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ひき逃げ事件で自首

2019-08-26

ひき逃げ事件で自首

ひき逃げでの自首について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
深夜、会社から自宅へ車で帰宅中のAさんは、兵庫県西脇市の交差点で右折しようとした際、横断道路を渡っていた自転車に気づかず、自転車と接触してしまいました。
接触後、一旦停車し自転車を見たところ、倒れた自転車を起こしている被害者を確認しました。
「自分で自転車を起こせるくらいだから大したことないだろう。」と思い、Aさんはそのまま自宅へ向かって走り去りました。
帰宅したAさんは、事故のことが気になり、兵庫県西脇警察署に出頭しようかと考え始めました。
この場合、出頭は自首となるのか、出頭すれば逮捕されるのか、いろいろと心配になってきたAさんは、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

ひき逃げとは?

人身事故を起こしたにもかかわらず、被害者の救済や警察への報告をすることなく、現場から立ち去る行為を「ひき逃げ」といいます。
ひき逃げによって成立する犯罪は、道路交通法違反です。
道路交通法第72条第1項は、次のように規定しています。

第七十二条 交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

同条は、次の2つの義務について定めています。

①救護措置義務
交通事故があったときは、運転手や同乗者は、車の運転を停止し、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置をとらなければなりません。
車両等の運転停止、負傷者の救護、道路における危険防止のいずれかでも義務を怠ることにより、当該義務違反となります。

②事故報告義務
上の救護措置義務をとった場合に、運転手に警察官に対して事故について報告しなければなりません。

ひき逃げ事件の上記ケースでは、①の救護措置義務違反が成立することになります。

自首が成立する要件とは?

さて、Aさんは警察への出頭を考えていますが、すべての出頭が「自首」になるとは限りません。
自首」が成立するためには、満たさなければならない要件があります。

(1)犯罪を起こした本人自らが自発的に犯罪事実を申告していること。

「自ら自発的に」自分の犯した犯罪を申告しなければならず、取調べで単に犯罪事実を自白しただけでは自首したことになりません。

(2)犯罪を行った本人が自身の罰則や処分を求めていること。

申告内容が、犯罪事実の一部を隠すためにされたものであったり、自己の責任を否定するようなものであったりした場合には、自首は成立しません。

(3)捜査機関に申告していること。

司法警察員または検察官に対して申告している必要があります。

(4)捜査機関が犯罪事実や犯人を特定していない段階で申告していること。

犯罪事実が捜査機関に発覚していない場合や、犯罪事実は発覚していたとしても、その犯人が誰であるか発覚していない場合を含みます。
犯罪事実や犯人が誰であるか判明しているけれども、単に犯人の所在だけが不明である場合は、これに含まれません。
犯罪事実の申告を受けた警察官等が犯罪事実を知らなくても、捜査機関の誰かが犯罪事実を知っていた場合には、自首は成立しません。

これらの要件を充たしてはじめて「自首」が成立することになります。

自首するメリットとは?

(1)刑が減軽される可能性。

自首が成立すると、刑が減軽される可能性があります。
どの程度刑が減軽されるかについても、刑法第68条が定めています。
救護措置義務違反の道路交通法違反の法定刑は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。
有期懲役の場合、長期及び短期の2分の1に、罰金の場合、多額及び寡額の2分の1に減軽されるので、救護措置義務違反の道路交通法違反の場合には、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金の範囲内で刑罰が科されることになります。
しかし、あくまで「刑を減軽することができる」とありますので、絶対的に軽減されるものではありません。

(2)身体不拘束の可能性

また、自首したことそれ自体が、逮捕の要件である逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれを否定する事情となり、逮捕されず在宅のまま捜査が進む可能性もあります。

刑事事件を起こし、自首しようかお悩みであれば、自首する前に一度刑事事件に強い弁護士にご相談されることをおすすめします。
自首するメリット・デメリットを理解し、自首した後の流れや取調べ対応についてしっかりと説明やアドバイスを受けることにより、取調べに対する不安を少しでも和らげることができます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件でお悩みの方は、一度弊所(フリーダイヤル0120-631-881)にご相談ください。

外国人事件と退去強制

2019-08-25

外国人事件と退去強制

外国人事件退去強制について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県加古川市の会社に勤務している外国籍のAさんは、大麻を国際郵便で輸入しようとしたとして兵庫県加古川警察署に逮捕されました。
Aさんは容疑を認めていますが、今後どのような流れになり、どのような処分を受けるのか、退去強制となるのか非常に不安です。
(フィクションです)

外国人が刑事事件を起こすと…

外国人が犯罪行為を行った場合でも、取られる手続は通常の刑事事件と同じです。
検察官が被疑者の起訴・不起訴を決定し、公判請求された場合には、公開での審理を経て有罪無罪が言い渡されます。
これらの手続はすべて日本語に基づいて進められますが、日本語を理解することができない方、若しくはある程度は日本語力がある方でも複雑な手続や法律の専門用語などがきちんと理解することが難しい場合には、通訳人を介して手続を進める必要があります。
外国人の方が事件を起こしてしまった場合に、一体今後どのような流れになり、如何なる処分を受けるのか、といったことについて心配なさることでしょう。
言語や文化などの違いから、日本人以上に不安を感じられるでしょう。
そのような場合、すぐに刑事事件に強い弁護士に相談し、丁寧な説明やアドバイスを受けることが重要です。

また、外国人の方が刑事事件を起こしてしまった場合に、懸念されるのが、事件終了後も日本に滞在可能かどうかという点です。
つまり、「退去強制」となるか否かという問題です。

