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大麻取締法違反事件で逮捕

2020-10-18

大麻取締法違反事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
兵庫県神戸西警察署は、兵庫県神戸市西区の路上でAさんに職務質問を行いました。
Aさんの態度を不審がった警察官は、Aさんの所持品検査を行ったところ、持っていたカバンから乾燥大麻の入った袋を見つけました。
Aさんは、大麻取締法違反で現行犯逮捕されました。
Aさんは、容疑を認めていますが、このまま身体拘束がどのくらい続くのか不安でなりません。
(フィクションです)

大麻取締法について

大麻取締法は、昭和23年7月に施行された法律で、その目的は、大麻の所持、栽培、譲渡、譲受、使用、輸出、輸入などについて必要な取締を行うとともに、大麻の濫用による保健衛生上の危害を防止し、もって公共の福祉の増進を図ることにあると解されます。

大麻取締法が規制の対象とする「大麻」とは、「大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品」をいい、「大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品」は除外されます。

大麻取締法は、「大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。」としています。(大麻取締法第3条1項)
また、大麻取締法は、何人も、「大麻を輸入し、又は輸出すること(大麻研究者が、厚生労働大臣の許可を受けて、大麻を輸入し、又は輸出する場合を除く)」、「大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること」、「大麻から製造された医薬品の施用を受けること」、「医事若しくは薬事又は自然科学に関する記事を掲載する医薬関係者等向けの新聞又は雑誌により行う場合その他主として医薬関係者等を対象として行う場合のほか、大麻に関する広告をおこなうこと」を禁止行為として規定しています。

このような規定を受けて、大麻取締法は、次の行為について罰則を設けています。
大麻の栽培、輸入、輸出:7年以下の懲役
②営利目的での大麻の栽培、輸入、輸出:10年以下の懲役、又は情状により10年以下の懲役及び300万円以下の罰金
大麻の所持、譲受、譲渡:5年以下の懲役
④営利目的での大麻の所持、譲受、譲渡:7年以下の懲役、又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金

大麻取締法違反は、故意犯ですので、「大麻だと知らなかった」場合には犯罪は成立しません。
しかし、大麻の認識については、その物件が依存性のある薬理作用をもつ有害な薬物であることを未必的であれ認識していれば足りると解されます。
「未必的」に認識しているというのは、意図的に犯罪の実現を図るものではないが、実現されたらされたで構わないとする心情を意味します。
「これは大麻だ。」としっかりと認識している場合だけでなく、「これは大麻かもしれない。」と思っている場合にも未必の故意が認められるのです。

大麻取締法違反に対する刑罰は、懲役刑、もしくは懲役刑と罰金刑の両方と、重くなっています。

大麻取締法違反で逮捕されたら

大麻取締法違反逮捕された場合、他の薬物事件と同様、逮捕後勾留される可能性は非常に高いです。
勾留に付されると、検察官が勾留請求をした日から原則10日間身体が拘束されることになります。
勾留延長が決定すると、最大で勾留請求をした日から20日もの間、身体拘束を受けることになり、外界と遮断された生活が長期に及ぶことになります。
また、勾留と同時に弁護人以外との接見を禁止する接見禁止に付される可能性もあります。

大麻取締法違反事件では、初犯であっても、起訴される可能性があり、この場合、検察官による公判請求を受けて正式な刑事裁判となります。
起訴されると、起訴後勾留に切り替わり、引き続き身体拘束を受けることになりますが、起訴後であれば保釈制度を利用することが可能となります。

大麻取締法違反事件における弁護活動

◇身柄解放◇

長期の身体拘束は、被疑者・被告人だけでなく、その家族の生活にも大きく影響します。
そのため、できる限り早期に釈放となるよう動くことが重要です。
薬物事件では、組織犯罪が疑われたり、共犯者との接触を回避するために勾留となる可能性は非常に高いのが実情です。
しかし、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがないことや、身体拘束により被る不利益について客観的な証拠に基づいてしっかりと主張することにより、不当な身体拘束を避けることは重要です。
捜査段階での釈放が難しい場合であっても、保釈が認められる可能性はありますので、起訴されたらすぐに保釈請求書を提出し、身柄解放に向けて動く必要があるでしょう。

◇再犯防止策◇

罪を認めている場合には、再び薬物に手を出すことがないよう再犯防止策を講じることが最終的な処分にも影響します。
家族による被疑者・被告人の監督、専門機関による治療、人間関係の改善などは、被疑者・被告人に有利な事情として働くため、このような再犯防止策を講じ、更生に適した環境を整える支援をことも重要な弁護活動です。

◇取調べ対応のアドバイス・証拠収集◇

罪を争う場合には、被疑者・被告人の主張を裏付ける証拠を収集することが重要です。
また、弁護士は、被疑者・被告人の不利となるような内容の供述調書がとられないよう、取調べに対してどのように対応すべきかについて適切なアドバイスを提供します。
閉鎖的な空間での取調べでは、身体的にも精神的にも疲れ果てた被疑者・被告人が取調官の誘導に乗せられ、自己に不利な供述をしたり、異なるニュアンスで調書が作成されてしまうこともあるため、弁護士に相談し、どのように対応すべきかを把握していることは大切です。

興味本位で安易に手を出してしまうケースも少なくない大麻ですが、大麻取締法違反は軽微な犯罪ではありません。

大麻取締法違反でご家族が逮捕されてしまったのであれば、すぐに弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、薬物事件を含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスに関する問い合わせ・予約は、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

