前科と前歴

2019-06-11

前科と前歴

~ケース~
Aさんは、兵庫県赤穂市のスーパーマーケットで、商品5点(5000円相当)を会計を済ませずに店を出たとして、店の警備員に呼び止められました。
その後、Aさんは、通報を受けて駆け付けた兵庫県赤穂警察署の警察官に窃盗容疑で逮捕され、同署において取調べを受けました。
Aさんの夫が身元引受人としてAさんを引き取ることで、Aさんは釈放となりました。
Aさんは、同じような万引きをして捕まったことがあり、その時は警察署で話を聞かれて終わったのですが、今回はどのような処分となるのか非常に不安でたまりません。
Aさんは、夫と共に、刑事事件に強い弁護士のところに相談に行きました。
(フィクションです)

逮捕されたら前科が付くの?

刑事事件を起こし、逮捕されてしまったら、必ず「前科」が付くと思われている方が多くいらっしゃいますが、逮捕されたからといって必ずしも前科が付くわけではありません。
そもそも、前科とはどのようなものを指すのでしょうか。

前科」という用語は、正確な法律上の用語ではなく、通俗的に使用されているにすぎず、その意味は必ずしも明らかではありません。
しかし、一般的には、前に刑に処せられた事実のことを「前科」と称します。

「前に刑に処せられた」というのは、全ての有罪の確定判決のことを意味します。
死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料である場合から、刑の免除、刑の執行免除が言い渡された場合も含みます。
裁判所で言い渡されたものであっても、過料等の行政罰や没収、追徴等のいわゆる付加刑は前科ではありません。

前科が付いてしまったら

前科が付くと、法律において一定の不利益を被ることになります。
例えば、以下のようなものが挙げられます。
・執行猶予に付し得ない事由
・執行猶予の取消事由
・再犯加重の事由
・仮釈放の取消事由
・常習犯の認定事由
・必要的保釈を消極とする事由
・特定の法令が定める資格制限事由

一度付いてしまった前科は消えないの?

前科が付くことにより、上のような法律上の不利益を被ることになるわけですので、一度付いてしまった前科がいつまでも消えないのかどうかといった点は気になるところですね。
刑の執行を受け終わった者に対して、いつまでも法律上の不利益を負わせておくことは、その者の改善や構成の意欲を阻害し、善良な社会人として社会復帰する機会を失わせることになるので、現行法では刑の消滅に関する規定が設けられており、執行終了または免除後の一定期間を罰金以上の刑に処せられることなく経過した場合に、その抹消が認められ、刑が消滅することになります。

第三十四条の二 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。
2 刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。

刑の消滅の効果は、刑の言渡しに基づく法的効果が将来に向かって消滅するというものであって、過去において刑を受けたことがあるという事実まで消滅させるものではありません。

前歴とは?

最後に、よく「前科」と混同される「前歴」について説明します。
前歴」というのは、警察などの捜査機関から犯罪捜査を受けたことです。
前歴は検察や警察が保管・管理していますが、前歴についてはその記録は抹消されることはありません。

上記ケースの場合、Aさんは前に万引きで警察に逮捕されたことがあるようです。
警察での調べで事件は終了しているとのことですので、警察から検察に送致されてはおらず、おそらく警察段階で「微罪処分」として終了しているのだと考えられます。
しかし、窃盗容疑で逮捕されていますので、Aさんには窃盗の「前歴」が付いています。
その記録は警察や検察で保管・管理されていますので、Aさんがまったくの初犯ではないことはすぐにわかります。
その事実がAさんにとって良い方向に働くことはありません。
しかし、同種の前歴があっても、被害店舗への被害弁償や示談締結、家族の監督やカウンセリング等により再犯防止策がきちんととられている等、Aさんにとって有利な事情について説得的に主張することで、検察官が起訴猶予で事件を終了させる可能性も十分あります。

このような活動は、刑事事件に精通した弁護士に任せるのがよいでしょう。
窃盗事件をはじめとして刑事事件でお困りならば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。