裁判所の処遇勧告がない場合と、第2種及び第3種少年院では、長期間となります。

3.児童自立支援施設または児童養護施設送致

児童自立支援施設は、不良行為をなし、またはなすおそれのある児童および家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、または保護者の下から通わせて、ここの児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援し、あわせて退所した者についてその他の援助を行うことを目的とした施設です。
児童自立支援施設送致が選択される場合は、年齢が中学生相当の少年で、少年自身の非行性はさほど進んでいないが、保護者が養育を放棄していたり、少年を虐待しているなど家庭環境に大きな問題がある場合が多くなっています。
児童養護施設は、保護者のない児童、虐待されている児童、その他環境上養護の必要がある児童を入所させ、これらの児童を養護し、退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行う施設です。
実務上、児童養護施設送致が選択されるケースはそう多くありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、経験豊富な少年事件・刑事事件専門の弁護士が、少年やご家族としっかりとコミュニケーションズをとしながら、少年の更生にとって最善となるよう尽力していきます。

少年に対する処分①~試験観察、審判不開始、不処分~

2019-11-01

少年に対する処分①~試験観察、審判不開始、不処分~

少年に対する処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

少年が事件を起こしたら

20歳未満の者(以下、「少年」といいます。)が、犯罪行為を行った場合、捜査機関による捜査が終了すると、おおむねすべての事件が家庭裁判所に送られます。
家庭裁判所は、調査の結果、審判を開始するか否かを決定します。
審判開始の決定がされた場合は、家庭裁判所は審判を経て、少年に対する処分を決定します。
家庭裁判所が決定する処分には、中間処分と終局処分とがあります。

中間処分

終局処分決定前に、中間的な措置としてなされる中間決定です。

試験観察

終局処分の決定を一定期間保留する中間処分で、少年を家庭などに戻し、その経過を見た上で、終局処分を決定するものです。
試験観察には、少年を家庭に戻す在宅試験観察と、適当な施設、団体や個人に少年の補導を委託する補導委託とがあります。
前者の措置では、普段の生活を送りながら、定期的に家庭裁判所に出向き調査官と面接をすることが求められることが多く、試験観察の期間は、おおむね3~6ヶ月となっています。
後者の措置は、家庭環境や交友関係が非行の原因となっているなど、少年を元の生活に戻すと更生に支障をきたすのではないかという不安がある一方、少年院に収容するよりも社会内での処遇が適切である事案などで、補導委託先に少年を預け、その指導監督のもとでの更生に期待してとられるものです。
こちらの期間は、通常6ヶ月ほどです。
試験観察は、少年院送致とするか決めかねる際にとれらることが多く、期間中問題がなければ、最終審判で不処分や保護観察となるケースが多くなっています。

終局処分

1.審判不開始

家庭裁判所は、調査の結果、審判に付すことができず、又は審判に付するのが相当でないと認めるときは、審判を開始しない旨の決定をしなければなりません。
この決定を「審判不開始決定」といいます。
審判不開始の決定には、次の2種類があります。

①審判に付することができない場合
法律上または事実上、審判に付することができない場合であって、以下の場合です。
(1)非行事実なし
(2)所在不明等
(3)その他(審判条件が存在しないとき等)

②審判に付するのが相当でない場合
審判に付するべき事由はあるけれども、少年の要保護性が既に解消し、不処分、保護処分、児童福祉法上の措置、刑事処分のいずれも必要がなく、審判をする必要がない場合であって、以下の3つに分けられます。
(1)保護的措置
調査官からの訓戒、教育的指導、被害者について考えたり話を聞く機会を設け少年の内省を求めるなどの保護的措置によって、少年の要保護性が既に解消した場合。
(2)別件保護中
少年が他の事件で既に保護処分に付されており、本件では特に保護処分に付する必要がない場合。
(3)事案軽微
非行事実が極めて軽微で、警察・家庭・学校などで適切な措置がとられており、既に要保護性が解消され再非行のおそれもない場合。

2.不処分

家庭裁判所は、審判の結果、保護処分に付することができず、又は保護処分に付する必要がないと認めるときは、その旨の決定をしなければなりません。
この決定を、「不処分決定」といいます。
審判不開始決定とは異なり、調査官による調査を経て、審判が開かれます。

不処分の決定には、次の2つに分けられます。

①保護処分に付することができない場合
法律上または事実上、保護処分に付することができない場合であって、以下の場合です。
(1)非行事実なし
(2)住所不明等
(3)その他(審判条件が存在しないとき等)

