Archive for the ‘経済事件’ Category
自首と出頭
自首と出頭
自首と出頭について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県洲本市のスーパーマーケットにパートとして勤務するAさんは、度々店の商品を無断で持ち帰ったり、レジから売上金を持ち出したりしていました。
ある日、店長が、商品や売上金がデータと合わないことを不審に思い、各従業員に聞いて回っていました。
店長は、Aさんによる犯行の可能性が高いと思っており、Aさんに対して、「従業員の誰かが商品や売上金を盗んだ可能性が高いようだ。このまま誰も名乗り出なければ、警察に被害届を出そうと思う。」と言いました。
しかし、Aさんは店長に罪を告白しないまま、一身上の都合という理由で退職しました。
後日、元同僚を通じて店長が兵庫県洲本警察署に被害届を出しにいったという話を聞いて、このままではいずれ自分の犯行だということがバレてしまうのでは、と心配になったAさんは、自首することを考えています。
(フィクションです)
自首が成立するためには
刑事ドラマやサスペンスドラマで、「自首しに来ました。」といって警察署に出向く姿を時折目にします。
警察署に行って自分の犯した罪を言えば「自首」が成立すると思っていませんか?
実は、「自首」については法律できちんと規定されており、成立するためには満たさなければならない要件がいくつかあるのです。
罪を犯した人が、自ら捜査機関に対して、自分が犯した罪を自発的に申告し、その処分を求める意思表示のことを「自首」といいます。
単に、警察署などに自ら出向くだけでは、法律上の自首が成立するとは限らないのです。
刑法第42条は、以下のように、自首について規定しています。
第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。
「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。」
つまり、自首の成立要件は、以下の4つになります。
(1)犯罪を起こした本人自らが自発的に犯罪事実を申告していること。
「自ら自発的に」自分の犯した犯罪を申告しなければならず、取調べで単に犯罪事実を自白しただけでは自首したことになりません。
(2)犯罪を行った本人が自身の罰則や処分を求めていること。
申告内容が、犯罪事実の一部を隠すためにされたものであったり、自己の責任を否定するようなものであったりした場合には、自首は成立しません。
(3)捜査機関に申告していること。
司法警察員または検察官に対して申告している必要があります。
(4)捜査機関が犯罪事実や犯人を特定していない段階で申告していること。
犯罪事実が捜査機関に発覚していない場合や、犯罪事実は発覚していたとしても、その犯人が誰であるか発覚していない場合を含みます。
犯罪事実や犯人が誰であるか判明しているけれども、単に犯人の所在だけが不明である場合は、これに含まれません。
犯罪事実の申告を受けた警察官等が犯罪事実を知らなくても、捜査機関の誰かが犯罪事実を知っていた場合には、自首は成立しません。
これらの要件を充たしてはじめて「自首」が成立することになります。
一方、「自首」とよく混同される「出頭」とは何を意味するのでしょうか。
「出頭」というのは、役所や裁判所など特定の場所に出向くことです。
犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚している場合に、犯人が警察署等に出向いたとしても「自首」ではなく「出頭」ということになります。
自首のメリット
自首が成立すると、刑が減軽される可能性があります。
どの程度刑が減軽されるかについても、刑法第68条が定めています。
窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
有期懲役の場合、長期及び短期の2分の1に、罰金の場合、多額及び寡額の2分の1に減軽されるので、窃盗罪の場合には、5年以下の懲役又は25万円以下の罰金の範囲内で刑罰が科されることになります。
しかし、あくまで「刑を減軽することができる」とありますので、絶対的に軽減されるものではありません。
また、自首したことそれ自体が、逮捕の要件である逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれを否定する事情となり、逮捕されず在宅のまま捜査が進む可能性もあります。
刑事事件を起こし、自首しようかお悩みであれば、自首する前に一度刑事事件に強い弁護士にご相談されることをおすすめします。
自首するメリット・デメリットを理解し、自首した後の流れや取調べ対応についてしっかりと説明やアドバイスを受けることにより、取調べに対する不安を少しでも和らげることができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件でお悩みの方は、一度弊所にご相談ください。
前科と前歴
前科と前歴
前科と前歴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aさんは、兵庫県赤穂市のスーパーマーケットで、商品5点(5000円相当)を会計を済ませずに店を出たとして、店の警備員に呼び止められました。
その後、Aさんは、通報を受けて駆け付けた兵庫県赤穂警察署の警察官に窃盗容疑で逮捕され、同署において取調べを受けました。
Aさんの夫が身元引受人としてAさんを引き取ることで、Aさんは釈放となりました。
Aさんは、同じような万引きをして捕まったことがあり、その時は警察署で話を聞かれて終わったのですが、今回はどのような処分となるのか非常に不安でたまりません。
Aさんは、夫と共に、刑事事件に強い弁護士のところに相談に行きました。
(フィクションです)
逮捕されたら前科が付くの?