退去強制について

退去強制」とは、「出入国管理及び難民認定法」に定められた行政処分の一つで、日本に滞在している外国人を強制的に日本から退去させることをいいます。
出国管理及び難民認定法第24条では、日本社会において強制的に退去させるべき者を事由ごとに列挙しています。

上記ケースのように薬物事件に関しては、同法第24条第4項(チ)に規定されています。

チ 昭和二十六年十一月一日以後に麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚せヽいヽ剤取締法、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号)又は刑法第二編第十四章の規定に違反して有罪の判決を受けた者

Aさんは、大麻輸入の容疑で逮捕されており、Aさんは容疑を認めています。
大麻の輸入は、大麻取締法によって規制されていますので、大麻取締法違反で有罪判決を受けた場合には、退去強制事由に該当することになり、退去強制となる可能性があります。
有罪判決ですから、執行猶予判決であってもアウトです。

退去強制事由に該当する場合、特別な事情がない限りは、退去強制させられることとなります。
ただし、日本人の配偶者がいる場合や、日本人の子がいる場合などは、在留特別許可が認められることもあります。

先述の通り、薬物犯罪で有罪判決を受けたことは、退去強制の要件になっていますが、判決の確定までが必要です。
執行猶予付き判決が言い渡された場合、判決宣告時には勾留からも解放され、退去強制事由にも当たらないため、身体拘束は解かれます。
判決が確定した後に、入国管理局から出頭を命じる呼び出しが来て、退去強制の手続がすすめられます。
一方、実刑判決が言い渡された場合には、原則として、日本国内の刑務所に服役することになります。
刑期満了後又は仮釈放後に入国管理局に移送され、強制送還を待つことになります。

退去強制事由は様々で、事件内容や滞在資格によっては退去強制とならないこともあります。
ですので、外国人の方が事件を起こしてしまった場合には、刑事事件及び退去強制手続にも詳しい弁護士に相談されるのがよいでしょう。

ご家族が事件を起こし逮捕・勾留されてお困りであれば、刑事事件・少年事件を数多く取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。

危険ドラッグ~薬物の認識~

2019-08-24

危険ドラッグ~薬物の認識~

危険ドラッグ薬物認識について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県三田市に住むAさんは、兵庫県三田警察署の家宅捜索を受けた後に、三田署へ連行され、医薬品医療機器等法違反の容疑で逮捕されました。
取調べでは、知人のBさんから購入した危険ドラッグについて聞かれましたが、Bさんからは「合法なもので、リラックス効果があるアロマのようなもの」だと聞いていたAさんは、それが危険ドラッグだとは知らなかったと供述しました。
しかし、取調べでは「違法薬物認識があっただろう」と詰められており、どう対応すればよいか分からず困っています。
(フィクションです)

危険ドラッグとは?

覚せい剤や大麻が法律で厳しく規制されていることは、みなさんご存知のことと思います。
有名人による薬物事件が相次いで報道される昨今、薬物に対する認識も高まっています。
それでは、「危険ドラッグ」についてはどの程度その危険性を認識されているのでしょうか。

覚せい剤は覚せい剤取締法で、大麻は大麻取締法で規制されていますが、「危険ドラッグ」は危険ドラッグ取締法なるもので規制されてはいません。
危険ドラッグ」は、医薬品医療機器等法で規制されています。

一般的に「危険ドラッグ」は、覚せい剤、大麻、麻薬、向精神薬、あへん及びけしがらなどの規制薬物または医薬品医療機器等法第2条15項に規定する指定薬物に化学構造を似せて作られ、これと同様の薬理作用を有する物品と定義されます。
規制薬物や指定薬物を含有しない物品であるといいながら、実は違法な成分が含まれていたり、違法な成分が含まれていないけれども規制薬物や指定薬物よりも有害な成分が含有している場合もあり、非常に危険なものです。
危険ドラッグ」には、乾燥植物片状、粉末状、液体状、固体状と様々な形態があり、「合法ハーブ」「アロマ」「リキッド」「お香」などと称して販売されています。
ネットでも簡単に購入することもできるため、それほど危険なものではないと誤認し、輸入する、使用するケースも少なくありません。

このような「危険ドラッグ」自体を医療機器等法が規制しているわけではなく、同法における「指定薬物」に該当する「危険ドラッグ」が規制対象となります。

指定薬物とは?

それでは、医療機器等法でいう「指定薬物」とはどのようなものなのでしょうか。

医療機器等法第2条15項は、以下のように「指定薬物」について定義しています。

15 この法律で「指定薬物」とは、中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用(当該作用の維持又は強化の作用を含む。以下「精神毒性」という。)を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物(大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)に規定する大麻、覚せヽ いヽ剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)に規定する覚醒剤、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)に規定する麻薬及び向精神薬並びにあへん法(昭和二十九年法律第七十一号)に規定するあへん及びけしがらを除く。)として、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう。

このような指定薬物については、疾病の診断、治療又は予防の用途や人の身体に対する危害の発生を伴うおそれがない用途として厚生労働省令で定めるもの以外の用途に供するために製造し、輸入し、販売し、授与し、所持し、購入し、若しくは譲り受け、又は医療等の用途以外の用途に使用することを禁止されています。
違反に対する罰則は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその両方です。
業として行った場合は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はその両方と加重されます。

規制薬物との認識がない場合は?

