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少年審判の流れ
少年審判の流れ
少年審判の流れについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市灘区に住むAくんは、窃盗の容疑で兵庫県灘警察署に逮捕されました。
その後、釈放され在宅事件として捜査は進み、神戸家庭裁判所に送致されました。
Aくんの両親は、少年審判に向けてどう準備すればよいか分からず弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
少年審判の特徴
刑事事件の公判と比べると、少年審判には、次のような特徴があります。
(1)職権主義的審問構造
刑事裁判では、検察官および被告人・弁護人による主張・立証や意見陳述を公判手続の基本に置き、裁判所の職権的な活動は補充的なものにとどめる「当事者主義」に基いて進められます。
一方、少年審判は、家庭裁判所が自ら審判手続を主導し、少年に関する調査を行い、その結果をもとに審理を行って処分を言い渡すものであり、職権主義的審問構造がとられています。
この理由には、裁判所による合理的な職権行使により、非行事実だけではなく、非行に至る動機・背景、少年の成育歴、家庭環境、性格・資質などを柔軟に調査・考慮することが可能となり、少年一人ひとりに合った審理を行うことで、少年の健全育成の確保という少年法の趣旨に沿うことが挙げられます。
(2)非公開
少年審判は原則として非公開とされています。
成長発達途上にある少年の情操を保護し、社会復帰を円滑に進める必要があること、少年やその家族のプライバシーに深くかかわる要保護性の審理を適切に行うためには、手続内容の秘密性が求められるためです。
(3)証拠法則
予断排除の原則や伝聞法則の適用がなく、裁判官が審判期日の前からあらゆる証拠に触れることができます。
少年審判の流れ
少年審判は、審判手続や進行について裁判官の裁量が大きくなっています。
ですので、審判の進行は裁判官によって異なることもありますが、概ね次の順序により行われます。
①人定質問、黙秘権の告知、非行事実の告知、非行事実に関する少年・付添人の陳述
↓
②非行事実の審理(証人尋問、少年本人質問)
↓
③要保護性の審理(少年本人質問、保護者・関係者への質問等)
↓
④調査官・付添人の処遇意見の陳述、少年の意見陳述
↓
⑤決定の言渡し
①人定質問、黙秘権の告知、非行事実の告知、非行事実に関する少年・付添人の陳述
人定質問
裁判官が審判廷の在席者を確認し、少年や保護者等について人定質問(人違いでないかどうかの確認するための質問)が行われます。
黙秘権の告知
少年審判規則は、裁判官が第1回審判期日の冒頭で、少年に対して黙秘権についてわかりやすく説明をしなければならないことを規定しています。
非行事実の告知とこれに対する少年の陳述
裁判官から審判に付すべき事由の要旨が告げられ、これに対する少年の陳述が行われます。
非行事実に関する付添人の陳述
付添人に対しても、非行事実に対する陳述が求められます。
②非行事実の審理
証人尋問
非行事実に争いのある事件では、証人尋問を行うことが多くなっています。
裁判所および付添人は証人に尋問をすることができます。
少年本人質問
次に、裁判官および付添人は、少年に対して質問を行います。
③要保護性の審理
少年本人質問
裁判官および付添人は、要保護性に関する質問を少年に対して行います。
要保護性についての質問は、最後に調査官からも行われます。
保護者・関係者に対する質問
次に、少年の保護者や審判に在席している関係者に対して、要保護性に関連する質問を少年に対して行います。
④調査官・付添人の処遇意見の陳述、少年の意見陳述
調査官の処遇意見の陳述
調査官は、審判において、裁判官の許可を得て意見を述べることができますが、調査官の処遇意見は、事前に裁判所に意見書として提出してあるので、審判時に改めて裁判官が調査官に意見を求めることはそう多くありません。
付添人の処遇意見の陳述
付添人も、審判において、裁判官の許可を得て意見を述べることができます。
付添人の意見も、事前に意見書として裁判所に提出してあります。
少年の意見陳述
最後に、裁判官が少年の意見を求め、少年が意見を述べます。
⑤決定の言渡し
審判の全ての手続が終ると、裁判官が決定を言い渡します。
言渡しでは、少年に対する処分の内容を述べ、次に、処分の理由について説明がなされます。
審判の時間は、非行事実に争いがなく、1回の審判で決定まで言い渡す事件では、だいたい40~60分程度となることが多いでしょう。
