Archive for the ‘経済事件’ Category
占有離脱物横領で微罪処分
占有離脱物横領で微罪処分
占有離脱物横領罪と微罪処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
会社員のAさんは、電車で会社まで通勤していました。
ある日、会社の最寄り駅にあるトイレを利用した際、トイレの個室に財布が置き忘れられていることに気が付きました。
Aさんは魔が差して、その財布を自分のカバンの中にいれて持ち帰りました。
財布から現金を抜き取り、財布は駅のゴミ箱に捨てました。
その後、兵庫県明石警察署から連絡が来て、「財布の件で話が聞きたいから署まで来てもらえませんか。」と言われました。
Aさんは、警察署に出頭する前に、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
占有離脱物横領罪とは
誰かが置き忘れた財布や荷物をそのまま自分のものにしてしまう、いわゆるネコババ行為は、ちゃんとした犯罪になります。
多くの場合、「占有離脱物横領罪」という罪に問われることになります。
第二百五十四条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
占有を離れた他人の物
占有者の意思に基づかずにその占有を離れたもので、誰の占有にも属していないもの、及び、委託関係に基づかずに行為者の占有に属したものをいいます。
占有者が手にもっている場合はもちろんですが、手にもっていなくても占有者の傍に置いておいたり、占有者が近くにいなくても場所どりのために置いている場合には「占有を離れた」とは言えません。
これは、「他人のもの」でなければならず、所有者が所有権を放棄したものや無主物は客体から除かれます。
横領
占有離脱物を「不法領得の意思」に基づいて自己の支配下に置いたときに、既遂に達します。
「不法領得の意思」とは、その内容については争いがありますが、判例は、他人の物の占有者が委託の任務に背いてそのものにつき権限がないのに、所有者でなければできないような処分をする意思であると解しています。
以上より、Aさんがトイレで発見した財布は、持ち主がうっかり置き忘れていたものであるので、持ち主がまだ近くにいてすぐに取りに戻ってきた場合は別として、「占有を離れた他人の物」と言えるでしょう。
そして、その財布を勝手に自分のものにして、現金は抜き去り、財布は処分してしまったので、占有離脱物横領罪が成立すると考えられます。
微罪処分
さて、占有離脱物横領罪が成立した場合であっても、微罪処分となる可能性があります。
「微罪処分」というのは、検察官に送致する手続をとらず、他の同一事件とともに月まとめで一括して検察官に報告することで事件を処理する処分のことです。
この微罪処分の対象となる犯罪は、
①過去10年以内に同種の前科前歴のない者、又は
②常習者でない者の犯した
窃盗、盗品等関係、詐欺、単純横領、単純賭博、暴行です。
これらの犯罪の内容が、軽微と認められ処罰を要しないと明らかなものが、微罪処分の対象となります。
例えば、窃盗であれば、犯情悪質でなく、被害額が少ない事件、また、被害届が出されていない事件や被害回復がなされている事件は、軽微な事案として微罪処分となる可能性があるでしょう。
しかし、以下のような場合は微罪処分の対象から除外されます。
①被害者不明等の理由により証拠品の還付不能の事件、
②通常逮捕・緊急逮捕の規定によって被疑者を逮捕した事件、
③現行犯逮捕の規定により被疑者を逮捕した事件で24時間以上被疑者を留置した事件、
④告訴・告発・自首のあった事件、
⑤法令が公訴を行わなければならないことを規定している事件、
⑥検事正が特に送致すべきものと指示した事件。
微罪処分となると、家族などの身元引受人が警察署まで迎えにきて釈放となります。
微罪処分になると、処罰されることはありませんが、「前歴」が付くことになります。
前歴は、警察、検察、本籍のある市区町村に記録として残りますが、法的に不利益になることはありません。
しかし、再び犯罪を犯してしまうと、初犯として扱われないことに注意が必要です。
兵庫県の占有離脱物横領事件で被疑者となり警察からの呼び出しを受けている、取調べ対応にお困りの方は、刑事事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
数多くの刑事事件を取り扱ってきた経験豊富な弁護士が、丁寧に相談対応いたします。
初回の法律相談は無料です。
まずは、フリーダイアル0120-631-881までお問合せ下さい。
侵入盗で逮捕
侵入盗で逮捕
侵入盗で逮捕される場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県丹波市内で夜間や住人が留守にしている日中に住宅に侵入し現金やクレジットカードなどを盗む侵入盗が多発していました。
これを受けて、兵庫県丹波警察署は、巡回などの警備を強化していました。
防犯カメラの映像から身元が判明し、同署は、県内に住むAさんとBさんを窃盗と住居侵入の容疑で逮捕しました。
(フィクションです)
侵入盗で成立し得る犯罪
人の住居や建物に忍び込み金品を盗む犯罪を「侵入盗」といいます。
その手口により、「空き巣」「居空き」「金庫破り」「事務所荒らし」などと呼ばれます。
兵庫県警察のデータによれば、平成30年度中の侵入盗の認知件数は2,741件、検挙件数は1,514件となっています。
侵入盗を行った場合、「住居侵入等罪」や「窃盗罪」に問われる可能性があります。
住居侵入等罪
まず、人の住居や建物に勝手に忍び込んだ行為については、「住居侵入等罪」が成立する可能性があります。
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