危険ドラッグ」を「合法」「違法でない」ものと言われ所持・使用したというケースも少なくありません。
犯罪が成立するためには、所持・使用等していたものが規制薬物であると認識していたことが必要となります。
ですので、規制薬物認識がなければ罪に問うことはできません。

といっても、単に「合法だと思っていました!」と言うだけで責任を免れることは難しいのです。
「ちょっと怪しいけど、ま、いっか。」と少しでも違法なものかもしれない程度の認識があれば罪は成立する可能性があります。
使用した状況や入手した経緯などから、規制薬物であると想像できたはずだと判断されることもありますので、危険ドラッグで逮捕されたらすぐに弁護士にしましょう。

弁護士に事件の詳細を説明し、取調べに対してどのように対応すべきかについてきちんとアドバイスを受けることが何よりも大切です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、薬物事件にも対応する刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族が危険ドラッグで逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所にご相談ください。
お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。

処分保留で釈放

2019-08-23

処分保留で釈放

処分保留での釈放について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県川西市の自宅で、当時3歳の長男を暴行し死亡させたとして、傷害致死の容疑で母親のAさんと父親のBさんは兵庫県川西警察署に逮捕されました。
二人は、逮捕後、勾留となりましたが、Aさんは勾留10日満期に、処分保留釈放となりました。
Aさんは、今後どのような流れになるのか、どのような処分となるのか心配しています。
(フィクションです)

処分保留で釈放とは?

ニュースなどで、「容疑者が処分保留釈放となりました。」というような報道を聞かれたことはありませんか?
処分保留釈放」と聞くと、「何も処罰されないの?」、「無実だったってこと?」と疑問に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、「処分保留釈放」について取り上げたいと思います。

保留される「処分」って?

被害届や職務質問、自首などを端緒に事件が捜査機関に認知されると、捜査機関は捜査を開始します。
捜査機関は、犯人であるものを特定し、必要があればその身柄を確保するとともに、証拠を収集・保全します。
すべての事件が、原則として、検察官のもとに集められます。
これらの事件を処理するのは、検察官です。
検察官による終局的な処分には、「起訴処分」、「不起訴処分」、そして「家庭裁判所送致」があります。
「起訴処分」というのは、捜査の結果、起訴が相当であると判断し、検察官が公訴を提起することです。
公訴の提起には、①公判請求、②即決裁判手続の申立、③略式命令の請求、④交通事件即決裁判の請求の4種類があります。
①の公判請求により、ドラマなどでよく見る法廷での審理が行われるわけですが、検察官が起訴した総人員の内、ほとんどが③の略式命令の請求であり、公判請求は割合的にはそれほど多くありません。
次に、「不起訴処分」というのは、検察官が公訴を提起しないとする処分のことをいいます。
犯罪とならない場合、疑わしいがそれを立証するだけの十分な証拠がない場合、証拠はそろっているが様々な事情を考慮して起訴を見送る場合など、様々な理由があります。
最後に「家庭裁判所送致」ですが、少年事件の場合、原則すべての事件が家庭裁判所に送致されますので、検察官が捜査を終了すれば、事件を家庭裁判所に送致します。

このような処分をせずにおくことを「処分保留」といい、これは「起訴しない」ことを意味するものではなく、「起訴するかどうかを未だ決めていない」というまでなのです。

処分保留で釈放となるのはなぜ?

検察官が終局的な処分を決めないまま釈放する理由とは、なんでしょうか。
その理由のひとつは、逮捕した事件の捜査・処分が終わっていない場合です。
逮捕された場合、逮捕に引き続く身体拘束の期間は法律で定められています。
検察官が勾留請求をした日から原則10日で、延長が認められれば最大で20日です。
この期間内に、証拠を収集し、事件処理を行わなければなりません。
しかし、この期間をもってしても処分を決定することができない場合には、処分保留釈放とするのです。
この場合、被疑者を釈放した後も捜査を継続し、処分を決めるのに十分な証拠を集めます。

このように、「処分保留釈放」となったからといって、事件が終了したというわけではありません。
「まだ起訴するかどうか決まっていない」という状態であり、「起訴される可能性はある」のです。
刑事事件の被疑者として逮捕・勾留されたが、「処分保留釈放」となり、今後の流れや対応についてお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
弊所では、無料法律相談初回接見サービスのご予約を24時間専門ダイアルで受け付けております。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

少年事件における環境調整②~環境調整の重要性~

2019-08-22

少年事件における環境調整②~環境調整の重要性~

少年事件における環境調整の重要性について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

少年審判の審理対象~非行事実と要保護性~

「非行事実」は、刑事裁判における「公訴事実」に該当するものです。
「要保護性」というのは、以下の3つの要素により構成されるものと理解されます。
①再非行の危険性
少年の性格や環境に照らして、将来再び非行を犯す可能性があること。
②矯正可能性
保護処分による矯正教育を施すことによって再非行の危険性を取り除くことができる可能性があること。
③保護相当性
保護処分による保護が最も有効かつ適切な措置であること。

審判では、上の「非行事実」と「要保護性」の両方が審理されます。
そのため、少年事件では、犯罪行為の軽重が直接量刑に影響する成人の刑事事件と異なり、非行事実が軽微であっても、要保護性が高い場合には、少年院送致といった身体拘束を伴う処分が選択されることがあります。
他方、非行事実は重い罪名の付くものであっても、要保護性が解消され、社会内での更生を図ることが少年の健全育成のために適切であると判断されれば、保護観察といった社会内処遇が選択されることもあります。
そのため、「要保護性の解消」は少年事件においては非常に重要な要素となるのです。

