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刑事事件で逮捕~現行犯逮捕~
刑事事件で逮捕~現行犯逮捕~
現行犯逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県篠山市の公園で、下半身を露出した男性がいるとの目撃者からの通報を受けて兵庫県篠山警察署の警察官が現場に駆け付けました。
警察官は、現場にいたAさんに話を聞いたところ容疑を認めたので、公然わいせつの容疑で現行犯逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、このまま身体拘束が長引くと会社をクビになってしまうのではないかと心配し、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)
前回まで、3種類ある逮捕のうち「通常逮捕」と「緊急逮捕」について説明しました。
今回は、残りの「現行犯逮捕」についてみていきましょう。
現行犯逮捕について
現行犯逮捕は、現に罪を行っている、あるいは行い終った直後の者の場合に、逮捕状なしに逮捕できるというものです。
現行犯逮捕については、刑事訴訟法第213条に規定されています。
第二百十三条 現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
現行犯逮捕は、現行犯は逮捕者の面前における犯行であるから、嫌疑が明白で、犯人を誤認して逮捕する危険が少なく、緊急性があるため、令状主義の例外として無令状の逮捕を認められています。
「現行犯人」については、刑事訴訟法第212条で次のように定められています。
第二百十二条 現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。
○2 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき。
「現行犯人」の定義について
(1)「現に罪を行う者」
「現に罪を行う」とは、逮捕者の面前で犯罪の実行行為を行いつつある場合をいいます。
「罪」は特定されたものであることが必要となります。
(2)「現に罪を行い終った者」
「現に罪を行い終った」とは、犯罪の実行行為を終了した直後をいいます。
この判断は、時間的接着性および場所的接着性を考慮して行われます。
時間的接着性というのは、犯行と逮捕との間が時間的にそれほど隔たっていないことをいい、場所的接着性は、犯行と逮捕が場所的にも近接していることを指します。
「準現行犯人」の定義について
刑事訴訟法第212条は、その第2項で、現行犯人とみなす者(「準現行犯人」)について規定しています。
準現行犯人は、現行犯人とのものではないけれど、罪を行い終って間がない犯人であることの明白性が価値的に現行犯と同視できることから、現行犯とみなされます。
(1)「罪を行い終ってから間がない」
「間がない」というのは、時間的・場所的に近接した時点をいいます。
「罪を行い終ってから間がないと明らかに認められるとき」という文言は、刑事訴訟法第212条第2号の各号とあわせて、犯罪と被逮捕者との結びつきが逮捕者に明白であることを必要とします。
①追呼
「犯人として追呼されているとき」というのは、犯人として追われている、或いは呼びかけられている状態です。
②贓物等の所持
「贓物(ゾウブツ)」とは、他人の財産を侵害する犯罪行為によって不法に領得された財物を意味します。
「兇器」とは、人を殺傷し得る器物で、一般人をして危険を感じさせるものであればよいとされます。
この兇器は、「明らかに犯罪の用に供したと思われ」なければなりません。
③犯罪の顕著な証跡
その犯罪を行ったことが外部的に、客観的に明らかといえる痕跡が身体あるいは服に認められる場合です。
④誰何されて逃走
「誰何」という言葉は、相手が何者かわからないときに、呼び止めて問いただすことを意味しますが、ここでは、これに類似する行為も含まれます。
現行犯逮捕は、警察などの捜査機関のほか一般人でも可能です。
一般人が現行犯逮捕した場合、直ちに検察官または司法警察職員に現行犯人を引き渡さなければなりません。
公然わいせつ事件は、目撃者が警察に通報し、現場に駆け付けた警察官が現行犯逮捕するケースが多いです。
刑事事件で逮捕されたら、できるだけ早期に弁護士に相談し、身柄解放活動に動くのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が刑事事件で逮捕されてお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
刑事事件で逮捕~通常逮捕~
刑事事件で逮捕~通常逮捕~
刑事事件の通常逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県姫路市の路上で、性的暴行を加える目的で、帰宅中の女子高生Vさんの後をつけ、背後から襲い、「騒いだら殺す」などと脅迫し、性交しようとしたろこと、Vさんが抵抗したため、犯人がその場から逃げ出すという強制性交等未遂事件が発生しました。
兵庫県姫路警察署は、現場付近の防犯カメラの映像から、県内に住むAさんを特定しました。
ある朝、Aさん宅に兵庫県姫路警察署の署員が訪れ、逮捕状をAさんに提示し、Aさんを逮捕しました。
(フィクションです)
捜査の流れ
捜査は、警察などの捜査機関が、犯罪があると考える時に、犯人と思われる者(被疑者)を特定・発見し、必要な場合には、被疑者の身柄を確保するとともに、証拠を収集・保全するといった一連の手続です。
捜査は、被害届の提出や告訴・告発、警察官による職務質問、犯人の自首などをきっかけに開始されます。
捜査は、強制処分による強制捜査と、任意処分による任意捜査の方法により行われます。
捜査は、基本的に次のような原則に基づいて行われます。
・強制処分を用いるのは、刑事訴訟法にそれを許す特別の規定がある場合に限られます。
・捜査は、基本的には任意捜査の方法によって行われることになっています。
・被疑者の身柄拘束や捜索・押収は、原則として、あらかじめ裁判官の発布する令状を得て行われなければなりません。
これらの原則に基づいて捜査を行うわけですので、被害者の身柄拘束を伴う「逮捕」の実施にもきちんとしたルールが定められているのです。
「逮捕」とは、被疑者の身柄を拘束し、引き続き短時間その拘束を続ける強制処分をいいます。
この「逮捕」は、次の3種類に分けられます。
①通常逮捕
②緊急逮捕
③現行犯逮捕
今回は、①の「通常逮捕」についてみてきましょう。
通常逮捕について
通常逮捕は、裁判官からあらかじめ逮捕状の発付を受けて行われるものです。
憲法第33条