住居侵入等罪の客体は、「人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船」です。
「人の住居」とは、犯人がその住居において単独で、あるいは他の者と共同で生活を営んでいるものではない住居のことを指します。
共同生活を営んでいた者であっても、それから離脱した場合には、その住居は「人」の住居となります。
例えば、家出中の子供が実父の家に強盗目的で深夜に侵入する行為は、住居侵入罪を構成することになります。
ここでいう「住居」というのは、人の起臥寝食に使用される場所で、旅館やホテルなどの客室に関しても、その利用が短時間であっても、起臥寝食に使用されるものである限り「住居」にあたると解されます。(名古屋高判昭26・3・3)
また、「人の看守する邸宅・建造物・艦船」についてですが、「人の看守する」とは「人が事実上管理・支配している」を意味し、「邸宅」は「人の住居の用に供せられる家屋に付属し、主として住居者の利用に供されるために区画された場所」をいい、「建造物」とは、住居・邸宅以外の建造物およびこの付属地も含みます。
「艦船」は、軍艦その他の船舶をいいます。
そして、住居侵入盗の行為は、「正当な理由がないのに侵入すること」です。
「侵入」の意義については、住居者や看守者の意思に反して立ち入ることであると解されます。
「正当な理由がないのに」とは、「違法に」という意味です。
窃盗罪
次に、人の者を盗むという行為については、「窃盗罪」に問われ得ます。
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
窃盗罪は、他人の財物を窃取するこ犯罪です。
窃盗罪の客体である「他人の財物」は、他人の占有する他人の財物であり、自己の財物であっても他人の占有に属し、または公務所の命令によって他人が看守しているものは他人の財物とみなされます。
「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことを意味します。
窃取の手段や方法は問いません。
窃盗罪の成立には、上の要件に加えて、主観的要件を満たす必要があります。
主観的要件として、故意の他に「不法領得の意思」が必要であるか否かには争いがあります。
故意については、「財物が他人の占有に属していること」と「その占有を排除して財物を自己または第三者の占有に移すことを認識すること」が必要となります。
また「不法領得の意思」とは、「権利者を排除し他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従いこれを利用もしくは処分する意思」をいいます。(大判大4・5・21)
上記ケースのような侵入盗は、住居侵入等罪ならびに窃盗罪が成立すると考えられます。
そうすると、この2つの罪はどのような関係にあるのでしょうか。
侵入盗の場合、住居侵入盗罪と窃盗罪の牽連犯となります。
牽連犯とは、犯罪の手段もしくは結果である行為が、他の罪名に触れる場合をいいます。
住居侵入は、窃盗の手段であるからです。
この場合、その最も重い刑により処断することになりますので、法定刑が10年以下の懲役又は50万円以下の罰金である窃盗罪の刑により処断されることになります。
侵入盗は、人の住居や建物に忍び込み盗みを働いている点で犯行が悪質であると判断されるでしょう。
また、侵入盗を複数回行っている場合も、被害額も大きくなり、初犯であっても、公判請求され、有罪となれば実刑が言い渡される可能性もあります。
実刑を回避するには執行猶予付き判決を獲得する必要がありますが、そのためには被害者への被害弁償や示談締結、家族からの監督が期待できることや専門的な治療を受けていることなどといった再発防止のための環境が整っていることを、公判において客観的な証拠に基づき主張することが必要となります。
このような弁護活動は、刑事事件に強い弁護士に任せるのがよいでしょう。
ご家族が侵入盗で逮捕されてお困りの方は、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
執行猶予中の窃盗
執行猶予中の窃盗
執行猶予中の窃盗事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県淡路市のスーパーで商品3点を万引きしたとして、主婦のAさんが兵庫県淡路警察署に逮捕されました。
家族が身元引受人となり、翌日釈放されましたが、Aさんは、窃盗での前科があり、犯行当時は執行猶予期間中でした。
Aさんは、どうにか実刑を免れたいと思っており、すがる思いで刑事事件専門の弁護士に相談しに行きました。
(フィクションです)
刑の全部の執行猶予の取消
刑の全部の執行猶予の言渡しを受けたにもかかわらず、その執行猶予が取り消される場合があります。
刑の全部の執行猶予の取消事由には、必要的取消事由と裁量的取消事由とがあります。
必要的取消事由
①猶予の期間中に更に罪を犯して禁固以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
②猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁固以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
③猶予の言渡し前に他の罪について禁固以上の刑に処せられたことが発覚したとき。
裁量的取消事由
①猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
②刑法第25条の2第1項(保護観察の付与)の規定により保護観察に付せられたものが遵守すべき事項を遵守せず、その事情が重いとき。