少年事件における環境調整の重要性

上述のように、要保護性が低ければ低いほど、少年を身体拘束して更正する必要がなくなるというわけですが、要保護性の解放に向けては「環境調整」がとても重要な役割を果たします。

環境調整」というのは、保護者の関係の調整、就業先の開拓、帰住先の確保等、少年の社会復帰を円滑にするために少年をとりまく環境を調整することをです。
つまり、少年が更生に向けて生活するために必要な環境を整えることです。
この環境調整は、少年本人への働きかけ、家庭や学校、職場などへの働きかけ、交遊関係の調整、被害者への対応といった多岐に渡る活動を含みます。

(1)少年本人への働きかけ

少年本人が真に事件、そして自分自身と向き合うことができなければ、どんなに外部的環境調整に尽力したとしても、要保護性を解消することは難しく、少年の更生にはつながりません。
自分が何故今回の事件を起こしてしまったのか、それにより誰を傷つけてしまったのか、二度と同じ過ちを繰り返さないためにはどうすべきなのか等、しっかりと考えていかなければなりません。
勿論、このようなことを考え、答えを見つけることは、少年のみでは容易ではありません。
少年の家族や、学校の先生方、家庭裁判所の調査官など、協力してくれる大人はいます。
また、弁護士は弁護人・付添人として、少年が事件や自分自身の問題と向き合いあえるよう支援し、解決策を見出せるよう共に考えていきます。

(2)家庭への働きかけ

家庭は少年にとって最も身近な環境であり、家庭内の問題が非行の背景にあることが多く、家庭への働きかけは環境調整をする上でも重要であると言えるでしょう。
弁護士は、少年と保護者との間に入り仲介役的な役割を担うこともあれば、両者に対して問題点を指摘したり改善のアドバイスをしたり学校の先生のような役割を担うこともあります。
勿論、これらは弁護士から一方的に行うものではなく、少年や保護者との話し合いを重ね、ともに考える中で行うものです。

(3)学校や職場への働きかけ

学校に在籍している少年の場合、今後も在籍できるか、学校側が少年を受け入れて適切な指導をしてくれるかどうかは、少年の更生を考えるうえで重要な事項です。
公立の学校は、警察・学校相互連絡制度によって警察から学校に逮捕の連絡がいってることがあります。
学校に知られている場合には、学校側に少年事件の手続や少年が真摯に反省し更生に向けて努力している点などを報告し、少年を積極的に受け入れてくれるよう協力を求めます。
学校が事件について把握していない場合、私立学校のように事件を起こしたことを知れば退学処分とするようなところもあるため、学校に知られないように働きかける必要もあるでしょう。
働いている少年についても、学校と同様、少年が職場で働き続けることができるよう職場の上司などに協力を求めていきます。

(4)交遊関係の調整

少年の交遊関係が事件の背景にある場合もそう少なくありません。
ケース②のように薬物事件では、恋人や友人から勧められて薬物に手を出すといったケースも多く、薬物を断つためにはこのような関係を解消する必要があります。
ケース②では、Aさんは交際相手の勧めで大麻に手をだしているわけですので、この交際相手との関係を終わらせることはもとより、大麻の入手先を知っている場合には、入手先とも一切連絡をとれなくするなど、薬物に関連する関係を一切断ち切る必要があるでしょう。

(5)被害者への対応

成人の刑事事件のように、被害者との示談成立により、不起訴処分で事件終了というわけにはいきませんが、被害者への謝罪・被害弁償、示談が成立していることにより、少年が事件を真摯に反省し、被害者にも配慮していると判断される要素にはなります。
勿論、少年が反省せず、単に形式上被害弁償をしたという事実だけでは、要保護性を解消させる要素となり得ません。
ケース①の盗撮事件のように、被害者がいる事件では、一刻も早く被害者に被害弁償を!と急がれる場合がありますが、形だけの被害弁償を急ぐのではなく、少年自身が真に反省し、被害者に対してきちんと謝罪する気持ちを持つことができてから、それに基づいて被害者対応を行うことが、要保護性の解消につながるでしょう。

このように、少年事件においては、成人の刑事事件とは異なる視点で対応しなければならないことも多くあります。
そのため、少年事件については、少年事件に精通する弁護士に相談されることをお勧めします。

お子様が事件を起こし対応にお困りであれば、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

少年事件における環境調整①~少年事件の流れ~

2019-08-21

少年事件における環境調整①~少年事件の流れ~

少年事件の流れについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース①~
兵庫県内に住む中学生のAくん(15歳)は、駅構内のエスカレーターにおいて女子高生のスカート内にスマートフォンを差し入れ盗撮したとして、目撃者の男性に身柄確保されました。
Aくんは兵庫県垂水警察署で取調べを受けた後、両親が身元引受人となり夜に釈放となりました。
「余罪もあるようなので、また何回か取調べを受けてもらうことになる。捜査機関の捜査が終了したら、家庭裁判所が事件を担当することになる。」と警察官から簡単な説明を受けたAくんと両親は、少年事件の流れや最終的な処分について分からず心配になってきました。
(フィクションです)

~ケース②~
大学生のAさん(18歳)は、交際相手から大麻を勧められ、大麻を使用するようになりました。
交際相手の自宅に居た際に、兵庫県垂水警察署がやってきて、家宅捜索後に、Aさんと交際相手を大麻取締法違反の容疑で逮捕しました。
逮捕の知らせを受けたAさんの両親は、すぐに弁護士に接見を依頼し、事件について報告を受けることができました。
逮捕後に勾留が付く可能性が高いことや薬物事件では接見禁止となる可能性もあることを弁護士から聞き、Aさんの更生を第一にと弁護士に弁護を依頼することにしました。
(フィクションです)