あおり運転の厳罰化

2020-09-13

あおり運転厳罰化について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
兵庫県加東市の高速道路で、Vさんが運転する乗用車に左右から幅寄せしたり前方で急制動したりして、Vさんの車を停車させるなどした疑いで、兵庫県警察高速隊は、Aさんを道路交通法違反(妨害運転罪)の容疑で逮捕しました。
Aさんは、「運転の仕方が気に入らず、イラっとしてあおった。」と容疑を認めています。
警察からの連絡で夫の逮捕を知ったAさんの妻は、ニュースであおり運転厳罰化が特集されていることを思い出し、Aさんに対してどのような処分が下されるのか不安で仕方ありません。
(フィクションです)

交通事故に繋がりかねない危険な運転行為である「あおり運転」は、これまで道路交通法や刑法の暴行罪などを適用して対処されてきました。
あおり運転が引き起こす交通事故の危険性・重大性を鑑み、あおり運転に対する厳罰化が求められてきました。

道路交通法改正~妨害運転罪の創設~

令和2年6月10日に公布された道路交通法の一部を改正する法律により、「妨害運転」に対する罰則が創設されました。

道路交通法第117条の2の2第11号は、「他の車両等の通行を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であって、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者」を、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処すとしています。
本条の対象となる行為は、
①通行区分違反:右折や左折などをする場合に、方向別に区分された車線を通らない。
②急ブレーキ禁止違反:不必要に車を急停止させたり、急激な減速をするような急ブレーキをかける。
③車間距離保持違反:前の車との距離を極端に詰める。
④進路変更禁止違反:みだりにその進路を変更する。
⑤追い越し方法違反:追い越し車線ではない通行帯で追い越す。
⑥車両等の灯火違反:ハイビームでの威嚇。
⑦警音器等使用違反:むやみやたらにクラクションを鳴らす。
⑧安全運転義務違反:幅寄せや蛇行運転。。
⑨最低速度違反:高速道路での最低速度より遅い速度での進行。
⑩停車・駐車禁止違反:高速道路での駐停車。

また、道路交通法第117条の2の2第11号の罪を犯し、よって高速道路において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた者は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。(道路交通法第117条第6号)

このように、あおり運転自体を行った場合には、新たに創設された妨害運転罪に該当する可能性があります。

自動車運転処罰法改正~危険運転致死傷罪の対象~

あおり運転を行った結果、人身事故を起こした場合には、自動車運転処罰法の危険運転致死傷罪に該当することがあります。

危険運転致死傷罪は、自動車の危険な運転によって人を死傷させた場合に成立する犯罪です。
自動車運転処罰法に関する改正法が7月2日に施行され、高速道路などで走行中の車両前方に停止するなど、他の車の通行を妨害する行為が危険運転致死傷罪に追加されました。

法改正以前では、あおり運転による人身事故に危険運転致死傷罪が適用されるのは、「人や車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に侵入し、その他通行中の人や車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」を行い、その結果、人を死傷させた場合でした。
つまり、あおり運転に高速度での運転という要件が課されていたため、適用範囲が限定されていました。

改正後は、先の類型に加えて、「車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為」と「高速道路・自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為」も危険運転致死傷罪の対象となりました。
前者は、走行している車の前で急ブレーキをし、その車を停止させたり、極端に接近したりした結果、交通事故を起こし、人を死傷させた場合が該当し、高速道路のような路上で駐停車していることが予想されていないような場所で、前方に割り込んだり、極端に接近したりして走行中の車を停止・徐行させたことで、人を死傷させた場合は後者に当たるでしょう。

以上の様に、危険なあおり運転については、これまで以上に厳しい処罰が科されることになります。

あおり運転で逮捕された方、あおり運転で事故を起こした方、交通事件で対応にお困りの方は、交通事件を含めた刑事事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。

密漁で刑事告訴

2020-08-23

密漁刑事告訴された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
会社員のAさんは、友人のBさんと、兵庫県南あわじ市の海岸で、持参したもりを使って、アワビやサザエなどを採っていたところ、神戸海上保安部に発見され、事情聴取を受けました。
地元の漁業組会は、漁業法違反で刑事告訴をすることを検討しています。
Aさんは、容疑を認めており、何とか事件を穏便に済ませることはできないものかと思い、刑事事件専門弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

密漁が発覚すると

ルールを守らずに海で魚や貝類などを自分で消費するために採る行為は、密漁として刑事処分の対象となることがあります。
「いっぱい生息しているんだし、少しぐらい採っても構わないでしょう。」と思われる方もいらっしゃうようですが、海の資源を守るために採取についても守るべきルールがありますので、ルール違反を犯し、刑事事件へと発展する可能性がありますので、ご注意ください。

密漁で問題となるのが、漁業法と呼ばれる法律です。
漁業法は、漁場の総合的な利用による漁業の発展を目的とする法律です。
漁業法は、「一定の水面に置いて特定の漁業を一定の期間排他的に営む権利」である漁業権を定めています。
この漁業権には、地元漁民が一定の水面で共同して漁業をする権利(共同漁業権)、一定の場所で養殖を行える権利(区画漁業権)、一定の場所で定置網を営む権利(定置漁業権)の3種類があります。
共同漁業権のうち、ウニやアワビなどの貝類やわかめなどの藻類等の定着性の水産物を採る権利を第一種共同漁業権といい、共同漁業権の設定区域では、共同漁業権の免許を受けた漁業協同組合の組合員以外の者が、この権利を侵すと、漁業権侵害として罰せられることがあります。
兵庫県のほとんどの沿岸海域に共同漁業権が設定されています。