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
逮捕は人の身体の自由を奪う重大な処分ですので、逮捕の許否判断は、原則として裁判官の事前の審査によるものとされます。
通常逮捕の要件は、
(1)逮捕の理由(刑事訴訟法第199条1項本文)
(2)逮捕の必要性(同条2項ただし書)
です。
(1)逮捕の理由
逮捕の理由とは、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」のことをいいます。
捜査機関が被疑者に対して数回出頭要請をしたにもかかわらず、当該被疑者が無視した場合、それ自体では犯罪の嫌疑があるとはいえないので逮捕の理由とはなりません。
しかし、それが続くことで、逃亡・罪証隠滅のおそれが増し、逮捕の必要性が推認される可能性はあります。
(2)逮捕の必要性
逮捕の必要性とは、被疑者の逃亡・罪証隠滅のおそれをいいます。
逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕状の必要性について判断します。
一定の軽微な犯罪については、被害者の住所不定、正当な理由なく出頭要求を無視する場合のみに逮捕の必要性が認められます。
以上の要件を満たすと裁判官が判断した場合、逮捕令状が発付され、捜査機関により逮捕が実施されます。
逮捕されると、逮捕に引き続き短時間(48時間以内)の身体拘束を強いられることになります。
また、逮捕されることにより、家族や学校・職場に事件のことが発覚する可能性もあります。
そのような事態を回避するため、できるだけ早期に弁護士に相談し、逮捕を回避してもらえるよう捜査機関への働きかけを行うのがよいでしょう。
具体的には、弁護士は、家族等の身元引受人により被疑者の監督が期待できることや、学校や仕事があり逃亡するおそれがないこと、被害者がいる事件では被害者と連絡が取れない状況であることなど、逮捕の要件である逮捕の必要性がないことを客観的な証拠に基づき説得的に主張します。
あなたが、刑事事件を起こし、逮捕されるのではないかと不安を覚えいらっしゃるのであれば、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談や初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。
捜査の端緒~自首~
捜査の端緒~自首~
捜査の端緒(自首)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県小野市のゲームセンターで、女子高生のスカート内にスマートフォンを差し入れ盗撮したAさん。
その様子を他の客が見ていたらしく、その客が店員に通報しようとしていることが分かり、Aさんは慌ててゲームセンターから逃げ出しました。
その後、店から誰かが追ってくる姿は確認しませんでしたが、Aさんは、店内に防犯カメラがあることからいずれ自分の犯行だと分かり、警察が逮捕しに来るのではないかと気が気ではありません。
自首したほうがよいのか、逮捕されるのだけはどうしても回避したいAさんは、刑事事件に強い弁護士に法律相談を申し込みました。
(フィクションです)
捜査の端緒として、主に
①被害者や被害関係者の届出、告訴・告発
②警察官による現認、職務質問、取調べ
③犯人の自首
があることは先述しました。
今回は、③の「自首」について説明していきましょう。
自首とは
みなさんは、「自首」という言葉は聞かれたことはありますよね?
「自首」は「犯人が警察署に出頭すること」によって成立する、と誤解されている方も多くいらっしゃるようです。
実は、法律上の「自首」が成立するためには、幾つかの要件を満たさなければならないのです。
「自首」とは、犯罪事実または犯人が誰であるかが捜査機関に発覚する前に、犯人自ら進んで犯罪事実を申告し、処罰を求める意思表示のことをいいます。
自首については、刑法第42条に次のように規定されています。
第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。
自首の成立には、以下の要件を満たす必要があります。
(1)自発的に自己の犯罪事実を申告すること
犯罪事実を自発的に申告していなければならず、単に捜査機関の取調べに対して自白した場合には、自発的な申告とはいえません。
もっとも、逮捕・勾留中の取調べ中であっても、未だ捜査機関に発覚していない余罪について自白した場合には自首が成立することになります。
しかし、捜査機関が嫌疑を持っていた場合には成立しないので注意が必要です。
また、発覚前に犯行をほのめかしたことをきっかけに行われた取調べで自供するに至った場合も自首は成立しません。
(2)自己の訴追を含む処分を求めること
犯罪事実の申告は、自己に対する処罰を求める趣旨が明示的もしくは黙示的に含まれていることが必要です。
犯罪事実の申告が、犯罪の一部を隠すためや、自己の責任を否定するものであった場合には自首は成立しません。
(3)捜査機関に対する申告であること
検察官や司法警察員に対して犯罪事実を申告していなければなりません。
(4)捜査機関に発覚する前に申告していること
犯罪事実だけでなく、犯人が誰かということまでも捜査機関が分かる前に申告する必要があります。
報告した相手が犯罪事実を知らない場合であっても、他の捜査機関の者が知っていれば、自首は成立しません。
また、犯罪事実および犯人が特定されているが、犯人の住所だけが不明の場合にも、発覚前とは言えません。
自首が成立した場合の効果
上の要件を満たし、自首が成立すると、刑が減軽される可能性が生じます。
自首をした者に対して刑を減軽するかどうかは、裁判所の裁量によって判断されるため、事件の性質や、自首の態様などの諸般の事情を総合的に考慮して決定されることとなります。
また、自ら犯行を素直に認めて捜査機関に出頭しているため、逃亡や罪証隠滅のおそれがないと判断されやすくなります。
そのため、逮捕されずに在宅で捜査がすすんだり、逮捕後に勾留請求されなかったり勾留請求が却下されたりと、早期に釈放される可能性が高まります。
先述のように、自首の成立には満たすべき要件がありますので、刑事事件を起こし自首を検討されている方は、一度刑事事件に強い弁護士にご相談されることをお勧めします。
また、自首の前に弁護士に相談することで、その後の刑事手続について説明や取調べ対応についてのアドバイスを受けることもできます。
刑事事件を起こしてしまい自首をしようかとお悩みの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談や初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡を!