少年事件の流れについて

20歳未満の者(「少年」といいます。)が刑罰法令に反する行為を行った場合、少年法に基づく手続に従って処分を受けることになります。
少年の年齢や非行内容により少年事件の流れは異なりますが、ここでは14歳以上20歳未満の犯罪行為を行った少年(「犯罪少年」といいます。)の少年事件の流れについて説明しましょう。

(1)捜査段階

警察に事件が発覚すると、捜査が開始されます。
捜査段階では、成人の刑事事件とほとんど同様の手続がとられます。

ケース①

Aくんは盗撮をし、目撃者によって私人逮捕されています。
容疑を認めており、前歴・補導歴もないこと、スマートフォン内のデータ等の証拠を押収していること、そして身元引受人がいること等から、逮捕に引き続き身柄を拘束する必要がないと警察が判断したものと考えられます。
こうして、Aくんは逮捕の日に釈放され、余罪の件も含めてあと何回か警察に出頭し取調べを受けることになりました。
身柄を拘束せずに捜査を行う事件を「在宅事件」と呼びます。
警察での捜査が終わると、事件は検察に送致されます。
法定刑が罰金以下の比較的軽微な犯罪を犯した疑いがある場合は、警察から直接家庭裁判所に送致されます。
Aくんの場合は、迷惑防止条例違反に問われていると考えられますので、警察での捜査が終了すると、次は検察が事件を担当することになり、検察官から呼び出しがあります。
検察官は捜査を終えると、事件の記録を管轄の家庭裁判所に送致します。

ケース②

身柄を拘束する必要がある場合には、少年であっても逮捕されます。
逮捕から48時間以内に警察から検察官に事件が送致され、被疑者である少年の身柄を受けた検察官は24時間以内に少年を釈放するか勾留請求を行うかを決めます。
検察官が勾留請求した場合、裁判官は少年と面談した上で、勾留するか否かを判断します。
勾留となれば、検察官が勾留請求した日から原則10日間、延長が認められれば最長で20日間、警察署の留置場で身柄が拘束されることになります。
ここまでは成人の刑事事件の流れと同じですが、少年事件の場合には、「勾留に代わる観護措置」がとられる点が成人の刑事事件とは異なります。
少年事件の場合には、検察官は裁判官に「勾留に代わる観護措置」を請求することができます。
当該措置がとられると、収容場所が少年鑑別所となります。
収容期間も10日で、延長は認められません。

(2)家庭裁判所送致後

警察や検察での捜査を終えると、事件が家庭裁判所に送られます。

家庭裁判所は、事件が係属している期間中いつでも「観護措置」をとることができます。
「観護措置」は、家庭裁判所が調査・審判を行うために、少年の心情の安定を図りながら、少年の身体を保護しその安全を図る措置で、そのほとんどが少年鑑別所に送致する措置がとられています。
捜査段階で「勾留に代わる観護措置」がとられていた場合、家庭裁判所に事件が送致されると当然に「観護措置」とみなされます。
逮捕・勾留されている少年については、家庭裁判所は送致された時に観護措置をとることがほとんどです。
ケース②の場合、薬物事件ということもあり、逮捕後勾留されることがほとんどです。
そのため、送致後に観護措置がとられる可能性は高いでしょう。

一方、ケース①のように在宅事件であっても、観護措置をとる必要があると判断されることもありますので、在宅事件だからと安心していると、家庭裁判所送致後に観護措置がとられ少年鑑別所に収容となることもあります。

家庭裁判所は事件を受理すると、家庭裁判所の調査官による調査、及び審判を経て最終的な処分が決定されます。

最終的な処分は、次の通りです。
①保護処分決定
 (a)保護観察
 (b)少年院送致
 (c)児童自立支援施設等送致
②検察官送致
③不処分
④都道府県知事又は児童相談所長送致
⑤審判不開始
中間的な処分として、試験観察があります。

以上、少年事件の流れを見てきましたが、少年であっても身柄がとられる可能性もあります。
長期の身体拘束により退学や解雇といった不利益を被るおそれもありますので、お子様が逮捕・勾留されお困りであれば、少年事件を数多く取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

身近な軽犯罪法違反

2019-08-20

身近な軽犯罪法違反

身近な軽犯罪法違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

軽犯罪法は、その名の通り、軽微な犯罪を処罰することを目的として法律ですが、それにより刑法犯等のより悪質で重大な犯罪の芽を早期に摘み取ることも目的としています。
軽犯罪法は、日常生活における身近な犯罪行為を規定していますので、今回は、どのような行為が軽犯罪法の対象となるのか、軽犯罪法違反行為に対する刑事罰について説明していきたいと思います。

軽犯罪法違反となる罪のなかでも検挙人員が多いものについてご紹介します。

1.凶器携帯の罪(第2号)

