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往来危険事件で執行猶予判決

2020-02-16

往来危険事件における執行猶予判決獲得に向けての弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
酒に酔った勢いで、自転車を線路上に投げ入れたとして、大学生のAさんは、兵庫県加古川警察署往来危険および業務妨害の容疑で逮捕されました。
警察から、裁判になるだろうと言われているAさんは、どうなるのか不安で仕方ありません。
(フィクションです)

往来危険罪は重い罪

往来危険罪という罪について、あまり聞き覚えがないという方が多いのではないでしょうか。

往来危険罪は、刑法第125条に規定される罪です。

第百二十五条 鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、二年以上の有期懲役に処する。
2 灯台若しくは浮標を損壊し、又はその他の方法により、艦船の往来の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。

(1)客体
●「鉄道若しくはその標識」
「鉄道」とは、レールだけでなく、構造上これと密接不可分の関係にあって、汽車、電車の走行に直接役立っているものすべてをいいます。
例えば、枕木、鉄橋、トンネルなどです。
「標識」とは、信号機その他運行のための目標をいいます。
●「灯台若しくは浮標」
「灯台」は、夜間、艦船の航行の利便を図るために、灯火をもって示した陸上の標識です。
「浮標」というのは、艦船の航行上安全か否かや水の深さを標示する水上の目標、標示物のことです。

(2)行為
●鉄道、標識、灯台、浮標を「損壊」し、またはほかの方法によって、汽車、電車、艦船の往来の危険を生じさせる。
汽車・電車の往来の危険または艦船の往来の危険を生じさせる行為であって、その手段として、鉄道やその標識の損壊、灯台や浮標の損壊、或いは他の方法と定められています。
「損壊」とは、物理的に破壊して、その効用を失わせることをいいます。
「その他の方法」とは、損壊以外の方法で汽車、電車、艦船の往来の危険を生じさせることをいい、その手段や方法は問いません。
線路上に石などの障害物を置くことも「その他の方法」に該当しますので、自転車を線路に投げ込むことも「その他の方法」に当たるでしょう。

「往来の危険」とは、汽車・電車・艦船の衝突・脱線・転覆・沈没・破壊など交通の安全を害するおそれのある状態をいいます。
往来危険罪が成立するためには、交通の妨害を生じさせた程度では足りません。
交通機関の往来に危険な結果を生ずるおそれのある状態を発生させることが必要です。
しかしながら、実害発生のおそれについては、一般的可能性で足り、その必然性や蓋然性は必要ではないと解されます。

往来危険罪の法定刑は、2年以上の有期懲役で、罰金刑は設けられていません。
このような重い刑となっているのは、交通機関の運転に従事する者や利用者の生命・身体に対する危険を生じさせるためです。

執行猶予判決を獲得するために

往来危険罪には、罰金刑が設けられていませんので、略式手続をとることができません。
検察官に起訴された場合、正式な刑事裁判が開かれることになります。
裁判では、審理が終わると、裁判官が被告人に対して有罪もしくは無罪を言い渡します。
有罪となった場合であっても、必ずしも刑が執行されるわけではありません。
刑の執行を一定期間猶予し、猶予期間内に再び罪を犯すことがなければ、刑の言渡しは効力を失う制度を「執行猶予」といいます。
刑に執行猶予が付いていれば、有罪であることには変わりありませんが、直ちに刑務所へ送られることはありません。
一方、執行猶予が付いていない刑を「実刑」といい、例えば、裁判で懲役2年の実刑が言い渡された場合、その判決が確定すれば、直ちに刑務所で服役することになります。

往来危険事件の場合、被告人が初犯であり、3年以下の懲役の言渡しをするとき、「情状により」執行猶予付き判決が言い渡される可能性があります。
「情状」というのは、検察官が起訴するかどうかを決める際や、裁判官が有罪の場合の判決で、どの程度の量刑にするかを判断する際に考慮される事情のことをです。
情状には、犯罪行為自体に関する事情(犯情)と、それ以外の事情(一般情状)とがあります。
具体的に言うと、前者には、犯行態様、犯行動機、犯行の結果、共犯関係など、後者には、その人の年齢・性格、被害弁償の有無、反省の有無、被害感情、更生・再犯の可能性などです。
公訴事実に争いがない場合には、被告人にとって有利な事情を集め、裁判で説得的に主張することが弁護人に求められる重要な弁護活動となります。

上のケースであれば、犯情については、酒に酔って行った行為であり電車の運行に支障をきたしてやろうと思ってやった行為ではない点が考えられるでしょう。
また、一般情状に関しては、被告人が反省し事件以降断酒していること、家族による監督が期待できること、被告人が学生であること、鉄道会社への被害弁償が済んでいる(被害弁償できなかった場合でも、被害弁償金を供託している)といった点が挙げられるでしょう。

ケースによって情状弁護の内容も異なりますので、一度刑事事件に強い弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

薬物事件:保釈で釈放

2020-02-14

薬物事件における保釈について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
麻薬取締法違反の容疑で逮捕されたAさんは、逮捕後に勾留となり兵庫県赤穂警察署に勾留されています。
勾留決定と共に、接見禁止が付されており、Aさんは家族と面会することはできません。
勾留延長の満期日に、Aさんは麻薬取締法違反の罪で神戸地方検察庁姫路支部に起訴されました。
Aさんは、弁護人に保釈請求をしてほしいと話しています。
(フィクションです)