②保護処分に付する必要がない場合
審判を行った結果、要保護性が認められず、保護処分、児童福祉法上の措置、刑事処分のいずれの必要もない場合です。
審判不開始と同様に、保護的措置、別件保護中、事案軽微の3つに分けられます。

非行事実を認めている場合、審判不開始不処分となるには、調査又は審判時に、要保護性が解消されていると判断されることが必要です。
そのためには、できるだけ早い段階から要保護性解消に向けて少年や家庭・学校などに働きかける必要があります。
少年事件への対応には、少年事件に精通した弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
お子様が事件を起こし対応にお困りであれば、弊所の弁護士に今すぐご相談ください。
無料法律相談初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。

刑事事件で執行猶予

2019-10-31

刑事事件で執行猶予

刑罰の種類と執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県加西警察署に詐欺容疑で逮捕された会社員のAさんは、借金返済のためにネットで募集していた高額アルバイトに応募し、いわゆる「受け子」として特殊詐欺に関与していました。
警察からは、正式裁判になると言われているAさんは、どうにか実刑判決は避けられないものかと、接見にきた弁護士に執行猶予について聞いています。
(フィクションです)

刑罰にはどんなものがあるの?

刑罰は、犯罪に対する反作用であり、犯罪を行った者に対して科される制裁であるとされます。
刑法および特別刑法において「刑」とされる刑罰は、刑法第9条に定められる主刑または付加刑としての7種類の刑を指します。

第九条 死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。

「主刑」とは、独立に科し言い渡すことができる刑罰をいい、「付加刑」とは、主刑に付加してのみ科し言い渡すことができる刑罰をいいます。

刑罰を科せられることによって受刑者がはく奪される法益という観点から、刑罰を種類分けすると、次のように分けられます。

(1)生命刑:受刑者の生命を剥奪する刑罰(死刑)
現行法上最も重い究極の刑罰です。
死刑は、刑事施設内において、絞首して執行されます。

(2)自由刑:受刑者の自由を剥奪する刑罰(懲役刑、禁錮刑、拘留刑)
①懲役
懲役は、最も主要な刑罰ですが、死刑に次ぐ重い刑罰となっています。
「所定の作業を行わせる」点で禁錮や拘留とは異なります。
無期及び有期の場合があり、有期は1月以上20年以下とされています。
ただし、有期懲役を加重減軽する場合には、30年にまで引き上げることができ、1月未満に引き下げることができます。
②禁錮
所定の作業がない点で懲役と異なりますが、希望により許可されることもあります。
③拘留
30日未満の短期自由刑で、軽微な犯罪に対する刑として定められています。

(3)財産刑:受刑者から一定額の財産を剥奪する刑罰(罰金刑、科料刑、没収)
①罰金
1万円以上の財産刑です。
②科料
千円以上1万円未満の軽微な財産刑で、軽微な犯罪に対する刑として定められています。
罰金・科料を完納することができない場合には、労役場に留置されます。
③没収
上の主刑に付加して科される財産刑で、物の所有権を剥奪して、国庫に帰属させる処分をいいます。
没収の対象となるのは、以下のものです。
・偽造通貨行使罪における偽造通貨など、犯罪行為を組成した物。
・殺人に使用された凶器であるナイフなど、犯罪行為のために用い、又は用いようとした物。
・通貨偽造罪における偽造通貨など、犯罪行為によって生じた物、又は賭博によって得た金銭など、犯罪行為によって得た物、犯罪行為の報酬として得た物。
・犯罪行為によって生じた物、犯罪行為によって得た物、犯罪行為の報酬として得た物の対価として得た物。
没収は、その物が共犯者を含む犯人以外の者に帰属しない場合に限り許可されます。

有罪判決が言い渡されると、上のような刑罰が科される可能性があるわけですが、検察官に起訴され、有罪となった場合、必ずしも言い渡された刑罰がすぐに執行されるわけではありません。

執行猶予とは

執行猶予とは、一定の期間他の刑事事件を起こさないことを条件として、刑の執行を猶予する制度をいいます。
執行猶予付きの判決が言い渡された場合、すぐに刑務所に行くことはなく、執行猶予期間中に無事に経過すれば、裁判官から言い渡された刑罰を実際に受けなくて済むのです。