二 正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者

「正当な理由なく」とは、違法であることを意味し、「正当な理由がある」場合には違法性は阻却され凶器携帯の罪は成立しません。
「正当な理由がある」場合というのは、本号で定める危惧を隠して携帯することが、職務上または日常生活上の必要性から、社会通念上相当と認められる場合のことで、自己の職務遂行のために必要な場合、正当な営業行為に属する場合、登山等のため登山ナイフを携帯する場合などがこれに当たります。
「刃物」は、銃刀法第2条にいう刀剣類は勿論のこと、刃渡りや刃体の長さ、刃物の形態などについて制限はなく、包丁、ナイフ、なた、鎌などの刃を持つ一切の器具を指します。
銃刀法で規制される刃物については、銃刀法が適用されるので、本号の適用はありません。
「鉄棒」とは、鉄製の棒状のものを総称します。
「刃物」、「鉄棒」、「その他の器具」は、「人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」でなければなりません。
これは、性質上の凶器だけでなく、用法上の凶器をも含みますが、ある程度殺傷の用に供さやすいものである必要があります。
以上の凶器を「隠して」「携帯」する行為が、凶器携帯の罪となるわけですが、「隠して」とは、一般社会生活上、これに接触する人から見えない状態に置くことをいい、ポケットにしまう、上着の内側に入れるなどもこれに当たります。
「携帯」とは、自宅や居室以外の場所で器具を直ちに使用し得る状態で身辺に置くことをいい、かつ、その状態を多少持続することを要します。
必ずしも自己の身につけているひつようはなく、手に持ったり、ポケットやカバンに入れて持ち歩く、自己の運転している自動車の荷台やトランクに積むなども「携帯」に当たります。

「護身用」で本号の「刃物」に当たるナイフ等を所持している場合もありますが、現行法において自力救済が禁止され、正当防衛の成立範囲が厳格に法で定められているため、護身目的は「正当な理由」には当たりませんので、ご注意ください。

2.立入禁止場所等侵入の罪(第32号)

三十二 入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者

「入ることを禁じた場所」というのは、他人の立入りを禁止する正当な権原を有する者が、立入禁止の意思を表示していると客観的に認められる場所をいいます。
立入禁止の意思表示は、立札、張り紙、縄張り、近づくと機械的に音声などで警告するなどどのような方法でも構いません。
また、その場所の性質や客観的状況などから、社会通念上、張り紙等で明示せずとも他人の立入りを禁止していることが明白であると認められる場所も含みます。
「他人の田畑」とは、自分以外の者が管理している田畑です。
本罪は、刑法犯の住居侵入罪とは補充関係にあるので、住居侵入罪が成立する場合には本号は適用されません。

3.窃視の罪(第23号)

二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

「人の住居」とは、犯人以外の者が正当に使用し得る住居のことをいいます。
住居の一部であっても、これに該当します。
「浴場、更衣場、便所」は、個人宅のものであるか公衆浴場や公衆便所などのように不特定多数の人が使用するものであるかを問いません。
「その他人が通常衣類をつけないでいるような場所」とは、人が通常隠している肉体の部分を露出している可能性のある場所の内部を意味します。
例えば、役所の更衣室、病院の診察室・処置室、旅館の1室、キャンプ場のテント内、列車の寝台や船室などがこれに当たります。
上のような場所を「ひそかにのぞき見る」というのは、許可なく物陰や隙間などから見ることです。望遠鏡を用いてみたり、カメラやビデオカメラを用いて撮影する場合も「のぞき見る」行為となります。

軽犯罪法違反の法定刑は、「拘留」又は「科料」です。
前者は、1日以上30日未満の刑事施設への拘置を内容とする自由刑で、後者は、千円以上1万円未満の財産刑です。
懲役や禁錮、罰金などと比べると軽いですが、これらの刑が科されるということは有罪が言い渡されたということであって「前科」が付くことには変わり有りません。

軽犯罪法違反事件で被疑者として取調べを受けて対応に困っている、前科が付くのではとご心配であれば、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

身柄解放活動③~起訴後~

2019-08-19

身柄解放活動③~起訴後~

起訴後身柄解放活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県南あわじ市の玉ねぎ農家の玉ねぎ畑に何者かが侵入し、大量の玉ねぎが盗まれるという事件が起きました。
兵庫県南あわじ警察署は、被害届の提出を受けて捜査に乗り出しました。
警察の地道な捜査の結果、県内に住むAさんの犯行であることが判明し、警察はAさんの自宅に赴き、家宅捜索後に窃盗の容疑でAさんを逮捕しました。
逮捕・勾留・勾留延長を経て、神戸地方検察庁洲本支部はAさんを窃盗罪で起訴しました。
(フィクションです)

窃盗事件で起訴されたら~保釈で身柄解放~

逮捕後に、勾留が決定し、10日間もしくは20日間の身体拘束を余儀なくされた場合であっても、起訴後に釈放となる可能性はあります。
それは、「保釈」により身柄解放となる場合です。

「保釈」というのは、一定額の保釈保証金を納付することにより、勾留されている被告人を暫定的に釈放する制度です。
この保釈は、起訴前の段階では利用することが出来ません。
つまり、検察官が被疑者を起訴してから利用できるものです。

保釈には、次の3種類があります。

1.権利保釈(必要的保釈)

第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。

裁判所は、保釈の請求があったときは、原則として保釈を許可しなければなりません。
例外として、刑事訴訟法第89条の1号~6号の除外事由がある場合には、請求を却下することができます。

2.裁量保釈(任意的保釈)

第九十条 裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

裁判所は、権利保釈の除外事由がある場合であっても、適当と認めるときは、職権で保釈を許可することができます。

3.義務的保釈

第九十一条 勾留による拘禁が不当に長くなつたときは、裁判所は、第八十八条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。

