自首と出頭

2019-06-12

自首と出頭

~ケース~
兵庫県洲本市のスーパーマーケットにパートとして勤務するAさんは、度々店の商品を無断で持ち帰ったり、レジから売上金を持ち出したりしていました。
ある日、店長が、商品や売上金がデータと合わないことを不審に思い、各従業員に聞いて回っていました。
店長は、Aさんによる犯行の可能性が高いと思っており、Aさんに対して、「従業員の誰かが商品や売上金を盗んだ可能性が高いようだ。このまま誰も名乗り出なければ、警察に被害届を出そうと思う。」と言いました。
しかし、Aさんは店長に罪を告白しないまま、一身上の都合という理由で退職しました。
後日、元同僚を通じて店長が兵庫県洲本警察署に被害届を出しにいったという話を聞いて、このままではいずれ自分の犯行だということがバレてしまうのでは、と心配になったAさんは、自首することを考えています。
(フィクションです)

自首が成立するためには

刑事ドラマやサスペンスドラマで、「自首しに来ました。」といって警察署に出向く姿を時折目にします。
警察署に行って自分の犯した罪を言えば「自首」が成立すると思っていませんか?
実は、「自首」については法律できちんと規定されており、成立するためには満たさなければならない要件がいくつかあるのです。

罪を犯した人が、自ら捜査機関に対して、自分が犯した罪を自発的に申告し、その処分を求める意思表示のことを「自首」といいます。
単に、警察署などに自ら出向くだけでは、法律上の自首が成立するとは限らないのです。

刑法第42条は、以下のように、自首について規定しています。

第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。

「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。」
つまり、自首の成立要件は、以下の4つになります。

(1)犯罪を起こした本人自らが自発的に犯罪事実を申告していること。
「自ら自発的に」自分の犯した犯罪を申告しなければならず、取調べで単に犯罪事実を自白しただけでは自首したことになりません。
(2)犯罪を行った本人が自身の罰則や処分を求めていること。
申告内容が、犯罪事実の一部を隠すためにされたものであったり、自己の責任を否定するようなものであったりした場合には、自首は成立しません。
(3)捜査機関に申告していること。
司法警察員または検察官に対して申告している必要があります。
(4)捜査機関が犯罪事実や犯人を特定していない段階で申告していること。
犯罪事実が捜査機関に発覚していない場合や、犯罪事実は発覚していたとしても、その犯人が誰であるか発覚していない場合を含みます。
犯罪事実や犯人が誰であるか判明しているけれども、単に犯人の所在だけが不明である場合は、これに含まれません。
犯罪事実の申告を受けた警察官等が犯罪事実を知らなくても、捜査機関の誰かが犯罪事実を知っていた場合には、自首は成立しません。

これらの要件を充たしてはじめて「自首」が成立することになります。

一方、「自首」とよく混同される「出頭」とは何を意味するのでしょうか。
出頭」というのは、役所や裁判所など特定の場所に出向くことです。
犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚している場合に、犯人が警察署等に出向いたとしても「自首」ではなく「出頭」ということになります。

自首のメリット

自首が成立すると、刑が減軽される可能性があります。
どの程度刑が減軽されるかについても、刑法第68条が定めています。
窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
有期懲役の場合、長期及び短期の2分の1に、罰金の場合、多額及び寡額の2分の1に減軽されるので、窃盗罪の場合には、5年以下の懲役又は25万円以下の罰金の範囲内で刑罰が科されることになります。
しかし、あくまで「刑を減軽することができる」とありますので、絶対的に軽減されるものではありません。
また、自首したことそれ自体が、逮捕の要件である逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれを否定する事情となり、逮捕されず在宅のまま捜査が進む可能性もあります。

刑事事件を起こし、自首しようかお悩みであれば、自首する前に一度刑事事件に強い弁護士にご相談されることをおすすめします。
自首するメリット・デメリットを理解し、自首した後の流れや取調べ対応についてしっかりと説明やアドバイスを受けることにより、取調べに対する不安を少しでも和らげることができます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件でお悩みの方は、一度弊所にご相談ください。