漁業権を侵害した場合、20万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
ただし、これは親告罪であるため、告訴がなければ公訴を提起することはできません。

一般の方による密漁の多くは、密漁中やその後に警察や海上保安庁に職務質問され発覚するケースや、地域住民が密漁を目撃し警察や海上保安庁に通報して発覚することが多いでしょう。
逮捕される可能性もありますが、他の犯罪に比べると、それほど高くありません。
しかし、身体拘束を受けていなくても、刑事事件として手続は進んでいきますので、きちんと対応しなければなりません。

刑事告訴

告訴とは、犯罪被害者その他告訴権を有する者が、捜査機関に対して犯罪事実を告知して処罰を求める意思表示のことをいいます。
告訴は、書面又は口頭で、検察官又は司法警察員に対して行います。
告訴と似たものに、被害届がありますが、被害届は、犯罪による被害の事実を申告するにとどまり、犯人の訴追や処罰を求める意思表示は含まれません。
告訴は、公訴の提起があるまで取り消すことができます。

前述しましたが、告訴がなければ公訴を提起することができない罪のことを親告罪といいます。
そのため、告訴の有無は、親告罪の場合に重要な意味を持ちます。

被害者が告訴している場合には、事件を穏便に解決するために、被害者に告訴を取下げてもらうことが必要です。
そのためには、被害者との示談成立が必須となります。
示談とは、加害者が被害者に対して相応の弁償金を支払うことで、被害者は被害届や提出や告訴を行わないなど、当事者間では今回の事件が解決したと約束することをいいます。
被害者側との示談交渉について、加害者が直接被害者と話し合いを持つことはあまり有効ではない場合が多いです。
被害者感情を逆なでする結果になってしまったり、互いに感情的な水掛け論に終わってしまうことになりかねません。
しかし、法律知識を持った交渉のプロである弁護士が間に入って被害者と交渉することにより、被害者と加害者の両者にとって納得のいく示談へと導くことが出来ます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
所属弁護士は、これまで数多くの刑事事件を取り扱ってきており、被害者との示談交渉にも豊富な経験を有しています。
刑事事件を起こし、刑事告訴さて対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。

過失運転致傷事件で略式手続

2020-08-16

略式手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、兵庫県宍粟市の交差点を右折する際、横断中の自転車に気付くのが遅れ、自転車と衝突し、運転手の女性に怪我を負わせてしまいました。
Aさんは、すぐに女性の様子を確認し、通報しました。
幸い女性の怪我は軽く、Aさんは、通報を受けて駆け付けた兵庫県宍粟警察署の警察官に逮捕されることもなく、取調べを受けた後、帰宅を許されました。
Aさんは、裁判になるのではないかと心配していますが、相談した弁護士から、略式手続がとられる可能性があることを聞きました。
(フィクションです)

略式手続とは

ある犯罪に関し、犯人の処罰について判断するための一連の手続を「刑事手続」といいます。
刑事手続は、捜査に始まり、公訴の提起を経て、第一審の公判手続、そして上訴審の手続と段階的に処理されていきます。
捜査段階では、すべての事件が検察官のもとに集まり、これらの事件を検察官が処理をすることになります。
検察官による処理は、終局処分と中間処分とに分けられます。
終局処分には、起訴処分、不起訴処分、そして家庭裁判所送致とがあります。
起訴処分、つまり公訴提起には、①公判請求、②即決裁判手続の申立て、③略式命令の請求、④交通事件即決裁判の請求、の4種類あります。

検察官の略式命令の請求により、簡易裁判所が、その管轄事件につき、公判手続を経ないで、主として検察官の提出した証拠を審査して、一定額以下の罰金又は科料を科す簡易裁判手続を「略式手続」といいます。

略式手続をとるためには、次の要件を満たす必要があります。

①簡易裁判所の管轄に属する事件であること。
簡易裁判所の管轄する事件についてのみ略式手続によることができます。
簡易裁判所は、罰金以下の刑に当たる罪、選択刑として罰金が定められている罪または刑法第186条、第252条もしくは第256条の罪に係る訴訟についての第1審の裁判権を有しています。

②公訴提起と同時の、書面による検察官の請求があること。
略式命令の請求は、公訴の提起と同時に書面でしなければなりません。

③検察官による説明、正式裁判を受ける権利の告知、略式手続に異議がない旨の書面による確認があること。
検察官は、略式命令の請求に際し、被疑者に対してあらかじめ、略式手続を理解させるために必要な事項を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げた上、略式手続によることについて異議がないかどうかを確かめなければなりません。
被疑者は、略式手続によることについて異議がないときは、書面でその旨を明らかにしなければなりません。

④検察官による略式命令の請求と同時に書類・証拠が差し出されていること。
起訴状一本主義の適用はなく、必要な書類や証拠物も裁判所に差し出さなければなりません。

⑤略式手続によることの相当性
略式手続よることができるのは、略式命令をすることができるものであり、かつ、略式命令をすることが相当であるものです。
例えば、事案が複雑で、公判手続において慎重な審理をするのを相当と認めるときや、100万円以下の罰金又は科料以外の刑を科すべきものと認めたときなど、通常手続に移して審判しなければならない場合は、不相当とされます。