裁判所は、勾留による拘禁が不当に長くなったときは、請求により又は職権で、保釈を許可しなければなりません。

上記ケースにおいて、Aさんは窃盗罪で起訴されています。
まずは、権利保釈が認められるか検討しましょう。

窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金ですので、「短期一年以上の懲役」には該当しないので、除外事由1号には当たりません。
Aさんに前科がないとすれば、2号も該当しません。
しかし、問題は3号です。
Aさんが窃盗1件のみで起訴されたとしても、同じ犯罪を複数回(2回以上)繰り返していた場合には「常習」犯とみなされます。
また、法定刑が「長期3年以上の懲役」の罪となっていますので、上限が3年以上である窃盗罪(上限が10年)も含まれますので、3号に該当する可能性はあります。
また、4号の「逃亡・罪証隠滅のおそれ」についても、余罪が複数ある場合や共犯者が複数いる場合など捜査が終了していなければ、罪証隠滅のおそれが高いと判断される可能性があります。

権利保釈が認められない場合であっても、裁量保釈が認められる可能性もあります。
形式的には逃亡・罪証隠滅のおそれが残る場合であっても、その程度が低く、身体拘束によって被る被告人の不利益の程度等を考慮して、裁判所の裁量によって保釈が許可されるのです。
権利保釈と同時に裁量保釈を請求することが出来ますので、弁護人に頼んで両方の保釈を請求してもらうのがよいでしょう。

裁判所に保釈が許可され、保釈保証金を納付すれば、被告人は釈放されることになります。
保釈保証金の額は、犯罪の性質や被告人の資力にもよりますが、窃盗被告事件で被告人の資力もそれほどでない場合は、150~200万円が相場となっています。
出頭を拒んだり、逃亡したりしなければ保釈保証金は、裁判終了後に戻ってきます。

逮捕後に勾留となり、長期間の身体拘束を余儀なくされた場合には、家族や仕事の関係ですぐにでも釈放されることを希望されるものです。
早期の保釈を希望されるのであれば、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件をはじめとする刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が刑事事件を起こして対応にお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。

身柄解放活動②~勾留決定後~

2019-08-18

身柄解放活動②~勾留決定後~

勾留決定後の身柄解放活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県南あわじ市の玉ねぎ農家の玉ねぎ畑に何者かが侵入し、大量の玉ねぎが盗まれるという事件が起きました。
兵庫県南あわじ警察署は、被害届の提出を受けて捜査に乗り出しました。
警察の地道な捜査の結果、県内に住むAさんの犯行であることが判明し、Aさんの自宅に赴き、家宅捜索後に窃盗の容疑でAさんを逮捕しました。
その後、Aさんは神戸地方検察庁洲本支部に送致され、神戸地方裁判所洲本支部はAさんに対して勾留を決定しました。
(フィクションです)

窃盗事件で逮捕されたら~勾留から起訴まで~

上記ケースでは、Aさんは勾留されることになりました。
勾留」というのは、被疑者または被告人を拘禁する裁判と執行をいいます。
刑罰の一種である「拘留」と読み方は同じですが、意味は異なるので注意が必要です。
拘留は、1日以上30日未満の一定期間、刑事施設に収監する刑罰です。
懲役と違って、所定の作業はありません。

勾留がなされると、検察官が勾留請求をした日から、原則10日間、刑事施設に留置されることになります。
勾留を延長する必要があると検察官が判断した場合には、検察官は裁判官に対して勾留延長の請求を行います。
検察官からの請求を受けた裁判官は、勾留を延長するか否かを決定します。
勾留延長となると、最大で10日間勾留期間が延長されることになり、検察官の最初の勾留請求から20日間の身体拘束となる可能性もあります。

勾留が決定した場合、弁護士は、主に以下のような身柄解放活動を行います。

1.勾留に対する準抗告の申立て

勾留の理由はあっても、勾留の必要性がないとして勾留に対する準抗告の申立が認められることもありますので、勾留が決定した場合には、勾留に対する準抗告申立書を提出します。
「準抗告」というのは、裁判官の裁判や検察官・警察官の処分の取消や変更を裁判所に請求することをいいます。

第429条
裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。
①忌避の申立を却下する裁判
②勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
③鑑定のため留置を命ずる裁判
④証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
⑤身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判

刑事訴訟法第429条第1項第2号において、勾留に対する準抗告について規定されています。

弁護士は、勾留阻止の際と同様に、勾留の要件を満たさない旨を主張します。
しかし、勾留決定された時点では明らかではなかった事実やその後に被疑者に有利な事情が生じた場合などは、これを新たに証拠として裁判所に提出します。
例えば、勾留決定時には弁護人がおらず、被疑者の釈放を求める切実な事情などが勾留決定の判断の前提となるような記録には現れていなかった場合には、準抗告の申立により被疑者側の事情を明らかにすることになり、勾留の必要性がないと判断されることがあります。
また、勾留決定後に示談交渉が進み示談締結に至るなど、もはや罪証隠滅のおそれがなくなった場合にも、勾留の理由がないとして準抗告が認容されることもあるでしょう。

2.勾留の取消請求

被疑者について、勾留の理由または勾留の必要性がなくなった場合に、「勾留取消請求」を行い、被疑者の身柄解放を求めます。
勾留の取消しについては、刑事訴訟法第87条に規定されます。

刑事訴訟法第87条
勾留の理由又は勾留の必要がなくなったときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。

勾留取消請求の場合も、勾留に対する準抗告と同様に、勾留の理由や勾留の必要性がなくなったことを、裏付ける資料と共に具体的に述べる必要があります。
勾留に対する準抗告が1つの勾留に対して1回しか認められないのに対して、勾留取消請求は、事情の変更があれば何度でも認められる点で、勾留に対する準抗告と異なります。
ですので、勾留の理由や勾留の必要性がなくなったというべき事情が生じた場合には、何度でも勾留取消請求を行うことができます。