捜査の端緒~職務質問~
捜査の端緒~職務質問~
捜査の端緒(職務質問)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市東灘区の路上をライトを点灯せずに自転車で通行していたAさん。
すると、兵庫県東灘警察署の警察官に呼び止められ、職務質問を受けました。
Aさんは、職務質問を拒否し、その場を立ち去ろうとしたところ、警察官が自転車のハンドルを持っていたため、うまく立ち去ることが出来ませんでした。
Aさんは、そのまま職務質問を受けたところ、乗っていた自転車が盗難車であることが発覚し、そのまま兵庫県東灘警察署で取り調べを受けることになりました。
しかし、Aさんは警察官の職務質問に不満があるようです。
(フィクションです)
前回、「捜査の端緒」のうちの①被害者や被害関係者の届出、告訴・告発、について説明しました。
今回は、②警察官による現認、職務質問、取調べ、のうちの「職務質問」についてみていきたいと思います。
職務質問
職務質問というのは、警察官が、「何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」等を、「停止させて質問すること」です。(警職法第2条1項)
職務質問は、主として、これから行われようとする犯罪の予防、及び、すでに行われた犯罪の鎮圧を目的として、街頭などで日常的に行われています。
職務質問の対象となるのは、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して」、
①罪を犯したと疑われる者、
②罪を犯そうとしていると疑われる者、
③すでに行われた犯罪について知っていると認められる者、
④犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者
です。
警察官は、このような者を「停止させて質問する」ことができますが、その場で質問をすることが本人に対して不利であり、また交通の妨害となると認められる場合には、付近の警察署、派出所、駐在所に「同行」を「求めることができ」ます。(警職法第2条2項)
これは、行政警察目的の任意同行で、犯罪捜査の一環である司法警察目的の任意同行とは区別されます。
職務質問およびその後の任意同行は、あくまでも「任意」であるので、要求に対する協力は強制されるものではありません。
ですので、制度上、警察から職務質問を受けても対応や回答を強いられることはなく、拒否して立ち去ることは可能です。
しかし、職務質問においては、逮捕の場合ような強制力を行使することはできないとしても、対象者が停止、応答ないし同行を拒む場合、言語による説得のみが許されるとしたら、職務質問の持つ犯罪防止・鎮圧の目的が実質的に意味を持たないことになります。
法文上、身柄の拘束や意に反する連行が認められないことは明らかで、犯罪がまさに行われようとしている際に抑止が認められますが(警職法第5条)、それ以上の規定はなく、職務質問における「停止」の意義、つまり、職務質問の際の有形力の行使が認められるかが問題となります。
この点、最高裁は、任意捜査における有形力の行使につき、強制手段にわたらない限り、「必要性、緊急性なども考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度で許容される」としています。(最三小決昭51・3・16)
この「必要性、緊急性、相当性」を判断する際の考慮要素として、
・対象者の嫌疑の内容と程度
・対象者の対応、
・侵害される対象者の利益と程度
・警察側の対応、
・有形力行使の態様・程度
などが多くの裁判例で挙げられています。
過去の判例で、以下の行為は適法とされました。
・職務質問中に逃げた者を130メートル追いかけ、背後から腕に手をかけ停止させた行為。
・酒気帯び運転の嫌疑がある者の逃走防止のため、窓から手を入れてエンジンキーを回してスイッチを切った行為。
・交通整理等の職務に従事していた警察官につばを吐きかけた通行人の胸元をつかみ歩道上に押し上げた行為。
・ホテルの宿泊客に対する職務質問を継続するため、ドアを押し開け、ドアが閉められるのを防止した行為。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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捜査の端緒~被害届・告訴・告発~
捜査の端緒~被害届・告訴・告発~
捜査の端緒(被害届・告訴・告発)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県三田市にあるマンションに住むAさんは、マンションの駐輪場に原付を止めていましたが、大型のバイクの止め方が気に食わず、怒りに任せてバイクを蹴って倒してしまいました。
Aさんは、倒したバイクを起こすことなくそのまま放置してその場を立ち去りました。
バイクの持ち主も、最初はたまたまこけたのかと思っていましたが、その後も何度かバイクが倒れていたため、誰かが故意にやっているのではないかと思い、兵庫県三田警察署に相談に行きました。
マンションに警察官が来ているところを見たAさんは、自分が被疑者として調べられているのではないかと思い、気が気でなりません。
(フィクションです)
捜査の端緒
捜査は、捜査機関が「犯罪がある」と考えるときに開始されます。
そのように考えるきっかけを「捜査の端緒」と呼び、概ね次のものが挙げられます。
①被害者や被害関係者の届出、告訴・告発
②警察官による現認、職務質問、取調べ
③犯人の自首
被害者や被害関係者の届出、告訴・告発
事件の被害者が警察に被害届を提出したり、告訴を行ったり、関係者からの告発があった場合に、当該事件が捜査機関に発覚するケースは少なくありません。
