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覚せい剤取締法違反事件で保釈
覚せい剤取締法違反事件で保釈
覚せい剤取締法違反事件での保釈について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県高砂市に住むAさんは、覚せい剤を使用していました。
ある日、兵庫県高砂警察署は覚せい剤取締法違反の疑いでAさんを逮捕しました。
逮捕後、10日間勾留されたAさんは、同罪で起訴されました。
Aさんは、すぐに保釈してほしいと思い、弁護人に保釈請求を頼みました。
(フィクションです)
覚せい剤取締法違反で逮捕されたら
あなたが覚せい剤取締法違反で警察に逮捕されたとしましょう。
警察は、逮捕から48時間以内にあなたを釈放するか、それとも検察に事件を送致するかを決めます。
検察官は、あなたの身柄を受けてから、容疑について弁解を聞いた上で、24時間以内にあなたを釈放するか、裁判官に勾留請求するかを決定します。
兵庫県では、午前中に警察署から検察庁に送致され、その日の午後には勾留請求するか否かが決定されます。
検察官が勾留請求すると、検察庁から裁判所に移送され、今度は裁判官から勾留質問を受けます。
裁判官は、勾留質問をした上で、検察官からの勾留請求を認めるか否かを判断します。
ここで、裁判官が勾留請求を却下すれば、検察官からの準抗告がない限り、あなたはその日のうちに釈放されることになります。
さて、覚せい剤取締法違反事件では、多くの場合、勾留決定がなされ、検察官が勾留請求した日から10日間身柄が拘束されます。
延長が必要だと検察官が判断すれば、検察官は延長を請求し、勾留延長が認められれば最大で更に10日間の身柄拘束となります。
覚せい剤取締法違反事件で逮捕された場合には、長期の身体拘束となる可能性が高いのです。
覚せい剤取締法違反事件で身柄解放は不可能なのか?と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、起訴後には保釈により釈放される可能性もあります。
保釈とは?
一定額の保釈保証金を納付することを条件として、被告人に対する勾留の執行を停止し、その身柄拘束を解く裁判及びその執行を「保釈」といいます。
保釈には、以下の3つの種類があります。
1.権利保釈(必要的保釈)
裁判所は、権利保釈の除外事由に該当しない場合には、保釈請求があったときは、原則として保釈を許可しなければなりません。
除外事由は、以下の通りです。
①被告人が、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁固に当たる罪を犯したものであるとき。
②被告人が、前に、死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁固に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
③被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
④被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由のあるとき。
⑤被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
⑥被告人の氏名又は住居が分からないとき。
2.裁量保釈(任意的保釈)
裁判所は、上の権利保釈の除外事由がある場合であっても、適当と認めるときは、職権で保釈を許可することが出来ます。
3.義務的保釈
裁判所は、勾留による拘禁が不当に長くなったときは、請求により、又は職権により、保釈を許可しなければなりません。
覚せい剤取締法違反事件で保釈を許可するか否かは判断する際に問題となるのは、常習性と罪証隠滅のおそれです。
ですので、その点問題がないことを客観的な証拠に基づいて主張し、保釈の獲得に向けて動くことが重要です。
保釈は、単に身体拘束からの解放にとどまらず、再犯防止のために専門的治療を受ける環境を整えるといった意味でも重要です。
ご家族が覚せい剤取締法違反事件で逮捕されお困りであれば、薬物事件にも対応する弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
薬物事件で接見禁止処分
薬物事件で接見禁止処分
薬物事件の接見禁止処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県宍粟警察署は、ある朝、兵庫県宍粟市に住むAさん宅を訪れました。
大麻取締法違反違反容疑で捜索差押が行われた後、Aさんは警察車両に載せられ、逮捕令状を提示されました。
Aさんは、逮捕後に勾留されることになりましたが、接見禁止が付されており、Aさんの家族と会うことができません。
困ったAさんは、弁護士と接見したいと警察に申し出ました。
(フィクションです)
薬物事件と接見禁止
薬物事件で問われる罪には、主に次に掲げるものがあります。
①覚せい剤取締法違反
覚せい剤の輸入、輸出、製造(単純・営利)、譲渡、譲受、所持、使用(単純・営利)を規制しています。
