マンションのドア壊し建造物損壊

マンションのドア壊し建造物損壊

建造物損壊罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
高校の同窓会に参加した兵庫県神崎郡神河町に住むAさんは、久しぶりに会った旧友たちと盛り上がり、いつもより多く飲酒していました。
店から自宅まで徒歩で帰宅していたAさんは、泥酔していたため自分のマンションだと思い込み、違うマンションに入ろうとしました。
オートロック式だったので、もちろん鍵を持っていないAさんは入ることができませんでした。
「なんで俺を入れへんのや!」と、マンションのエントランスの自動ドアが開かないことに苛立ちを覚えたAさんは、側溝のふたを投げ、ドアを壊してしまいました。
マンションの近くを通ったタクシー運転手が、自動ドアのガラスが割れていることに気が付き、すぐに通報しました。
兵庫県福崎警察署は、マンションの防犯カメラの映像から、Aさんを割り出し、逮捕状を持ってAさん宅に向かいました。
(フィクションです)

マンションのドアを壊す行為は何罪?

上のケースでは、Aさんはマンションの自動ドアのガラスを割っています。
Aさんの行為は、どのような罪に問われるのでしょうか。

他人の物を壊すといえば、「器物損壊罪」が一番に思い浮かぶ罪名ではないでしょうか。

器物損壊罪について

第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

本罪の客体は、「公用文書等毀棄、私用文書等毀棄、建造物等損壊及び同致死傷に規定するもののほか、他人の物」です。
つまり、「公務所の用に供する文書」、「権利・義務に関する他人の文書や電磁的記録」、「他人の建造物又は艦船」以外の他人の物です。
動産・不動産だけでなく、動物も含まれます。

他人のマンションのエントランスにある自動ドアは、器物損壊罪の客体に該当するのでしょうか。
それとも、「建造物」に当たり、「建造物損壊罪」が成立し得るのでしょうか。

それでは、建造物損壊罪についてみていきましょう。

建造物損壊罪は、他人の建造物や艦船などを損壊する罪です。

第二百六十条 他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

本罪の客体は、「他人の建造物又は艦船」です。
ここでいう「建造物」とは、家屋その他これに類似する建築物を指称し、屋外を有し障壁または柱材をもって支持されて土地に定着し、少なくともその内部に人が出入りすることのできるものであることを必要とします。(大判大3・6・20)
ですので、外塀や門などは建造物ではありません。
器物が建造物の一部を構成しているといえるためには、毀損しなければ取り外しができない状態にあることが必要となります。(大判明43・12・16)
また、適切な工具を使用すれば、損壊せずに取り外しができるのであっても、器物が建造物の一部かどうかは、物と建造物との接合の程度や、物の建造物における機能上の重要性などを総合的に考慮して判断されます。(最決平19.3.20)
天井、敷居、鴨居、屋根、瓦、玄関ドアは建造物の一部となり、畳、ふすま、雨戸、障子などの造作物や建具は、器物損壊罪の客体となると解されます。
よって、マンションの玄関ドアは、建造物の一部に当たり、「器物損壊罪」ではなく「建造物損壊罪」の客体となります。

器物損壊罪の法定刑が3年以下の懲役または30万円以下の罰金であるのに対して、建造物損壊罪のそれは、5年以下の懲役と非常に重くなっています。
また、器物損壊罪は親告罪であるのに対し、建造物損壊罪は非親告罪です。
ですので、被害者の告訴がなくとも刑事事件として成立することになります。
しかし、器物損壊事件の場合と同様に、建造物損壊事件においても、被害者との示談締結が最終的な処分に大きく影響するものと言えます。
建造物損壊事件においては、被害額が高額となるケースもありますし、示談交渉にはそれなりの交渉力をもって臨む必要があるでしょう。
被害者との示談交渉について、一度弁護士にご相談されることをお勧めします。

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