少年審判の流れは以上の通りとなりますが、少年に対する処分の決定には、少年審判までの活動が大きく影響します。
特に、審理対象のひとつである要保護性の解消については、審判までにしっかりと環境調整を行い、要保護性が解消されたと調査官や裁判官に認めてもらうことが重要です。
お子様が事件を起こしお困りであれば、少年事件・刑事事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
交通事件で在宅起訴
交通事件で在宅起訴
交通事件での在宅起訴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県豊岡市の交差点で左折しようとしたAさんは、左方向から横断していた自転車に気づかず、自車とぶつかり、自転車を運転していたVさんを転倒させてしまいました。
Aさんは慌てて降車し、Vさんの傍に駆け寄ると、Vさんは怪我をしているようだったので、すぐに救急車を呼び、Vさんはそのまま病院に搬送されました。
Vさんに命の別状はなく、転倒時に左肩を骨折し全治2か月の傷害を負っているとのことです。
Aさんは、駆け付けた警察官から事故についての調べを受けたところ、運転前に飲酒していたことが発覚しました。
Aさんは、過失運転致傷および道路交通法違反の容疑で現行犯逮捕されましたが、その後釈放となりました。
在宅事件として捜査は進み、神戸地方裁判所豊岡支部より起訴状が自宅に郵送され、弁護人をどうするかについても聞かれています。
(フィクションです)
在宅起訴
逮捕なしに、若しくは、逮捕されたけれども勾留されなかった、又は、逮捕・勾留されたがその後準抗告が認められるなどして釈放されるなどして、身体を拘束されることなく捜査が進められる事件を「在宅事件」といいます。
在宅事件では、被疑者は通常通りの生活を送りながら、警察や検察の呼び出しに応じて出頭し、取調べを受けることになります。
身体拘束を受けている場合と異なり、会社や学校にも行くことが出来るので、被疑者の生活に大きな支障をきたすことはそうありません。
捜査が終了すると、検察官は当該事件について裁判所に公訴を提起するか否かを決めます。
被疑者が身体拘束されていない状態で、検察官が起訴することを「在宅起訴」と呼びます。
上記ケースのように逮捕後に釈放され、在宅事件として捜査が進む場合、身体拘束を受けている場合と比べると、緊急性が感じられず捜査段階で弁護士に相談されないケースも多いようです。
そして、検察官に公判請求され、起訴状と共に弁護人の選任について問われる旨の連絡が届いて初めて弁護士に相談するといったことも少なくありません。
刑事事件の被疑者として捜査されていることが分かったら、できる限り早い段階で弁護士に相談されるのがよいでしょう。
捜査段階での対応により、最終的な処分結果が大きく異なることもありますので、早めに法律の専門家に相談・依頼されるのことをお勧めします。
起訴状
さて、上記ケースでは、Aさん宅に起訴状が郵送されました。
みなさん、起訴状には一体何が記載されているのかご存知でしょうか。
検察官が、裁判所に対して審理を求める意思表示(「公訴の提起」)を行う場合、検察官は裁判所に対して書面にて行わなければなりません。
その書面を「起訴状」といいます。
起訴状には、次のことを記載しなければなりません。
(1)被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項
起訴状には、被告人を特定するに足りる事項として、「被告人の氏名その他」を記載しなければなりません。
「その他」には、被告人の年齢、職業、住居および本籍、被告人が逮捕または勾留されているときは、その旨を記載することになっています。(刑事訴訟規則164条1項1号・2号)
(2)公訴事実
検察官が設定した被告人がしたとされる事実を起訴状に記載しなければなりません。
被告人が、いつ、どこで、どういった犯罪行為を行ったとする検察官の主張です。
(3)罪名
構成要件の名称と罰条の双方が記載されています。
どんな罪名で起訴されており、どの法律のどの部分にその罪が定められているのかが明確に記載されています。
その他に、作成・提出の年月日の記載、検察官の署名押印、所属検察庁の表示が必要とされます。
被告人が逮捕・勾留されている場合には、その旨を記載して身柄拘束の有無が明らかにされます。
交通事件を起こし、起訴されてお困りの方は、交通事件も取り扱う刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談や初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで!