薬物事件で逮捕されたら

麻薬取締法違反を含めた薬物事件で逮捕された場合、その後勾留となる可能性は非常に高いでしょう。
勾留とは、被疑者および被告人の身柄を拘束する裁判ならびにその執行のことをいいます。
起訴前の勾留を「被疑者勾留」、起訴後の勾留を「被告人勾留」と呼びます。
薬物事件の場合、薬物の入手先や譲渡先など、被疑者本人だけでなく複数人が事件に関与しているため、釈放されることにより被疑者・被告人が関係者と接触し、罪証隠滅を図るおそれがあると判断されることが多くなっています。

そのため、捜査が終了する起訴前の段階では、釈放される可能性はそう高くありません。
しかし、起訴後であれば保釈制度を利用することにより釈放される可能性はあります。

保釈制度について

保釈」というのは、一定額の保釈保証金を納付することにより、勾留されている被告人を暫定的に釈放する制度です。

保釈には、次の3種類があります。

1.権利保釈(必要的保釈)

第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。

裁判所は、保釈の請求があったときは、原則として保釈を許可しなければなりません。
例外として、刑事訴訟法第89条の1号~6号の除外事由がある場合には、請求を却下することができます。

2.裁量保釈(任意的保釈)

第九十条 裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

裁判所は、権利保釈の除外事由がある場合であっても、適当と認めるときは、職権で保釈を許可することができます。

3.義務的保釈

第九十一条 勾留による拘禁が不当に長くなつたときは、裁判所は、第八十八条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。

裁判所は、勾留による拘禁が不当に長くなったときは、請求により又は職権で、保釈を許可しなければなりません。

上記ケースにおいて、Aさんは麻薬取締法違反の罪で起訴されています。
まずは、権利保釈が認められるか検討しましょう。

麻薬取締法違反の罪の法定刑は、規制薬物の種類及び違反形態により異なりますが、ここでは所持についてみていきましょう。
ジアセチルモルヒネ等の所持は、10年以下の懲役、ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の所持は7年以下の懲役、向精神薬の所持は3年以下の懲役です。
「短期一年以上の懲役」には該当しないので、除外事由1号には当たりません。
Aさんに前科がないとすれば、2号も該当しません。
しかし、問題は3号です。
Aさんが1件のみで起訴されたとしても、同じ犯罪を複数回(2回以上)繰り返していた場合には「常習」犯とみなされます。
また、法定刑が「長期3年以上の懲役」の罪となっていますので、上限が3年以上である上の所持罪も含まれますので、3号に該当する可能性はあります。
また、4号の「逃亡・罪証隠滅のおそれ」についても、余罪が複数ある場合や共犯者が複数いる場合など捜査が終了していなければ、罪証隠滅のおそれが高いと判断される可能性があります。

権利保釈が認められない場合であっても、裁量保釈が認められる可能性もあります。
形式的には逃亡・罪証隠滅のおそれが残る場合であっても、その程度が低く、身体拘束によって被る被告人の不利益の程度等を考慮して、裁判所の裁量によって保釈が許可されるのです。
権利保釈と同時に裁量保釈を請求することが出来ますので、弁護人に頼んで両方の保釈を請求してもらうのがよいでしょう。

裁判所に保釈が許可され、保釈保証金を納付すれば、被告人は釈放されることになります。
保釈保証金の額は、犯罪の性質や被告人の資力にもよりますが、150~200万円が相場となっています。
出頭を拒んだり、逃亡したりしなければ保釈保証金は、裁判終了後に戻ってきます。

ご家族が薬物事件で逮捕・勾留され、長期の身体拘束を受けてお困りであれば、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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銃刀法違反で現行犯逮捕

2020-02-13

銃刀法違反現行犯逮捕となるケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
山陽新幹線の車内で刃渡り14センチの包丁が乗客のカバンから露出していたことに気が付いた車掌は、警察に通報し、JR西明石駅に停車しました。
通報を受けて駆け付けた兵庫県明石警察署の警察官は、包丁を所持しているAさんを銃刀法違反の疑いで現行犯逮捕しました。
Aさんは「護身用のために持ち歩いていた」と容疑を認めているとのことです。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、遠方に住んでいるためすぐに明石警察署に行くことができません。
また、警察からは「今来てもらっても会うことはできない。」と言われ、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)

護身用は通用しない?銃刀法違反~包丁・ナイフの所持~

銃砲刀剣類所持当取締法(以下、「銃刀法」といいます。)は、銃砲刀剣類は、社会生活を送る上で便利なものもある一方、使い方によっては人や動物を殺すこともあでき、犯罪に利用される危険性を有しています。
そのため、そのような危害を防止するために、銃刀法は、銃砲、刀剣類等の所持、使用等に関する危害予防上必要な規制について定めています。
関係する規定は、銃刀法第3条および第22条です。

第三条 何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、銃砲又は刀剣類を所持してはならない。

本条は、銃砲刀剣類の所持を原則として禁止しています。
対象となる「銃砲刀剣類」のうち、ここでは「刀剣類」の定義についてみてみましょう。
刀剣類の定義は、銃刀法第2条2項に次のように規定されています。

