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公判欠席で保釈の取消
公判欠席で保釈の取消
保釈の取消について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県加古郡稲美町内のスーパーで商品を万引きしたとして窃盗容疑で逮捕されたAさん。
その後、神戸地方検察庁姫路支部に窃盗罪で起訴され、7月1日の第一回公判が神戸地方裁判所姫路支部で開かれました。
しかし、判決期日にAさんは姿を現さず、延期された期日も欠席し、再度延期された期日にやっと姿を現したAさんですが、欠席した理由は「判決を受ける覚悟がなかった。」と説明しました。
検察官が準備をしていなかったため、裁判官は3回目の延期を決めましたが、Aさんは保釈が取消となり、判決期日には手錠と腰縄姿で入廷しました。
(朝日新聞DIGITAL 2019年7月1日21時48分掲載記事を基にしたフィクションです)
保釈制度について
「保釈」は、一定額の保釈保証金を納付することで、被告人に対する勾留の執行を停止し、その身柄拘束を解く裁判とその執行です。
被疑者が逮捕され、その後勾留された場合、検察官から勾留請求をされた日から原則10日間、延長が認められれば最大で20日間の身体拘束を強いられることになります。
検察官が起訴する前の段階で、身柄解放となるには、「勾留理由開示請求」、「勾留決定に対する準抗告」、「勾留取消請求」、「勾留執行停止の申立」といった方法があります。
被疑者が置かれた状況や手続の進展状況によって採るべき方法は異なりますが、「勾留決定に対する準抗告」が最も利用される方法でしょう。
これらの申立が認められない場合には、起訴まで勾留により身体拘束を受けます。
保釈請求ができるのは、検察官が起訴してからです。
保釈には次の3つがあります。
1.権利保釈(必要的保釈)
裁判所は、保釈の請求があったときは、原則として保釈を許さなければなりません、
例外として、権利保釈の除外事由がある場合には、裁判所は請求を却下することができます。
①被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁固に当たる罪を犯したものであるとき。
②被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁固に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
③被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
④被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
⑤被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる物若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
⑥被告人の氏名又は住居が分からないとき。
2.裁量保釈(任意的保釈)
裁判所は、権利保釈の除外事由がある場合でも、適当と認めるときは、職権で保釈を許可することができます。
3.義務的保釈
裁判所は、勾留による拘禁が不当に長くなったときは、請求により又は職権で、保釈を許可しなければなりません。
保釈の取消
裁判所に保釈が許可され、保釈保証金を収納すれば、身体拘束を受けていた被告人は、釈放されることとなります。
保釈は、被告人の出廷を確保するための制度ですので、当然その約束が守れない場合には保釈は取り消されますし、納付した保釈保証金も没収されることになります。
裁判所は、次に該当する場合には、検察官の請求により、又は職権で、保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができます。
①被告人が、召喚を受け正当な理由なく出頭しないとき。
②被告人が逃亡又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
③被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑う相当な理由があるとき。
④被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。
⑤被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。
上のいずれかに該当し、保釈が取り消されてしまった場合には、納付した保釈保証金の全部又は一部が没収される可能性があります。
逮捕後に勾留が付き、起訴前段階では身柄解放ができなかったとしても、起訴後には保釈となる可能性も十分あります。
ご家族が刑事事件を起こし、保釈で身柄解放をとお考えであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
ストーカー行為で逮捕
ストーカー行為で逮捕
ストーカー行為での逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
会社員のAさんは、会社の取引先に勤務していたVさんと1年間交際していました。
しかし、1年経ったある日、Vさんから別れ話を切り出し、2人の交際関係は終了しました。
別れたことでAさんのVさんに対する態度が豹変し、交際時に渡したプレゼント代や食事代などを清算してほしいと、AさんはVさんに一日に何度もメールや電話をしたり、時にはVさん宅を訪れることもありました。
怖くなったVさんは、兵庫県加東警察署に相談し、Aさんは警察からVさんへの接触をしないよう警告を受けていました。
それでも、AさんはVさんへの連絡を続けていたため、ストーカー行為をしたとしてAさんは逮捕されることとなりました。
(フィクションです)
男女関係のもつれからのストーカー行為
交際相手や元交際相手に対する執拗なつきまといや連絡は、法律で規制される「ストーカー行為」に該当する可能性があります。
一昔前までは、警察も男女関係のもつれについては積極的に介入することはしませんでしたが、ストーカー行為から殺人事件に発展したケースもあり、近年では警察も積極的にストーカー事件やDV事件といった男女関係のもつれから端を発する事件に介入するようになりました。