身柄解放~保釈~
身柄解放~保釈~
保釈について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県南あわじ市で侵入盗が多発していました。
兵庫県南あわじ警察署は、犯人特定に向けて捜査を進めていたところ、兵庫県内に住むAとBの犯行であることを突き止めました。
兵庫県南あわじ警察署は、窃盗および住居侵入の疑いでAとBを逮捕しました。
AおよびBは勾留となり、その後神戸地方検察庁洲本支部に同罪で起訴されました。
(フィクションです)
保釈とは
一定額の保釈保証金を納付することを条件に、被告人に対する勾留の執行を停止し、その身体拘束を解く裁判とその執行を「保釈」といいます。
保釈は、被告人に対してのみ認められるものですので、起訴される前の被疑者段階では保釈により釈放されることはありません。
保釈の種類
保釈には、「権利保釈」、「裁量保釈」、義務的保釈」の3種類あります。
1.権利保釈
裁判所は、保釈の請求があったときは、原則として保釈を許可しなければなりません。
例外として、権利保釈の除外事由がある場合には、請求を却下することができます。
除外事由は、次の通りです。
①被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
②被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
③被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
④被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
⑤被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
⑥被告人の氏名又は住居が分からないとき。
2.裁量保釈
裁判所は、権利保釈の除外事由がある場合でも、適当と認めるときは、職権で保釈を許可することができます。
3.義務的保釈
裁判所は、勾留による拘禁が不当に長くなったときは、請求によりまたは職権で、保釈を許可しなければなりません。
保釈保証金の相場
裁判所は、保釈を許可する場合、保釈保証金の金額を決めます。
その金額は、被告人の出頭を確保するものでなければなりません。
犯罪の性質や情状、証拠の証明力、被告人の性格や資産を考慮して、被告人の出頭を確保するのに十分な額が決められます。
ですので、重罪かつ資力のある被告人のであれば、保釈保証金が高額となります。
被告人の資産が特段高額でなく、執行猶予が見込まれるような事件の場合は、保釈保証金は200万円程度となることが多いでしょう。
保釈中に気を付けること
保釈が許可され、保釈保証金を納付し、無事釈放となったからといっても、事件自体は終了していません。
保釈されてから判決までの間に守らなければならない事項があります。
この保釈の条件は、被告人の性格や事件の内容・性質などによって事件毎に異なります。
ほとんどの事件で付される条件は、
・被告人の住居を制限する。
・被害者や共犯者との接触を禁止する。
などが挙げられます。
このような裁判所が定めた条件に違反した場合、裁判所は、検察官の請求により、又は職権で、保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができ、取り消されると再び身体拘束されることになります。
また、保釈保証金も没収されてしまう可能性がありますので、定められた条件に違反しないよう十分に気を付けなければなりません。
保釈保証金の返還
保釈の条件を遵守し、裁判が終れば保釈保証金は戻ってきます。
保釈保証金は、被告人をきちんと裁判に出席させるためのものですので、有罪判決・無罪判決、実刑判決・執行猶予付き判決に関係なく、保釈時の条件に違反しなければ返還されます。
保釈保証金の返還時期は、判決後から2,3日ほどとなっています。
逮捕後、勾留となり長期間の身体拘束を余儀なくされていた方も、保釈で釈放される可能性はありますので、保釈について事前に弁護人にご相談されるのがよいでしょう。
ご家族が逮捕・勾留され、お困りの方は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談や初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡を。
被告人勾留と保釈
被告人勾留と保釈
被告人勾留と保釈について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
大麻取締法違反で逮捕・勾留された大学生のAさん(21歳)は、すぐにでも釈放してほしいと思っています。
勾留に対する準抗告も認められず、勾留満期日まであと少しとなりました。
弁護人からは起訴後すぐに保釈請求すると言われています。
(フィクションです)
被告人勾留
「勾留」とは、被疑者・被告人の身柄を拘束する裁判とその執行をいいます。
この勾留には、被疑者勾留(起訴前勾留)と被告人勾留(起訴後勾留)とがあります。
「被告人勾留」は、その名前からも明らかなとおり、起訴後の勾留です。
被告人勾留は、受訴裁判所が行うことが原則です。
ただし、第1回公判期日前は、原則として控訴の提起を受けた裁判所の裁判官で、事件の審理に関与しない裁判官が行います。
その理由は、勾留に関する処分を行うためには、「罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」があるかないかを調査する必要があるので、第1回公判期日前から受訴裁判所がおこなうことは、予断排除の原則に反するおそれがあるからです。
被告人勾留の期間は、公訴の提起があった日から2か月と、被疑者勾留の期間よりも長くなっています。
特に必要がある場合には1か月ごとに更新されます。
被告人勾留は、次の3つに分類されます。
(1)被疑者勾留中の起訴