2 この法律において「刀剣類」とは、刃渡り十五センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り五・五センチメートル以上の剣、あいくち並びに四十五度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフ(刃渡り五・五センチメートル以下の飛出しナイフで、開刃した刃体をさやと直線に固定させる装置を有せず、刃先が直線であつてみねの先端部が丸みを帯び、かつ、みねの上における切先から直線で一センチメートルの点と切先とを結ぶ線が刃先の線に対して六十度以上の角度で交わるものを除く。)をいう。

判例によれば、ある物が銃刀法における刀剣類に該当するためには、その物品が、社会通念上、刀、やり、なぎなた、剣、あいくち及び飛び出しナイフの類型のいずれかに当てはまる形態・実質を備える刃物であることが必要です。
刀剣類の実質というのは、銅性質であって、人畜を殺傷する程度の威力を有するものであることをいいます。

上述したように、銃砲刀剣類の所持は、法令に基づき職務のために所持する場合などを除いて、原則として禁止されています。
ですので、護身用に個人が所持していた場合には、所持が認められる正当な理由とはなりません。

さて、上記ケースのように包丁を所持していた場合ですが、包丁は、銃刀法における刀剣類には該当しませんので、銃刀法第3条1項の違反は成立しないでしょう。
しかし、第22条では刃体の長さが6センチを超える刃物の携帯を禁止していますので、それに違反することになります。

第二十二条 何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが八センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。

刀剣類に該当しないものでも、刃体の長さが6センチを超える刃物は携帯が禁止されます。
人が職業その他社会生活上の地位に基づいて、継続して行う事務・事業のため、または、社会通念上正当な理由がある場合、例えば、特定の用途に供するため市販されている刃物をその用途に供する場合や購入して自宅に持ち帰る場合などは、本条に違反しません。
判例は、護身用として携帯することは正当な理由とは認めていません。(東京地判平8・3・12)

職務質問からの所持品検査や刃物を所持しているところを通行人などに目撃され警察に通報されることから銃刀法違反が発覚し、現行犯逮捕されるケースがあります。
現行犯逮捕されたら、逮捕から勾留までの間は、逮捕された方の家族であっても原則面会することはできません。
しかし、弁護士であれば、いつでも面会することができますので、ご家族が刑事事件を起こしてお困りの方は、すぐに弁護士に接見をご依頼ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
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未成年との性交で刑事事件に発展!?

2020-02-12

未成年との性交刑事事件に発展する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
会社員のAさんは、SNSを通じて知り合ったVさん(15歳)と会って食事をすることになりました。
食事の後、カラオケに行くことになったAさんとVさんは、カラオケでいい雰囲気になり、そのまま性交をしました。
Aさんは、その後もVさんと連絡をとりあっていましたが、ある日突然連絡が取れなくなりました。
不思議に思っていたAさんでしたが、突然兵庫県川西警察署から連絡があり、Vさんの件で話が聞きたいと言われました。
今後の自分の処遇について心配になったAさんは、警察に行く前に刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

未成年者との性交で成立し得る犯罪とは?

未成年者でも18歳に満たない者と性交を行った場合には、どのような罪に問われ得るでしょうか。
成立し得る犯罪としては、(1)淫行条例違反、(2)児童買春罪、(3)強制性交等罪が挙げられます。

(1)淫行条例違反

「淫行条例」とは、各都道府県が定める青少年保護育成条例の中で、18歳未満の青少年との「淫行」を禁止する条文の通称のことです。
兵庫県では、青少年愛護条例の第21条に規定されています。

第21条 何人も、青少年に対し、みだなら性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。

ここでいう「みだらな性行為又はわいせつな行為」とはいったいどのような行為を指すのか、という点が気になるところでしょう。
各都道府県が規定する淫行条例の文言は「淫行」「みだなら性行為」「わいせつな行為」「みだらな性交」等、若干の違いはありますが、青少年との「淫行」について規定している点で共通しています。
そこで、「みだらな性行為又はわいせつな行為」について、最高裁判所による福岡県青少年保護育成条例における淫行条例の解釈を参照してみたいと思います。

(淫行条例の)趣旨は、一般に青少年が、その心身の未成熟や発育程度の不均衡から、精神的に未だ十分に安定していないため、性行為等によつて精神的な痛手を受け易く、また、その痛手からの回復が困難となりがちである等の事情にかんがみ、青少年の健全な育成を図るため、青少年を対象としてなされる性行為等のうち、その育成を阻害するおそれのあるものとして社会通念上非難を受けるべき性質のものを禁止することとしたものであることが明らかであつて、右のような本件各規定の趣旨及びその文理等に徴すると、本条例一〇条一項の規定にいう「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。【最高裁昭和60年10月23日大法廷判決】

「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められない」と判断される場合の明確な線引きは難しいですが、性交等に至るまでの経緯や両者の関係性などの要素を考慮して判断されることになります。
上記ケースのように、よく素性も分からないネットで知り合った相手と会ってすぐに性交する場合には、当該要件を満たしていると判断される可能性があるでしょう。
他方、両親も当事者の交際を認めており、結婚を前提にしているといった場合やそれに近い関係性が認められる場合には、淫行条例違反とはならないでしょう。