罰則は、薬物犯罪の中でも重く、覚せい剤の所持は10年以下の懲役、営利目的での覚せい剤の輸入・輸出・製造に関しては無期又は3年以上の懲役若しくは情状により1000万円以下の罰金の併科です。
②大麻取締法違反違反
大麻の栽培、輸入、輸出、所持、譲受、譲渡(単純・営利)を規制しています。
大麻の使用については処罰規定がありませんが、大麻所持による検挙数は近年増加傾向にあります。
大麻の単純所持であれば、その法定刑は5年以下の懲役となり、営利目的での所持は7年以下の懲役又は200万円以下の罰金の併科です。
③麻薬及び向精神薬取締法違反
ヘロインやコカインなどの「麻薬」や「向精神薬」を規制しています。
罰則は、対象となる薬物により異なり、例えば、依存性や禁断症状がとても強く危険薬物であるヘロインの場合、所持・譲渡・譲受の法定刑は10年以下の懲役です。
以上のような罪で逮捕・勾留されると、接見禁止に付される可能性が高いのです。
接見禁止
「接見禁止」とは、弁護士以外の者との接見を禁止することを言います。
この接見禁止が下される理由には大きく分けて3つあります。
①逃亡のおそれがある。
②容疑を否認している。
③組織犯罪が疑われる。
薬物事件は、薬物の売人など犯罪組織が背後にいる可能性が高く、罪証隠滅や口裏合わせ防止のために、接見禁止となるケースが多いのです。
接見禁止の期間は、様々です。
勾留から起訴までの勾留期間中(10~20日間)に接見禁止がつくことが多いのですが、事件によっては公判まで継続する場合もあります。
接見禁止となれば、接見禁止が付されている間は、家族とも面会することが出来ないので、被疑者や被告人にとって、またその家族にとっても精神的苦痛を強いられることになります。
そのような場合、刑事事件に強い弁護士は、接見禁止の取消・解除に向けた活動を行います。
具体的には、弁護士は、接見禁止処分に対する不服申し立てを行ったり、接見禁止処分の解除を申し立てたりします。
接見禁止処分解除申立ては、裁判官の職権発動を促すものにすぎないと解されていますが、一般人である配偶者や両親などの近親者については、事件とは無関係であることを立証することにより、家族との間での接見禁止を解除する接見禁止一部解除申請が認められることが多くなっています。
このような活動は、薬物事件をはじめとした刑事事件に精通する弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、薬物事件を含めた刑事事件を専門としています。接見禁止の取消や解除に向けた弁護活動にも迅速に対応致します。
兵庫県宍粟市の薬物事件で、「家族が逮捕されてしまった」、「接見禁止が付いていて面会できない」とお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談下さい。
刑事事件専門の弁護士が、直接、逮捕・勾留されている方と接見をする「初回接見サービス」をご案内させていただきます。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881まで今すぐご連絡ください。
特殊詐欺関与で少年院送致
特殊詐欺関与で少年院送致
特殊詐欺事件での少年院送致について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県相生市の高齢女性Vさん宅に、弁護士の秘書だと名乗り、現金100万円を騙し取ったとして、兵庫県内に住む少年Aさん(17歳)が詐欺の容疑で兵庫県相生警察署に逮捕されました。
Aさんは、小遣い稼ぎのために、高額アルバイトとうたった特殊詐欺の受け子として複数件犯行に関与していました。
逮捕・勾留の後に、神戸家庭裁判所に送致され、審判では少年院送致の保護処分の決定がなされました。
(フィクションです)
少年の特殊詐欺への関与
銀行員や市役所職員、弁護士などを騙り、「還付金があるので振込先銀行のキャッシュカードを渡してください」とか、「お子様が交通事故で相手方に怪我を負わせてしまったので、慰謝料を今すぐ用意してください」などと言い、キャッシュカードや現金などを騙し取る特殊詐欺事件が後を絶ちません。
犯罪は組織的に行われることが多く、電話をかける「掛け子」、被害者から現金やキャッシュカードを受け取る「受け子」、受け取ったキャッシュカードを使ってATMから現金を引き出す「出し子」などといったように複数人で役割を分担して犯行におよびます。
これらの役割の中でも、「受け子」や「出し子」は警察に捕まる確率が高いため、犯罪組織は外部の人間を雇い、これらの役割を担わせることが多くなっています。
これらの役割を担う外部の人間は、ネットを介して「高額アルバイト」などと称して募ります。
簡単な仕事で高額の報酬がもらえるとあって、未成年者がこのような募集に応募することが多く、特殊詐欺の「受け子」や「出し子」として警察に逮捕されるケースが多々見受けられます。
特殊詐欺は今や社会問題となっており、厳罰の傾向にあります。
少年においても例外ではなく、初犯であっても、いきなり少年院送致となるケースも少なくありません。
少年院について
家庭裁判所が下す終局処分は、保護処分、不処分、審判不開始、検察官送致があります。