刑事事件を起こし、逮捕されてしまったら、必ず「前科」が付くと思われている方が多くいらっしゃいますが、逮捕されたからといって必ずしも前科が付くわけではありません。
そもそも、前科とはどのようなものを指すのでしょうか。
「前科」という用語は、正確な法律上の用語ではなく、通俗的に使用されているにすぎず、その意味は必ずしも明らかではありません。
しかし、一般的には、前に刑に処せられた事実のことを「前科」と称します。
「前に刑に処せられた」というのは、全ての有罪の確定判決のことを意味します。
死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料である場合から、刑の免除、刑の執行免除が言い渡された場合も含みます。
裁判所で言い渡されたものであっても、過料等の行政罰や没収、追徴等のいわゆる付加刑は前科ではありません。
前科が付いてしまったら
前科が付くと、法律において一定の不利益を被ることになります。
例えば、以下のようなものが挙げられます。
・執行猶予に付し得ない事由
・執行猶予の取消事由
・再犯加重の事由
・仮釈放の取消事由
・常習犯の認定事由
・必要的保釈を消極とする事由
・特定の法令が定める資格制限事由
一度付いてしまった前科は消えないの?
前科が付くことにより、上のような法律上の不利益を被ることになるわけですので、一度付いてしまった前科がいつまでも消えないのかどうかといった点は気になるところですね。
刑の執行を受け終わった者に対して、いつまでも法律上の不利益を負わせておくことは、その者の改善や構成の意欲を阻害し、善良な社会人として社会復帰する機会を失わせることになるので、現行法では刑の消滅に関する規定が設けられており、執行終了または免除後の一定期間を罰金以上の刑に処せられることなく経過した場合に、その抹消が認められ、刑が消滅することになります。
第三十四条の二 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。
2 刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。
刑の消滅の効果は、刑の言渡しに基づく法的効果が将来に向かって消滅するというものであって、過去において刑を受けたことがあるという事実まで消滅させるものではありません。
前歴とは?
最後に、よく「前科」と混同される「前歴」について説明します。
「前歴」というのは、警察などの捜査機関から犯罪捜査を受けたことです。
前歴は検察や警察が保管・管理していますが、前歴についてはその記録は抹消されることはありません。
上記ケースの場合、Aさんは前に万引きで警察に逮捕されたことがあるようです。
警察での調べで事件は終了しているとのことですので、警察から検察に送致されてはおらず、おそらく警察段階で「微罪処分」として終了しているのだと考えられます。
しかし、窃盗容疑で逮捕されていますので、Aさんには窃盗の「前歴」が付いています。
その記録は警察や検察で保管・管理されていますので、Aさんがまったくの初犯ではないことはすぐにわかります。
その事実がAさんにとって良い方向に働くことはありません。
しかし、同種の前歴があっても、被害店舗への被害弁償や示談締結、家族の監督やカウンセリング等により再犯防止策がきちんととられている等、Aさんにとって有利な事情について説得的に主張することで、検察官が起訴猶予で事件を終了させる可能性も十分あります。
このような活動は、刑事事件に精通した弁護士に任せるのがよいでしょう。
窃盗事件をはじめとして刑事事件でお困りならば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
食い逃げで詐欺罪
食い逃げで詐欺罪
食い逃げで詐欺罪となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市長田区の居酒屋でバイトとして働いるXさんは、若い女性2人組をテーブル席に案内しました。
Xさんは、この女性客から注文を受け料理を運んでいました。
夜の忙しい時間帯でもあったので、他の客の対応に追われていたXさんでしたが、ふと見るとあの女性客らがいなくなっていることに気が付きました。
いつの間に会計を済ませたのかと思ってテーブルの上を見ると、伝票入れには未会計の伝票が入ったままということに気が付きました。
慌てて、店長に報告し、店長とXさんは店を出て、女性客を探し回ると、店から少し離れたところに発見し、Xさんは女性客2人に声を掛けました。
「お客様、お会計が未だだと思うのですが。」と尋ねると、「現金を持ち合わせていないことに気が付いて、近くのATMを探していたところ。」と女性客は回答しました。
店長はすでに兵庫県長田警察署に通報しており、駆け付けた警察官が女性客に事情を聞いています。
(フィクションです)
食い逃げで成立し得る犯罪とは?