(A)被害届
犯罪被害者が、捜査機関に対して、犯罪による被害の事実を申告する(被害届の提出)ことにより、捜査が開始される場合があります。
(B)告訴
犯罪の被害者及びその他の告訴権者が、捜査機関に対して犯罪事実を申告し、その訴追を求める意思表示を「告訴」をいいます。
被害届が犯罪事実の申告行為のみであるのに対して、告訴は犯人の訴追・処罰を求める点で異なります。
告訴は、犯罪事実に対して行うものであって、犯人に対して行うものではありません。
ですので、告訴の内容としては犯人の特定は必ずしも必要ではなく、判例は、親告罪である名誉棄損被告事件において、告訴には必ずしも被告人の氏名を指定する必要はないとしています。
告訴することができるのは、原則、犯罪被害者と被害者の法定代理人です。
告訴することができるのは、犯人を知った日から6ヶ月です。
告訴は、書面または口頭で、検察官または司法警察員に行い、告訴は、公訴の提起があるまで取り消すことができます。
しかし、いったん取り消した後は、再度告訴することはできません。
告訴は、親告罪においては特に重要な意味を持ちます。
「親告罪」というのは、告訴がなければ公訴を提起することができない罪のことです。
例えば、未成年者略取誘拐罪、名誉棄損罪、侮辱罪、過失傷害罪、器物損害罪などです。
(C)告発
告発は、第三者が、捜査機関に対して、犯罪事実を申告し、犯人の訴追・処罰を求める意思表示です。
告発の手続や効果は、告訴の場合に準ずることになりますが、代理人によることができないこと、期間の制限がないこと、起訴後の取消や取消後の再告発が禁止されていないことが異なります。
被害届の提出、告訴がされたら
被害者等から捜査機関に被害届が提出されたり告訴された場合、捜査機関は捜査を開始します。
捜査機関が被疑者を特定し、逮捕の要件を満たすと判断されれば、被疑者を逮捕することもあります。
しかし、捜査機関に事件が発覚する前に、被害者との示談が成立し、被害届の提出や告訴を行わない旨の約束ができれば、捜査機関が捜査を開始することもなく事件は終了します。
被害者等が既に被害届を警察に提出していたり、告訴をしてしまっていた場合でも、早期に被害者との示談を成立させ、被害届や告訴を取り下げてもらえれば、不起訴処分となる可能性も高まります。
このように、事件の早期解決には、被害者との示談の有無が大きく影響するわけですが、加害者が直接被害者と示談交渉することは困難です。
なぜならば、元々被害者と加害者が知り合いであるといった場合や被害者が加害者と連絡をとりたいと申し出る場合を除いて、捜査機関が加害者に被害者の連絡先を教えることはありません。
また、加害者に対する恐怖や嫌悪感から加害者と直接連絡をとることを承諾する被害者も少なく、加害者が被害者の連絡先を入手することは極めて難しいのです。
ですので、被害者との示談交渉は弁護士に任せるのが一般的です。
弁護士限りであれば連絡先を教えてもよいと回答する被害者の方も多くいらっしゃいますし、当事者同士であれば感情的になりがちな話し合いも、代理人を立てることで冷静にすすめることができます。
あなたやあなたのご家族が刑事事件を起こし、対応にお困りであれば、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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服の上からの盗撮で迷惑防止条例違反
服の上からの盗撮で迷惑防止条例違反
服の上からの盗撮(迷惑防止条例違反)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市北区の商業施設で、女性のお尻部分を服の上から盗撮したとして、会社員のAさんは迷惑防止条例違反の容疑で現行犯逮捕されました。
Aさんは、兵庫県有馬警察署で取り調べを受けており、「女性の下着を盗撮したのではなく、女性が普通に服を着ていた状態のお尻部分を撮っただけです。」と、迷惑防止条例違反の容疑で逮捕されたことに不満がある様子です。
Aさんは、接見に訪れた弁護士に自分の行為が迷惑防止条例違反となるのか聞いています。
(フィクションです)
盗撮~迷惑防止条例違反~
「盗撮ぐらいならバレないだろう。」と、人のスカート内に自身が所持するスマートフォンを差し入れ、その下着を撮影するといった「盗撮」は、捜査機関に発覚していないことも多く、実際の件数はかなりの数に上ると言われています。
盗撮事件で逮捕された方が、実は逮捕された被疑事実以外にも盗撮行為を何件も行っていたことが発覚するケースが多く見られます。
みなさんご存知の通り、盗撮行為は犯罪です。
「盗撮罪」という犯罪はありませんが、各都道府県が定める迷惑防止条例が「盗撮」を禁止しており、違反者に対しては罰則を定めています。
兵庫県迷惑防止条例では、次のように規定しています。
第3条の2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
(2) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置する行為
2 何人も、集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所(公共の場所を除く。)又は乗物(公共の乗物を除く。)において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為
(2) 前項第2号に掲げる行為
3 何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。
禁止される行為は、「盗撮」だけでなく、盗撮目的でカメラを向けたり、設置したりする行為も含まれます。
服の上から撮影しても迷惑防止条例違反の盗撮に?