更に、保護処分は、保護観察、少年院送致、児童自立支援施設送致の3つがあります。
家庭裁判所の決定により保護処分として送致された少年や懲役・禁錮の言渡しを受けた16歳未満の少年を収容し、これらの少年に、その健全な育成を図ることを目的として矯正教育、社会復帰支援等を行う施設が「少年院」です。
再び非行を犯すことなく、社会に復帰させることが目的であるので、少年院における矯正教育は少年の更生の中核となります。
少年院送致となった少年は、人間関係や学校・職場でのルールなどに適切に対応する能力が不十分である場合が多く、少年が更生するためには、少年が社会に出たときに遭遇するであろう様々な困難を乗り越え、再び非行を犯すことなく社会で生活していくことができるよう、健全なものの見方や考え方を身に着けることが重要だからです。
矯正教育は、生活指導、職業指導、教科指導、体育指導、特別活動指導を適切に組み合わせて行われます。
この中でも、生活指導は少年院における矯正教育の中心とされます。
少年院送致となる少年の多くは、基本的な生活習慣が身に付いていない、周囲とのコミュニケーション能力や自己表現力が乏しいために社会に適用できない、ものの見方や行動選択の場面に問題がある、などといったことが非行の原因となっていると考えられるので、これらの問題を改善することが少年の更生には必要不可欠と言えるからです。
生活指導には、基本的な生活習慣に関する指導から、様々な問題について講義やディスカッションを通して正しい知識や対処法を学んだり、家族との関係改善を図る指導まで幅広い内容となっています。
少年院は、少年が再び非行を犯すことがないよう、社会に適応して生活することができるよう支援する施設であり、少年院送致となることが必ずしも少年にとって不利益であるとは言えません。
しかしながら、長期間施設に収容されることで、少年の社会復帰に弊害をもたし得ることも否定できません。
お子様が事件を起こし、少年院送致が見込まれる場合には、すぐに少年事件に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件・刑事事件を専門とする法律事務所です。
弊所の弁護士は、少年一人ひとりに合う弁護・付添人活動を行い、少年の更生に適した処分となるよう尽力します。
まずは、フリーダイヤル0120-631-881までお問い合わせください。
未成年者誘拐事件で逮捕
未成年者誘拐事件で逮捕
未成年者誘拐罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神崎郡神河町の公園で一人で遊んでいた小学1年生の男の子に「おもちゃを買ってあげる。」と声をかけ、車で連れ去ったとして、兵庫県福崎警察署は兵庫県内に住むAさんを未成年者誘拐の容疑で逮捕しました。
おもちゃを買って公園に戻ったところ、男の子を探していた母親と遭遇し、男の子は無事保護されました。
Aさんは車で立ち去りましたが、男の子の母親が車のナンバーを記憶しており、すぐに兵庫県福崎警察署に通報したことで犯人が特定されました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、「未成年者誘拐でAさんを逮捕した」とだけ言われ、訳が分からず刑事事件に強い弁護士に接見を依頼しました。
(フィクションです)
未成年者誘拐罪
未成年の家出少女を自宅に泊まらせ、未成年者誘拐罪に問われるという事件が度々ニュースで話題になっています。
この場合、本人の同意があっても未成年者誘拐罪成立の妨げにはなりません。
未成年者誘拐罪は、刑法第224条に規定されています。
第二百二十四条 未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。
本条文では、未成年者の略取と誘拐について規定されています。
略取と誘拐を合わせて拐取といいます。
未成年者誘拐罪の保護法益については、学説上争いがあります。
A説:誘拐された者の自由を保護法益とする説。
自由の何たるかを理解しえない者に対する誘拐について、自由の概念を抽象化して「人の本来的な生活場所における身体の自由」を意味するものと考える。
B説:人的保護関係を保護法益とする説。
誘拐された本人が自由を奪われたことについて認識していないときに不都合であるので、親権者その他の保護監督者の利益を保護法益とすべきであるとする立場。
C説:誘拐された者の自由、誘拐された者が要保護状態にある場合は親権者等の保護監督権を保護法益とする説。
①現行法では、成人に対する無目的な単純拐取が不可罰とされていることから、未成年者については親権者等の保護監督権を保護法益としていると解する。
②意思能力はあるが、保護者のいない未成年者を拐取した場合も犯罪が成立するので、未成年者自身の自由も保護法益としていると解される。
判例は、本罪につき、暴行または脅迫を加えて幼者を不法に自己の実力内に移し、一方で監督者の監督権を侵害すると同時に、他方において幼者の自由を拘束する行為をいうとしており、③の立場を採っていると理解されています(大判明43・9・30)。