ストーカー行為については、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(以下、「ストーカー規制法」という。)で規制されています。
ストーカー規制法では、以下のように罰則を設けています。
第十三条 ストーカー行為をした者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第十四条 禁止命令等(第五条第一項第一号に係るものに限る。以下同じ。)に違反して
ストーカー行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2 前項に規定するもののほか、禁止命令等に違反してつきまとい等をすることにより、
ストーカー行為をした者も、同項と同様とする。
第十五条 前条に規定するもののほか、禁止命令等に違反した者は、五十万円以下の罰金
に処する。
つまり、罰則の対象は、
(1)ストーカー行為をした者。
(2)禁止命令等に違反してストーカー行為をした者。
(3)禁止命令等に違反してつきまとい等をし、ストーカー行為をした者。
(4)禁止命令等に違反した者。
です。
「ストーカー行為」というのは、「同一の者に対し、つきまとい等(一号から第四号までに掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復してすること」をいいます。(ストーカー規制法第2条2項)
「つきまとい等」というのは、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること」をいいます。(同法第2条1項)
①つきまとい、見張り、おしかけ、うろつきなど
②監視していることを知らせる行為
③面会や交際などを要求すること
④乱暴な言動等
⑤無言電話、繰り返しの電話・FA・メール送信等
⑥汚物などの送付
⑦名誉を傷つけること
⑧わいせつな言葉を投げかけたり、わいせつな画像を送りつけたり、インターネット掲示板に掲載するなど
ストーカー被害を受けている被害者から相談があった場合、被害者からの申出があった上で、つきまとい等を行い更に反復してつきまとい等を行うおそれがあると判断すると、警察は加害者に対してつきまとい等をやめるよう「警告」をすることができます。
それでも加害者が 警告を無視し、つきまとい等をし、更に反復して行うおそれがある場合には、公安委員会は、つきまとい等をこれ以上しないよう「禁止命令」を出すことができます。
この禁止命令にも違反し、ストーカー行為をした場合には、上の(2)~(4)に当たることになります。
また、ストーカー行為をした者については、被害者などの告訴により、警告や禁止命令等を経ず、刑罰の対象となります。
ですので、事前に警察からの警告を受けずに、いきなりストーカー規制法違反で逮捕されることも十分にあり得ます。
ストーカー事件では、加害者は被害者の連絡先や住居を知っていることが多いので、被害者との接触を回避するために身体を拘束される可能性は高いと言えるでしょう。
ご家族がストーカー事件で加害者として逮捕されたら、刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご連絡ください。
ストーカー事件も含めた刑事事件を専門とする弁護士が、連絡をいただいてから24時間以内に逮捕された方と接見を行う「初回接見サービス」をご案内させていただきます。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
刑事処分と行政処分
刑事処分と行政処分
刑事処分と行政処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県美方郡新温泉町に住むAさんは、コンビニでビールとおつまみを買い、駐車場に停めてある自家用車に乗り込みました。
家に帰って一杯やるつもりでビールを購入したのですが、気温も高く喉も乾いていたので、我慢できずに購入したビールを飲んでしまいました。
家まで数百メートルだから大丈夫だろうと思い、そのまま運転を始めたAさんでしたが、一旦停止を怠ったとして、兵庫県美方警察署の警察官に車を停止するよう求められました。
Aさんは、飲酒運転がバレると思い、要求を無視して、警察を振り切り自宅まで辿り着きました。
しかし、すぐに警察はAさん宅にやってきて、道路交通法違反で調べに応じるよう求めました。
Aさんからアルコールの匂いがすることに気づいた警察官は、Aさんの飲酒運転を疑っていますが、Aさんは「家に帰ってから飲んだ」と容疑を否認しています。
(フィクションです)
交通事件と刑事処分
無免許運転、飲酒運転、人身事故が捜査機関に発覚した場合、刑罰法令に反する行為を行ったとして、刑事責任が問われることになります。
交通事件で問題となる刑罰法令は、刑法、道路交通法、そして自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律です。
以下、交通事件においてよく適用される罪について概観します。
①無免許運転:道路交通法違反
道路交通法第六十四条
何人も、第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第九十条第五項、第百三条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項若しくは第三項又は同条第五項において準用する第百三条第四項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。
無免許運転禁止違反の法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
②飲酒運転:道路交通法違反
道路交通法第六十五条
何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
飲酒運転は、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」に分けられます。
「酒気帯び運転」とは、呼気1リットルあたり0.15mg以上、もしくは血液1ミリリットルあたり0.3㎎以上のアルコールを含んで車を運転することです。