③猶予の言渡し前に他の罪について禁固以上の刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されたことが発覚したとき。
必要的取消事由に該当する場合には、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消さなければなりません。
上記ケースの場合には、執行猶予期間中の万引きですので、この万引き(=窃盗罪)について刑の全部について執行猶予が言い渡されない限り、前の事件で言い渡された刑の執行猶予が取り消されてしまうことになります。
ですので、今回の事件においても、実刑を回避するためには、「再度の執行猶予」を獲得する必要があるのです。
再度の執行猶予
再度の執行猶予が認められる要件は、次の①から④の全てを満たす必要があります。
①以前に刑の全部の執行猶予が付された懲役または禁錮の判決を受けていること。
②執行猶予期間中に、1年以下の懲役または禁錮の判決を受ける場合であること。
③情状に特に酌量すべきものがあること。
④保護観察中に罪を犯したものではないこと。
再度の執行猶予に付すか否かは裁判官の裁量によりますので、上の要件全てを満たした場合であっても、必ずしも再度の執行猶予が付されるわけではありません。
また、執行猶予期間中に再び罪を犯しているのですから、反省が足りていないと考えられるでしょう。
ですので、再度の執行猶予が認められるのは、非常に限られたケースであると言えます。
万引きを繰り返しているケースでは、クレプトマニアである可能性もあります。
クレプトマニアとは、窃盗や万引きを止められずに繰り返してしまう精神疾患のひとつです。
お金がないから物を盗むのではなく、盗むことに快感を得るなど、利益目的ではない窃盗行為です。
クレプトマニアと診断された場合には、再犯を防止するため、医師による専門的な治療やクレプトマニアの方の更生を支援する団体からの支援等を受けることが重要です。
裁判では、再犯防止のためには刑罰ではなく専門の治療を受ける必要があることを特に酌量すべき事情として主張することになるでしょう。
万引きを繰り返し執行猶予期間中に再び万引きをしてしまいお困りの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
お問い合わせは、フリーダイアル0120-631-881まで。
初回の法律相談は無料です。
窃盗事件で審判不開始
窃盗事件で審判不開始
窃盗事件での審判不開始について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県宍粟市に住むAさん(15歳)は、市内のコンビニさんで商品を万引きしたとして、店員に呼び止められました。
Aさんは、通報を受けて兵庫県宍粟警察署から駆け付けた警察官に現行犯逮捕されました。
警察で取調べを受けたAさんは、両親が身元引受人となり、釈放されました。
後日、今後どのような処分を受けることになるのか不安になり、少年事件に強い弁護士に相談し、弁護を依頼することになりました。
(フィクションです)
終局決定の種類
家庭裁判所が少年保護事件について行う決定には、事件自体について判断し、最終的な少年の処分を決定する終局決定と、終局決定前の中間的な措置としてなされる中間決定とがあります。
終局決定としては、次の5種類があります。
①審判不開始
②不処分
③保護処分
(ア)保護観察
(イ)児童自立支援施設又は児童養護施設送致
(ウ)少年印送致
④検察官送致
⑤知事又は児童相談所長送致
審判不開始
家庭裁判所は、調査を行った結果、審判に付することができず、又は審判に付することが相当でないと認めるときは、審判を開始しない旨の決定をしなければなりません。
この決定を「審判不開始決定」といいます。
審判不開始決定は、調査の結果に基づいてなされる決定であり、その要件は、審判に付することができないとき、及び審判に付するのが相当でないときです。
(1)審判に付するのが相当でないとき
審判に付するべき事由はあるけれども、少年に要保護性の存在する蓋然性が認めらず、裁判官による直接の審理を必要としないため、審判を行う必要性がない場合をいいます。
つまり、上の②~⑤のいすれの処分も必要がない場合に限られます。
(2)審判に付することができないとき
法律上または事実上、審判を行うことができない場合をいいます。
これは、次の3つに分けられます。
・非行なし
非行事実の存在の蓋然性が認められないときで、これは、少年の行為が非行構成要件に該当せず 、非行として成立しない場合と、証拠上、非行事実の存在の蓋然性すら認められない場合を指し ます。
・所在不明等
調査・審判を行うことが法律上又は事実上不可能であると認められる場合で、少年の心神喪失、 死亡、所在不明、疾病、海外居住等の場合です。
・その他
審判不開始をめざす活動
審判不開始を目指す場合、付添人である弁護士は、捜査段階から弁護人として活動していたのであれば、それまでの弁護活動の成果を早期に裁判所に伝え、審判不開始を求める意見書を提出するなどの活動を行います。
例えば、事件後すぐに、被害者に謝罪と被害弁償、示談ができていることや、少年が自身の行為を振り返りしっかりと反省できていること、保護者や学校の監督が期待でき、カウンセリング等を受けており更生に向けた環境が整っていることなど、少年に要保護性がないことを主張します。
家庭裁判所の調査や付添人である弁護士の活動の結果、少年への教育的な働きかけにより、要保護性が解消された場合、あえて審判を行う必要はなく、審判不開始となる可能性があります。
このような活動を依頼するのは、少年事件に精通した弁護士がよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件を数多く取り扱う法律事務所です。