略式手続のメリットは、正式裁判に比べて身体拘束期間が短くなることや、刑罰が罰金で済むことが挙げられます。
一方、デメリットは、有罪判決を受けていることになるので、前科がつくこと、そして、略式起訴される場合、審理は書面だけで行われるので、法廷で自分の言い分を述べるということができないということです。

このように、略式手続にはメリットとデメリットがあります。
事件によっては、略式手続が最善の場合も、そうでない場合もあります。
過失運転致傷事件でも、被害者の怪我の程度が軽く、被害弁償等もきちんと行っているような場合には、略式手続がとられることがあります。
略式手続についてお悩みであれば、一度弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
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18歳未満との性交等:児童福祉法違反

2020-08-09

18歳未満との性交等を行い刑事事件(児童福祉法違反)となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県豊岡南警察署は、県外に住むスポーツクラブ講師Aさんを児童福祉法違反の疑いで逮捕しました。
18歳未満であることを知りながら、Aさんが指導するスポーツクラブに通う15歳の少女と性交をした疑いです。
Aさんは、「少女が18歳未満であることは分かっていたが、無理やりしたわけではなく、お互い同意の下でやった。」と話しています。
Aさんは、会社に事件のことが知られるとクビになるのではないかと心配しています。
(フィクションです)

18歳未満の者と性交等をした場合

18歳未満の者と性交や成功類似行為(以下、「性交等」といいます。)を行った場合、犯罪が成立し、刑事事件として手続に付される可能性があります。
前回は、淫行条例違反が成立する場合について説明しましたが、今回は「児童福祉法違反(淫行をさせる行為)」について解説します。

2.児童福祉法違反(児童に淫行をさせる罪)

児童福祉法第34条1項6号は、「児童に淫行をさせる行為」を禁止しており、違反者に対しては罰則(10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその両方)が科される可能性があります。

判例によれば、ここでいう「淫行」とは、「児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為」をいうのであり、「児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為」は「淫行」に含まれます。(最高裁、平成28年6月21日決定)

また、淫行を「させる行為」については、「直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為」をいうと解されます。
「させる行為」に当たるか否かは、「行為者と児童の関係、助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度、淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯、児童の年齢、その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断」されます。

また、「させる」とありますが、児童と第三者が淫行をすることを助長・促進する行為だけでなく、自身が行為者となり児童と淫行をする場合も、それが事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をすることを助長・促進したのであれば「させる行為」に当たります。

上の判例では、児童と被告人は同じ学校の生徒と教師という関係であり、「各性交は、児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交であり、同児童が通う高等学校の常勤講師である被告人は、校内の場所を利用するなどして同児童との性的接触を開始し、ほどなく同児童と共にホテルに入出して性交に及んでいる」ことから、「このような事実関係の下では、被告人は、単に同児童の淫行の相手方となったにとどまらず、同児童に対して事実上の影響力を及ぼして同児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をしたと認め」ています。

淫行相手に児童に淫行をさせる罪を認めたケースでは、行為者と児童とが、親子関係またはこれに準ずる関係性にあったことや、教師と生徒との関係またはそれに準ずる関係性にあり、当該関係性の下で児童に心理的に作用し、児童に影響力を及ぼす状況があったことが認められています。

被害者が存在する刑事事件における重要な弁護活動の一つは、被害者との示談交渉です。
被害者との示談が成立しているか否かは、被疑者・被告人の最終的な処分の結果にも大きく影響します。
児童福祉法違反事件においても、被害者との示談の有無は重要です。
上の事例のように、被疑者と被害者との関係性が指導者と生徒である場合、示談交渉の実際の交渉相手は被害児童の保護者となります。
通常、被害者の保護者との示談交渉は、通常の示談交渉よりも、処罰感情が激しく、交渉も困難だと言われています。
そのため、加害者が直接被害者と交渉することはあまり得策とは言えません。
刑事事件に精通する弁護士を介して示談交渉を進めるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
児童福祉法違反事件で被疑者となり対応にお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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18歳未満との性交等:淫行条例違反

2020-08-02

18歳未満との性交等を行い刑事事件(淫行条例違反)となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県三田警察署は、県外に住むAさんを兵庫県青少年愛護条例違反の疑いで逮捕しました。
18歳未満であることを知りながら、無料通信アプリで知り合った15歳の少女と性交をした疑いです。
Aさんは、「少女が18歳未満であることは分かっていたが、無理やりしたわけではなく、お互い同意の下でやった。」と話しています。
Aさんは、会社に事件のことが知られるとクビになるのではないかと心配しています。
(フィクションです)

18歳未満の者と性交等をした場合

18歳未満の者と性交や性交類似行為(以下、「性交等」といいます。)を行った場合、犯罪が成立し、刑事事件として手続に付される可能性があります。
該当し得る罪としては、以下のようなものがあります。

1.淫行条例違反

各都道府県は、青少年(18歳未満の者)の保護育成とその環境整備を目的にした条例を制定しています。
兵庫県は、「青少年愛護条例」を制定しており、その第21条は、青少年とのみだらな性行為等を禁止しており、違反者に対する罰則を設けています。