一方、「酒酔い運転」は、呼気アルコール濃度は関係なく、アルコールの影響で正常に車を運転できないおそれのある状態をいいます。
「酒気帯び運転」の法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金であるのに対して、「酒酔い運転」は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金となっています。
③人身事故:過失運転致死傷罪、危険運転致死傷罪
運転者の過失=注意義務違反によって、人に怪我を負わせてしまったり、死亡させてしまった場合には、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」における「過失運転致死傷罪」が適用されます。
過失運転致傷罪の法定刑は、7年以下の懲役または禁錮もしくは100万円以下の罰金です。
アルコールや薬物の影響により正常な運転ができない状態になっているにもかかわらず、車を運転して人を負傷させた場合や人を死なせてしまった場合には、危険運転致死傷罪に問われる可能性があります。
この場合、人に怪我を負わせた場合には15年以下の懲役、死亡させた場合には1年以上の有期懲役という刑事罰が科される可能性があります。
また、アルコールや薬物の影響により安全な運転に支障がある状態で運転し、人に怪我を負わせた場合には12年以下の懲役、死亡させた場合には15年以下の懲役となります。
以上のように、交通事件を起こすと、罰金や懲役といった刑事処分を受ける可能性があります。
行政処分
交通事件を起こしてしまったら、刑事処分とは別に、行政処分も科されることになります。
公安委員会による免許の停止や取消などの処分です。
無免許運転の違反点数は、25点です。
違反点数は、運転者の過去3年間の交通違反や交通事故に対して付けられた点数のことで、その合計点数が一定の基準に達した場合に、免許の効力の停止や取消しなどの処分がなされます。
過去の行政処分の点数によって免許の再取得できない欠格期間が変わってきますが、過去の行政処分がなかった場合でも、一発で免許取消となり、欠格期間2年です。
また、酒気帯び運転(0.15mg以上0.25mg未満)の違反点数は13点で、過去3年間に交通違反で免許停止や取消を受けていなければ、90日間の免許の停止となります。
酒気帯び運転(0.25mg以上)は25点、酒酔い運転は35点と、どちらも一発で免許取消となります。
行政処分は、行政庁が独自の立場で行いますので、最終的な刑事処分が「不起訴」であっても行政処分の軽減につながるわけではありません。
交通事件を起こし、行政処分のみならず刑事処分の対象となりお困りの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回の法律相談は無料です。
刑事裁判と被害者参加
刑事裁判と被害者参加
刑事裁判と被害者参加について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
酒に酔った状態の女性Vさんが抵抗できないことを利用し、わいせつな行為を行い怪我を負わせたとして、Aさんは兵庫県伊丹警察署に準強制性交等致傷の容疑で逮捕されました。
逮捕・勾留後に同罪で起訴されましたが、弁護人を通じて被害者であるVさんが被害者参加制度を利用する予定であることを知りました。
裁判員裁判かつ被害者参加が予定されており、通常の刑事裁判とは異なる点も多く、Aさんは弁護人と入念な打ち合わせを重ねて裁判に臨みたいと思っています。
(フィクションです)
刑事裁判について
あなたがある罪を犯し、警察などの捜査機関に逮捕されたとしましょう。
検察・警察の捜査終了後に、担当の検察官があなたを起訴するか否かを判断します。
検察官による起訴は、正式起訴と略式起訴の2種類があります。
「略式起訴」というのは、刑事裁判の正式な手続きを踏まずに、検察官からの提出書類に基づいて処罰を決定するものです。
一方、「正式起訴」とは、検察官が裁判所に対して起訴状を提出し、審理を求めるものです。
刑事裁判の当事者は、検察官と被告人・弁護人です。
裁判官は、当事者から提出された証拠に基づいて、検察官が起訴状で示した起訴事実が合理的な疑いを超えて立証されたか否かを判断します。
通常の刑事裁判では、検察官、被告人および弁護人、裁判官が主要な役割を果たすことになります。
しかし、ある一定の重大な刑事事件は裁判員制度の対象となります。
裁判員裁判では、被告人が無罪か有罪か、有罪である場合にはどのような量刑を科すべきかについて、裁判官だけではなく、国民から選ばれた裁判員と共に決定されます。
通常の刑事裁判では、裁判官が一人の場合、合議体で三人の場合がありますが、裁判員裁判となれば、法廷の裁判官席には9名ものジャッジが当事者の主張に耳を傾けることになるのです。
被害者参加制度について
さて、それでは犯罪被害者は、刑事裁判において如何なる役割を担うのでしょうか。
従来、刑事裁判において、犯罪被害者は、起訴事実を証明する証拠である「証人」としての役割のみを担ってきました。
しかし、90年代より犯罪被害者の権利実現に向けた動きが大きくなり、2018年にはある一定の犯罪被害者等が刑事裁判に参加することができる「被害者参加制度」が導入されました。
参加の申出をすることができるのは、以下の事件の犯罪被害者本人や法定代理人、犯罪被害者本人が亡くなった場合や心身に重大な故障がある場合の犯罪被害者の配偶者、直系親族、兄弟姉妹です。
①殺人、傷害などの故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
②強制わいせつ、強制性交等などの罪
③逮捕および監禁の罪
④略取、誘拐、人身売買の罪
⑤上の②~④の犯罪行為を含む他の犯罪
⑥過失運転致傷などの罪
⑦上の①~⑤の未遂罪
被害者参加制度の利用は、検察官に対して申し出ます。
申出を受けた検察官は、裁判所に通知し、裁判所は被告人または弁護人の意見を聴いた上で、犯罪の性質、被告人との関係といった事情を考慮し、相当と認める場合には犯罪被害者等の参加を許可します。
参加が認められた被害者は、「被害者参加人」と呼ばれます。
被害者参加人またはその委託を受けた弁護士は、
・公判期日への出席
・検察官の権限行使に関して意見を述べ、説明を受ける
・情状に関する事項についての証人尋問
・被告人質問
・事実関係や法律の適用についての意見陳述