「盗撮」といった場合、多くの人が、他人の下着や裸などを許可なく撮影することを想像されると思いますが、被撮影者が服を着た状態で勝手に撮影した場合でも、迷惑防止条例で禁止されている盗撮に該当するのでしょうか。
この点、札幌の迷惑防止条例に関してではありますが、服の上からでも「公共の場所・乗物において、卑わいな言動」に当たり条例違反となることを肯定した裁判がありますので、ご紹介しましょう。
事件の内容は、被告人が、ショッピングセンター内で女性に執拗につきまとい、ズボンを着用した女性のお尻部分をカメラで11回撮影したというものです。
女性の下着や身体を盗撮したのではないから、「卑わいな言動」には当たらないのではないかと争われましたが、最高裁判所は、「被告人の本件撮影行為は、被害者がこれに気付いておらず、また被害者の着用したズボンの上からされたものであったとしても、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな動作であることは明らかであり、これを知ったときに被害者を著しくしゅう恥させ、被害者に不安を覚えさせるものといえるから、上記条例10条1項、2条の2第1項4号に当たるというべきである。」とし、服の上からであっても被害女性のお尻を盗撮する行為は、迷惑防止条例における「卑わいな言動」に当たると解されました。(最決平20・11・10)
このように、人が服を着た状態であっても、その臀部を盗撮する行為は、卑わいな言動に当たる可能性があり、上記ケースにおいてAさんに対して迷惑防止条例違反が成立するものと考えられます。
盗撮事件のような被害者が存在する事件においては、被害者との示談の有無が処分結果に大きく影響します。
被害者との示談は、弁護士を介して行うことをお勧めします。
盗撮事件でお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
殺害目的で包丁所持~殺人予備罪~
殺害目的で包丁所持~殺人予備罪~
殺害目的での包丁所持(殺人予備罪)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aさんは、交際相手を巡ってVさんと揉めていました。
Aさんは、Vさんの態度に激怒し、Vさんを殺害することを決意しました。
Aさんは、ホームセンターで文化包丁を購入し、兵庫県川辺郡猪名川町のVさん宅付近の路上でVさんを待ち伏せしていました。
すると、付近の住民がAさんを不審に思い、兵庫県川西警察署に通報しました。
現場に駆け付けた警察官から職務質問を受けた際、警察官がAさんが文化包丁を持っていることに気づき、Aさんを銃刀法違反容疑で現行犯逮捕しました。
兵庫県川西警察署での取調べでは、AさんはVさんを殺害するために文化包丁を所持していたと供述しており、Aさんは殺人予備容疑でも取調べを受けることになりました。
(フィクションです)
殺人予備罪について
殺人罪は、刑法第192条に次のように規定されています。
第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
殺人罪の構成要件(法律により犯罪として決められた行為類型)は、「人を殺した」行為です。
人が死亡することにより構成要件的結果が惹起され、殺人罪という犯罪が成立します。
それでは、人が結果として死に至らなかった場合は罪に問われないのでしょうか。
第二百三条 第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。
上記のように、殺人罪に関して、人を殺そうとしたけれど、結果人を死亡させるに至らなかった場合(未遂)でも、未遂犯として処罰の対象となります。
現行刑法は、未遂を一般的に処罰の対象とするのではなく、処罰の必要を認めた犯罪について、個別に処罰規定を設けています。
未遂とは、「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった」ことです。(刑法第43条)
ですので、未遂というためには「犯罪の実行に着手した」ことが必要となります。
この実行の着手の有無をどのような基準で判断すべきかについて、判例は、既遂犯の構成要件的結果を生じさせる危険性が認められる行為への着手の時点で実行の着手が認められるとする立場にたっています。
例えば、クロロホルムを吸引させて被害者を失神させ(第1行為)、失神した被害者を車ごと海に転落させて溺死させる(第2行為)事案において、第1行為は第2行為を確実かつ容易に行うために必要不可欠であったといえること、第1行為に成功した場合、それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存しなかったと認められることや、第1行為と第2行為との間の時間的場所的近接性などに照らすと、第1行為は第2行為に密接な行為であり、被告人らが第1行為を開始した時点ですでに殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるとして、第1行為を開始した時点で殺人未遂が成立するとしています。(最決平16・3・22)
上のケースでは、AさんはVさんを殺害する目的で凶器である包丁を購入した上で、Vさん宅付近で待ち伏せしていました。
Aさんの行為は、殺人の実行に着手したと言えるでしょうか。
凶器を所持して待ち伏せする行為だけでは、「Vさんの死」という法益侵害の現実的危険が発生していたとは言えないでしょう。
であれば、そのような未遂にも至っていない場合は何ら罪に問われないのでしょうか。
刑法は、未遂以前の犯行の「予備」についても、殺人罪や強盗罪など極めて重い犯罪について例外的に処罰の対象としています。
第二百一条 第百九十九条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。
殺人予備罪は、殺人罪を犯す目的で、殺人の実行を可能にし、または容易にする準備行為です。