被疑者段階で、逮捕・勾留され、起訴前から既に身体拘束を受けている場合で、勾留期間中に同一の犯罪事実について起訴されると、起訴と同時に被疑者勾留は自動的に被告人勾留に切り替わります。
(2)逮捕後まで勾留されていない被疑者の起訴
勾留が決定する前に、検察官により起訴された被告人については、裁判官が職権で勾留するか釈放するかを決めます。
(3)逮捕・勾留されていない在宅の被疑者の起訴
逮捕も勾留もされていない被疑者が起訴された場合、そのまま在宅事件として手続が進行することが多いですが、裁判官または裁判所は職権で被告人を勾留することもできます。
被告人勾留から解放するための手段としては、以下のものがあります。
①勾留の取消し
②勾留の執行停止
③保釈
④抗告、準抗告
保釈制度
「保釈」とは、一定額の保釈保証金の納付を条件として、被告人に対する勾留の執行を停止して、その身体拘束を解く裁判とその執行をいいます。
起訴前の被疑者勾留については保釈は認められませんが、起訴後であれば保釈制度を利用することができます。
裁判所が保釈を認めるときには、保釈金額を定めなければなりません。
その金額は、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければなりません。
ですので、保釈保証金の額は被告人の経済状況によって異なります。
一般的なサラリーマンであれば、だいたい200万円程度が保釈保証金の相場となっています。
当然、経済力がある被告人であれば、それ以上の金額になります。
カルロス・ゴーン被告の最初の保釈にかかる保釈金が10億円であったことも記憶に新しいところですね。
過去最高額は、20億円だといいますから、保釈金の額も様々です。
逮捕・勾留されている場合には、既に長期間の身体拘束を強いられていることになります。
それ以上の身体拘束により被る損害が大きくならないよう、早期に保釈請求をし、釈放されるよう動くことが重要です。
ただし、再逮捕が見込まれる事件では、起訴後すぐに保釈に成功したとしても、その後再逮捕されて再度勾留される可能性も大いにありますので、保釈請求をかけるタイミングは慎重に見極めなければなりません。
ご家族が逮捕・勾留されており、保釈で釈放とならないかお困りの方は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
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刑事事件と時効の成立
刑事事件と時効の成立
刑事事件と時効の成立について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県川西警察署は、平成21年に10代の女性に性的暴行を加えたとして、兵庫県内に住むAさんを強姦の疑いで逮捕しました。
時効成立まで27時間と差し迫っており、警察は逮捕後すぐに神戸地方検察庁にAさんを送致し、検察はAさんを時効完成直前に起訴しました。
(実際の事件を基にしたフィクションです)
時効について
一定の事実状態が一定の期間継続することにより、権利を取得しあるいは喪失するという法律効果を認める制度を「時効」といいます。
時効は、大きく分けて、民法上の時効と刑法上の時効とがあります。
今回は、刑法上の時効についてみていきましょう。
刑法上の時効
刑法上の時効には、刑の時効と公訴の時効の2種類があります。
刑の時効
死刑を除く刑の言渡しが確定した後、刑が執行されずに一定の期間が経過したときに、刑の執行を免除する制度です。
公訴の時効
「公訴時効」とは、一定の期間が経過したことによって公訴の提起ができなくなるという制度です。
公訴時効が完了した場合には、判決で免訴の言渡しをしなければなりません。
この公訴時効の本質については、いろいろと論じられていますが、時の経過によって生じる状態に着目して説明する考え方と、公訴時効制度の機能面から説明する考え方とがあります。
前者には、時の経過によって犯罪に対する社会の応報・必罰感情が沈静し、刑の威嚇力や特別予防力が微弱になるため、刑罰権が消滅するとする実体法説、証人の記憶が曖昧になり、証拠も散逸するため、刑事訴追が困難になるとする訴訟法説、そして、実体法説と訴訟法説とが挙げる両方の現象が併存すると説明する混合説とに考え方が分かれています。
しかし、時の経過によって社会の応報感情が必ずしも弱まっていくわけではないし、証拠の観点からの考え方では、刑の軽重に応じて時効期間を定めている点が十分説明できていないとの批判がなされてきました。
一方、機能面から公訴時効の本質を説明する立場には、犯人が一定期間訴追されていない状態が訴追の利益に優先するという新訴訟法説、そして、長期間訴追されないという事実が処罰制限の根拠となるとする新実体法説とがあります。
公訴時効の期間は、刑の軽重に応じて決められています。
刑事訴訟法
第二百五十条 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については三十年
二 長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪については二十年
三 前二号に掲げる罪以外の罪については十年
○2 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年
以前は人を死亡させた罪であって死刑にあたるものについても公訴時効は適用されていましたが、平成22年の改正法により、これらの罪については時の経過により一律に公訴権を消滅させることは適当ではないとして、公訴時効の対象から除外されました。
時効期間は、訴因として掲げられた犯罪事実の法定刑を基準にして算定されます。
法定刑が複数ある場合は、最も重い刑に従い、刑を加重減軽すべき場合には、処断刑ではなく法定刑に従って算定されます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