兵庫県において、淫行条例違反に対する罰則は、2年以下の懲役または100万円以下の罰金です。

(2)児童買春罪

お金を払う等して児童と性交等を行うことを「児童買春」といい、児童買春は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(通称:児童買春・児童ポルノ禁止法)」により禁止され、罰則規定も設けられています。
児童買春・児童ポルノ禁止法における「児童」とは、18歳未満の者をいいます。
そして、問題となる「児童買春」については、以下のように定義されています。

第二条
2 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為とし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。
一 児童
二 児童に対する性交等の周旋をした者
三 児童の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者

まず、児童買春が成立するためには、①児童本人、児童買春の斡旋者、児童の保護者等に対して、金銭などを渡したり、その約束をして、②児童と性交等を行う、ことが必要となります。

児童買春罪の法定刑は、5年以下の懲役又は300万円以下の罰金です。

(3)強制性交等罪

相手児童が13歳未満であった場合、暴行・脅迫を用いずとも、金銭のやりとりがなくとも強制性交等罪が成立することになります。
強制性交等の法定刑は、5年以上の有期懲役です。

18歳未満の者と性交をしたからといって、必ずしも何らかの罪に問われるとは限りませんが、上記の犯罪のいずれかの構成要件を充たす場合には、刑事事件として発展し刑事責任に問われる可能性もあります。

そのような場合には、早期に弁護士に相談し、今後の流れや取調べ対応について適切なアドバイスを得ることをお勧めします。

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特殊詐欺事件で少年院送致回避

2020-02-11

特殊詐欺事件で少年院送致を回避する活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県小野市の民家を訪れ、弁護士秘書を名乗り、高齢女性からキャッシュカードと窃取したとして、関西地域に住むAくん(17歳)が窃盗の容疑で兵庫県小野警察署に逮捕されました。
Aくんは、他にも2件同様の手口で特殊詐欺事件に関与しています。
逮捕の連絡を受けたAくんの家族は、Aくんが少年院送致となるのではないかと心配し、急いで少年事件に詳しい弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

特殊詐欺事件の終局処分

事件が家庭裁判所に送られると、調査・審判を経て最終的な処分が言い渡されます。
その終局処分には、次のものがあります。
①保護処分決定(保護観察、少年院送致、児童自立支援施設等送致)
②検察官送致
③不処分
④都道府県知事又は児童相談所長送致
⑤審判不開始

⑤の審判不開始は、調査官による調査が終了した後に決定され、審判は開かれません。

少年院とは

終局処分の①保護処分決定には、保護観察、少年院送致、そして児童自立支援施設等送致の3種類があります。
少年が再び非行を犯すおそれが強く、社会内での更生が難しいと判断された場合には、少年を少年院に送致して矯正教育が行われることになります。
この処分を「少年院送致」といいます。

「少年院」は、家庭裁判所の決定により保護処分として送致された少年や懲役・禁錮の言い渡しを受けた16歳に満たない少年を収容し、これらの少年に対して、その健全な育成を図ることを目的として矯正教育、社会復帰支援等を行う施設です。
少年院には4種類あり、年齢、犯罪傾向の程度、心身の著しい障害の有無に応じて、以下のように区分されています。
●第1種:心身に著しい障害がないおおむね12歳以上23歳未満の者を収容。
●第2種:心身に著しい障害がない犯罪傾向が進んだおおむね16歳以上23歳未満の者を収容。
●第3種:心身に著しい障害があるおおむね12歳以上26歳未満の者を収容。
●第4種:少年院において刑の執行を受ける者を収容。

「少年刑務所」や「少年鑑別所」と混同されることがありますが、前者は、懲役又は禁錮の言渡しを受けた少年の相対的不定期刑を執行する施設であり、少年院が少年の矯正教育をその目的とし、少年の健全育成の理念のもとで処遇が実施されるのに対し、少年刑務所はあくまで刑を執行する刑事施設である点で異なります。
また、「少年鑑別所」は、家庭裁判所等の求めに応じて鑑別対象者を鑑別すること、観護措置が執られて少年鑑別所に収容されている者に対して必要な監護処遇を行うこと、そして、非行及び犯罪の防止に関する援助を行う施設です。

少年院送致回避に向けた活動について

特殊詐欺事件は、その被害の大きさに鑑みて、厳しく罰せられる傾向にあります。
被害額や犯行態様によっては、初犯であっても、いきなり実刑となるケースも少なくありません。
少年事件においても、同様の傾向が見られ、これまで非行歴がない少年であっても、少年院送致が言い渡されることもあります。
少年院送致となれば、少年院に収容中は通常の生活を送ることが出来ませんので、退院後の社会復帰にも影響を及ぼす可能性はあります。
そのような事態を回避するためにも、少年院送致ではなく保護観察のような社会内処遇となるよう働くことが重要です。
少年事件では、非行事実とともに要保護性について審判で審理されます。
要保護性というのは、少年が将来再犯するおそれがあり、保護処分によって再犯のおそれが除去できる可能性があり、かつ保護処分が適切であることです。
非行事実を行ったと認定された場合でも、将来、非行を繰り返すおそれがないと判断されれば、保護処分でも保護観察といった社会内処遇となる可能性があります。

