強盗殺人罪と公訴時効

2019-09-25

強盗殺人罪と公訴時効

強盗殺人罪公訴時効について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
1993年に兵庫県多可郡多可町で起きた強盗殺人事件から26年が経過した今年、兵庫県西脇警察署などは、県外に住むAさんを強盗殺人の容疑で逮捕しました。
Aさんは別件で捜査を受けていましたが、Aさんから採取したDNAと現場に残されていた凶器に付着していたDNAとが一致したため、Aさんが強盗殺人事件の容疑者として浮上したということです。
Aさんは「覚えていない。」と容疑を否認しています。
(フィクションです)

公訴時効について

刑事法における「時効」には、①刑の時効、と②公訴時効の2種類があります。
①の「刑の時効」というのは、刑事裁判で刑の言渡しを受けた者が、一定期間その執行を受けないことにより刑罰権が消滅することをいいます。
死刑は、刑の時効にかかりませんが、刑の時効の期間は、刑の種類とその重さによって定められています。
例えば、裁判での宣告刑が、無期懲役・禁錮であった場合は、刑の時効期間は30年、10年以上の有期懲役・禁錮は20年、3年以上10年未満の懲役・禁錮は10年です。
刑の時効の起算点は、裁判で刑の言渡しがあり、かつそれが確定した時点です。
ちなみに、刑の施行猶予期間中は、刑の時効は進行しません。
裁判で執行猶予判決が言い渡され、無事に執行猶予期間を終えた場合には、刑の言渡しの効力が失われますが、これは刑の時効とは別の制度です。

さて、刑事事件で「時効」といえば、一般的には②の「公訴時効」を指します。
公訴時効」は、一定期間内に公訴を提起することを訴訟条件とするものです。
つまり、一定の期間が経過することにより公訴の提起ができなくなるという制度です。
公訴を提起することが可能な一定の期間を経過してしまった場合には、判決で免訴の言渡しをしなければなりません。

公訴時効の期間は、対象となる法定刑を基準に定められています。

●公訴時効なし
人を死亡させて、死刑に当たる罪(殺人罪、強盗殺人罪など)に関しては、公訴時効はありません。
●公訴時効30年
人を死亡させて、無期懲役・禁錮刑にあたる罪(強制性交等致死罪、強制わいせつ致死罪など)については、公訴時効は30年となります。
●公訴時効25年
人を死亡させていない、死刑に当たる罪(現住建造物等放火罪など)に関しては、公訴時効は25年です。
●公訴時効20年
人を死亡させ、長期20年の懲役・禁錮に当たる罪(傷害致死罪、危険運転致死罪など)については、公訴時効は20年となります。
●公訴時効15年
人を死亡させていない、無期懲役・禁錮に当たる罪(通貨偽造罪など)に関しては、公訴時効は15年です。
●公訴時効10年
人を死亡させて、長期20年に満たない懲役・禁錮に当たる罪(業務上過失致死罪、過失運転致死罪など)、及び人を死亡させず、長期15年以上の懲役・禁錮に当たる罪(強制性交等罪、傷害罪、強盗罪など)については、公訴時効は10年となります。
●公訴時効7年
人を死亡させず、長期15年未満の懲役・禁錮に当たる罪(窃盗罪、詐欺罪、業務上横領罪、強制わいせつ罪など)の公訴時効は7年です。
●公訴時効5年
人を死亡させず、長期10年未満の懲役・禁錮に当たる罪(監禁罪、単純横領罪など)に関して、公訴時効は5年です。
●公訴時効3年
人を死亡させず、長期5年未満の懲役・禁錮または罰金に当たる罪(住居侵入罪、公然わいせつ罪、脅迫罪、名誉棄損罪、威力業務妨害罪など)については、公訴時効は3年です。
●公訴時効1年
人を死亡させず、拘留または科料に当たる罪(侮辱罪、軽犯罪法違反など)についての公訴時効は1年です。

公訴時効は、「犯罪行為が終わった時」から進行します。
共犯の場合には、「最終の行為が終わった時」から、すべての共犯に対して時効の期間を起算します。
「犯罪行為が終わった時」というのは、結果犯の場合は結果が発生した時を意味します。
挙動犯や未遂の場合は、実行行為が終了した時が、時効期間の起算点となります。

さて、上の公訴時効は、2010年の刑事訴訟法改正に伴い改正されたものです。
それ以前は、殺人や強盗殺人といった重大事件についても公訴時効が定められていました。
強盗殺人罪公訴時効は、刑事訴訟法が2010年に改正される前は、25年でした。
ですので、犯行当時1993年の法律では、2018年の犯行終了時に公訴時効が成立することになっていました。
しかし、この点、2010年の改正刑事訴訟法は、経過措置について定めており、改正後の刑事訴訟法第250条(公訴時効期間)は、改正刑事訴訟法の施行の際に「既にその公訴の時効が完成している罪については、適用しない」とし、人を死亡させた罪であって禁固以上の刑に当たるもので2010年3月27日までに公訴時効が完成していない罪については、すべて2010年の改正刑事訴訟法が適用されることが規定されています。
2010年3月27日までに公訴時効が完成していないAさんのケースでは、改正後の刑事訴訟法が適用され、公訴時効はなく、2018年を過ぎても強盗殺人罪で起訴される可能性は残るのです。
この経過措置が、憲法の保障する遡及処罰の禁止と適正手続に反するとする主張が最高裁判所に提起されましたが、最高裁判所は、2010年の改正刑事訴訟法の経過措置は、公訴時効制度の趣旨を実現させるために、人を死亡させた罪であって、死刑に当たるものについて公訴時効を廃止し、懲役または禁錮の刑に当たるものについての公訴時効期間を延長したにすぎず、行為時点における違法性の評価や責任の重さを遡って変更するものではなく、被疑者・被告人となり得る者につき既に生じた法律上の地位を著しく不安定にするようなものでもない、として当該経過措置は憲法違反ではないとしています。

というわけで、殺人罪や強盗殺人罪などの重大事件については、公訴時効がなく、証拠が固まり次第、逮捕され起訴される可能性は残るというわけです。

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