「刑事事件を起こしてしまい対応に困っている」、「家族が逮捕されたがどうしたらよいのか」、とお悩みであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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少年保護事件と観護措置
少年保護事件と観護措置
少年保護事件の観護措置について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県丹波市に住むAくん(16歳)は、同級生の女子児童に対して無理わいせつな行為をしたとして、兵庫県丹波警察署に強制わいせつの容疑で逮捕されました。
その後、勾留され、神戸家庭裁判所に送致後、観護措置がとられました。
(フィクションです)
観護措置について
「観護措置」というのは、家庭裁判所が調査や審判を行うために、少年の心情の安定を図りながら、その身柄を保全するとともに、少年の心身の鑑別をしたり、緊急に少年の保護が必要である場合に、終局決定に至るまでの間、暫定的に少年を保護するための措置です。
この観護措置には、2種類あります。
ひとつめが、家庭裁判所調査官の保護に付する措置です。
これを「調査官観護(または在宅観護)」といいます。
調査官観護は、少年の身柄を拘束することなく、少年を家庭等に置いたまま、調査官が随時少年と接触しながら、調査官の人格的影響力により、少年に一種の心理的拘束を与えることなどにより、観護の目的を達成しようとするものです。
しかし、調査官観護は、少年の身柄の保全としての実効性に乏しく、実務上調査官観護はめったにとられることはありません。
ふたつめは、少年鑑別所に送致する措置で、単に「観護措置」といったり「収容観護」と呼んだりします。
実務上は、「観護措置」といえば少年鑑別所に収容する措置を指すことが通例となっています。
観護措置は、少年を少年鑑別所に送致し、現実に少年を少年鑑別所に収容し身柄を保全しようとするものです。
少年鑑別所は、観護措置により送致された者等を収容し、医学・心理学・教育学・社会学その他の専門的知識及び技術に基づいて少年の鑑別を行うとともに、必要な監護処遇等を行うため、法務大臣の管理する国立の施設です。
観護措置の要件
観護措置は、少年保護事件の継続している家庭裁判所が、適正妥当な調査・審判を行うために少年の身柄を保全する措置です。
この観護措置は、「審判を行うため必要があるとき」にとり得ることができると抽象的かつ包括的に少年法第17条1項に規定されています。
このように条項の文言では観護措置の要件は明らかではありませんが、実務上では、次のような要件が必要であると言われています。
1.審判条件があること
観護措置は、審判を行うためにとられる措置であるので、審判条件がある場合でなければなりません。
2.少年が非行を犯したことを疑うに足りる相当の理由があること
観護措置は、少年の意に反してその身柄を拘束する強制的措置であることから、人権保障の観点から非行事実の存在について、勾留の場合と同様の心証が必要であるとされています。
3.審判を行う蓋然性があること
観護措置は「審判を行うため必要があるとき」とされていることから、審判を行う蓋然性のある場合でなければなりません。
4.観護措置の必要性が認められること
観護措置をとる実質的な必要性として、次の事由のうちいずれかの事由が存在していればよいとされています。
(ア)調査、審判及び決定の執行を円滑かつ確実に行うため、少年の身柄を拘束する必要があること。
具体的にいえば、勾留の理由と同様に、住所不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれのいずれかに該当し、身柄を確保する必要性があることです。
(イ)緊急的に少年の保護が必要であること。
少年が保護を必要とする状態にある場合、これを放置するのは相当ではなく、終局決定に至る間においても保護的措置をとる必要があります。
例えば、自殺自傷のおそれがある場合、家庭環境が劣悪で、家庭で虐待を受けたり悪影響を受けるおそれがある場合、不良集団等の影響により審判までに少年の非行性が急速に進行するおそれがある場合などです。
(ウ)少年を収容して心身鑑別をする必要があること。
心身鑑別の必要性とは、少年の更生に向けて、相応の心理検査や継続的な行動観察を踏まえて、その有する問題性全般について詳細な鑑別を行う必要性が高い場合をいうとされています。
心身鑑別に必要性のみで観護措置がとれるかについては、これを否定する見解もありますが、これを肯定するのが通説となっています。
観護措置は、家庭裁判所に事件が係属中であれば、いつでもとることができます。
一般的には、逮捕・勾留により身柄拘束中の少年の事件の場合は、当該事件が家庭裁判所に送致されたときに観護措置をとることが多くなっています。
逮捕・勾留されていな少年であっても、家庭裁判所に送致された後に、観護措置をとる必要性が認められれば、観護措置がとられる可能性もあります。
観護措置において、少年鑑別所に収容する期間は、原則2週間、更新が必要な場合にはさらに2週間更新されることになります。
しかし、実務上は、少年鑑別所において行われる行動観察や心身鑑別に相当の日時を要することから、通常の事件については、1回更新することが多く、ほとんどの事件で収容期間は1か月ほどとなっています。
このような長期間少年鑑別所に収容されることになると、当然少年が社会に戻った後の生活にも影響が出てきます。
ですので、不要不当な身体拘束は回避する必要があります。
一方、観護措置の趣旨は、少年の心情の安定を図りながら心身鑑別等を行うことにあることを考慮すると、少年にとって外界から離れた環境で事件や自分自身と静かにゆっくりと向き合うことができる重要な機会とも言えます。
どちらが少年の更生にとって適切であるかは、少年や事件によっても異なりますので、少年事件に詳しい弁護士にぜひご相談ください。
お子様が事件を起こしてしまい対応にお困りであれば、少年事件・刑事事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