少年の更生のため、少年一人ひとりに適した弁護活動、付添人活動を行えるよう尽力します。
お子様が事件を起こしてしまった、家庭裁判所に送致されたがどのような処分を受けるのか不安だ、とお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
お問い合わせは、フリーダイアル0120-631-881まで。
窃盗事件で逮捕
窃盗事件で逮捕
窃盗事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県美方郡香美町の民家に侵入し、現金300万円と宝石類を盗んだ疑いで、県内に住むAさんとBさんは兵庫県美方警察署に窃盗容疑で逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、警察から事件の詳細について教えてもらえず、Aさんと会うこともできず困っていました。
そんな時、知人から弁護士に相談することを提案された、Aさんの家族は、慌ててネットで検索した刑事事件専門の弁護士に相談の電話を入れました。
(フィクションです)
窃盗事件で逮捕されたら
あなたが、犯罪を犯し、警察に逮捕されたとしましょう。
あなたは、警察署内の留置場で身体拘束をうけることになります。
逮捕から48時間以内に警察は、あなたを釈放するか、それとも検察に送致するかを決めます。
警察が、あなたの身柄を事件の証拠物などと共に検察に引き継ぐことを「送致」といいます。
検察官は、あなたの身柄を受けてから24時間以内に、あなたを引き続き身体拘束するかどうかを判断します。
被疑者または被告人を拘禁する裁判および執行を「勾留」といいます。
勾留には、起訴前勾留と起訴後勾留とがありますが、ここでは起訴前勾留について説明します。
裁判官が勾留請求しない場合には、あなたは釈放されます。
勾留の要件は、(1)犯罪の嫌疑、(2)勾留の理由、および、(3)勾留の必要性があることです。
(1)犯罪の嫌疑
被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がなければなりません。
身体拘束をする上で、犯罪を行ったことを裏付ける事実が必要となります。
しかし、勾留段階では、すべての証拠がそろっていることはなく、ここで要求されている嫌疑の程度は、それほど高いものではありません。
(2)勾留の理由
以下のうち、どれか一つに該当している必要があります。
①定まった住所を有しないとき。
②罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
③逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
(3)勾留の必要性
嫌疑及び勾留の理由がある場合であっても、被疑者を勾留することにより得られる利益と、これにより生ずる不利益とを比較し、権衡を失するときは、被疑者を勾留することは許されません。
以上の要件に該当すると判断した場合には、検察官は勾留請求をします。
勾留請求前の段階で、あなたは、弁護人に依頼し、勾留の要件に該当しないことを示す証拠を収集し、検察官に提出してもらうことで、勾留請求しないよう検察官に働きかけることができます。
検察官が勾留請求をすると、あなたの身柄は裁判所に移され、裁判官はあなたと面会し、事件についてあなたの反論・弁明を聞いた上で、あなたを勾留するかどうかを判断します。
裁判官が、勾留の要件を満たしていると判断した場合には、勾留決定を出します。
勾留が決定する前に、弁護人に依頼し、裁判官に対して勾留決定しないよう、勾留要件を満たさないことを示す証拠を裁判官に提出するなど、働きかけを行うことにより、勾留阻止の可能性を高めることができます。
勾留が決定すると、あなたは、検察官が勾留請求した日から10日間、必要があれば勾留延長され、最大で20日間勾留されます。
ただし、勾留決定に対しては、裁判官に対し不服申立てを行うことができます。
不服申立てを受けた裁判官が、あなたは勾留の要件を満たしていないと判断すれば、勾留決定を取消し、あなたを釈放することになります。
勾留されると、長期間の身体拘束を受けることになり、それによって生じる不利益は小さくはありません。
もし、あなたの家族が刑事事件で逮捕されてしまったのであれば、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご連絡ください。
刑事事件専門弁護士が、逮捕されている方のもとへ赴き接見を行う「初回接見サービス」をご案内いたします。
詳しくは、フリーダイアル0120-631-881までご連絡ください。
特殊詐欺における共犯③
特殊詐欺における共犯③
特殊詐欺における共犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aさんは、ギャンブルでできた借金の返済に苦労していました。
SNSで「高額アルバイト」で検索すると、「荷物を受け取るだけの高額アルバイト」がヒットしました。
掲載してあった連絡先に問い合わせると、Bと名乗る男が出て、「指定された場所に行ってキャッシュカードを受け取り、現金を引き出すだけ」の内容だと言われました。
Aさんは携帯電話でBと連絡をとり、指定された通りに動きました。
指定された場所に赴く際にはスーツを着用すること、銀行協会の○○だと名乗ることなどが指示されました。
Aさんは、受け取ったキャッシュカードでATMから現金を引き出し、自分の取り分を取った残額とキャッシュカードを指定されたコインロッカーに入れました。
このようなことを3~4回繰り返していましたが、ある日、いつものようにBからの指示通りに兵庫県川辺郡猪名川町にある家を訪問した際に、待機していた兵庫県川西警察署の警察官に逮捕されました。