判例では、人を殺害する目的で刺身包丁を携えて被害者宅に侵入し、被害者の姿を探し求めて屋内を通り歩いた行為、他人から殺人の用に供するための青酸カリを調達するよう依頼を受け、これを入手してその他人に手交する行為、殺人を意図して被害者等の日常通行する能動の道端に毒入りジュースを置く行為は、殺人予備罪に該当するとしています。
となれば、上記ケースで、殺意を持って包丁を手に被害者宅付近で待ち伏せしていた行為は、殺人予備罪に当たると考えることができるでしょう。
逮捕されたAさんは、身体拘束されたまま連日捜査機関からの取調べを受けることになります。
外界から隔離された環境での取調べで、身体的にも精神的にも疲労し、自己に不利な供述がとられてしまう可能性もあります。
ご家族が刑事事件を起こし逮捕されてお困りであれば、刑事事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
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痴漢事件で被害者と示談するには
痴漢事件で被害者と示談するには
痴漢事件での被害者との示談について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
会社員のAさんは、電車で通勤していました。
ある夜、会社の飲み会があり、かなりお酒が入った状態で最終電車に乗車しました。
Aさんは、隣に座っていた大学生と思われる女性が眠っていると思い、女性の太ももをさするなどの痴漢行為を行いました。
ところが、Aさんが電車を降りると、さきほどまで隣に座っていた女性に声を掛けられ、振り返ると、「あなた痴漢しましたよね?一緒に駅員室に行きましょう。」と言われ、そのまま駅員室に連れて行かれました。
その後、兵庫県飾磨警察署に行き、Aさんは迷惑防止条例違反の容疑で取り調べを受けることになりました。
Aさんは容疑を認めており、被害者に謝罪したと申し出ましたが、被害女性はAさんと直接連絡とりたくはないようで、警察からは「弁護士にでも相談したらどうか。」と言われました。
(フィクションです)
痴漢事件
弊所が受ける法律相談のなかでも、痴漢事件や盗撮事件に関するものが多くを占めています。
「家族が逮捕されてしまったが、すぐに釈放されないか。」、「今後どのような流れになるのか。どのような刑罰を受けるのか。」、「被害者の方に謝罪や被害弁償をしたいけれども、どうしたらいいのか。」などという相談が多く寄せられています。
痴漢をすると、多くの場合、各都道府県が定める迷惑防止条例違反の罪に問われます。
どこで痴漢行為を行ったかによって、どの都道府県の迷惑防止条例が適用されるかが異なりますが、痴漢に関して言えば各条例の内容にそれほど違いはありません。
痴漢は、各都道府県が定める迷惑防止条例が禁止する「卑わいな言動」に当たります。
以下、兵庫県の迷惑防止条例の該当条項です。
第3条の2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
公共の場所・乗物において、「不安を覚えさせるような卑わいな言動」を行った場合に成立します。
電車内での痴漢はまさに当該条項違反の典型例です。
当該違反行為に対する刑罰は、6月以下の懲役または50万円以下の罰金です。
常習として痴漢行為を行った者に対しては、1年以下の懲役または100万円以下の罰金と刑罰は加重されます。
痴漢事件では、逮捕されたとしても、初犯であり、容疑を認めている場合には、家族などの身元引受人が迎えに来ることで釈放される可能性があります。
この点、釈放されたことから、事件が終了したと勘違いされる方もいらっしゃいますが、残念ながら、釈放されたからといって事件が終わるなんてことにはなりません。
在宅事件として、身柄拘束しないまま被疑者としての取調べが続くのです。
警察での捜査が終了すると、事件は検察に送致され、今度は検察官から呼び出され取調べを受けることになります。
その後、検察官が被疑者を起訴するかどうかを決定します。
ここで、起訴しないとする処分(「不起訴処分」)となれば、事件は終了します。
一方、検察官が起訴した場合には、略式手続で略式命令を言い渡され罰金を納める、若しくは、公判請求され公判を経て有罪・無罪が言い渡され、有罪の場合には執行猶予付き判決または実刑判決が下れるという流れになります。
痴漢事件の場合、前科があれば、公判請求される可能性がありますが、そうでなければ、不起訴処分か略式手続で罰金刑となることが多いですのですが、不起訴処分で終わるか、罰金刑で終わるかは、大きな違いと言えるでしょう。
ここでは容疑を認めていることを前提としてお話しますが、この場合の不起訴処分は「起訴猶予」となります。
これは、被疑者が犯罪を行ったと立証するに十分な証拠があるけれども、被疑者の年令・性格・境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況を考慮し、訴追の必要がないため、起訴しないとする処分です。
この判断をする際に、考慮要素となるのが、被害者との示談の有無です。
示談というのは、加害者が被害者に対して相応の弁償金を支払う一方、被害者が被害届の提出をしない等、当事者間では今回の事件は解決したとする約束のことをいいます。
迷惑防止条例違反は親告罪ではありませんが、初犯であり、被害者との間で示談が成立しており、被害者から許しが得られている場合には、検察官があえて起訴に踏み切る可能性は低いと言えるでしょう。
不起訴処分となれば、前科はつきません。
他方、初犯であっても、被害者との示談が成立していない場合や、件数が多く全ての被害者との示談が困難である場合には、略式起訴され罰金刑を受ける可能性もあります。
略式手続は、公判を開くことなく書面上での手続で終了しますが、罰金刑を受けることになり、有罪の前科が付くことには変わり有りません。