なお、犯罪が成立する場合は、未成年者自身のみを被害者と考えたとしても、法定代理人は一般に告訴権を有することから、監護権者も被害者として独自の告訴権を有すると解されます(福岡高判昭31・4・14)。
本罪の主体には、制限がなく、未成年者の監護権者も成り得るとするのが通説とされています。
判例は、保護者にも本罪の成立を肯定し、特段の事情がある場合には違法性阻却の余地を肯定することで適切な解決を図ろうとしています。
例えば、別居中で離婚係争中であった妻が養育している長男を連れ去った行為について、たとえ行為者が親権者である夫であったとしても、当該行為が未成年者略取罪の構成要件に該当することは明らかであるとし、行為者が親権者である事実は、行為の違法性が例外的に阻却されるかどうかにおいて考慮されるべき事情にすぎないと解されています(最決平17・12・6)。
また、本罪の行為である「誘拐」の意義に関しては、誘拐された者の意思に反しない態様で自己または第三者の事実的支配下におくことであって、欺罔や誘惑を手段とする場合を指します。
上記ケースのように、「おもちゃを買ってあげる」という誘い文句は「誘惑」行為に当たるでしょう。
さて、未成年者が同意していた場合にも本罪は成立し得ると最初に述べましたが、本罪の保護法益の解釈をC説とした場合、保護法益には保護監督者の監督権も含まれているので、未成年者本人の同意だけでは、監督権は侵害されたままであるので、この場合も本罪が成立する可能性があるというわけです。
兵庫県神崎郡神河町の未成年者誘拐事件で、ご家族が逮捕されてお困りの方は、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
身代わり出頭で書類送検②
身代わり出頭で書類送検②
身代わり出頭について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
公務員のAさんは、兵庫県多可郡多可町を運転中、物損事故を起こしてしまいました。
事故を起こしたことが職場に発覚することを恐れたAさんは、慌てて家族に連絡を入れました。
事情を把握したAさんの母親のBさんは、急いで現場に駆け付けました。
Aさんの将来を案じて、今回の事故はBさんが起こしたことにしようということになり、Bさんは兵庫県西脇警察署に出頭しました。
しかし、取調べでのBさんの供述が腑に落ちないと感じた警察官が、Bさんを問い詰めたところ、実はAさんが事故を起こしたことが発覚しました。
兵庫県西脇警察署は、Aさんを道路交通法違反と犯人隠避教唆の疑いで神戸地方検察庁社支部に書類送検しました。
母親のBさんも犯人隠避の疑いで書類送検されました。
(フィクションです)
身代わり出頭
前回は、身代わり出頭を頼まれた側の刑事責任について説明しました。
今回は、身代わり出頭を頼んだ側についてみていきたいと思います。
上記ケースでは、物損事故を起こしたのはAさんです。
自動車やバイク等を運転中に、他の車等に接触するなどの物損事故を起こしたにもかかわらず、道路の危険を防止することなく現場から離れています。
これは、いわゆる「当て逃げ」で、当て逃げは道路交通法違反となります。
運転手は、交通事故を起こした場合、人身か物損かを問わず、適切な処置を講じて警察に報告しなければなりません。
事故により道路上に危険が生じた場合には、それを防止する措置を講じなければならず、この措置をとらなかった場合には、危険防止等措置義務違反となり、1年以下の懲役または10万円以下の罰金に処せられる可能性があります。(道路交通法第117条の2)
また、報告義務に違反した場合には、3月以下の懲役または5万円以下の罰金が科される可能性があります。(道路交通法第119条第1項10号)
ですので、まず、Aさんに問われる罪としては、道路交通法違反が考えられます。
加えて、他人に身代わり出頭を頼んだ行為については、犯人隠避罪の教唆犯が成立する可能性があります。
教唆犯とは
「教唆犯」とは、「人を教唆して犯罪を実行させた者」をいいます(刑法第61条1項)。
教唆犯が成立するためには、
①教唆者が「人を教唆」して、
②被教唆者が「犯罪を実行」したこと
が必要となります。
ここでいう「教唆」というのは、他人を唆して犯罪を実行する決意を生じさせることをいいます。
判例は、「教唆犯の成立には、ただ漠然と特定しない犯罪を惹起せしめるにすぎないような行為だけでは足りないけれども、いやしくも一定の犯罪を実行する決意を相手方に生ぜしめる手段、方法が指示たると指揮たると、命令たると嘱託たると、誘導たると慫慂たるとを問うものではない」と解しています(最判昭26・12・6)。
日時、場所、方法、犯罪対象などの細部を常に特定する必要まではなく、具体的事情によって被教唆者に一定の犯罪行為をなすべきことを了解させる程度に達していればよいと解されます(大判大5・9・13)。
犯人隠避罪の教唆
犯人等が自ら逃げ隠れすることは犯人隠避罪の行為には当たりませんが、犯人自身を隠避させるよう教唆した場合に、本罪の教唆罪が成立するか否かについては議論があります。
大きく分けると、犯人自身による蔵匿が処罰の対象ではないならば、より間接的な犯罪への関与である教唆は、なおさら可罰性がないという消極説と、他人の教唆は定形的に期待可能性がないとはいえないとして処罰を求める積極説とが主張されています。