(フィクションです)
特殊詐欺と共犯~幇助犯~
前回は、「受け子」として特殊詐欺にかかわった場合に「共同正犯」として正犯として刑事責任が問われる可能性があることを説明しました。
今回は、詐欺罪の「幇助犯」について見ていきたいと思います。
幇助
刑法第62条
1 正犯を幇助した者は、従犯とする。
幇助犯とは、「正犯を幇助した者」のことをいいます。
幇助は、正犯に物的・精神的な支援や援助を与えることにより、その実行行為の遂行を促進し、構成要件該当事実の惹起を促進することを意味します。
つまり、幇助犯が成立するためには、
①幇助者が「正犯を幇助」し、
②被幇助者が犯罪を実行したこと、
が必要となります。
①正犯を幇助すること
幇助犯の成立要件である「正犯を幇助した」と言えるか否かは、「幇助行為の存否」という客観面の検討、並びに、「幇助の故意の有無」という主観面の検討が必要とされています。
(ア)幇助行為
幇助行為は、犯罪の実行を容易にするものでれば、凶器を渡すなどの物理的方法であること、激励するなどの精神的方法であることを問いません。
(イ)幇助の故意
幇助の故意の内容については、争いがありますが、正犯の犯罪行為を容易にしているという認識・容認と、幇助行為の結果被幇助者が犯罪の結果を発生させることを認識・容認していたことも必要とする立場もあります。
②被幇助者が犯罪を実行したこと
幇助者が正犯を幇助し、それに基づき、正犯が犯罪を実行行為したことが必要です。
「幇助の未遂」とは、幇助行為は行われたけれども、正犯が実行の着手に至らなかった場合をいい、被幇助者が実行行為に出たがその犯罪が未遂に終わった場合を「未遂犯の幇助」といいます。
前者は不可罰となり、後者は処罰されます。
共同正犯と幇助犯の区別
「共同正犯」と「幇助犯」の区別は、一般的に、「特定の犯罪を自己の犯罪として実現する意思がある」か、あるいは、「他人の犯罪を手助けする意思がある」にすぎないのか、です。
これらの意思は、主観的なものであり、犯罪の動機、犯罪から得る利益、犯罪までの経緯、正犯者との関係性、犯罪への主体的関与の程度、担った役割の重要性などの事情を考慮して判断されます。
「受け子」についてみれば、例えば、正犯から脅されて特殊詐欺に関与した場合には、自己の犯罪を実現する意思がなかったと判断され、幇助犯が成立する可能性がありますが、特殊詐欺と認識・容認しつつ、小遣い稼ぎのために加担した場合には、自己の犯罪を実現する意思があったと判断され、共同正犯となるでしょう。
共同正犯は正犯として扱われますので、起訴され有罪判決を受けると、詐欺罪の法定刑である10年以下の懲役の範囲内で刑が言い渡されます。
一方、幇助犯で起訴され有罪判決を受けた場合には、5年以下の懲役の範囲内で刑が言い渡されます。
ご家族が特殊詐欺の受け子として詐欺事件に加担してしまい逮捕されてお困りであれば、刑事事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
ご本人様が逮捕されている場合には、刑事事件専門弁護士が留置先に赴き接見を行う「初回接見サービス」をご案内いたします。
詳しくは、フリーダイアル0120-631-881までご連絡ください。
特殊詐欺における共犯②
特殊詐欺における共犯②
特殊詐欺における共犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aさんは、ギャンブルでできた借金の返済に苦労していました。
SNSで「高額アルバイト」で検索すると、「荷物を受け取るだけの高額アルバイト」がヒットしました。
掲載してあった連絡先に問い合わせると、Bと名乗る男が出て、「指定された場所に行ってキャッシュカードを受け取り、現金を引き出すだけ」の内容だと言われました。
Aさんは携帯電話でBと連絡をとり、指定された通りに動きました。
指定された場所に赴く際にはスーツを着用すること、銀行協会の○○だと名乗ることなどが指示されました。
Aさんは、受け取ったキャッシュカードでATMから現金を引き出し、自分の取り分を取った残額とキャッシュカードを指定されたコインロッカーに入れました。
このようなことを3~4回繰り返していましたが、ある日、いつものようにBからの指示通りに兵庫県川辺郡猪名川町にある家を訪問した際に、待機していた兵庫県川西警察署の警察官に逮捕されました。
(フィクションです)
特殊詐欺と共犯~共同正犯~
特殊詐欺は、組織的に行われ、被害者に電話をかける「かけ子」、被害者から直接現金やキャッシュカードを受け取る「受け子」、キャッシュカードを使ってATMから現金を引き出す「出し子」などの役割を分担して犯罪を実行します。
ほとんどのケースで、「かけ子」が組織の主犯格と関りが強く、「受け子」や「出し子」は組織の主犯格と面識がなく、特殊詐欺の実態を把握しないまま指示に従っている傾向が見受けられます。
それでは、「受け子」として特殊詐欺に関った場合には、どのような刑事責任に問われることになるのでしょうか。
複数人が、共同して犯罪を実現する場合を「共犯」といいます。
共犯は、次の3つに分けられます。
1.共同正犯
2.教唆
3.幇助
共同正犯
2人以上共同して犯罪を実行することを「共同正犯」といいます。
共同正犯者は、「すべて正犯」とされます。
つまり、共同して実行した犯罪について、共同者全員が正犯者としての刑事責任を問われることになるのです。
共同正犯には、「実行共同正犯」と「共謀共同正犯」の2種類があります。
実行共同正犯は、共同者全員が実行行為を分担し合って犯罪を実現する場合をいい、共謀共同正犯は、複数人が特定の犯罪を行うため、共同実行の意思のもとに相互に他人の行為を利用しあって犯罪を実現するための謀議をし、共謀者のうちのある者が共同実行の意思に基づいてこれを実行する場合をいいます。