第21条 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。

本条例における「みだらな性行為(=「淫行」)」の意義については、福岡県の青少年保護育成条例についてではありますが、最高裁判所の判例で、以下のように解されています。

『「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。けだし、右の「淫行」を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは、「淫らな」性行為を指す「淫行」の用語自体の意義に添わないばかりでなく、例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものを含むこととなつて、その解釈は広きに失することが明らかであり、また、前記「淫行」を目にして単に反倫理的あるいは不純な性行為と解するのでは、犯罪の構成要件として不明確であるとの批判を免れないのであつて、前記の規定の文理から合理的に導き出され得る解釈の範囲内で、前叙のように限定して解するのを相当とする。』(最高裁大判昭60年10月23日)

結婚を前提としたような真剣交際の関係にあった場合には、淫行には当たらず、本条例違反を構成することはありません。

上の事例のように、ネットで知り合った青少年に対して、知り合ってから短期間で性交等に及んだ場合は、真剣な交際にあったとは認められ難いでしょう。
Aさんは、少女が18歳未満であったことは認識していたようですが、「お互いに同意の上での行為」だと主張しています。
しかし、この場合、相手が性交等に同意していたか否かは問題ではなく、相手の青少年を「誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為」をしたか否かが問われているので、Aさんが相手の少女と性交に至る経緯や関係性などを考慮すると、Aさんの行為は「淫行」に当たるり、Aさんが相手を18歳未満だと認識していたのであれば、淫行条例違反が成立することになります。

もし、Aさんが相手を18歳以上だと誤信していた場合には条例違反が成立するのでしょうか。

兵庫県青少年愛護条例は、18歳未満であることの認識に過失があっても処罰するとしています。

6 第17条第1項(同項第4号又は第9号に係る部分を除く。)、第20条第1項若しくは第2項、第21条第1項若しくは第2項、第21条の2、第21条の3又は第24条第2項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第1項又は前3項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。(第30条6項)

例えば、相手が18歳以上を示す身分証明書を提示したため、18歳以上だと信じたけれども、実際には他人の身分証明書で相手は18歳未満であった場合には、相手を18歳以上だと信じるのが通常であるため、故意も過失もなく、上の規定に関わらず罪は成立しません。
しかし、提示された身分証明書がその相手のものではないと気付くような状況であった場合には、過失があったとして、条例違反が成立することになります。

兵庫県青少年愛護条例違反(淫行条例違反)の法定刑は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。
初犯であり、立件された事件数も少ない場合には、罰金となるケースが多いでしょう。
しかし、初犯であっても、複数の事件が立件されており、その犯情も悪い場合には、公判請求され刑事裁判となる可能性もあります。
他方、早期に被害者(実際には、被害者の保護者)との間で示談を成立させることができれば、不起訴処分で事件を終了させる可能性を高めることができます。
ですので、18歳未満の者と性交等を行い、淫行条例違反で被疑者として捜査の対象となっているのであれば、できるだけ早くに弁護士に相談・依頼し、被害者との示談交渉に着手することが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が淫行条例違反で逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881へ。

盗撮犯を恐喝し逮捕

2020-07-26

盗撮犯恐喝した場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県神戸市兵庫区の駅で、女性を盗撮していた男性から、現金を脅し取った疑いで、兵庫県兵庫警察署は、Aさんを逮捕しました。
男性から現金を受け取る様子を目撃した、警察官がAさんに職務質問をしたところ、Aさんが逃亡したため、警察官は男性に事情を聞き、その後、Aさんの身柄を確保しました。
Aさんは、「盗撮なんかしとったあいつが悪いんちゃうのか。」と供述しています。
(フィクションです)

恐喝罪について

刑法第249条 
人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

◇犯行の対象◇

恐喝罪の客体は、「他人の占有する財物」と「財産上の利益」です。
「財物」は、有体物と、電気など物理的に管理可能なものを含みます。
刑法にいう「占有」とは、財物に対する事実上の支配をいいます。
占有があるかないかを判断するときには、占有の事実と占有の意思を総合して、社会通念に従い判断されます。
物を客観的に支配している場合はもちろんのこと、物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態も「占有」に含まれます。
「財産上の利益」は、財物以外の全ての財産上の利益を指します。
例えば、債務の免除、履行期の延期、債務負担の約束などです。

◇行為◇

恐喝罪の実行行為は、「恐喝し、財物を交付させる」又は「恐喝し、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させる」ことです。
恐喝罪が成立するには、相手方を恐喝し、畏怖した相手方が財産的処分行為を行い、財物又は財産上の利益が交付されるといった、一連の因果関係が必要です。

①恐喝
恐喝」は、脅迫又は暴行により人を畏怖させることです。
暴行・脅迫は、財物又は財産上の利益の交付に向けられたものでなければなりません。
暴行・脅迫の程度は、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度に至らず、相手方を畏怖させるに足りるものであればよく、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度に達したときには強盗罪となります。
恐喝罪における「脅迫」は、人を畏怖させるに足りる害悪の告知をいい、相手を単に困惑させるにとどまる場合は含まれません。
また、告知された害悪の内容は、必ずしもそれ自体が違法であることを要しません。
例えば、他人の犯罪を知る者が、捜査機関にその犯罪事実を申告する旨告知して、口止め料として現金を提供させた場合も、恐喝罪における「脅迫」に当たるとした判例があります。(最判昭29・4・6)
そのため、上のケースにおいて、Aさんが盗撮犯に対して犯罪行為を指摘したとしても、単なる指摘にとどまらず、捜査機関への申告をしない代わりに金銭を要求するなど、金銭を支払わなければ犯罪行為を捜査機関に申告されてしまうと相手方を畏怖させる害悪の告知をしたのであれば、「脅迫」に当たるでしょう。