執行猶予の対象となる要件は、
①前に禁固以上の刑に処せられたことがない者、
②前に禁固以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑に処せられたことがない者
について、3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金を言い渡す場合となります。
しかし、以上の要件は執行猶予の対象となる要件であり、執行猶予を付けるか否かは、裁判官が決めます。
上の要件を満たしており、かつ、「本人が反省している」「犯罪が悪質でない」「執行猶予を付しても再犯のおそれがない」といった情状が考慮され、執行猶予を付けるか否かを判断します。

刑事事件を起こし、有罪となった場合でも、執行猶予により直ちに刑務所に入ることなく社会に復帰することができるのです。
執行猶予とならないかお困りの方は、刑事事件に精通する弁護士に執行猶予獲得に向けた弁護活動を依頼されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。

強制わいせつ致傷事件で裁判員裁判

2019-10-28

強制わいせつ致傷事件で裁判員裁判

強制わいせつ致傷事件と裁判員裁判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県川西市に住むVさんは、アルバイトが終わり最寄駅から自宅まで徒歩で帰宅していました。
すると、人気のない場所で、突然背後から何者かに羽交い絞めにして引き倒され、「大声出したらしばくからな。」と言われ、服の中に手を入れられ胸を鷲掴みにされました。
Vさんは必死に抵抗したため、犯人はそのまま走り去っていきました。
Vさんは引き倒された際に膝や腕に怪我をしていました。
Vさんは兵庫県川西警察署に被害届を提出し、同署は捜査に着手しました。
後日、兵庫県川西警察署は、市内に住むAさんを強制わいせつ致傷の容疑で逮捕しました。
強制わいせつ致傷事件は裁判員裁判対象事件やからな。」と警察から言われたAさんは、接見に訪れた弁護士に裁判員裁判について質問しました。
(フィクションです)

強制わいせつ致傷罪について

強制わいせつ致傷罪は、強制わいせつ罪または強制わいせつ未遂罪を犯し、その結果人を負傷される犯罪です。
強制わいせつ致傷罪は、強制わいせつ罪には暴行・脅迫という手段をもって実行され、被害者に致傷結果が生じることが多いため、これを重く処罰するものです。
強制わいせつ致傷罪の法定刑は、無期または3年以上20年以下の有期懲役です。

裁判員裁判とは

通常、裁判は、裁判官が行います。
これは、民事事件も刑事事件も変わりありません。
しかし、一定の事件については、裁判官3名と、一般市民から選ばれた裁判員6名の合計9名で裁判が開かれます。
このような裁判のことを「裁判員裁判」といいます。

裁判員裁判対象事件は、①死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる事件、そして、②法定合議事件(短期1年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪の事件の一部)であって故意の犯罪により人を死亡させた事件(①に当たるものを除く)です。
殺人罪や放火罪は①に当たり、傷害致死罪は②になります。
また、法定刑に死刑又は無期の刑がある事件は、人が死亡したかどうかを問いませんから、殺人未遂罪も①によって対象事件となります。
これらに対し、過失運転致死罪は、故意の犯罪ではありませんから、①②のいずれにも当てはまらず、裁判員裁判対象事件ではありません。
Aさんは、強制わいせつ致傷罪で起訴される可能性がありますから、そうなればAさんは裁判員裁判で裁かれることになります。

裁判員裁判の進み方

裁判員裁判は、通常の裁判とは異なる進み方をします。
通常の裁判では、法廷に裁判官・検察官・弁護人・被告人が出席したうえで、公開の法廷で議論が進められます。
これに対し、裁判員裁判では、実際の裁判が開かれる前に、公判前整理手続という手続きが行われます。
公判前整理手続とは、裁判員に実際に審理をしてもらう前に、裁判官・検察官・弁護人の三者により、本件事件の争点や、実際に裁判に提出する証拠を整理する手続きをいいます。
このような手続きの中で、事件の争点や、重要な事実が整理され、裁判員には、最初から争点や判断の対象が提示されるようになっています。
公判前整理手続を経た事件の場合、この手続きが終結した後には、特別の事情がない限り新たな証拠の提出が許されなくなります。

このように、裁判員裁判は、裁判員には負担が少ないように設計されていますが、当事者の立場から見れば、適切な時期に適切な主張をしなければならないという制度になっています。
裁判員裁判には、刑事事件に強い弁護士に弁護を依頼されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に取り扱っており、裁判員裁判を経験した弁護士も多数所属しております。
ご家族が裁判員裁判対象の事件を起こしてしまいお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。