共同正犯が成立するためには、次の要件を満たす必要があります。
①主観的に複数人に共同実行の意思が存在すること。
「共同実行の意思」とは、各行為者が相互に他人の行為を利用し補充しあって構成要件を実現させる意思のことをいいます。
この共同実行の意思は、行為者相互間に存在していなければなりませんが、行為の際に存在すればよく、必ずしも事前の打ち合わせ等があったことは必要とされません。
②客観的に共同実行の事実が存在すること。
複数人が実行行為を共同して犯罪を実現させることを「共同実行の事実」といいます。
「共同して」は、共同者全員が相互に他人の行為を利用し補充しあって犯罪を実行するということを意味します。
特殊詐欺事件において、実行行為を行う時点で、自身が行う行為が詐欺行為に加担するものだと認識あるいは認容しつつ、実際に行為を遂行したのであれば、詐欺罪の共同正犯が認められる可能性があるのです。
「受け子」が指示された場所に赴き、被害者から現金やキャッシュカードを受け取る際に、「これはもしかして詐欺じゃないのか」と思っていればアウトです。
そのような意思があったか否かは、犯行の経緯・動機、犯罪により得た利益、詐欺組織における役割や関係性、犯罪への主体的関与の程度などの事情が考慮され判断されます。
例え、組織の末端である「受け子」であっても、逮捕・勾留されると長期間身体拘束を受ける可能性が非常に高いです。
また、組織犯罪ということで接見禁止が付される場合もあります。
ご家族が特殊詐欺事件に加担したとして逮捕されたのであれば、すぐに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の刑事事件専門弁護士にご相談ください。
特殊詐欺における共犯①
特殊詐欺における共犯①
特殊詐欺について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aさんは、ギャンブルでできた借金の返済に苦労していました。
SNSで「高額アルバイト」で検索すると、「荷物を受け取るだけの高額アルバイト」がヒットしました。
掲載してあった連絡先に問い合わせると、Bと名乗る男が出て、「指定された場所に行ってキャッシュカードを受け取り、現金を引き出すだけ」の内容だと言われました。
Aさんは携帯電話でBと連絡をとり、指定された通りに動きました。
指定された場所に赴く際にはスーツを着用すること、銀行協会の○○だと名乗ることなどが指示されました。
Aさんは、受け取ったキャッシュカードでATMから現金を引き出し、自分の取り分を取った残額とキャッシュカードを指定されたコインロッカーに入れました。
このようなことを3~4回繰り返していましたが、ある日、いつものようにBからの指示通りに兵庫県川辺郡猪名川町にある家を訪問した際に、待機していた兵庫県川西警察署の警察官に逮捕されました。
(フィクションです)
特殊詐欺事件~詐欺罪~
特殊詐欺は組織的に行われることが多く、電話を被害者にかける「かけ子」、被害者から現金やキャッシュカードを受け取る「受け子」、そして、キャッシュカードを使って現金を引き出す「出し子」と呼ばれる役割を組織内で分担して実行していることにその特徴が見られます。
特殊詐欺に関与した場合、詐欺罪に問われる可能性があります。
詐欺罪は、刑法第246条に以下のように規定されています。
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
詐欺罪の構成要件、つまり、法律の条文上に記載されている犯罪が成立するための原則的な要件は、以下の通りです。
1項詐欺
①人を欺いて
②財物を
③交付させたこと
2項詐欺
①人を欺いて
②財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させたこと
まず、詐欺罪の客体についてですが、1項詐欺では「他人の財物」が客体となります。
自然人であっても法人であってもよく、他人の占有する他人の動産および不動産です。
2項詐欺において、客体とは「財産上の利益」です。
これは、債券などの有体物以外の財産的権利や利益を意味します。
典型的な2項詐欺は、債権者を欺いて債務免除を受け、債務を逸脱して財産上の利益を不正に得る場合です。
詐欺罪が成立するためには、「人を欺いて錯誤を生じさせ、その錯誤に基づいて財物または財産上の利益を交付させること」が必要です。
「人を欺く行為による錯誤の惹起」、「錯誤に基づいた交付行為」、「交付行為による財物又は利益の移転」という一連の因果経過をたどることが必要となります。
(1)人を欺く行為
「欺く」とは、一般人をして財物または財産上の利益を処分させるような錯誤に陥らせることをいいます。
また、「人を」欺く行為でなければならいので、機械に対して虚偽情報を入力した場合には詐欺罪における「人を欺く行為」には該当しません。
不正な方法で取得したキャッシュカードを使って銀行のATMから金銭を引き出す行為は、詐欺ではなく窃盗となります。
この点、Aさんが被害者から騙し取ったキャッシュカードを使ってATMから現金を引き出した行為については、窃盗罪が成立するでしょう。
(2)錯誤
人を欺く行為により生じる「錯誤」は、財産的処分行為をするように動機付けられるものであれば足ります。
換言すると、錯誤は「交付の判断の基礎となる重要な事項」についてのものであって、それがなければ交付行為を行わなかったであろうような重要な事実に関するものでなければなりません。
(3)交付行為
交付行為(処分行為)は、財物または財産上の利益を相手方に移転させる行為をいいます。
交付行為には、財産処分の意思と財産を処分する事実とが必要となります。
財産を処分する意思をまったく有しない幼児や高度の精神病者などには、財産的処分行為は認められず、これらの者を欺いてその財物を奪う行為は窃盗となります。