これに対して、判例は、防御権の乱用を根拠として、教唆罪の成立を肯定しています。
例えば、道路交通法違反の罪を犯した暴力団の組員が、配下の者を身代わりとして警察に出頭させた事件についても、犯人隠避罪の教唆罪の成立を肯定しています(最決昭60・7・3)。
教唆犯には、「正犯の刑を科する」と規定され、刑の必要的減刑が受けられる幇助犯よりも重い関与類型です。
教唆罪に問われているが争いたい、教唆罪が成立するのか知りたい、教唆犯として捜査を受けているが対応に困っておられる方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
身代わり出頭で書類送検①
身代わり出頭で書類送検①
身代わり出頭について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
公務員のAさんは、兵庫県多可郡多可町を運転中、物損事故を起こしてしまいました。
事故を起こしたことが職場に発覚することを恐れたAさんは、慌てて家族に連絡を入れました。
事情を把握したAさんの母親のBさんは、急いで現場に駆け付けました。
Aさんの将来を案じて、今回の事故はBさんが起こしたことにしようということになり、Bさんは兵庫県西脇警察署に出頭しました。
しかし、取調べでのBさんの供述が腑に落ちないと感じた警察官が、Bさんを問い詰めたところ、実はAさんが事故を起こしたことが発覚しました。
兵庫県西脇警察署は、Aさんを道路交通法違反と犯人隠避教唆の疑いで神戸地方検察庁社支部に書類送検しました。
母親のBさんも犯人隠避の疑いで書類送検されました。
(フィクションです)
身代わり出頭
交通違反や交通事故を起こしてしまったが、「免許の点数の残りが少ないから、これで行政処分を受けるのは避けたい…。」とか、「経歴に傷がついてしまうのは嫌だ…。」といった理由で、本人ではなく第三者が代わりに警察署などに出頭するという身代わり出頭事件は度々ニュースで話題になっていますね。
しかし、身代わり出頭を頼んだ側も、その要求を受けた側も刑事責任を負うことになるのです。
身代わり出頭を引き受けた側の責任
何らかの罪や法律違反に該当するような行為を行った者の代わりに、自らが行ったと警察署などに出頭した場合には、刑法上の犯人隠避罪が成立する可能性があります。
第百三条 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
犯人隠匿罪の構成要件(犯罪類型)は、
①罰金以上の刑にあたる罪を犯した者または拘禁中に逃走した者を
②隠避させたこと
です。
本罪の客体は、「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃亡した者」です。
前者の「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」における「罰金以上の刑に当たる罪」というのは、法定刑に罰金以上の刑を含む罪を指します。
「罪を犯した者」とあるので、訴追・処罰の可能性がある者でなければなりません。
過去の判例は、「罪を犯した者」の意義について、犯罪の嫌疑を受けて捜査・訴追されている者と解しています。
告訴権の消滅や、時効の完成などにより訴追・処罰の可能性がなくなった者については、本罪の客体とはなりません。
一方で、保釈中の者であっても、その行方をくらませば公判手続・刑の執行に支障が生じるので、保釈中の者は「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」に該当します。
また、後者の「拘禁中に逃走した者」についてですが、法令により拘禁されている間に逃走した者のことです。
次に、本罪の行為である「隠避」とは、「蔵匿」以外の方法により官憲による発見・逮捕を免れしめるべき一切の行為をいいます。
「蔵匿」は、官憲による発見・逮捕を免れるべき隠匿場所を提供することです。
逃走のために資金を調達することや、身代わり犯人を立てるなどの他にも、逃走者に捜査の形勢を知らせて逃避の便宜を与えるなどの場合も「隠避」に含まれます。
加えて、本罪の成立には、客体である被隠避者が罰金以上の刑にあたる罪を犯した者であること、または拘禁中逃走した者であることを認識し、かつ、これを隠避することを認識すること(故意)が必要となります。
「罰金以上の刑にあたることの認識」について、過去の裁判例は、罪を犯した者または拘禁中に逃走した者であることの認識で足り、その法定刑が罰金以上であることまで認識している必要はないと解しています。(最決昭29・9・30)
以上のように、犯人の代わりに警察署などに出頭した場合には、犯人隠避罪に問われる可能性があるのです。
あなたが、犯人隠避の疑いで捜査機関から取り調べを受けてお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件を専門に取り扱う弁護士が、初回に限り無料で法律相談を行います。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881まで今すぐご連絡を!
