商標法違反で略式手続
商標法違反事件での略式手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
某有名ブランドのロゴを使用した商品をネット販売していた兵庫県加東市に住む会社員のAさん。
ある日、警察官がAさん宅を訪れ、商標法違反事件で捜索・差押えを行った後に、Aさんは警察に連れていかれ、逮捕令状を提示されました。
その後、勾留が決定したAさんは、勾留期限の満期前に検察官から略式手続の話を聞くこととなりました。
(フィクションです)
偽ブランドの販売で商標法違反
商標法は、事業者が、自分の会社の取り扱う商品やサービスを他の会社のものと区別するために使用するマークである「商標」を保護する法律です。
私たちが日頃商品の購入やサービスを利用する際、それらの「名前」や「マーク」を見て選びますよね。
それは、私たちが商品等の「名前」や「マーク」が信頼する会社の商品等であると認識しているからです。
ですので、勝手にある商品の「名前」や「マーク」をコピーして、品質の悪い商品に使ったのであれば、その「名前」や「マーク」の会社は消費者の信頼を失うことになります。
このような事業者が自己の取り扱う商品・サービスを他人のものと区別するために使用するマークを「商標」といいます。
商標法は、商標権または専用使用権を侵害した者は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することを定めています。(商標法第78条)
「商標権」とは、商標登録を受けている商標を指定した商品またはサービスについて排他的独占的に使用できる権利をいいます。
「専用使用権」というのは、設定行為で定めた範囲内において、指定した商品・サービスについて登録商標を排他的独占的に使用できる権利です。
「商標権の侵害」は、他人の登録商標をその指定した商品・サービスについて使用する行為や、他人の登録商標の類似範囲において使用する行為を意味します。
使用権限のない者が、指定された商品・サービスについて商標登録を受けている商標である登録商標と同一の商標を使用した場合は、商標権の直接侵害行為となります。
例えば、服の首部分のタグに商標を表示する、お菓子の包装紙に商標を表示してお菓子を包装する行為などは、直接侵害行為です。
また、商標法は、商標権又は専用使用権を侵害する行為と「みなされる行為」を行った者については、5年以下の懲役若しくは500万円いかの罰金に処し、又はこれを併科すると定めています。(商標法第78条の2)
商標権の侵害とみなす行為には、他社のブランドの「名前」や「マーク」に似た商標を使う、他者の商標に指定されている商品やサービスに似た商品・サービスを商標登録する、他社の商標に指定された商品・サービスに似た商品・サービスをその他社の商標の付いた包装紙で包装して人に渡す行為などが含まれます。
略式手続とは
「略式手続」とは、簡易裁判所が、原則として、検察官の提出した資料のみに基づいて公判を開かず、略式命令により罰金または科料を科す手続をいいます。
略式手続の趣旨は、事件が比較的軽微であり、被告人にとって公判に出頭することが必要ではなく、また迅速な裁判が期待できる等被告人にとって利益になること、当事者に一定の場合に手続処分権が認められること、簡易手続により訴訟経済にも益することが挙げられます。
略式手続の特徴は、
・略式命令の請求は、公訴の提起と同時に書面でおこなわれる。
・被疑者が略式手続によることについて異議がないことを書面であきらかにしなければならない。
・必要な書類・証拠物は起訴状と共に裁判所に提出される。
・略式命令では、100万円以下の罰金または科料を科すことができる。
こと等です。
略式手続のメリットは、正式裁判に比べて身体拘束期間が短くなることや、刑罰が罰金で済むことが挙げられます。
一方、デメリットは、有罪判決を受けていることになるので、前科がつくこと、そして、略式起訴される場合、審理は書面だけで行われるので、法廷で自分の言い分を述べるということができないということです。
このように、略式手続にはメリットとデメリットがあります。
事件によっては、略式手続が最善の場合も、そうでない場合もあります。
商標法違反で逮捕されてしまった、略式手続についての説明を受けたが同意すべきかお悩みであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。