を行うことができます。
被害者またはその代理人が刑事裁判に参加することで、被害者に配慮した審理の進行が求められます。
しかし、被告人の不利益になるような参加形態についてはしっかりと意見しなければなりません。
また、裁判員裁判では、裁判員が被害者参加人等の意見や主張に重きを置き、量刑に影響を与えることも懸念されます。
被害者参加人等が参加する裁判員裁判では、過剰に被害者よりの判断とならぬよう、慎重に審理を進めることが重要です。
そのような弁護は、刑事裁判に豊富な経験を持つ弁護士に任せましょう。
刑事事件でお困りの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
詐欺罪と業務上横領罪
詐欺罪と業務上横領罪
詐欺罪と業務上横領罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aさんは、兵庫県宍粟市にある会社の経理課長です。
普段から会社の預金通帳や取引印は、Aさんが保管していました。
Aさんは、消費者金融に返済するため、架空の取引伝票を起票し、会社の経理部長に対し、この架空の取引伝票を見せて現金支出の決裁を受けていました。
部長の決裁を受け、Aさんは預金通帳や取引印を用いて、決裁を受けた現金を引き出し、現金を自分の物にしていました。
Aさんが自己都合により退職した後に、Aさんの行為が発覚し、会社から全額返済する旨の連絡を受けました。
返済できなければ兵庫県宍粟警察署に被害届を提出すると言っており、Aさんは自分の行為が何罪に当たるのか、できれば事件化することなく穏便に解決したいと思い、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
詐欺罪か?業務上横領罪か?
上記ケースでは、Aさんは会社のお金を扱う経理担当者です。
しかし、社内ルールでは、Aさんの上司である経理部長の決裁がなければ請求金額を支払うことができません。
この場合、Aさんは経理部長を騙して会社の現金を引き出し、自分の物にしており、詐欺的手段を用いて横領しているので、この行為は詐欺罪となるのか、それとも横領罪になるのか、という問題が生じます。
それでは、まず詐欺罪と業務上横領罪がどのような罪であるのかみていきましょう。
詐欺罪
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
詐欺罪は、①人を欺いて財物を交付させた場合(1項詐欺)、および②人を欺いて、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた場合(2項詐欺)に成立する罪です。
詐欺罪が成立するためには、「人を欺く行為」をし、それにより「相手方が錯誤に陥り」、「物や財産上の利益が交付され」、「物や財産上の利益が移転する」といった一連の流れがあることが必要となります。
業務上横領罪
第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。
業務上横領罪は、業務上の委託に基づき自己の占有する他人の物を横領した場合に成立する罪です。
業務上横領罪における「業務」とは、委託を受けて物を管理することを内容とする事務のことをいいます。
典型例は、経理など会社のお金の出し入れを担当している人が、会社のお金をくすねた場合には、業務上横領罪となります。
一方、そのような地位にない社員が会社の金庫に保管していたお金を勝手にとった場合には、業務上横領罪ではなく窃盗罪となります。
さて、上記ケースでは、詐欺罪と業務上横領罪のどちらが成立し得るのでしょうか。
詐欺罪と横領罪は、客体の「占有が行為者にあるか否か」が分かれ目のポイントです。
詐欺罪が、「他人の占有する他人の財物」を欺く行為により取得する罪であるのに対して、横領罪は、「自己の占有する他人の財物」を自分の物とする罪です。
よって、両者の違いは、「目的となる財物の占有が行為者にあるか他人にあるか」という点です。
ですので、財物を自己の物とするに当たり、詐欺的手法が用いられていたのであっても、当該財物の占有が行為者にあれば横領罪となり、その財物の占有が他人にあり、自己の者とするに当たり詐欺的手法が用いられたのであれば、欺く行為により財物の占有を取得したものとして詐欺罪となる、というわけです。
Aさんは、会社の経理課長で、普段から会社の預金通帳や取引印を保管しています。
預金から引き出した現金はAさん自ら保管=占有していました。
Aさんは、その現金を自分の物とするために、会社にルールに従い架空の取引伝票を上司に見せて決裁を得たにすぎず、Aさんに対しては業務上横領罪が成立すると考えられます。
業務上横領事件では、会社も横領した額を回収したいと考えているので、ちきんと被害弁償をすれば、刑事事件として警察に相談しないケースも少なくありません。
事件化する前に、被害者に被害弁償を行い示談をすることが、事件を早期に解決する有効な手段です。
業務上横領事件で会社に発覚し対応にお困りの方は、一度刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談されてみてはいかがでしょう。
無料法律相談のご予約は、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
パパ活と児童買春
パパ活と児童買春
パパ活と児童買春について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
会社員のAさんは、SNSで「パパ活」の書き込みとしていた少女Vさん(15歳)と連絡をとるようになりました。
事前のやりとりでは、食事だけの約束でしたが、実際に会って話をしているとVさんはこれまで何度も売春行為をしていることを聞き、Aさんも性欲を抑えることが出来ず、2万円を渡すことを約束し、兵庫県宝塚市にあるホテルで性交を行いました。
その後も、Vさんと連絡をとっていたAさんでしたが、突然Vさんと連絡がとれなくなってしまいました。
Aさんは、Vさんが警察沙汰に巻き込まれたのではないか、自分との関係が発覚してしまうのではないかと急に不安になり、慌てて刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
パパ活って?場合によっては犯罪に?