風俗トラブルと盗撮事件
風俗トラブルと盗撮事件
風俗トラブルと盗撮事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
会社員のAさんは、出張で兵庫県を訪れていました。
仕事後、宿泊先のホテルに帰ったAさんは、ホテルにデリヘル嬢を呼びました。
Aさんはプレイの様子を盗撮しようと、小型カメラを設置し、サービスを受ける様子を動画で撮影しました。
ところが、Aさんがシャワーを浴びている間に、デリヘル嬢がカメラを発見し、Aさんの盗撮行為が発覚してしまいました。
デリヘル嬢は、お店に電話しており、Aさんがシャワーを済ませて出てくると、お店の店長がホテルにきており、「盗撮しましたよね。誠意を見せてもらわないと警察に被害届を出します。」と言われました。
その場では、連絡先だけを教えて、後日連絡することになりましたが、Aさんはどう対応すればよいか分からず、風俗トラブルにも対応する刑事事件専門弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
風俗トラブル
風俗トラブルでの法律相談の多くは、禁止されている本番行為をしてしまった、或いは、サービスを受けている様子を盗撮し、お店から罰金や慰謝料の名目で金銭を要求されているケースです。
上記ケースでは、宿泊先のホテルにデリヘルを利用し盗撮行為に及んだというものですが、この場合、どのような犯罪が成立するのでしょうか。
迷惑防止条例違反
各都道府県で定める迷惑防止条例は、盗撮行為を禁止していますが、都道府県によっては「公共の場所や乗物」に限定されていることがあります。
しかし、兵庫県では、以下のように規定されています。
第3条の2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
(2) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置する行為
2 何人も、集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所(公共の場所を除く。)又は乗物(公共の乗物を除く。)において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為
(2) 前項第2号に掲げる行為
3 何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。
第3条の2第3項は、「何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。」と定めていますので、ホテルでの盗撮も条例違反となる可能性があります。
また、仮に条例違反にならない場合でも、軽犯罪法1条23号の「のぞき」の罪になります。「のぞき」という言葉からすると、
目で見ることを意味するように思われますが、裁判例で、カメラで撮影する場合も「のぞき」に当たるというものがありますので、この罪に当たることになります。
風俗トラブルで刑事事件化
風俗トラブルだから、警察も事件化しないだろうと高を括っていてはいけません。
風俗トラブルでも、警察が事件を受理し事件として捜査を開始する可能性もゼロではありません。
刑事事件化を避けるためにも、早期に弁護士を介して被害者と示談を成立させることをお勧めします。
刑事事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、これまでも風俗トラブルを含め数多くの刑事事件で被害者との示談を成立させてきました。
あなたが今、風俗トラブルや刑事事件でお困りなら、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談のご予約は、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
JK派遣デリヘル経営で逮捕
JK派遣デリヘル経営で逮捕
JK派遣デリヘル経営で逮捕となるケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県灘警察署は、女子高生をデリヘルで働かせ、わいせつな行為をさせたとして、児童福祉法違反、風営法違反などの疑いでデリヘル経営者のAさんを逮捕しました。
Aさんは、「18歳未満だとは知らなかった」と容疑を否認しています。
(フィクションです)
JKビジネスに潜む犯罪
JKビジネスとは、女子高生(JK)によるサービスを売りにした商売のことをいいます。
その中でも代表的なものがJKリフレで、女子高生の制服姿の店員が簡易マッサージや、腕枕、耳かき、添い寝等のサービスを提供するものです。
このJKリフレは、風俗店や飲食店ではないため、許可や届け出の必要はありません。
風俗店ではないので、18歳未満の少女を雇用しても風営法に違反することにはなりません。
しかし、JKリフレは売春などの温床になりやすいとも言われています。
女子高生との密着性を求める男性客の需要や、女子高生側も簡単に大金が稼げるなどの理由で、裏オプションとして性交渉などを提供することがあるからです。
これまでも実際に、JKリフレが、労働基準法違反や児童福祉法違反、児童ポルノ法違反等で摘発されてきました。
上記ケースでは、児童福祉法違反に問われているようです。
児童福祉法違反(有害支配行為)
従来、JKリフレの摘発は、労働基準法違反(危険有害業務への就業)が適用されることが多かったのですが、最近では児童福祉法違反の適用が見られます。