覚せい剤取締法違反で起訴~公判手続の流れ~

2019-10-27

覚せい剤取締法違反で起訴~公判手続の流れ~

公判手続の流れについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県神戸市須磨区に住むAさんは、覚せい剤取締法違反の疑いで兵庫県須磨警察署に逮捕されました。
逮捕・勾留後に、神戸地方検察庁は同罪で神戸地方裁判所公判請求を行いました。
Aさんは、公判手続の流れについて、弁護人に説明を受けています。
(フィクションです)

検察官が裁判所に対して公判請求を行うと、裁判所、検察官、被告人・弁護人が出席し公開の法廷で審理を行うことになります。

公判期日における手続は、(1)審理手続、そして、(2)判決の宣告手続とに大きく分けられます。

1.審理手続

審理手続は、①冒頭手続、②証拠調べ手続、③弁論手続から成ります。

①冒頭手続
冒頭手続とは、(a)人定質問、(b)起訴状朗読、(c)権利告知、(d)被告人および弁護人の陳述という手続からなるものです。

人定質問
裁判長は、出席した被告人に対し、人違いでないことを確かめるため、被告人の氏名・年齢・職業・住所・本籍などを質問します。

起訴状朗読
人定質問に続いて、検察官が起訴状を朗読します。
これは、裁判所に対して審理の対象を、被告人に対して防御の対象を明らかにするために行われるものですので、起訴状に記載されている公訴事実、罪名、罰条が朗読されます。

権利の告知
裁判長は、被告人に対して、黙秘権やその他の権利を告知します。

被告人および弁護人の陳述
裁判長は、被告人および弁護人に対し、被告事件について陳述する機会を与えなければなりません。
この際に、被告人に対し、起訴状の記載内容に間違いはないどうかを尋ね、公訴事実の認否をさせ、争点を明確にします。

②証拠調べ手続
裁判所が書証や証人等の証拠を取り調べる手続で、最初に検察側から立証が行われ、その後被告人側の立証が行われます。
証拠調べ手続は、検察側の立証が先立ち、(a)冒頭陳述、(b)証拠調べ請求、(c)証拠調べ請求に対する意見、(d)証拠決定、(e)証拠調べとなり、次に弁護側の立証に移り、(a)証拠調べ請求、(b)証拠調べ請求に対する意見、(c)証拠決定、(d)証拠調べ、(e)被告人質問という流れとなります。

冒頭陳述
証拠調べの始めに、証拠により証明すべき事実を明らかにするための手続です。
これは、証拠調べの冒頭で検察官に事件の全貌を明らかにする主張を行わせることにより、裁判所に対し、審理方針の樹立及び証拠の関連性等の判断材料を提供するとともに、被告人の防御の便に資するようにする趣旨に基づくものです。
検察官の冒頭陳述の後に、裁判所の許可を得て、被告人・弁護人も冒頭陳述をすることができます。

証拠調べ請求
検察官、被告人及び弁護人の請求に基づき証拠調べの請求がなされます。
証拠調べとは、証人などの尋問、証拠書類・証拠物の取調べ、検証、鑑定などをいいます。

証拠決定
証拠調べ請求に対して、裁判所は、証拠調べの決定または請求却下の決定を行います。
証拠決定を行うにあたって、裁判所は、請求に基づく場合は相手方の意見を聴きます。

証拠調べ
証拠書類や証拠物の取調べ、証人尋問、鑑定人の尋問などを実施します。

被告人質問
被告人は黙秘権を有しているので、終始沈黙したり、ここの質問に対し供述を拒むことができます。
被告人が任意でした供述は、証拠となります。

③弁論手続
証拠調べ手続が終ると、検察官は事実および法律の適用について意見を陳述しなければなりません。
これを「論告」といいます。
検察官が有罪を主張する際、量刑についても意見を述べるのが通常であり、この意見を「求刑」といいます。
被告人・弁護人は、最後に意見を陳述する機会が与えられています。

2.判決の宣告手続

判決は、公判廷において宣告し、これを告知します。
裁判長が、主文および理由を朗読し、または主文の朗読と同時に理由の要旨を告げなければなりません。

公判では、無罪や無実を訴える、執行猶予や減刑を求めるなど争い方も事件により異なります。
公判における弁護活動については、法廷における弁護士の技術が判決結果に大きく影響を与えることになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件を起こしお困りの方は、弊所の刑事事件専門の弁護士に今すぐご相談ください。
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