②財産的処分行為
恐喝罪が成立するためには、畏怖により生じた瑕疵ある意思に基づいて、物・財産上の利益が交付される必要があります。
財産的処分行為が成立するためには、財産を処分する事実と処分する意思が必要となります。

◇結果◇

相手方の財産的処分行為の結果として、行為者側に財物の占有や財産上の利益が移転することが必要となります。
恐喝行為によって、相手方が畏怖し、畏怖に基づく財産的処分行為によって財物の占有又は財産上不法の利益が行為者又は第三者に移転した時に恐喝罪が完成した(既遂)ことになります。
恐喝罪の成立のためには、①恐喝行為⇒②畏怖⇒③畏怖に基づく財産的処分行為⇒④財物の交付又は財産上不法の利益を得る、の因果の流れが成立することが必要です。

◇故意◇

他人を恐喝して、畏怖に基づく財産的処分行為により、財物又は財産上不法の利益を得、又は他人に得させること及びその因果関係を認識することが必要です。
この故意とは別に、条文にはありませんが、不法領得の意思も判例上認められた要件です。

恐喝事件における弁護活動

(1)被害者対応

被害者がいる事件においては、被害者対応が重要な弁護活動のひとつとなります。
被害者への謝罪・被害弁償が済んでいることや示談が成立しているかどうかといった点は、検察官が起訴・不起訴を判断する際や裁判官が量刑を決める際に考慮される重要な要素だからです。
恐喝事件においても、弁護士は早期に被害者と示談交渉を行い、被害弁償の上、処罰を求めないなどの約束をしてもらえるよう動きます。
示談が成立した場合、不起訴となる可能性が高くなりますし、起訴後であっても、執行猶予となる可能性を高めることになります。

(2)身柄解放活動

逮捕されてしまった場合には、その後に勾留となり長期の身体拘束を強いられないよう身柄解放に努めます。
検察官に対して、勾留の要件を満たしていないことや勾留によって被り得る不利益が大きいことを主張し、勾留請求しないことを求めます。
検察官が勾留請求した場合には、今度は裁判官に対して、勾留の決定をしないよう意見書の提出や面談を通じて説得的に主張し、勾留回避に動きます。
勾留が決定した後であっても、勾留に対する準抗告を行い、早期の身柄解放を目指します。

このような活動は、刑事事件に精通する弁護士に依頼するのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
恐喝事件でご家族が逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881へお電話ください。

嫌がらせ行為で迷惑防止条例違反

2020-07-12

嫌がらせ行為で迷惑防止条例違反となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県加西市の会社に勤めるAさんは、迷惑防止条例違反嫌がらせ行為)の疑いで兵庫県加西警察署に逮捕されました。
容疑については、Aさんが、勤務先の会社で、女性社員が使用している個人ロッカーに、体液を塗り付けたハンドタオルを4回置いたというものです。
被害女性が会社を通じて警察に通報し、防犯カメラの映像などからAさんが犯人である疑いが高まりました。
Aさんは、容疑を認めているようですが、Aさんと被害女性は所属部署も異なり面識がありませんでした。
Aさんは、被害女性に謝罪と被害弁償を行いたいと思っています。
(フィクションです。)

嫌がらせ行為で迷惑防止条例違反

「兵庫県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(以下、「迷惑防止条例」といいます。)は、その10条の2で、「嫌がらせ行為」を禁止しています。

迷惑防止条例で規制されるのは、「正当な理由がないのに、特定の者に対し、執ように又は反復して行う」「嫌がらせ行為」です。
ここで言う「嫌がらせ行為」というのは、次の8つの行為のことです。

①つきまとい、待ち伏せ、進路への立ち塞がり、住居・勤務先・学校などの付近での見張り・押しかけ。

②行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

③面会その他義務のないことを行うよう要求すること。

④著しく粗野又は乱暴な言動をすること。

⑤無言電話、拒否されたにもかかわらず何度も電話をする、ファックス、電子メールを送ること。

⑥汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。

⑦名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

⑧性的羞恥心を害する事項を告げ、若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し、若しくはその知り得る状態に置くこと。

この「嫌がらせ行為」には、ストーカー規制法第2条第3項に規定するストーカー行為は除かれます。
ストーカー規制法における「ストーカー行為」とは、「同一の者に対し、つきまとい等を反復してすること」です。
「つきまとい等」とは、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系もしくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し」、1号から8号までのいずれかに掲げる行為をすることです。
「つきまとい等」となる対象行為は、嫌がらせ行為のそれと同じです。
しかし、「つきまとい等」には、「恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で、特定の者やその家族等に対して、繰り返し対象行為を行うことが必要となります。
つまり、恋愛感情その他の感情に基づく場合のみ「つきまとい等」となり、それを同一の者に対して反復して行うことで、「ストーカー行為」となります。