児童福祉法には、「有害支配の罪」が規定されています。
本罪は、「児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、児童を自己の支配下に置く」犯罪です。
この「児童の心身に有害な影響を与える行為」の典型的行為は、「満15歳に満たない児童に酒席に待する行為を業務としてさせる行為」や「児童に淫行をさせる行為」などですが、これらに匹敵する行為も「児童の心身に有害な影響を与える行為」になります。
過去の裁判例では、深夜までみだらな行為をするおそれのある宿泊客にマッサージする等の行為を「児童の心身に有害な影響を与える行為」としたものがあります。
また、「自己の支配下に置く行為」とは「児童の意思を左右できる状態の基に児童を置くこと」です。
遅刻・欠勤に罰金を科す行為や住み込みで従事させている場合が該当します。
児童福祉法違反(有害支配)の刑罰は、1年以下の懲役または30万円以下の罰金となっており、労働基準法違反(危険有害業務への就業)の刑罰(6月以下の懲役または30万円以下の罰金)よりも重くなっています。
児童福祉法違反で逮捕されたら
逮捕から48時間以内に、警察は被疑者を釈放するか、検察に送致するかを決定します。
検察に送致された場合、検察官は被疑者の身柄を受けてから24時間以内に、被疑者を釈放するか、勾留請求するかを決めます。
検察官が勾留する必要があるとして裁判所に対して勾留請求がなされると、裁判官は当該被疑者を勾留するか釈放するかを判断します。
勾留決定がなされると、検察官が勾留請求した日から原則10日間被疑者は拘束されることになります。
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公衆トイレ放火で逮捕②
公衆トイレ放火で逮捕②
少年事件(公衆トイレ放火)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県佐用郡佐用町にある公園で、公衆トイレから煙が出ていると、通行人から通報がありました。
兵庫県佐用警察署は、付近の防犯カメラの様子などから、市内に住む中学生のAくん(13歳)とBくん(14歳)による犯行であることを特定しました。
同署は、Bくんを非現住建造物等放火の疑いで逮捕しました。
(フィクションです)
前回は、非現住建造物等放火罪について説明しました。
法定刑には罰金刑がなく懲役刑のみとなっており、刑法犯の中でも重い犯罪です。
それでは、今回は、20歳未満の者が事件を起こした場合の捜査段階の流れについてみていきたいと思います。
20歳未満の者(「少年」といいます。)が犯罪を犯した場合、成人の場合と同様に、警察に逮捕される可能性があります。
少年の犯罪事件は、原則として、成人の場合と同様に被疑事件として捜査機関による捜査がなされた後、その全事件が家庭裁判所に送致されます(これを「全件送致主義」といいます。)。
家庭裁判所に送致された事件は、家庭裁判所において少年保護事件として審理され、大部分の事件が家庭裁判所で終了します。
しかし、刑事処分が相当であるとされる事件については、検察官に送致されます。
少年の刑事事件とは、少年の犯罪事件が
①家庭裁判所に送致される以前の段階における少年の被疑事件
②家庭裁判所から検察官への逆送から刑事裁判所へ公訴を提起される以前の段階における少年の被疑事件
③公訴提起後の事件
をいいます。
少年の刑事事件の処理手続きについては、原則として、一般の成人の刑事事件における手続と同様に取り扱われます。
さて、上記ケースでは、AくんとBくんは共謀して公衆トイレに放火したことが特定されています。
しかし、警察に非現住建造物等放火罪の容疑で逮捕されたのは、Bくんだけです。
なぜでしょう。
刑法には、以下のように規定されています。
第四十一条 十四歳に満たない者の行為は、罰しない。
14歳未満の者が、刑罰法令に触れる行為をしたとしても、刑法上の犯罪にはならないのです。
犯罪が成立しないので、逮捕されることもありません。
しかし、少年法上は「触法少年」として保護処分の対象となりますので、家庭裁判所に送致された場合には、審判を経て処分が言い渡されることになります。
14歳以上20歳未満の少年が罪を犯した場合には、逮捕の要件を満たしていれば逮捕される可能性があるのです。
逮捕されると、警察は逮捕から48時間以内に被疑者である少年を検察に送致するか、釈放するかを決めます。
検察に送致した場合には、検察は少年の身柄を受けてから24時間以内に少年を釈放するか、裁判所に勾留請求をするかを判断します。
検察官が勾留請求をすると、裁判官は少年を勾留するか釈放するかを決定します。
勾留が決定すると、検察官が勾留請求をした日から10日間、延長されると20日間の身柄拘束となります。
少年の場合には、勾留に代わる観護措置がとられる場合があります。
この場合、留置先は少年鑑別所となり、身体拘束期間は10日間です。
14歳未満の者が刑罰法令に触れる行為を行った場合、警察は逮捕や捜査を行うことが出来ませんので、警察は児童相談所に送致します。
このように、少年の年齢によって、後の手続が異なりますので、お子様が事件を起こしてしまったのであれば、少年事件に強い弁護士に相談されることをお勧めします。
少年事件でお困りの方は、少年事件を数多く取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までお問い合わせください。