特殊詐欺事件について言えば、非行事実が重い罪名の付くもので会ったり、社会的に問題視されているものであっても、要保護性が解消されていると判断されれば、少年院送致ではなく保護観察となることもあるのです。
要保護性の解消には、少年を取り巻く環境をしっかりと調整することが重要です。
少年自身がきちんと反省し、少年が抱く問題点を理解し、解決策を見出すなど、少年本人の内部の環境を調整することや、保護者や学校などと協力し、少年の更生に資する周囲の環境を調整することも大切です。
また、被害者に対して謝罪や被害弁償を行うことも、少年事件においても重要です。

これらの要保護性を解消する活動は、出来る限り早期に着手するのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
お子様が事件を起こし、対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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住居侵入事件で現行犯逮捕

2020-02-10

住居侵入事件で現行犯逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県宝塚市の会社の寮の敷地内に侵入したとして、Aくん(16歳)は、住人からの通報を受けて駆け付けた兵庫県宝塚警察署の警察官に住居侵入の容疑で逮捕されました。
Aくんは、取調べで「スマホでゲームをしようと思ったけど、お金がかからないようにしようとして、Wi-Fiが使えるところがないか探していた。」と供述しています。
逮捕の連絡を受けたAくんの家族は、ネットで検索し、刑事事件専門の弁護士に相談の連絡をしました。
(実際の事件を基にしたフィクションです。)

住居侵入罪

住居侵入罪は、正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入した場合に成立する罪です。

◇正当な理由がない◇

他人の家などを訪問したりすることは日常的に行われることですので、犯罪となるものを構成要件上明らかにしようとする意図から、「正当な理由がないのに」という文言が定められたと解されます。
どのような場合が「正当な理由」があるとされるのかと言えば、警察官が犯人を逮捕する場合に人の住居等に立ち入って捜索するとき、令状を得て屋内で検証するときなどがあります。

◇客体◇

【住居】
人の起臥寝食に使用される場所を「住居」といいます。
旅館やホテルの客室も、滞在者にとっては住居となり、アパートなどでは、その一部屋がその部屋の住人の住居となります。

【邸宅】
「邸宅」とは、住居用の建造物で、住居以外のものをいいます。
例えば、居住者のいない空き家や閉鎖された別荘などがあります。
集合住宅の通路や階段などの共用部分は邸宅です。

【建造物】
住居や邸宅以外の建造物を広く含み、土地に定着し、内部に人が出来るできる構造をもつ家屋その他これに類似した工作物です。

【艦船】
軍艦および船舶をいいます。

邸宅・建造物・船舶については「人の看守する」ものに限られます。
みだりに他人が出入りできないように人を監視させたり、鍵をかけるなどの戸締りをしている場合、「人の看守する」建物に当たります。

住居・邸宅・建造物については、建物自体だけでなく、付属する囲繞地も客体に含まれます。

◇侵入◇

「侵入する」とは、住居の場合は住居者、邸宅・建造物等の場合は看守者の意思に反して立ち入ることをいいます。
住居者や看守者が立入りについて許諾していた場合には、住居侵入罪は成立しません。
しかし、その許諾が欺罔などの錯誤に基づいて付与された場合には、許諾を無効し住居侵入罪が成立するものとされます。

住居侵入事件で現行犯逮捕されたら

住居侵入事件で現行犯逮捕となる場合、犯行時に住居者や看守者に目撃され、彼らに身柄確保されるケースや、通報により駆け付けた警察官に逮捕されるケースなどです。
住居侵入は、窃盗や盗撮など他の目的があって行われることが多く、その点についても取調べで聞かれるでしょう。
単なる好奇心による侵入の場合には、家族による監督が期待できると判断されれば逮捕後に釈放となる可能性はあるでしょう。
しかし、窃盗やわいせつ目的などがある場合には、逮捕後に勾留となる可能性もあります。
勾留されると、逮捕から最大で23日間身柄が拘束されることになりますので、その間学校や会社に行くことができません。
そうなれば、退学や解雇といったおそれも出てきます。

ご家族が住居侵入事件で逮捕されてお困りであれば、刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
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男女間トラブル:強制性交等罪となる場合

2020-02-09

男女間トラブルから強制性交等罪に問われ得る場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
出会い系アプリで知り合った女性Vさんと食事をすることになったAさん。
食事の後、カラオケに行き、いい雰囲気になったところで、AさんはVさんにキスをしました。
Vさんも嫌がる様子はなく、Aさんはそのまま性交をしようとしました。
Vさんは、「ちょっとそれは」と言っていましたが、はっきりと拒絶する態度をとらなかったので、Aさんは「これはOKだということだな。」と思い、そのまま続けました。
その後、普通に会話し、カラオケ店を後にした二人は、また会う約束をして別れました。
しかし、後日、Vさんから「同意なくされた。あれはレイプだ。警察に相談する。」という内容のメッセージが送られてきました。
驚いたAさんは、Vさんと連絡をとろうとしましたが、返事がありません。
心配になったAさんは、このまま刑事事件に発展する可能性があるのか、刑事事件に詳しい弁護士に相談しに行きました。
(フィクションです)