ぐ犯少年と家庭裁判所
ぐ犯少年と家庭裁判所
ぐ犯少年について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県宍粟市に住むAさんは、現在公立中学の3年生です。
Aさんは、2年生の3学期から学校に行かず、夜遅くまで遊び回り、両親の再三の注意にも耳を貸さず、春からは家出をし、反社会的組織の一員であるBの自宅に寄宿しています。
Aさんは、生活費を稼ぐため、Bの仲介のもと売春を行っていました。
その事件でAさんは警察官に補導され、ぐ犯少年として神戸家庭裁判所姫路支部に送致されました。
(フィクションです)
家庭裁判所が取り扱う非行少年の事件を少年保護事件といいます。
家庭裁判所は、審判において、非行を犯したとされる少年について非行の事実があったか否かを確認し、非行を犯した少年に対して、その性格や環境の問題点に応じて、処分を決定します。
審判の対象となる少年は、
①審判の時に20歳未満である者で、②非行のある少年
です。
非行少年は、次の3つの分類されます。
(1)犯罪少年
犯罪少年は、罪を犯した少年です。
(2)触法少年
触法少年は、刑罰法令に反する行為を行った14歳未満の少年です。
刑法では、14歳未満の者は責任能力のない者として扱われますので、本来は犯罪となる行為を行ったとしても責任能力がないため犯罪は成立しません。
そのため、捜査機関に逮捕されることはありませんが、都道府県知事または児童相談所長から家庭裁判所に送致された場合、家庭裁判所は「触法少年」の少年保護事件として取り扱うことになります。
(3)ぐ犯少年
ぐ犯少年は、犯罪とはならないけれども、「ぐ犯事由」に該当し、その性格や環境から将来罪を犯すおそれがある少年です。
このようなぐ犯少年を家庭裁判所の審判に付するとしているのは、今は未だ犯罪や刑罰法令に触れるような行為を行っていない不良少年を早期に発見し、少年の行状、性格、環境等から犯罪的危険性が察知される場合には、少年の適切な保護を加え、少年の健全な育成を図るとともに、犯罪の発生を未然に防止する目的です。
「ぐ犯事由」は、以下の通りです。
ア)保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
少年が、自身に保護者の監督を必要とする行状があるにもかかわらず、保護者の法律上、社会通念上正当な監督に服しない行動傾向があること。
イ)正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。
少年が家庭に寄りつかないことが、その家庭の実体からして別段非難するに値しない場合には、正当な理由がないとは言えません。
例えば、虐待が行われているなどの理由で家に帰らない場合は、この事由に該当しません。
ウ)犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。
例えば、反社会的集団に加わっていたり、不良仲間と付き合っている、若しくは、不良のたまり場や不健全な遊興施設等に出入りすること。
エ)自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
性格的な危険性を示す事由であり、社会的倫理的な通念に外れる行為をすること。
ぐ犯事由は、いずれも一定期間にわたる行状、性癖を指します。
ぐ犯事由があるというためには、上の1つでも該当すれば足ります。
罪を犯すおそれ(「ぐ犯性」)については、その内容は、少年の性格や環境に照らして、抽象的、一般的にみて将来少年が特定の犯罪を犯す可能性があると予測できるという程度では十分ではなく、将来当該少年が特定の犯罪を犯す蓋然性が高いと認められることが必要です。
上記ケースでは、Aさんは家出をし、反社会的組織に属する者の下、売春をしてお金を稼いでいました。
Aさん自身は罪を犯していませんが、両親の監督に服さない、犯罪性のある人物と交際している、売春行為を行っているなど、複数のぐ犯事由に該当しています。
また、Bと生活を共にしており、Bの指示の下売春に手を出しており、このままではBと共謀して犯罪を起こす可能性も高いと言えるでしょう。
このような状況下では、警察はAさんを児童相談所を経由せず直接家庭裁判所に送致する可能性も大いにあります。
お子様がぐ犯少年として家庭裁判所に送致されて対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
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少年の刑事事件~家庭裁判所送致前~
少年の刑事事件~家庭裁判所送致前~
家庭裁判所送致前の少年の刑事事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市長田区の路上で、帰宅途中の女性に対して背後から抱きつき、胸などを触るなどしたとして、同市に住む中学生のAくん(14歳)が兵庫県長田警察署に強制わいせつの疑いで逮捕されました。
逮捕後、Aくんは勾留に代わる観護措置で神戸少年鑑別所に収容されることになったと連絡を受けたAくんの両親は、今後どのような流れになるのか分からず少年事件に詳しい弁護士に相談の連絡を入れました。
(フィクションです)
少年法第1条は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする旨を規定しています。
少年の犯罪事件は、原則、成人の刑事事件の場合と同様に被疑事件として捜査機関による捜査が行われ、その後、全事件が家庭裁判所に送致されます。
これを「全件送致主義」といいます。
少年法は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑がある場合及び犯罪の嫌疑はなくとも家庭裁判所の審判に付すべき事由がある場合には、全ての事件を家庭裁判所に送致することを義務付けています。