(4)財物又は利益の移転
財物や利益が交付行為によって移転することで、詐欺罪は既遂となります。
以上の要件に加え、主観的要件である「故意」がなければ詐欺罪は成立しません。
詐欺罪の故意は、「人を欺いて錯誤に陥らせ、かかる錯誤に基づく交付行為により、財物または財産上の利益を交付させ、自己または第三者がその占有を取得することについての表象・容認をいいます。
「詐欺だ」と確信をもって行う場合だけでなく、「詐欺かもしれないけど、もしそうだとしてもいいか」と思っていた場合も「故意」が認められることになります。
特殊詐欺は、被害者を騙して金銭やキャッシュカードを取得するものですので、詐欺罪が成立することになります。
では、一連の行為を分担して複数の人が実行した場合には、それぞれがどのような責任が問われるのでしょうか。
次回は、特殊詐欺事件の「共犯」について説明します。
ご家族が特殊詐欺事件に関与し、逮捕されてお困りであれば、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件と幇助犯
刑事事件と幇助犯
幇助犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
大学生のAくん(20歳)は、友人のBくん(21歳)に「用事があるから車で送ってくれへん?」と頼まれました。
AくんとBくんは、中学校の同級生で、中学校卒業以降は、時々連絡をとって遊ぶ仲でした。
Aくんはレンタカーを借り、Bくんとその友人Cくんを乗せて指定された場所まで連れて行きました。
指定された場所に着くと、「ちょっとここで待っててくれる?戻ってきたらすぐに車出してな。」と言われたAくんは、そのまま車で待機していました。
慌てたようすで戻ってきたBくんとCくんは、「はよ車出して」と言い、Aくんは二人を乗せて車を発進させました。
後日、兵庫県美方警察署の警察官がAくん宅にやってきて、「BとCが行った侵入盗について話を聞かせてほしい」と言われ、そのまま署まで連れて行かれました。
Aくんの両親は、心配になり慌てて刑事事件に強い弁護士に接見を依頼しました。
(フィクションです)
幇助犯とは
幇助犯とは、「正犯をほう助した者」のことをいいます(刑法第62条)。
幇助犯は従犯とされ、その刑は正犯の刑を減軽したものが科されます(同法第63条)。
幇助犯が成立するためには、以下の2つの要件を満たすことが必要です。
①正犯を幇助すること
②被幇助者が犯罪を実行したこと
成立要件①正犯を幇助すること
幇助犯の成立要件の一つである「正犯を幇助する」とは、構成要件に該当する実行行為以外の方法によって、正犯の実行行為を容易にすることをいいます(最判昭24・10・1)。
幇助は、正犯の実行行為にとって必要不可欠なものであることは必要とはされません(大判昭4・2・19)
「正犯を幇助」したと言えるためには、「幇助行為」および「幇助の故意」が必要となります。
幇助行為
幇助の方法は、物理的方法であると、心理的方法であるとを問いません。
幇助行為は、犯罪の実行を容易にするものであればいいのです。
例えば、殺人を犯そうとする者に対して凶器を提供することであっても、その者を激励する行為であっても、その行為により犯罪の実行を容易にしたのであれば、幇助行為となるのです。
幇助の故意
幇助者に故意を認めるためには、まず、正犯に対する犯罪行為遂行の促進を認識・予見していなければなりません。
つまり、自分の行為によって正犯が犯罪を犯すことを容易にすることを認識・予見していなければならないのです。
しかし、これだけでは、包丁職人が、自ら製造する包丁は、使い方によっては人の命を奪う可能性があることを認識していながら、包丁を製造した場合、実際に何者かがその包丁を使って殺人を犯しても、この包丁職人が殺人罪の幇助に問われることになってしまいます。
ですので、先の要件に加えて、幇助の故意を認めるには、正犯による既遂構成要件該当事実惹起の認識・予見が必要となります。
例えば、知人が人を殺そうとしていることを認識しているうえで、その殺人を実現することを促進し得る凶器を当該知人に渡したのであれば、①その凶器を渡すことによって、殺人を容易にすること、並びに、②その凶器を用いて人を殺すだろうことも認識・予見していたと言えるので、幇助の故意があったと認められるでしょう。
それでは、上記ケースを検討してみましょう。
Aくんは、Bくんに頼まれ、BくんとCくんを事件現場まで車で送迎しました。
Aくんが車で送らずとも、BくんとCくんは他の手段を使って現場まで行くことはできたでしょうが、Aくんが運転手役を担ったことで、BくんとCくんは現場まで容易に行くことができ、犯行後すぐに逃亡することができたと言えるので、Aくんの行為はBくんCくんの実行行為を容易にしたと言えるでしょう。
しかし、Aくんが、二人が何をするか知らずに車で送り迎えをしたのであれば、幇助の故意が認められないことになります。
例えば、犯行前の車内で、BくんとCくんが侵入盗を行うことを匂わす会話をしており、Aくんもそれを聞いており、「BくんとCくんは侵入盗をするのかもしれない」と認識・予見していた場合には、故意が認められる可能性があります。
あなたが刑事事件の幇助犯として疑われている、あたなの家族が幇助犯として逮捕されてお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
単純横領罪と業務上横領罪
単純横領罪と業務上横領罪
単純横領罪と業務上横領罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース①~
Aさんは、知人のVさんから100万円を預かっていましたが、Aさんは預かっていた100万円を自己の借金返済のために使ってしましました。