レストランなどで料理を注文し、飲食したにもかかわらず、その代金を支払わずにその場を後にすることを「無銭飲食」といい、俗にいう「食い逃げ」のことです。
食い逃げ行為により成立し得る犯罪とは、どのようなものでしょうか。
まず、食い逃げ行為で問われ得る犯罪として挙げられるのが「詐欺罪」です。
詐欺罪
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
詐欺罪の構成要件は、次のとおりです。
【1項詐欺罪】
①人を欺いて
②財物を交
③交付させたこと。
【2項詐欺罪】
①人を欺いて
②財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させたこと。
詐欺罪の行為は、「人を欺いて財物を交付させること」、または「人を欺いて財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させること」です。
1項詐欺についていえば、①欺く行為をして、②それに基づき相手方が錯誤に陥り、③その錯誤によって相手方が処分行為をし、④それによって財物の占有が移転し、⑤財産的損害が生ずることが必要となり、①~⑤が客観的に相当因果関係になければなりません。
詐欺罪のポイントは、人を欺く行為によって錯誤に陥った相手方に財物を交付させた、という点です。
つまり、食い逃げ行為が詐欺罪に該当し得るのは、次のケースとなります。
(a)注文する時点ですでに支払いの意思がない場合、
(b)注文時には支払う意思があったが、支払い時にお金がないことに気づき、「お金をおろしてくる」などと嘘を言って支払いを免れる場合
前者については、通常、飲食店で料理を注文する行為は、暗に「後で注文した料理の代金を支払うので、注文した料理をください。」という意味に捉えられますから、支払う意思がないのに支払う意思があるかのように装ったということで、注文行為が欺く行為となります。
その欺く行為により、支払う意思があると騙された店から商品という財物の提供を受けているので、第1項詐欺が成立することになります。
後者は、会計時に支払う意思がないのに支払う意思があるかのように店員を騙して、代金の支払いを免れているので、人を欺き、よって財産上不法の利益を得ていると理解できるでしょう。
さて、ここでふと疑問に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「支払う意思」があったか否か、という人の内面をどのように評価するのか。
その当時の所持金やカードの所持の有無など、客観的に「支払う能力があったのか」という点から、「支払う意思があったか」を判断することになります。
ですので、単に「払うつもりだった」と主張するだけでは、足りません。
詐欺罪をはじめ刑事事件を起こし捜査機関から呼び出しを受けている方、取調べ対応にお困りの方、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
特殊詐欺関与で少年院送致
特殊詐欺関与で少年院送致
特殊詐欺事件での少年院送致について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県相生市の高齢女性Vさん宅に、弁護士の秘書だと名乗り、現金100万円を騙し取ったとして、兵庫県内に住む少年Aさん(17歳)が詐欺の容疑で兵庫県相生警察署に逮捕されました。
Aさんは、小遣い稼ぎのために、高額アルバイトとうたった特殊詐欺の受け子として複数件犯行に関与していました。
逮捕・勾留の後に、神戸家庭裁判所に送致され、審判では少年院送致の保護処分の決定がなされました。
(フィクションです)
少年の特殊詐欺への関与
銀行員や市役所職員、弁護士などを騙り、「還付金があるので振込先銀行のキャッシュカードを渡してください」とか、「お子様が交通事故で相手方に怪我を負わせてしまったので、慰謝料を今すぐ用意してください」などと言い、キャッシュカードや現金などを騙し取る特殊詐欺事件が後を絶ちません。
犯罪は組織的に行われることが多く、電話をかける「掛け子」、被害者から現金やキャッシュカードを受け取る「受け子」、受け取ったキャッシュカードを使ってATMから現金を引き出す「出し子」などといったように複数人で役割を分担して犯行におよびます。
これらの役割の中でも、「受け子」や「出し子」は警察に捕まる確率が高いため、犯罪組織は外部の人間を雇い、これらの役割を担わせることが多くなっています。
これらの役割を担う外部の人間は、ネットを介して「高額アルバイト」などと称して募ります。