これは、非行事実が軽微なものであったとしても、その背後には様々な問題がある場合が多いため、家庭裁判所に全ての事件を送致させ、そこで行われる少年に対する調査を踏まえて保護処分と刑事処分のいずれが相当かを判断させようという趣旨に基づくものです。
ただし、犯罪の嫌疑がなく、ぐ犯少年にも該当しないときには、不起訴処分に付されることもあります。
少年の刑事事件というのは、「少年の犯罪事件」が
①家庭裁判所に送致される以前の段階における少年の被疑事件
②家庭裁判所から検察官への逆送から刑事裁判所へ公訴を提起される以前の段階における少年の被疑事件
③公訴提起後の被告事件
をいいます。
20歳未満の者であっても、犯罪を犯したと疑われる場合には、成人の場合と同様に逮捕されることがあります。
犯罪を犯した少年を「犯罪少年」といいます。
ただし、14歳未満の者は、刑事責任を問われませんので、犯罪とはならず逮捕されることもありません。
(もちろん、都道府県知事または児童相談所長から家庭裁判所に送致されると、少年審判を受け保護処分が言い渡される可能性はあります。)
犯罪を犯した14歳未満の少年を「触法少年」と呼びます。
犯罪少年が警察に逮捕された後の流れは、基本的に成人の刑事事件と同じです。
逮捕から48時間以内に、検察に送致される、若しくは釈放されます。
検察に送致されると、検察官は少年の身柄を受けてから24時間以内に裁判官に対して勾留請求をする、あるいは釈放するかを決めます。
勾留請求を受けた裁判官は、少年と面談した上で、少年を勾留するか釈放するかを判断します。
勾留となった場合には、検察官が勾留請求をした日から原則10日間、勾留延長が認められると最大で20日間身柄が拘束されることになります。
勾留に代わる観護措置について
少年法は、刑法、刑事訴訟法、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律等の一般法に対する特則を定めている。
身体拘束に関するものでいえば、「拘留に代わる観護措置」の手続が設けられています。
検察官は、刑事訴訟法上の勾留の要件を満たすと判断した場合でも、裁判官に対して、勾留に代わる観護措置を請求することができ、裁判官は、当該措置をとることができます。
勾留に代わる観護措置の手続は、基本的に勾留に関する規定が準用されていますが、以下の点が勾留と異なります。
・身体拘束を伴う少年鑑別所収容の観護措置のほかに、家庭裁判所調査官による観護措置の方法もとることができるとされています。
・勾留は延長することができるのに対し、勾留に代わる観護措置の期間は、検察官の請求した日から10日で、延長は認められません。
・勾留に代わる観護措置として少年鑑別所に収容されていた事件が家庭裁判所に送致された場合、当然に家庭裁判所送致後の少年鑑別所収容の観護措置とみなされます。
少年事件の場合、成人の刑事事件の手続と異なる点もありますので、少年事件については専門の弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
お子様が事件を起こし対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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検察官の事件処理~不起訴処分~
検察官の事件処理~不起訴処分~
不起訴処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
会社員のAさんは、SNSを通じて知り合った中学生のVさんに、裸の自撮り画像をAさんの携帯に送信させたとして、児童ポルノ規制法違反の疑いで兵庫県赤穂警察署に逮捕されました。
Aさんは容疑を認めており、なんとか不起訴で事件が終了できないものかと悩んでいます。
(フィクションです)
検察官の事件処理には、終局処分と中間処分とがあります。
そして、終局処分には、起訴処分と不起訴処分があります。
不起訴処分とは、検察官が公訴を提起しないとする処分のことです。
公訴を提起するか否かの決定権限は、検察官にあります。
検察官が起訴しないとする不起訴処分には、主に以下のような種類があります。
1.罪とならず
被疑事実が犯罪構成要件に該当しないとき、または犯罪の成立を阻却する事由のあることが証拠上明確な時にする処分をいいます。
被疑者が被疑事実とされる行為の行為者であった場合でも、その行為が犯罪構成要件に該当しないとき、又は被疑者に責任阻却事由、あるいは法令若しくは正当の業務に基づく行為、正当防衛、緊急避難、盗犯等の防止及び処分に関する法律第1条第1項、第2項該当などの違法性阻却事由のあることが明白となったとき、つまりその行為が犯罪に当たらないことが明らかな場合に限って行われる処分です。
2.嫌疑なし
被疑事実につき、被疑者がその行為者でないことが明白なとき、またあ犯罪の成否を認定すべき証拠のないことが明白なときに行う処分です。
例えば、真犯人が現れたとき、被疑者が行為者であるという唯一の証拠であった目撃者の供述が虚偽であることが明らかになった場合などがこれに当たります。
3.嫌疑不十分
被疑事実について、犯罪の成立を認定すべき証拠が不十分なときに行う処分です。
例えば、正当防衛に該当することが明らかな場合には「罪とならず」となりますが、防衛の程度を超えた疑いがあり、かつ、その証拠が十分でない場合には「嫌疑不十分」と裁定されます。
4.親告罪の告訴取り下げ
親告罪の告訴が取り下げられた場合、検察官は告訴なく公訴を提起することはできませんので、訴訟条件を欠くため、不起訴処分とします。
5.起訴猶予
被疑事実が明白な場合において、被疑者の性格、年令及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときに行う処分です。
刑事訴訟法第248条は、起訴猶予処分に付することについて、一応の基準を示しています。
第二百四十八条 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