Vさんが、Aさんに預けた100万円を返してほしいと言ったところ、一向に返してくれないことを不審に思ったVさんは、兵庫県篠山警察署に被害届を出しました。
(フィクションです)
~ケース②~
Bさんは、会社で経理業務を担当していましたが、取引先から支払われた金額から少しずつ抜き取り自分のものにするといった行為を繰り返していました。
ある日、会社がBさんの不正に気づき、Bさんに横領した金額を全額返還するよう求めました。
会社は、Bさんを告訴する意思もあると言っています。
(フィクションです)
横領事件
上のケースどちらも、人から預かった物を勝手に処分してしまうという点で同じだと言えるでしょう。
しかし、問われ得る罪は異なります。
それでは、どのような点が罪名を異にすることになるのでしょうか。
単純横領罪
刑法第252条
自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
2 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。
単純横領罪は、「自己の占有する他人の物」または「公務所から保管を命ぜられた自己の物」を「横領」する犯罪です。
本罪の客体は、「自己の占有する他人の物」または「公務所から保管を命ぜられた自己の物」となります。
「占有」の意義については、「事実上または法律上物に対する支配力を有する状態」をいうと解されます。
本罪における「占有」は、「委託関係」に基づくことが必要となります。
委託関係は、一般的に民法の契約に基づいて発生することになりますが、契約に限らず、事務管理、後見などの法律上の規定による場合にも認められます。
委任関係は、事実上のものであればよく、委託者が物の保管を委託する法律上の権限を有するか否か、受託者が受託するうえで法律上の権限を有するか否かは問いません。
「他人の物」とは、他人の所有する財物のことをいいます。
ケース①では、VさんがAさんに金銭を委託しています。
民法上では、金銭の所有と占有は一致すると解されており、委託を受けて占有する者にとって当該金銭は「他人の物」といえない可能性があります。
しかし、本罪では委託者と受託者の二者間における財産の帰属が問われていることから、本罪の解釈では、民法上の解釈がそのまま適用されるわけではありません。
例えば、封をするなどして特定の金銭の保管だけを委託し、当該金銭を受託者が消費してしまった場合や、封がされていなくても使途を定めて寄託された金銭を消費した場合には、当該金銭は「他人の物」といえると解されます。
一方、消費を許す趣旨で金銭が寄託された場合、当該金銭の所有権は移転することになります。
横領罪の行為である「横領」については、委託に基づく信任関係を破棄し、委託物に対し権限を越えて行う処分行為というとする「越権行為説」と、委託物につき不法領得の意思を実現するすべての行為をいうとする「領得行為説」と見解が分かれていますが、判例は後者の見解にたっています。
ここでいう「不法領得の意思」とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思です。
具体的な横領行為は、消費・着服といった事実上の処分行為と、売却・贈与といった法律上の処分行為が含まれます。
ケース①では、VさんがAさんに金銭を預けていますが、封金の保管だけをお願いしたとしましょう。
保管だけ頼んだのに、それを勝手に使ってしまったのですから、横領行為があったと言えるでしょう。
ですので、Aさんに対して単純横領罪が成立する可能性があります。
業務上横領罪
刑法第253条
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
業務上横領罪の規定は、単純横領罪のそれに「業務上」という文言が加えられています。
本罪の客体は、「業務上自己の占有する他人の物」ということになります。
本罪における「業務」は、その性質上他人の委託に基づいて他人の財物を占有、保管する事務を反復継続して行う地位のことをいいます。
業務の根拠は、法令・契約、公的・私的を問わず、職業としてなされるものに限りません。
具体的には、質屋や倉庫業者、法人・団体の物をその職務上保管・管理する役職員が業務上の占有者です。
ケース②では、Bさんは会社の経理業務を担当しているので、業務上の占有者と言えます。
業務の関係で、会社のお金を管理していたBさんですが、その会社のお金をくすねていたのですから、Bさんに対しては業務上横領罪が成立するでしょう。
このように単純横領罪と業務上横領罪は、「委託関係に基づき自己が占有する他人の物を横領する」という点で共通していますが、業務上横領罪には主体に「業務者」であることを求める点で異なります。
また、単純横領罪の法定刑は5年以下の懲役ですが、業務上横領罪のそれは10年以下の懲役と加重されています。
後者の法益侵害の範囲が広く、頻発のおそれが多く違法性が大きいため、一般予防の観点から刑を加重したと解されます。
横領事件では、被害弁済が済んでおり相手方と示談することができれば、刑事事件に発展する可能性は低いでしょう。
刑事事件化したとしても、被害者に被害金が返還されないこともあるので、被害者としては被害金が戻ってくることを優先することが多いからです。
ですので、横領事件を起こし刑事事件化するのではとお困りであれば、すぐに被害者への被害弁償や示談交渉を行う必要があります。
しかし、どうやって交渉すればよいのか分からない、実際に横領した額以上の額の返済を迫られているなど、本人が行うことが難しい場合もあります。
そのような時は、刑事事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
詳しくは、0120-631-881までお問い合わせください。