つまり、被害者との示談の有無が、刑事処分に大きく影響し得るのです。
しかしながら、当事者同士で直接示談交渉することは事実上難しい場合が多いのです。
被害者から連絡先を教えたくないと言われるケースや、連絡がとれて直接交渉したとしても、お互いやったやってないの感情論になり交渉がうまくまとまらないケースが多いからです。
そのような場合には、弁護士を介して示談交渉を行うのがよいでしょう。
弁護士限りなら連絡先を教えてもよいと言われることも多く、冷静で粘り強い交渉を行うことで高額な示談金を支払うこと回避し、清算条項や宥恕条項などをきちんと盛り込んだ示談書を作成することができます。
痴漢事件での示談交渉にお悩みであれば、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に今すぐご相談ください。
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しつけと虐待
しつけと虐待
しつけと虐待について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県美方郡新温泉町に住むAさんは、息子のVくん(10歳)が学校で教師に対して暴言を吐くなどしたため、学校から呼び出しを受けていました。
Aさんは自宅でVくんと話をし、態度を改めるよう言いました。
しかし、Vくんは反抗的な態度を取り続けたため、AさんはVくんの両手を針金で緊縛し、自宅の階段下の物置に居れ、中から出られないように外側から戸を固定し、トイレや食事の時以外は1日そこに閉じ込めていました。
すると、どこから話を聞いたのか、兵庫県美方警察署の警察官がAさん宅を訪れ、Aさんの行為はしつけではなく虐待に当たる可能性があると言われました。
Aさんは、反抗的な子供を更生させるためにやったことであって虐待ではないと考えています。
(フィクションです)
親のしつけ~懲戒権の行使~
親として子供を懲戒することは民法上認められています。
第820条(監護及び教育の権利義務)
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
第822条(懲戒)
親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。
子の監護及び教育に必要な範囲内での懲戒は民法上認められているわけで、当該規定に基づく懲戒であれば、それは法令に基づく行為ということになり、違法性が阻却され、犯罪は成立しないことになります。
例えば、親子間ではなく教師と生徒の間の事例ではありますが、過去の裁判では、教師の生徒に対する軽微な暴行は体罰には当たらず、正当な懲戒権の行使の許容限度内にある行為であるとされてものがあります。
被告人の「本件行為の動機・目的は、生徒の軽率な言動に対してその非を指摘して注意すると同時に、同人の今後の自覚を促すことにその主眼があったものとみられ、また、その態様・程度も平手及び軽く握った右手の拳で同人の頭部を数回軽くたたいたという軽度のものにすぎ」ず、懲戒権の範囲内にとどまることを理由に違法性が阻却されるとしています。(東京高裁判決昭和56・4・1)
これに対して、懲戒という目的を超えて、対象者の身体の機能等、他の利益を侵害した場合には、懲戒行為の違法性は阻却されません。
子供に対する暴行が「しつけ」であると主張するケースは多くありますが、この「しつけ」が懲戒権の適切な行使に当たるかどうかといった線引きが問題となります。
問題の懲戒行為の内容や対象の子供の年齢等により異なりますが、当該行為が子供の監護・教育に必要であったのかどうか、その行為は懲戒権の行使として適当であったか、度を越していなかったかどうかが判断基準となります。
例えば、子供に対するしつけの一環として暴力を振るった事件において、父親が子供(3歳)を叱った際に子供が反抗的な態度をとったことに激昂し、子供に対して、顔面を鉄拳や平手で数回殴打した上、腹部を数回足蹴りするなどの暴行を加えた事案で、「その体罰は、およそしつけとは無縁の感情に任せたものであり、思慮を欠くこと甚だしく、同情する点はない。」などとして、しつけのための懲戒であるとする主張を認めなかったもの(横浜地裁判決平成14・1・24)、また、盗むをはたらく9歳児へのしつけとして、当該児童の両手をしばりあげ、押入に10数時間監禁した事件において、判決は、「親権者たる実父が子の性行、悪癖を矯正する目的で、制縛、監禁等の方法を用いてその子の自由をある程度拘束することは、法が親権者の懲戒権を認めた趣旨に鑑み許されるべきものであろうが、その懲戒の方法、程度は、その親子の社会的地位、境遇、子の年令、体格、性質並びに非行の種類、態様及び性質等により個々の場合の具体的事情に基き一般社会人において妥当適切と首肯できるものでなければならない」とし、子供の非行行為の内容や年令・体格と父親が行った懲戒行為の程度とを比較検討し、到底一般社会人の首肯できる妥当な懲戒行為とは認められないとして、逮捕監禁罪の成立を認めています。(東京高裁判決昭和35・2・13)
このように、しつけの必要性や相当性を判断し、当該しつけが懲戒権の妥当な行使であったか否かが判断されることになります。
しかし、この懲戒権について、児童虐待問題が相次ぐ昨今、懲戒権が親から子への虐待を正当化する口実として利用されているとの指摘もあり、懲戒権の見直しが検討されています。
しつけは子供のために必要ではありますが、度を超すようなしつけ、少なくとも子供に大きな怪我を負わせるようなしつけは、適切な行為とは認められることは難しいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件でお困りの方は、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
強盗殺人罪と公訴時効
強盗殺人罪と公訴時効