強制性交等罪について

男女間トラブルから刑事事件に発展するケースがあります。
DV事件であれば、暴行罪や傷害罪に問われることが多く、強制性交等罪や強制わいせつ罪などの性犯罪に問われる場合には、男女間で同意があったか否かが問題となるケースがよく見受けられます。
最近では、出会い系アプリを通じて知り合った男女がその場の雰囲気で肉体関係をもち、後に同意がなかったと相手方から主張されるケースが多く、男女間での同意の認識の違いから事件に発展しています。

それでは、強制性交等罪が成立する場合について説明していきます。

強制性交等罪は、刑法第177条に規定される罪です。

第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

強制性交等罪は、平成29年の刑法改正により、強姦罪に替えて新設されました。

◇暴行・脅迫◇
13歳以上の者に対する場合は、「暴行又は脅迫」を加えた場合に限り本罪が成立します。
この「暴行・脅迫」は、相手の反抗を抑圧する程度に達しなくてもよいが、反抗を著しく困難にならしめる程度に達することが必要です。
反抗を著しく困難ならしめるものか否かの判断は、暴行・脅迫それ自体だけでなく、相手の年齢・性別、犯人の素行・経歴等や暴行・脅迫が行われた時間・場所の四囲の環境その他具体的な事情と相まって判断されます。
13歳未満の者に対する場合は、暴行・脅迫の要件はありませんので、それらを用いずとも、例え相手方が同意していたとしても本罪は成立します。
この点、未必的であれ相手方が13歳未満であると認識していることが必要です。

◇性交等◇
「性交等」は、「性交」、「肛門性交」と「口腔性交」と合わせた呼称です。
「性交」は、陰茎を膣内に没入することで、射精まで要しません。
「肛門性交」とは、肛門内に陰茎を入れる行為で、「口腔性交」は、口腔内に陰茎を入れる行為のことです。

◇未遂◇
強制性交等罪は、未遂も処罰されます。
暴行・脅迫を加えたものの強制性交等に取り掛からなかった場合、強制性交等に取り掛かったが没入しなかった場合であっても、強制性交等の目的をもって行ったのであれば強制性交等未遂となります。

◇故意◇
強制性交等罪は、故意犯です。
つまり、相手方(13歳以上の者)に対して、暴行又は脅迫を手段として性交等を行う認識があった場合に限り、本罪が成立します。
相手方も同意していると思っていたのであれば、暴行・脅迫を用いて性交等をしたとは認識していないので、故意がなく本罪が成立しないことになります。
もっとも、加害者側が単に「同意があった」と主張するだけでは、同意があったと認められることは難しいでしょう。
同意があった旨を主張するのであれば、それを裏付ける客観的な証拠が必要となります。

強制性交等事件の加害者となってしまったら

「同意があったと思っていた。」、「いけるだろうと思っていた。」のに、相手方からレイプだと非難されるケースは少なくありません。
出会い系などで知り合った相手の場合、そのまま放置して事なきを終えようとするケースもありますが、相手方が被害届を提出すれば、捜査機関により身元が特定されてしまう可能性もあります。
警察からの呼び出しを受けているのであれば、今後どのような手続となるのか、取調べでどのように対応すればよいのかについて弁護士に相談するのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
強制性交等事件で対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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恐喝事件で保護観察処分

2020-02-08

少年の恐喝事件と保護観察処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県丹波市に住むAくん(16歳)は、知人のVくんにお金を貸していました。
「すぐ返すから。」と言って、いつまでも返済しないVくんについて、Aくんの友人のBくんが、「お前のことなめとんから返さへんのとちゃうか?」と発言したことを受けて、Aくんは、自分がVくんに甘く見られていることに腹を立て、ビビらせてお金を返してもらおうと考えました。
Aくんは、Vくんを市内の公園に呼び出し、Bくんと一緒にVくんに対して返済を求めましたが、Vくんはいつも通り「すぐに返すから待って。」と言うだけでした。
Aくんは、「お前痛い目みんと分からんのか!」と言って、Bくんと一緒になってVくんに殴る蹴るの暴行を加えました。
Aくんは、Vくんが所持していた現金3千円を出させ、「後の分もちゃんと返してな。」と言ってその場を立ち去りました。
翌日、兵庫県丹波警察署の警察官がAくん宅を訪れ、Aくんを恐喝の疑いで逮捕しました。
(フィクションです)

恐喝罪について

恐喝罪は、刑法第249条に規定される罪です。

第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

恐喝罪とは、
①人を恐喝して財物を交付させた場合、又は、
②人を恐喝して財産上不法の利益を得又は他人にこれを得させた場合
に成立する犯罪です。

◇人を恐喝して◇

恐喝」とは、暴行又は脅迫により被害者を畏怖させることを意味します。
それは財物又は財産上の利益の交付に向けられたものでなければなりません。
また、畏怖させる手段である暴行・脅迫は、被害者の犯行を抑圧する程度に至らないものであることが必要となります。

◇財物を交付させ◇

恐喝罪の成立のためには、畏怖により生じた瑕疵ある意思に基づき、物・財産上の利益が交付される必要があります。
交付行為により、物・財物上の利益が移転した場合、恐喝罪は既遂となります。