Aさんの場合、特定の者に対して、体液を付けたハンドタオルを個人ロッカーに4回置いていました。
体液を付けたハンドタオルを個人ロッカーに置くという行為は、上の⑥に当たるでしょう。
その行為を4回行っていたので、「執拗に」または「反復して」行っていると言えますが、その動機についてはどうでしょう。
Aさんは被害者と面識がなかったようなので、恋愛感情その他の好意の感情に基づくものではなかったかもしれません。
その場合には、ストーカー規制法違反ではなく迷惑防止条例違反が成立するに留まります。

被害者がいる事件では、被害者対応の如何により処分の結果が大きく変わります。
早期に被害者への謝罪及び被害弁償、示談を成立させることにより、不起訴処分で事件を終了できる可能性が高まります。

被害者対応は、弁護士に任せるのがよいでしょう。
加害者との直接交渉を望む被害者はそう多くありません。
交渉に着手できたとしても、感情的になり交渉が難航してしまいがちです。
他方、弁護士を介して行うことで、冷静な交渉を、そして、両者が納得のいく内容での示談成立が期待できます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
迷惑防止条例違反事件を起こし対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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盗撮事件で逮捕されたら

2020-06-28

盗撮事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
会社員のAさんは、兵庫県西宮市の駅構内の階段で、女性のスカート内にスマートフォンを差し入れ盗撮したとして、兵庫県甲子園警察署に迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、早期釈放と前科回避に向けてすぐに動いてくれる弁護士を探しています。
(フィクションです。)

盗撮で問われる罪とは

スマートフォンのカメラ機能を利用して行う盗撮や、小型カメラを靴やペンに仕込んで行う巧妙な盗撮など、様々な方法で盗撮は行われています。
もちろん盗撮は犯罪です。
盗撮は犯罪であることは、よく知られたところですが、盗撮が何の罪に当たるかについてまでご存じの方はそう多くありません。

法律上、「盗撮罪」という罪はありません。
盗撮行為は、各都道府県が定める迷惑防止条例で禁止される「卑猥な言動」に当たることが多く、迷惑防止条例違反という罪が成立する可能性があります。

兵庫県の迷惑防止条例は、その第3条の2において、「卑わいな行為等」を禁止する規定を定めています。
同条で禁止される行為は以下の通りです。

(1)公共の場所・乗物における「人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動」および「正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で、写真機等を設置する行為」の禁止
「公共の場所」は、不特定多数の者が自由に出入りし利用できる場所のことで、「道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場、飲食席、遊戯場その他の公共の場所」です。
同様に、「公共の乗物」とは、不特定多数の者が、自由に利用することができる乗物をいいます。
つまり、誰でも行ける(いる)ことができる場所・乗物のことです。
そのような場所で、「人に不安を覚えさせるような卑わいな言動」をしたり、「人の通常衣服で隠されている身体や下着を撮影するために、写真機を設置」することが禁止されています。
「人に不安を覚えさせるような卑わいな言動」というのは、「社会通念上、性的道着観念に反する下品でみだらな言動または動作」をいいます。(最高裁判例)
盗撮は、この「卑わいな言動」に当たります。
盗撮に加えて、盗撮目的での写真機の設置も規制対象となります。

(2)公共の場所・乗物を除く、集会所、事業所、タクシーその他の不特定多数の者が利用するような場所・乗物において、「人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為」や「人に不安を覚えさせるような卑わいな言動」をしたり、「人の通常衣服で隠されている身体や下着を撮影するために、写真機を設置」することが禁止されています。
公共の場所・乗物だけでなく、その他の不特定多数の人が利用するような場所・乗物での、盗撮および盗撮目的での写真機等の向ける行為・設置行為も規制対象です。

(3)浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を受けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置することを禁止しています。

以上のように、兵庫県迷惑防止条例は、盗撮が行われた場所を「公共の場所・乗物」に限定しておらず、また、盗撮のみならず盗撮目的でのカメラ等を向ける行為や設置行為も禁止対象としています。
そのため、盗撮しようと思って、スマートフォンなどをスカート内に差し向け、現に下着などは撮影できていない場合であっても、条例違反が成立することになります。

盗撮事件における弁護活動

盗撮事件における主な弁護活動は、早期釈放に向けた身柄解放活動と不起訴処分獲得を目指す活動です。

1.身柄解放活動

逮捕された場合、逮捕から48時間以内に、警察は、逮捕された人を釈放するか、それとも検察に証拠書類とともに送るか決めます。
検察に送致された場合、検察官が逮捕された人の身柄を受けてから24時間以内に、その人を釈放する、もしくは勾留請求を行います。
検察官が勾留請求すると、裁判官が、勾留するか否かの判断を下します。
勾留が決定した場合、逮捕された人は、検察官が勾留請求した日から原則10日間身柄が拘束されることになります。
その間は、学校や職場に行くことはできませんので、最悪の場合には退学や懲戒解雇となるおそれがあります。
そのような事態を回避するためにも、勾留が決定する前に、検察官に対して勾留請求しないよう、裁判官に対して勾留を決定しないよう働きかけることが重要です。
そのような働きかけにもかかわらず、勾留が決定してしまった場合であっても、その決定に対する不服申立を行い、できる限り早期に釈放となるよう身柄解放活動に従事します。

2.不起訴獲得を目指す活動

被疑者を起訴するか否かは、検察官が決めます。
起訴され、有罪判決が言い渡され刑罰が科されると、前科が付くことになります。
前科を回避するためには、検察官が今回の事件については起訴しない旨の決定をする、つまり不起訴処分で事件を終わらせる必要があります。