このように、勾留が決定した場合であっても、身柄解放に向けて動くことで、釈放となる可能性を高めることができます。

ご家族が刑事事件を起こし、逮捕・勾留されてしまいお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡を。

身柄解放活動①~逮捕から勾留まで~

2019-08-17

身柄解放活動①~逮捕から勾留まで~

逮捕から勾留までの身柄解放活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県南あわじ市の玉ねぎ農家の玉ねぎ畑に何者かが侵入し、大量の玉ねぎが盗まれるという事件が起きました。
兵庫県南あわじ警察署は、被害届の提出を受けて捜査に乗り出しました。
警察の地道な捜査の結果、県内に住むAさんの犯行であることが判明し、Aさんの自宅に赴き、家宅捜索後に窃盗の容疑でAさんを逮捕しました。
Aさんは、今後どのような流れになるのか、このまま留置施設に拘束されたままになるのか、気が気でなりません。
(フィクションです)

窃盗事件で逮捕されたら~逮捕から勾留までの流れ~

上記ケースでは、Aさんが玉ねぎ畑に勝手に入り、無断で玉ねぎを盗んでいます。
これらの行為により、窃盗と軽犯罪法違反(立ち入り場所等侵入の罪)が成立することになります。
Aさんは、警察に上の罪を犯したとして逮捕されましたが、その後、Aさんはどうなるのでしょうか。

逮捕から送致まで

Aさんは、逮捕後、兵庫県あわじ警察署で取調べを受けることになります。
警察は、被疑者を逮捕すると、「弁解録取書」を作成します。
この「弁解録取書」には、逮捕事実の認否、認めの場合には動機、弁護人をどうするか否かについてが記載されます。
「弁解録取書」の他に、事件の詳細について聞き取った内容の調書と被疑者の「身上経歴書」が作成されます。
警察は、逮捕から48時間以内に、被疑者を釈放するか、それとも検察に送致するかを決めます。
「送致」とは、刑事事件の被疑者本人や、刑事事件の証拠や資料などを検察官に引き継ぐことをいいます。
警察が被疑者を釈放するか送致するかの判断は、被疑者を留置する必要があるか否かにあります。
更に詳しくいうと、被疑者が犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由があり、被疑者が逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがあると疑うに足りる相当な理由がある場合に、検察への送致がなされます。

送致後

兵庫県では、午前中に検察への送致が行われます。
Aさんは、兵庫県南あわじ署を9時頃に出発し、神戸地方検察庁洲本支部に向かいます。
神戸地方検察庁洲本支部は、Aさんの身柄と先述した書類や証拠品などを一緒に検察庁に送致します。
担当検察官は、Aさんと面談します。(これを「弁解録取」といいます。)
その後、担当検察官は、その後も継続してAさんを拘束する必要があると認める場合には、裁判官に対して勾留の請求を行います。(これを「勾留請求」といいます。)
勾留」というのは、被疑者や被告人を刑事施設に拘束することです。
この「勾留」には、起訴前の勾留(「被疑者勾留」)と起訴後の勾留(「被告人勾留」)の2種類がありますが、ここでは「被疑者勾留」について説明します。
検察官が勾留の必要がないと判断すれば、Aさんは釈放となります。

勾留請求となったAさんは、検察に送致された日の午後に、検察庁から裁判所に身柄を移し、今度は裁判官と面談することになります。(これを「勾留質問」といいます。)
勾留質問を終えた裁判官は、勾留の要件を満たしている場合に、Aさんを勾留するとの決定を出します。

被疑者を勾留するには、勾留の「理由」および、勾留の「必要性」がなければなりません。

勾留の理由
・被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、かつ、
・住所不定、罪証隠滅のおそれ、若しくは逃亡のおそれの少なくとも1つに該当する場合。

勾留の必要性
被疑者を勾留することによって得られる利益と、これによって被る被疑者の不利益を比較衡量した上で、被疑者を勾留する必要がある場合。

これらの要件を満たしている場合に、裁判官は勾留の決定を行います。

身柄解放活動

逮捕から勾留までの段階での身柄解放活動は、弁護士は勾留を阻止することを目標とし行われます。

1.検察に送致された段階

警察がAさんを検察に送致した場合、弁護士は、担当検察官に対して勾留請求をしないよう働きかけます。
具体的には、Aさんは勾留要件を満たしていない旨を主張した意見書を担当検察官に提出します。
意見書には、Aさん作成の誓約書、Aさんの家族作成の上申書や身元引受書を付せ、客観的に罪証隠滅や逃亡のおそれがないことを主張します。
これにより、検察官が裁判官に対して勾留請求をしないよう働きかけます。

2.勾留請求した場合

上の働きかけにもかかわらず、検察官が勾留請求をした場合には、弁護士は、裁判官に対して勾留決定をしないよう働きかけます。
勾留要件をを満たしていない旨を意見書を通じて裁判官に主張します。

検察に送致された日に勾留決定まで行われます。
勾留を阻止するためには、送致から勾留決定までの短期間に上記の活動を行う必要があります。
このような活動は、刑事事件に強い弁護士に任せるのがよいでしょう。
刑事事件に強い弁護士であれば、刑事事件の流れや提出すべき書面・資料をきちんと把握していますので、素早く的確に動くことが期待されます。

あなたの家族が逮捕されてしまったのであれば、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
勾留阻止を目指して尽力いたします。
お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。

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