強盗殺人罪と公訴時効について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
1993年に兵庫県多可郡多可町で起きた強盗殺人事件から26年が経過した今年、兵庫県西脇警察署などは、県外に住むAさんを強盗殺人の容疑で逮捕しました。
Aさんは別件で捜査を受けていましたが、Aさんから採取したDNAと現場に残されていた凶器に付着していたDNAとが一致したため、Aさんが強盗殺人事件の容疑者として浮上したということです。
Aさんは「覚えていない。」と容疑を否認しています。
(フィクションです)
公訴時効について
刑事法における「時効」には、①刑の時効、と②公訴時効の2種類があります。
①の「刑の時効」というのは、刑事裁判で刑の言渡しを受けた者が、一定期間その執行を受けないことにより刑罰権が消滅することをいいます。
死刑は、刑の時効にかかりませんが、刑の時効の期間は、刑の種類とその重さによって定められています。
例えば、裁判での宣告刑が、無期懲役・禁錮であった場合は、刑の時効期間は30年、10年以上の有期懲役・禁錮は20年、3年以上10年未満の懲役・禁錮は10年です。
刑の時効の起算点は、裁判で刑の言渡しがあり、かつそれが確定した時点です。
ちなみに、刑の施行猶予期間中は、刑の時効は進行しません。
裁判で執行猶予判決が言い渡され、無事に執行猶予期間を終えた場合には、刑の言渡しの効力が失われますが、これは刑の時効とは別の制度です。
さて、刑事事件で「時効」といえば、一般的には②の「公訴時効」を指します。
「公訴時効」は、一定期間内に公訴を提起することを訴訟条件とするものです。
つまり、一定の期間が経過することにより公訴の提起ができなくなるという制度です。
公訴を提起することが可能な一定の期間を経過してしまった場合には、判決で免訴の言渡しをしなければなりません。
公訴時効の期間は、対象となる法定刑を基準に定められています。
●公訴時効なし
人を死亡させて、死刑に当たる罪(殺人罪、強盗殺人罪など)に関しては、公訴時効はありません。
●公訴時効30年
人を死亡させて、無期懲役・禁錮刑にあたる罪(強制性交等致死罪、強制わいせつ致死罪など)については、公訴時効は30年となります。
●公訴時効25年
人を死亡させていない、死刑に当たる罪(現住建造物等放火罪など)に関しては、公訴時効は25年です。
●公訴時効20年
人を死亡させ、長期20年の懲役・禁錮に当たる罪(傷害致死罪、危険運転致死罪など)については、公訴時効は20年となります。
●公訴時効15年
人を死亡させていない、無期懲役・禁錮に当たる罪(通貨偽造罪など)に関しては、公訴時効は15年です。
●公訴時効10年
人を死亡させて、長期20年に満たない懲役・禁錮に当たる罪(業務上過失致死罪、過失運転致死罪など)、及び人を死亡させず、長期15年以上の懲役・禁錮に当たる罪(強制性交等罪、傷害罪、強盗罪など)については、公訴時効は10年となります。
●公訴時効7年
人を死亡させず、長期15年未満の懲役・禁錮に当たる罪(窃盗罪、詐欺罪、業務上横領罪、強制わいせつ罪など)の公訴時効は7年です。
●公訴時効5年
人を死亡させず、長期10年未満の懲役・禁錮に当たる罪(監禁罪、単純横領罪など)に関して、公訴時効は5年です。
●公訴時効3年
人を死亡させず、長期5年未満の懲役・禁錮または罰金に当たる罪(住居侵入罪、公然わいせつ罪、脅迫罪、名誉棄損罪、威力業務妨害罪など)については、公訴時効は3年です。
●公訴時効1年
人を死亡させず、拘留または科料に当たる罪(侮辱罪、軽犯罪法違反など)についての公訴時効は1年です。
公訴時効は、「犯罪行為が終わった時」から進行します。
共犯の場合には、「最終の行為が終わった時」から、すべての共犯に対して時効の期間を起算します。
「犯罪行為が終わった時」というのは、結果犯の場合は結果が発生した時を意味します。
挙動犯や未遂の場合は、実行行為が終了した時が、時効期間の起算点となります。
さて、上の公訴時効は、2010年の刑事訴訟法改正に伴い改正されたものです。
それ以前は、殺人や強盗殺人といった重大事件についても公訴時効が定められていました。
強盗殺人罪の公訴時効は、刑事訴訟法が2010年に改正される前は、25年でした。
ですので、犯行当時1993年の法律では、2018年の犯行終了時に公訴時効が成立することになっていました。
しかし、この点、2010年の改正刑事訴訟法は、経過措置について定めており、改正後の刑事訴訟法第250条(公訴時効期間)は、改正刑事訴訟法の施行の際に「既にその公訴の時効が完成している罪については、適用しない」とし、人を死亡させた罪であって禁固以上の刑に当たるもので2010年3月27日までに公訴時効が完成していない罪については、すべて2010年の改正刑事訴訟法が適用されることが規定されています。
2010年3月27日までに公訴時効が完成していないAさんのケースでは、改正後の刑事訴訟法が適用され、公訴時効はなく、2018年を過ぎても強盗殺人罪で起訴される可能性は残るのです。
この経過措置が、憲法の保障する遡及処罰の禁止と適正手続に反するとする主張が最高裁判所に提起されましたが、最高裁判所は、2010年の改正刑事訴訟法の経過措置は、公訴時効制度の趣旨を実現させるために、人を死亡させた罪であって、死刑に当たるものについて公訴時効を廃止し、懲役または禁錮の刑に当たるものについての公訴時効期間を延長したにすぎず、行為時点における違法性の評価や責任の重さを遡って変更するものではなく、被疑者・被告人となり得る者につき既に生じた法律上の地位を著しく不安定にするようなものでもない、として当該経過措置は憲法違反ではないとしています。
というわけで、殺人罪や強盗殺人罪などの重大事件については、公訴時効がなく、証拠が固まり次第、逮捕され起訴される可能性は残るというわけです。
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