しかし、行為者の権利実現のために恐喝が用いられた場合、恐喝罪が成立するかどうかが問題とされてきました。
上記事例のように、金銭債権を有する者が、恐喝を用いて返済を受ける場合が典型例です。
この点、判例は、権利の実行は、その権利の範囲内でありかつその方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えない限り何ら違法の問題を生じさせないが、その範囲程度を逸脱する場合には違法となり、恐喝罪が成立するとしています。(最判昭和30・10・14)
殴る蹴るの暴行を加えた上で、相手に金銭を出させる行為は、借金返済を求める方法としては一般的に容認されるものではないでしょう。

保護観察処分について

事件が捜査機関から家庭裁判所に送致されると、調査・審判を経て最終的な処分が言い渡されます。
その最終的な処分のなかには、保護処分というものがあり、①保護観察、②少年院送致、③児童自立支援施設又は児童養護施設送致、の3つがあります。

保護観察」は、少年を施設に収容することなく、社会生活をさせながら、保護観察所の行う指導監督及び補導援護によって少年の改善更生を図る社会内処遇の保護処分です。
保護司と定期的に面談し、現状を報告しながら、改善更生に向けた助言や支援をもらいます。

保護観察は、少年院送致や児童自立支援施設等送致の収容措置とは異なり、社会内で改善更生を行うものですので、少年の審判後の生活も大きく異なります。

しかし、誰でも保護観察となるわけではありません。
裁判官が、少年は社会内で更生することができるだろうと認めてもらわなければなりません。
そのためには、審判が開かれるまでに、少年が更生施設ではなく社会生活を送りながら更生することができる環境が十分に整っていなければなりません。
具体的には、少年自身が事件や自分が抱える問題と向き合い、再び非行に走らないためにはどうすればいいのか解決策を見つけることや、家庭環境や交際関係の改善など、保護者や学校と協力して少年の更生に適した環境を整える必要があります。

少年事件において、弁護士は、成人の刑事事件と同様に、少年の権利がきちんと守られるように支援するという役割もありますが、家庭裁判所や保護者・学校などと協力して、少年が更生できる環境を整えるという重要な役割も担います。
ですので、お子様が事件を起こして対応にお困りの方は、刑事事件・少年事件に精通する弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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口座売買で犯罪収益移転防止法違反

2020-02-07

口座売買犯罪収益移転防止法違反となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
ネットの掲示板で「口座を売ってください。」という書き込みを見た留学生のAさんは、留学期間を終えて帰国する予定だったので、開設していた自分名義の口座を売ることにしました。
その後、Aさんは、銀行からAさんの口座が犯罪に利用されていたため凍結したとの連絡を受けました。
驚いたAさんは、友人に相談したところ、口座の売買が犯罪となることを聞きました。
心配になったAさんと友人は、刑事事件専門の弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

口座売買

インターネットやダイレクトメールで、「銀行口座一口を高値で買い取ります」といった甘い言葉で口座売買を勧誘するケースが多発しています。
大金を稼ぐことが出来ないような主婦や学生を狙って、振り込め詐欺等の犯罪集団が、振込先の口座として使用することを目的に口座売買の話を持ち掛けることが多いようです。
最近では、留学生や技能研修生が、口座売買が法律で禁止されているとは知らずに、帰国前に口座を売ってしまうケースも多いようです。
日本語ではなく、彼らの母国語で口座売買募集のメッセージを挙げていること多く、国際的な犯罪組織が関係している可能性もあります。

しかし、自己又は他人名義の口座を有償又は無償で、譲り渡す又は譲り受けることは、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(通称、「犯罪収益移転防止法」といいます。)によって禁止されています。

第二十八条 他人になりすまして特定事業者(第二条第二項第一号から第十五号まで及び第三十六号に掲げる特定事業者に限る。以下この条において同じ。)との間における預貯金契約(別表第二条第二項第一号から第三十七号までに掲げる者の項の下欄に規定する預貯金契約をいう。以下この項において同じ。)に係る役務の提供を受けること又はこれを第三者にさせることを目的として、当該預貯金契約に係る預貯金通帳、預貯金の引出用のカード、預貯金の引出し又は振込みに必要な情報その他特定事業者との間における預貯金契約に係る役務の提供を受けるために必要なものとして政令で定めるもの(以下この条において「預貯金通帳等」という。)を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者も、同様とする。
2 相手方に前項前段の目的があることの情を知って、その者に預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同項と同様とする。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同様とする。

自分の口座を、他人が自分になりすまして使うと認識して、預金通帳等を渡した場合、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又はその両方が科せられる可能性があります。(犯罪収益移転防止法第28条2項前段)
そして、他人がどのように口座を使用するかは知らなかったが、通常の商品取引・金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で預金通帳などを売ったり貸したりしてしまった場合でも、犯罪収益移転防止法第28条2項後段に当たります。

一方、他人に売ったり、貸すつもりで、新たに銀行の口座を開設し、開設した口座を他人に譲渡したり、販売した場合には、刑法上の詐欺罪に当たる可能性が高いです。
詐欺罪で起訴された場合、10年以下の懲役が科される可能性があります。
罰金刑は設けられていません。