一時期メディアでも大きく報じられていた「パパ活」。
「就活」、「婚活」、「朝活」など、「○○活」という言葉をよく耳にしますが、何かに対して活動するといった意味でよく使われていますよね。
「パパ活」という言葉は、一般的に、若い女性が男性と食事やお茶を一緒にする対価として金銭を受け取る活動のことを指します。
簡単に言えば、金銭的に支援してくれる男性=パパを探す活動ですね。
「パパ活」という言葉は、数年前から若い女性に広がっており、当初は女子大生やOLが小遣い稼ぎとして行っていたようですが、今では女子中学生にまで広がっています。
SNSで「パパ活」で検索すると、数多くの投稿がヒットします。
しかし、「パパ活」という言葉で可愛らしく装っていても、中身はいわゆる「援助交際」と変わらないものもあるのです。
より高額の対価を得ようとする者と、若い人と関係を持ちたいと思う者との需要と供給が合致し、買春行為に及ぶケースも少なくないといいます。
しかし、買春の相手方が18歳未満であった場合、買春をした者に対して「児童買春罪」が成立する可能性がでてくるのです。
児童買春罪
「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」(以下、「児童買春・児童ポルノ禁止法」という。)は、児童買春について規定しています。
第四条 児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
ここでいう「児童買春」というのは、①児童、②児童に対する性交等の周旋をした者、③児童の保護者または児童をその支配下に置いている者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいいます。
相手が18歳未満だと知らなかった場合には、児童買春罪は成立しません。
しかし、単に「知らなかった」と主張するだけでは不十分です。
相手方児童の外見や言動、知り合った経緯などから判断されることになりますが、例えば、児童が偽造した免許証などを提示しており、当該児童が18歳以上であると判断した合理的な理由があった場合には、児童買春罪の故意がないとして成立しないことになるでしょう。
ですので、相手が18歳未満であることを知らなかったと捜査機関にしっかりと主張したい場合には、早期に弁護士に相談し取調べ対応についてのアドバイスをもらうことが重要です。
また、弁護士に弁護を依頼することで、当時の服装や外見、相手方児童とのメールでのやりとりなどから、故意がないことを客観的に主張した意見書を捜査機関に提出してもらうのもよいでしょう。
他方、相手方児童を18歳未満だと知った上で行為に及んだことを認める場合には、被害者との示談交渉を行うことが処分を少しでも軽くするために有効な手段となります。
被害者である児童は、18歳未満ですので、直接示談書を交わす相手とはなりません。
児童の親などが実際の交渉相手となります。
自分の子供も合意の上で行った行為とはいえ、買い手である買春者に対する想いはそう肯定的なものではありません。
むしろ、買春者に対して憎悪や激しい処罰感情を持っている場合も少なくありません。
事件を早く解決したいがために、加害者が直接示談交渉をしようなどと早まらないほうがよいでしょう。
示談交渉は、経験豊富な弁護士に任せましょう。
児童買春事件を起こし、対応にお困りであれば、児童買春事件にも対応する刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料相談・初回接見サービスのご予約は、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
スナックで強制わいせつ事件
スナックで強制わいせつ事件
強制わいせつ罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県加西市にあるスナックを訪れていたAさんは、会計前に近くのATMに現金を引き出すため、女性従業員Vさんと一緒に店を出ました。
その道中、Aさんは、Vさんの胸をもみ、お尻を触ってきたので、Vさんは驚き、逃げるように近くの交番に駆け込みました。
Aさんは、強制わいせつの容疑で逮捕されましたが、酔いが冷めたAさんは容疑を認め、自身の行為を猛省しています。
(フィクションです)
お酒を飲むと、普段は温厚な人が、感情的になったり欲求をコントロールすることができなくなることがあります。
また、スナックやキャバクラなどの女性従業員に対してなら、それぐらい構わないと思い、男性客が彼女らの胸やお尻を触るなどといった行為は、そう珍しくはないようです。
異性相手の接客業だからといって、無理やり相手の胸やお尻を触る行為が許されるわけではありません!