しかし、その裁量は検察官に任せています。
不起訴処分を獲得するために
上記ケースのような被害者がいる事件では、被害者との示談が成立しているか否かといった点が、不起訴処分を獲得する上では非常に重要です。
親告罪では、被害者との示談を成立させ、告訴を提起しない若しくは告訴を取り下げてもらうことで、検察官は不起訴処分としますし、親告罪でない場合でも、被害者との示談の有無は検察官が起訴・不起訴を判断する上で重量な考慮要素となります。
ですので、刑事事件を起こしてしまったら、早期に被害者との示談交渉を開始する必要があるのです。
しかし、被害者との示談交渉を加害者やその家族が直接行うことはお勧めできません。
一般的に、被害者は加害者に対して恐怖心や嫌悪感を抱いていることが多く、加害者に連絡先を教えることはあまり多くありませんし、仮に連絡先を教えたとしても、当事者同士の交渉は感情的になりやすく交渉が難航する傾向にあります。
被害者との示談交渉は、弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士限りであれば連絡先を教えてもよいと回答する被害者も多く、被害者の連絡先を教えてもらえる可能性があります。
また、弁護士を介することで、冷静な話し合いができ、示談を円滑に成立させることも期待できるでしょう。
示談交渉を弁護士に依頼することで、このようなメリットがあります。
刑事事件を起こし、被害者対応にお悩みであれば、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
これまで数多くの示談交渉を行ってきた刑事事件専門弁護士が無料で法律相談を行います。
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検察官の事件処理~起訴処分~
検察官の事件処理~起訴処分~
~ケース~
兵庫県加古川市の居酒屋で隣同士になったAさんとBさんは、些細なことから言い争いになりました。
Bさんは、Aさんに「やれるもんやったらやってみい!」と挑発的な言葉を発したため、AさんはBさんの脚を蹴りました。
それに対してBさんもAさんの左腕を殴るなど、両者殴り合いの喧嘩となりました。
店員が止めに入りましたが、喧嘩はおさまる様子はなかったので、店長は兵庫県加古川警察署に通報しました。
警察からは、Aさんと示談することを勧められましたが、AさんはBさんも自分を殴っていたのだからBさんに謝罪する気持ちなどありませんでした。
ある日、Aさんは検察官から呼び出され、略式手続について説明を受けました。
(フィクションです)
検察官による事件処理
警察から検察に送致された事件は、検察官が処理することになります。
検察官による処理には、中間処分と終局処分とがあります。
中間処分とは、終局処分にむけて処理を保留し、または別の検察官に処理をゆだねる処分のことで、中止処分と移送処分とがあります。
終局処分とは、検察官による終結的な処理のことで、成人の刑事事件の場合、起訴処分、そして不起訴処分とがあります。
起訴処分
起訴するかどうかを決定するのは、検察官です。
捜査の結果、有罪を立証するのに十分な証拠があると判断した場合に、検察官は公訴を提起します。
公訴の提起とは、裁判所に対して審判を求める意思表示をいいます。
検察官が裁判所に対して起訴状を提出することによって行います。
公訴の提起には、次のような種類があります。
①公判請求
②即決裁判手続の申立て
③略式命令の請求
(1)公判請求
検察官が公訴を提起し、公判を請求することです。
検察官が公判を請求すると、正式な裁判が開かれ、有罪無罪が審理され、有罪の場合には刑事罰を言い渡されます。
(2)即決裁判手続の申立て
即決裁判手続とは、争いのない簡易明白な事件につき、簡易かつ迅速な裁判を可能とする簡易な手続です。
検察官は、事案が明白かつ軽微であること、証拠調べの速やかな終了が見込まれることなどの事情を考慮して相当と認める場合に、即決裁判手続の申立てを行います。
検察官が公判請求すると同時に、即決裁判手続が申し立てられます。
当該手続を申し立てるには、事前に被疑者の同意と弁護人の同意を得ておかなければなりません。
「即決」裁判で、即日判決が原則です。
また、懲役・禁錮を言い渡す場合は、刑の執行を猶予しなければなりません。
(3)略式命令の請求
検察官の請求を受けて、簡易裁判所は、公判を開かずに書面審理によって、簡易裁判所が管轄する事件について、100万円以下の罰金または科料を科すことができます。(略式手続)
簡易裁判所が言い渡す裁判を「略式命令」といい、検察官が行う請求を「略式命令請求」といいます。
略式手続の特徴は、公判を開くことなく、書面だけの審理が行われる点です。
略式手続を踏むためには、検察官は、あらかじめ被疑者に対して、略式手続について説明し、略式手続で行うことに異議がないか確認し、書面にて異議がないことを明らかにしなければなりません。
検察官に公訴を提起され、有罪判決により刑が言い渡されると、「前科」がつくことになります。
「前科」というのは、法律的には定まった定義はありませんが、一般的に「前に刑に処せられた事実」を指します。
「前に刑に処せられた」というのは、全ての有罪の確定判決をいい、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料だけでなく、刑の免除、刑の執行免除が言い渡された場合も含みます。
検察官に起訴されて前科が付くことを回避するためには、検察官が不起訴処分とすることが望ましいでしょう。
そのためには、早期に弁護士に相談・依頼し、被害者との示談を成立させる等、不起訴処分となるよう動くことが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件でお困りの方は、一度弊所の弁護士にご相談ください。
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