盗撮事件であれば、初犯であり、犯行が悪質でなく、被疑者との示談が成立している場合には、不起訴処分となる可能性は高いでしょう。
そのため、被害者との示談を成立させることが重要です。

このような弁護活動は、盗撮事件を含めた刑事事件・少年事件に精通する弁護士に任せるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
ご家族が盗撮事件で逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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運転手役は共同正犯?幇助犯?②

2020-06-21

運転手役が共同正犯となるか幇助犯となるかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aは、先輩Bから、Bと知り合いのCを指定された場所まで送り迎えをするよう頼まれました。
兵庫県養父市のとある事務所までBとCを車で送り、その場で待機していました。
BとCは、帽子を被りマスクを着用した姿で車を降り、15分後、大きな袋に荷物を詰めて戻ってきました。
そして、AはBとCを指定された場所まで送り届けました。
Aは、Bから謝礼として3万円を受け取りました。
後日、兵庫県養父警察署がAさん宅を訪れ、窃盗容疑でAさんを逮捕しました。
(フィクションです。)

共謀共同正犯の成立は、
①共同実行の意思の連絡(=共謀)、
②犯行実現への強い動機、関心、利害があり、これに基づいて犯行を実現するのに重要な役割を果たすこと、
③共謀者の少なくとも1人による実行
が要件となります。
共謀共同正犯が成立する場合、すべての者が正犯として処罰されることになります。

一方、共犯の一種である幇助犯は、正犯の犯罪行為を容易にするなど、手助けをする行為を行った者をいいます。

2.幇助犯について

幇助犯については、刑法第62条に次のように規定されています。

正犯を幇助した者は、従犯とする。

幇助犯の成立要件は、
(1)正犯者を幇助すること(幇助行為と幇助の犯意)
(2)正犯が犯罪を実行すること
(3)幇助の因果関係
の3つです。

(1)正犯者を幇助すること

①幇助行為
正犯の犯罪行為を手助けすること。
その手段や方法に制限はありません。
道具や場所などの提供といった有形的な方法や、犯行場所の情報提供や精神的に決意を維持させるなどの無形的な方法でも構いません。

②幇助の犯意
正犯の犯罪行為を手助けする意思があること。
正犯者が幇助の意思に気が付いていない場合でも幇助犯は成立します。

(2)正犯が犯罪を実行すること

幇助行為の対象となる正犯は、不作為犯でもよいのですが、過失犯は含まれません。
また、幇助意思に基づき幇助したとしても、正犯が実行しない場合は幇助犯は成立しません。

(3)幇助の因果関係

幇助が正犯の実行に役立った、容易にした場合でないと幇助犯は成立しません。
幇助行為が正犯者の実行行為を物理的・心理的に容易にすれば足りるとされます。

幇助犯は、正犯の刑が減軽されます。

運転手役は、共同正犯か?幇助犯か?

それでは、侵入盗の運転手役は、共同正犯(共謀共同正犯)となるのか、それとも幇助犯となるのか、について考えてみましょう。

共謀共同正犯幇助犯の要件を比較してみると、「正犯意思があるか否か」という点が両者の違いであることに気付くでしょう。
つまり、犯行実現への強い動機、関心、利害があって、これに基づき、犯行を実現するために重要な役割を果たしているか否か、という点です。

侵入盗の実行行為は、BおよびCが行っており、Aは実行行為ではない「送迎行為」を行いました。
「送迎行為」は実行行為ではありませんので、当該行為を行ったAは、窃盗の幇助犯となるのか、それとも共謀共同正犯となるのかが問題となります。

繰り返しになりますが、共謀共同正犯幇助犯の要件の違いは、「正犯意思があるか否か」という点ですので、ここで2つを区別するために、「送迎行為」が「正犯意思に基づく行為」か否かを検討する必要があるわけです。
つまり、正犯意思に基づく場合は窃盗の共謀共同正犯、正犯意思に基づかない場合は窃盗の幇助犯となるのです。

そこで、Aについて、①犯行実現への強い動機・関心・利害があるか、②犯行を実現するために重要な役割を果たしたか、を検討する必要があります。

①犯行実現の強い動機・関心・利害がある場合
事前に分け前の約束に基づいて送迎行為をしている場合や、組織的な窃盗グループの一員で、組織の指示に従って送迎行為をしている場合などは、犯罪実現の強い動機・関心・利害があると考えられます。

②犯行の実現に重要な役割を果たした場合
送迎行為は、実行行為(窃盗)を直接援助する行為とは言えません。
しかし、盗品を持って現場からすぐに逃走するためにはAの送迎行為、一般的に犯行の実現に重要な行為であると言えます。

Aが、事前にBから、侵入盗の計画について聞いていた、もしくは、Bの話からAが侵入盗について認識していたり、報酬についても事前に決められていた上で、Aが運転手役を積極的に担ったのであれば、共謀共同正犯が成立すると考えられるでしょう。

一方、AとBとの関係から、Aが運転手役を引き受ける以外に選択肢がなかった場合には、幇助犯にとどまる可能性もあります。

共謀共同正犯が成立する場合に科され得る刑罰と幇助犯が成立する場合の刑罰とは異なりますので、どちらが成立するかによりその後の処分が大きく変わることになります。

刑事事件でお困りの方は、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
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