行為態様によっては、強制わいせつ罪が成立し得るのです。
強制わいせつ罪
強制わいせつ罪は、刑法第176条に規定されています。
第百七十六条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
強制わいせつ罪は、13歳以上の男女に対し、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。
また、13歳未満の男女に対しては、手段や同意の有無を問わず、わいせつな行為をした場合に成立します。
1.わいせつな行為
本罪でいる「わいせつな行為」というのは、性的な意味を有し、本人の性的羞恥心の対象となるような行為のことをいいます。
相手の陰部や胸を触る、キスをするなどは「わいせつ行為」に当たります。
強制わいせつ罪における「わいせつ行為」は、公然わいせつ罪のそれより広く理解されています。
同じ「わいせつ行為」でも、強制わいせつ罪の保護法益が個人の性的自由であるのに対して、公然わいせつ罪のそれが性的秩序であり、それぞれの「わいせつ行為」の内容が異なるためです。
2.暴行・脅迫
わいせつな行為を強要する手段としての暴行・脅迫は、相手方の反抗を抑圧する程度のものである必要はありませんが、反抗を著しく困難にする程度のものであることが必要とされます。
また、暴行自体がわいせつな行為である場合、わいせつな行為そのものによって被害者が怖くて抵抗できなかった場合でも、強制わいせつ罪が成立する可能性があります。
3.主観的要件
13歳未満の者を13歳以上であると勘違いして、暴行・脅迫によらずにわいせつな行為をした場合には、故意がないため強制わいせつ罪は成立しません。
かつて、判例は、強制わいせつ罪の成立には「犯人の性欲を刺激興奮させまたは満足させる性的意図」が必要で、被害者への報復や虐待目的で被害者を裸にして写真を撮影したとしても強制わいせつ罪は成立しないとする立場をとっていました。
しかし、平成29年11月29日の最高裁判所の判決で「性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当ではない」と判断しました。
これにより、性的意図がなくても強制わいせつ罪が成立する可能性があることが示されました。
以上より、上記ケースにおいてのAさんの行為を検討すると、Vさんの意図に反して、Vさんの胸をもんだりお尻を触ったりする行為は、暴行でありわいせつな行為でもあり、強制わいせつ罪が成立する余地はあるでしょう。
このような被害者がいる事件では、事件解決の重要な手段として被害者との「示談」が挙げられます。
「示談」とは、被った被害に対して金銭的に賠償する代わりに、被害届や告訴の取下げなど、当該事件は当事者間では解決したと合意することです。
強制わいせつ罪は親告罪ではなくなりましたが、被害者からの許しが得られている場合には、検察官が不起訴として事件を終了する可能性は大いにあります。
一方、親告罪ではないので、被害者と示談したからといって、必ずしも検察官がすべての事件を不起訴にするというわけではないことに注意が必要です。
強制わいせつ事件を起こし、対応にお困りであれば、性犯罪も数多く取り扱う刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。
裁判員裁判と取調べの可視化
裁判員裁判と取調べの可視化
裁判員裁判と取調べの可視化について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県に住むAさんは、自宅のローン返済に困っていました。
「もっと自由に使えるお金があればいいのに」と思い、自宅のプリンターで1万円札を数枚コピーし、そのうちの2枚を使用してしまいました。
Aさんは、「ばれなければ大丈夫」と思っていましたが、結局、兵庫県たつの警察署に通貨偽造・同行使の容疑で逮捕されました。
警察官からは、Aさんが犯した罪が裁判員裁判対象事件だと聞かされ、Aさんは大変心配しています。
取調べについても、どのように対応すればよいか分からず、刑事事件に強い弁護士に相談することを希望しています。
(フィクションです)
取調べの可視化への動き
裁判員裁判対象の事件や検察が独自に捜査する事件について、身体拘束を受けている被疑者の取調べについて、原則、全過程を録音録画することを義務付けた改正刑事訴訟法が、今年の6月1日に施行されました。
捜査段階における被疑者の取調べは、弁護人の立会いなく、密室で行われており、取調官が被疑者を威圧したり、利益誘導したりといった違法で不当な取調べが行われることがあります。
そのような取調べの中では、被疑者が自己の意に反するような供述を強いられてしまったり、実際に供述した内容と違う供述調書が作成されたり、後の裁判に大きく影響を及ぼし、裁判の長期化や冤罪を生み出す原因となっています。
そこで、逮捕から起訴までの全過程における取調べを可視化し、被疑者などの供述の任意性を証明しようとする動きが起こり、2016年5月に、裁判員裁判対象事件および検察独自捜査事件について、身体拘束を受けている被疑者の取調べの全過程を録音・録画することを義務付ける改正刑事訴訟法が成立するに至りました。
これを受け、全国の警察が2018年度に行った裁判員裁判対象事件の取調べのうち、全過程を録音・録画した割合が、87.6%であったことが警察庁のまとめで明らかになっています。
この取調べの可視化により、黙秘が容易になること、そして、自白の任意性の検証が可能になるというメリットがある一方、その全過程が記録されるため、被疑者の不合理な供述や不合理な弁解がそのまま記録されること、供述態度がそのまま裁判員に伝わるなど、注意すべき点もあります。