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公衆トイレ放火で逮捕①
公衆トイレ放火で逮捕①
放火罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県佐用郡佐用町にある公園で、公衆トイレから煙が出ていると、通行人から通報がありました。
兵庫県佐用警察署は、付近の防犯カメラの様子などから、市内に住む中学生のAくん(13歳)とBくん(14歳)による犯行であることを特定しました。
同署は、Bくんを非現住建造物等放火の疑いで逮捕しました。
(フィクションです)
放火の罪
放火の罪は、火力を不正に使用して、建造物等を焼損し、公共の生命・身体・財産に対して危険を生じさせ得る「公共危険罪」と呼ばれる犯罪です。
放火の罪には、主に次のものがあります。
・現住建造物等放火罪
・非現住建造物等放火罪
・建造物等以外放火罪
上記ケースでは、「非現住建造物等放火罪」に問われています。
第百九条 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期懲役に処する。
2 前項の物が自己の所有に係るときは、六月以上七年以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。
本罪の構成要件(犯罪類型)は、以下の通りです。
1項…①放火して
②他人の所有に属する
③現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱抗を
④焼損したこと。
2項…①放火して
②自己の所有に属する
③現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱抗を
④焼損し
⑤公共の危険を生じさせたこと。
まず、本罪の客体についてみていきましょう。
本罪の客体は、「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱抗」です。
「現に人が住居に使用せず」というのは、犯人以外の者が住居に使用していないことをいいます。
「現に人がいない」とは、現に共犯者を含む犯人以外の者が存在しないことを意味します。
そして、「建造物」は、「家屋その他これに類似する工作物であって、土地に定着し、人の起居出入に適する構造を有するもの」(大判大13・5・31)をいいます。
毀損しないで取り外せるものは「建造物」には当たらず(大判大8・5・3)、布団、畳、障子、襖、カーテン等を焼いただけでは放火既遂罪は成立しません。
「艦船」は、軍艦その他の船舶を、「鉱抗」とは、鉱物採取するための地下設備をいいます。
次に、行為である「放火」の意義についてみてみましょう。
「放火」とは、故意に不正に火力を使用し、物件を焼損することをいいます。
この点、不作為による放火については、判例は、自己の過失により物件を燃焼させた者が、その既発の火力により建物が焼損せらるべきことを容認する意思をもって、あえて必要かつ容易な消化措置をとらないことは、不作為による放火行為といえるとして、不作為による放火を認めています(最判昭33・9・9)。
続いては、本罪の結果である「焼損」について解説します。
客体を焼損した時点で既遂となります。
この「焼損」の意義については、学説上争いがあります。
1.独立燃焼説(判例)
火が媒介物を離れ目的物に移り、独立して燃焼作用を継続し得る状態に達した時点を「損傷」とする立場です。
放火罪の公共危険犯的性質を重視し、その段階で公共の危険の発生を認め得ることを根拠とします。
2.燃え上がり説
目的物の重要な部分が燃焼を開始した時点を「焼損」とする立場です。
3.毀棄説
火力によって目的物が損壊の程度に達した時点を「焼損」とする立場です。
4.効用喪失説
火力により目的物の重要部分が消失し、その本来の効用を失う程度に毀損された時点を「焼損」とする立場です。
このように、どの程度燃焼した段階で既遂と認めるかについて争いがあります。
「放火」行為と「焼損」との間には因果関係がなければなりません。
2項については、客体の燃焼に加えて、「公共の危険」の発生を必要とします。
「公共の危険」の発生とは、放火行為により一般不特定の多数人を、所定の目的物を延焼しその生命・身体・財産に対し危害を感ぜしめるにつき相当の理由がある状態をいいます(大判明44・4・24)。
必ずしも建造物等に対する延焼の危険のみに限られず、不特定または多数の人の生命・身体・財産に対する危険も含まれます(最決平15・4・14)。
更に、故意がなければ本罪は成立しません。
1項については、「他人の所有に属し、人の住居に使用されておらず、かつ人が現在していない建造物等であること、火を放って客体を焼損することの認識」が必要となります。
また、2項については、「自己の所有に属し、人の住居に使用されておらず、かつ人が現在していない建造物等であること、火を放って客体を焼損することの認識が必要です。
公共の危険の発生の認識が必要か否かについては争いがあります。
1項の場合は、2年以上の有期懲役であり、未遂・予備も処罰されます。
2項の場合は、6月以上7年以下の懲役となっており、本罪の法定刑に罰金刑は設けられていません。
ご家族が、放火の罪で逮捕されてお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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