口座売買で逮捕されたら

売買した口座が振り込め詐欺等の犯罪に利用されていた場合、捜査機関は口座を売った者も犯罪集団の仲間であると疑う場合があります。
そのような場合には、振り込め詐欺の共犯若しくは幇助犯としての嫌疑がかけられます。
組織犯罪が疑われる場合、逮捕に引き続き勾留となり長期間の身体拘束を強いられる可能性が高く、勾留と共に接見禁止に付されることもあります。

口座売買で逮捕されるのかご不安な方、ご家族が犯罪収益移転防止法違反で逮捕されてお困りの方は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
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不良行為少年と虞犯少年

2020-02-06

不良行為少年虞犯少年との違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
中学2年生のAさん(14歳)は、夏までは真面目に学校に通っていましたが、夏休みの間にクラブに入り浸り、家にも帰ってこない等、乱れた生活を送るようになりました。
徐々に学校にも行かなくなり、何度も家出を繰り返していました。
ある日、少年Bとクラブに行った帰りに、兵庫県生田警察署の警察官に職務質問を受けたAさんは、酒に酔っていたこともあり気が大きくなり、警察官に反抗的な態度をとりました。
警察官はそのまま2人を署に任意同行し、事情を聴くことにしましたが、薬物をしているわけでもなく、2人の両親に引き取ってもらい一時的な補導で終わらせることにしました。
しかし、Aさんは、迎えに来た母親に対して、「なんでここに来とんねん。お前とは帰らへん。」と反抗的な態度を取り続けました。
母親から事情を聴いた警察官は、Aさんをこのまま自宅に返したとしても、また家出をするかの可能性が高いこと、Aさんは少年Bが恐喝で得たお金で遊んでいること、複数人と性的関係を持つなど、将来、財産犯や売春を行うおそれがあると判断したため、神戸家庭裁判所虞犯少年として送致しました。
(フィクションです)

不良行為少年とは

不良行為少年は、少年警察活動規則第2条1項6号において、「非行少年には該当しないが、飲酒、喫煙、深夜はいかいその他自己又は他人の徳性を害する行為をしている少年」と定義されています。
警察は、そのまま放置すれば、非行その他健全育成上の支障が生じるおそれがあると認められる少年について、不良行為の中止を促すなど必要な注意を行ったり、非行防止その他の健全育成上必要な助言を行ったりします。
注意・助言だけでは少年の非行防止その他健全育成上十分でないと認められる場合は、警察は保護者と連絡をとり、不良行為の事実を伝え、必要な監護や指導上の措置を促します。

不良行為少年に対しては、補導等で済みますが、場合によっては虞犯少年として家庭裁判所に送致されることもあります。

虞犯少年とは

虞犯少年は、犯罪を犯していないものの、虞犯事由があり、かつその性格又は環境に照らして、将来罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年です。
虞犯は犯罪ではありませんが、少年法は、これを家庭裁判所の審判に付すこととしています。
その理由として、未だ犯罪行為に至ってはいないけれども、不良な行為をしている少年を早期に発見して適切な保護を加えることにより、少年の健全な育成を図るとともに、犯罪の発生を未然に防止するためであることがあげられます。

虞犯事由には、次の4つがあります。
①保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
②正当な理由がなく家庭に寄りつかないこと。
③犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入りすること。
④自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
これらのうち1つでも該当すると、虞犯事由があることになります。

虞犯事由を概観すると、不良行為少年虞犯少年が重複しているように思えますね。
しかし、不良行為少年の定義である「自己又は他人の徳性を害する行為」と虞犯事由の④が重複しますが、不良行為少年は「非行少年には該当しないが」、虞犯事由④に該当する少年ということになります。
「非行少年」とは、「犯罪少年」、「虞犯少年」、「触法少年」といった家庭裁判所の審判に付することとされている少年です。

さて、不良行為少年虞犯少年とを区別する要素である「将来罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれ」、つまり、「虞犯性」は、知能・性格等の本人の問題点や家庭、学校、不良交友等の非行の誘因・抑止双方に関係する環境的要因等を総合的に検討して判断されます。

虞犯に関する通告・送致

警察官が街頭補導等によって虞犯少年を発見した場合、警察官は当該少年の調査を行います。
この調査においては、少年や保護者に対して、事件の事実、原因及び動機、少年の性格、行状、経歴、教育程度、環境、家庭の状況、交友関係等について質問します。
調査の後、少年が14歳以上であり、家庭裁判所の審判に付することが適当と認められるときは、少年を家庭裁判所に送致します。
少年が14歳以上18歳未満であり、保護者がいないとき又は保護者に監護させることが不適当であると認められ、かつ家庭裁判所に直接送致するよりも児童福祉法上の措置をとるべきであると認められる場合は、少年を児童相談所に通告します。

家庭裁判所に送致されると、犯罪少年の場合と同様に、家庭裁判所の調査官による調査が行われた上で審判に付され、終局処分が言い渡されることになります。
また、家庭裁判所送致後に、観護措置がとられる可能性もあります。

このように虞犯少年として家庭裁判所に送致された場合、犯罪少年の場合と同じ手続きとなります。
虞犯少年の場合には、その性質上観護措置がとられることも多いでしょう。

お子様が虞犯少年として家庭裁判所に送致され、対応にお困りの方は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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