また、被疑者自身も、記録されているということに強いプレッシャーを感じ、精神的な支援も必要となるでしょう。
これらの点を踏まえ、取調べが記録されている場合にも、取調べ対応について刑事事件に精通する弁護士から適切なアドバイスを受けることは非常に重要と言えるでしょう。
裁判員裁判対象事件
市民が刑事裁判に「裁判員」として参加し、被告人の有罪・無罪について、有罪である場合にはその量刑について、裁判官と一緒に決める制度を「裁判員制度」といいます。
平成21年5月21日から当該制度が始まり、はや10年が経過しました。
裁判員裁判の対象となるのは、
①死刑又は無期の懲役もしくは禁錮にあたる罪に関する事件
②①を除いた法定合議事件(裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件)であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に関する事件
です。
具体的に対象事件をあげると、
強盗致傷、殺人、現住建造物放火、強盗致死傷、強盗・強制性交等、傷害致死、強制わいせつ致死傷、通貨偽造、偽造通貨行使、危険運転致死、保護責任者遺棄致死
などです。
上記ケースのように、自宅のプリンターで1万円札をコピーして使用したといった犯罪も、裁判員裁判対象事件となります。
ですので、起訴されれば、裁判員裁判となりますので、それに対応した弁護活動を行う必要があります。
裁判員裁判の場合には、公判期日の前に、公判前整理手続がとられ、裁判官・検察官・弁護士の3者で、事件の争点や、重要な事実が整理されます。
また、実際の審理では、裁判員の方にも分かりやすい方法で被告人側の主張を展開していかなければなりません。
このように、裁判員裁判は通常の刑事裁判と異なる点がありますので、裁判員裁判には刑事事件に強い弁護士に弁護を依頼されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に取り扱っており、裁判員裁判を経験した弁護士も所属しております。
ご家族が裁判員裁判対象の事件を起こしてしまいお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
痴漢事件で示談
痴漢事件で示談
痴漢事件における示談について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
ある夜、兵庫県神戸市兵庫区を走行中の電車内で、会社員のAは隣に座っていた若い女性Vさんのお尻を触ったとして、停車駅でVさんに手を掴まれて降車させられました。
Aさんは触ったことを認めており、そのまま駅員室に連れて行かれ、兵庫県兵庫警察署から駆け付けた警察官に現行犯逮捕されました。
翌日の夕方、Aさんは釈放となりましたが、Vさんに対しての謝罪と被害弁償をしたいと警察官に申し出ましたが、弁護士を通して示談するように勧められました。
そこで、Aさんは刑事事件に強い弁護士に相談しようと思い、法律事務所に電話を入れました。
(フィクションです)
示談とは
「示談」は、当事者間で話し合って問題を解決することをいいます。
より細かく言うと、加害者が被害者に対して相応の弁償金を支払う一方、被害者は被害届の提出を行わないなど、当事者間では今回の事件は解決したと約束することをいいます。
一般的には、弁護士が加害者を代理して、被害者と示談交渉を行います。
被害者側にも弁護士がたつこともあり、そうなれば代理人である弁護士間で実際に交渉することになります。
示談にも、その内容や効果により幾つかに種類分けすることができます。
(1)被害弁償
加害者が被害者に被害を金銭的に弁償すること。
成立した場合、将来の民事裁判の可能性を低くすることができます。
(2)単なる示談の成立
当事者が事件を解決すると約束すること。
成立した場合、将来の民事裁判を予防することができます。
(3)宥恕付き示談の成立
示談書の中に、被害者の許しの意思が表示されること。
成立した場合、事件が当事者間で完全に解決し、被害者が処罰を望んでいないことを表現することができます。
示談の効果
被害者がいる事件で、被害者と示談を成立することにより、どのような効果が期待されるのでしょうか。
上の(3)の宥恕付き示談書が成立した場合、加害者の処罰を望まないとする被害者の意思が表記されていますので、警察や検察もよほど事件が悪質で処罰が必要と判断されるものでない限り、加害者の身柄を確保し、捜査・起訴する可能性は低いでしょう。
親告罪の場合には、示談が成立し告訴が取下げされると、起訴することができませんので、取り下げられた時点で事件終了となります。
そのため、被害者がいる事件においては、早期に事件を解決する手段として、示談がよく用いられるのです。
示談をするときの注意
示談成立には大きなメリットがありますが、示談交渉や締結時の注意点もいくつかあります。
1.示談交渉は当事者間で行わない
加害者が、警察に被害者と示談交渉したいから連絡先を教えてほしいと頼んでも、連絡先を教えてくれることはあまりありません。
被害者は、加害者と接触することを望まず、警察から加害者の意向を伝えられても、自分の連絡先を教えることに不安を感じることが多いからです。
その点、弁護人限りであれば、連絡先を教えてもよいと回答されることが多くあります。
ですので、被害者との示談交渉には代理人である弁護士に依頼されるのが、より円滑に交渉を進める上で重要でしょう。
また、被害者の連絡先を知っている場合であっても、当事者間が直接交渉することはあまりお勧めしません。
話し合いが感情的になり、交渉がうまくいかないことが多かったり、その結果不当に高い示談金が求められることになり得るからです。
2.示談書を作成すること
示談をする場合、ちきんと書面にすることが大事です。
口頭で示談が成立したといっても、それを警察・検察・裁判所に証明することが難しいからです。
示談が成立したら、すぐに書面にするよう弁護士に頼みましょう。
痴漢事件において、示談は事件の早期解決に有効な手段と言えます。
痴漢事件を起こしてお悩みの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
痴漢事件をはじめ数多くの刑事事件を取り扱い、示談交渉にも豊富な経験を持つ弁護士が、直接ご相談をお受けします。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881まで。
逃走犯と逃走の罪
逃走犯と逃走の罪
逃走犯と逃走の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
窃盗罪などで実刑が確定し、横浜地方検察庁の検察事務官や横浜県警察の警察官らが受刑者宅を訪れた際、受刑者が自宅から車で逃走するといった事件が23日に起こったことは、ニュースでも大々的に報じされましたので、みなさまもご存知のことでしょう。
また、昨年の8月には、強制性交等未遂容疑などで逮捕・勾留されていた被疑者が、大阪府警察富田林警察署の留置場から逃亡した事件もありました。
これらの逃走犯すべてが、刑法に規定されている「逃走の罪」に問われるのではないかと思われた方も少なくはないのではないでしょうか。
しかし、前者の逃走犯に対しては「公務執行妨害罪」が、後者の逃走犯に対しては、「加重逃走罪」に問われています。
なぜ、両者に対して「逃走の罪」が適用されていないのでしょうか。
逃走の罪について
刑法に規定されている「逃走の罪」は、以下の犯罪類型に分けられます。
①被拘禁者自身の逃走行為を罰する類型
(a)単純逃走罪(刑法第97条)
(b)加重逃走罪(同法第98条)
②他者が被拘禁者を逃走させる行為を罰する類型
(c)被拘禁者奪取罪(刑法第99条)
(d)逃走援助罪(同法第100条)
(e)看守者等逃走援助罪(同法第101条)
今回は、被拘禁者自身が逃走する行為についての罪である(a)と(b)についてみていきましょう。
単純逃走罪
第九十七条 裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、一年以下の懲役に処する。
本罪の主体は、「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者」です。
「裁判の執行により」とあるので、逮捕状により、ないしは現行犯人として逮捕された者は主体から除外されます。
裁判の執行により拘禁された「既決の者」というのは、確定判決によって、刑事施設に拘禁されている者をいいます。
また、裁判の執行により拘禁された「未決の者」とは、勾留状によって、刑事施設または警察留置場に拘禁されている被告人・被疑者のことを指します。
本罪の対象となる被拘禁者の範囲をまとめると、以下のとおりです。
①確定裁判を受け、それによって拘禁されている者。
②死刑の執行まで拘置されている者、労役場に留置されている者も含まれる。
③被疑者または被告人として勾留状により拘禁されている者。
④鑑定留置に付されている者。
この点、横浜の逃走犯は、確定判決を受けていましたが、保釈により身柄の拘束を受けておらず、拘禁された者には当たりませんので、本罪の主体とはならず、本罪は適用されないのです。
ちなみに、本罪の行為である「逃走」とは、「拘禁から離脱すること」を意味します。
刑事施設等の外へ脱出するなど、一時的であれ完全に看守者の実力的支配を脱した時点で既遂となります。
加重逃走罪
第九十八条 前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
本罪の主体は、単純逃走罪のそれよりも範囲が広くなっており、裁判の執行により拘禁された既決もしくは未決の者、または勾引状の執行を受けた者です。
「勾引状の執行を受けた者」については、勾引状は一定の場所で身体の自由を拘束する令状を広く指すと理解されているので、逮捕状により逮捕された被疑者も含まれます。
また、一定の場所に引致するために発せられる勾引状の執行を受けた被告人、身体検査の対象者、証人なども含まれます。
本罪の行為は、①「拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し」、「暴行若しくは脅迫をし」、または「2人以上通謀して」、②「逃亡」することです。
・手段1:拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊
「拘禁場」というのは、刑事施設や警察留置場などの拘禁の用に供される施設のことで、「拘束のための器具」というのは、拘束衣、手 錠および捕縄といった被拘禁者の身体を拘束する器 具です。これらを物理的に毀損することを「損壊」といいます。
・手段2:暴行若しくは脅迫
逃走の手段として、看守者またはこれに協力する者に対してなされることが必要とされます。
・手段3:2人以上通謀して
2人以上の既決または未決の者、または拘引状の執行を受けた者が意思の連絡を取り合い合意することを要します。
富田林の逃走犯は、勾留中の被疑者でしたので、本罪の主体に該当します。
また、接見室のアクリル板を外して警察留置場から逃走したので、拘禁場を損壊して逃亡したため、加重逃走罪が適用されました。
ご家族が刑事事件の被疑者・被告人として身体拘束を受けてお困りの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881まで。