簡単な仕事で高額の報酬がもらえるとあって、未成年者がこのような募集に応募することが多く、特殊詐欺の「受け子」や「出し子」として警察に逮捕されるケースが多々見受けられます。
特殊詐欺は今や社会問題となっており、厳罰の傾向にあります。
少年においても例外ではなく、初犯であっても、いきなり少年院送致となるケースも少なくありません。
少年院について
家庭裁判所が下す終局処分は、保護処分、不処分、審判不開始、検察官送致があります。
更に、保護処分は、保護観察、少年院送致、児童自立支援施設送致の3つがあります。
家庭裁判所の決定により保護処分として送致された少年や懲役・禁錮の言渡しを受けた16歳未満の少年を収容し、これらの少年に、その健全な育成を図ることを目的として矯正教育、社会復帰支援等を行う施設が「少年院」です。
再び非行を犯すことなく、社会に復帰させることが目的であるので、少年院における矯正教育は少年の更生の中核となります。
少年院送致となった少年は、人間関係や学校・職場でのルールなどに適切に対応する能力が不十分である場合が多く、少年が更生するためには、少年が社会に出たときに遭遇するであろう様々な困難を乗り越え、再び非行を犯すことなく社会で生活していくことができるよう、健全なものの見方や考え方を身に着けることが重要だからです。
矯正教育は、生活指導、職業指導、教科指導、体育指導、特別活動指導を適切に組み合わせて行われます。
この中でも、生活指導は少年院における矯正教育の中心とされます。
少年院送致となる少年の多くは、基本的な生活習慣が身に付いていない、周囲とのコミュニケーション能力や自己表現力が乏しいために社会に適用できない、ものの見方や行動選択の場面に問題がある、などといったことが非行の原因となっていると考えられるので、これらの問題を改善することが少年の更生には必要不可欠と言えるからです。
生活指導には、基本的な生活習慣に関する指導から、様々な問題について講義やディスカッションを通して正しい知識や対処法を学んだり、家族との関係改善を図る指導まで幅広い内容となっています。
少年院は、少年が再び非行を犯すことがないよう、社会に適応して生活することができるよう支援する施設であり、少年院送致となることが必ずしも少年にとって不利益であるとは言えません。
しかしながら、長期間施設に収容されることで、少年の社会復帰に弊害をもたし得ることも否定できません。
お子様が事件を起こし、少年院送致が見込まれる場合には、すぐに少年事件に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件・刑事事件を専門とする法律事務所です。
弊所の弁護士は、少年一人ひとりに合う弁護・付添人活動を行い、少年の更生に適した処分となるよう尽力します。
まずは、フリーダイヤル0120-631-881までお問い合わせください。
業務上横領罪と窃盗罪
業務上横領罪と窃盗罪
業務上横領罪と窃盗罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県朝来市にある美容室に勤めるAさんは、売上金の一部をレジから抜き取ることを度々していました。
ある日、美容室の店長が異変に気付き、従業員に「売上金が盗まれた可能性がある。場合によっては、警察に通報する。」と話しました。
いずれ自分の仕業であることがバレるのではないかと不安になったAさんは、自身の行為がどのような犯罪になり、警察に通報された場合にはどのような流れになるのか、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
勤務先のお金をネコババ~業務上横領罪?窃盗罪?~
自身が勤務する会社のお金をくすねた場合、人の物を勝手に自分のものにしているのですから、それが悪いことだとは容易に理解することができますよね。
それでは、どのような犯罪が成立するのでしょうか。
実は、お金をくすねた人が会社でどのような立場であったかによって、成立する犯罪が変わってくるのです。
業務上横領罪
まずは、業務上横領罪について説明しましょう。
業務上横領罪は、刑法第253条に規定されています。
第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。
業務上横領罪の構成要件(犯罪類型)は、次のとおりです。
①業務上
②自己の占有する他人の物を
③横領したこと。
業務上横領罪の主体は、「業務上他人の物を占有する者」となり、本罪は身分犯です。
身分犯というのは、構成要件において行為者が一定の身分をもつことを必要とする犯罪のことです。
ここでいう「業務」とは、委託を受けて他人の物を占有・保管する事務を反復継続して行う地位をいいます。
業務の根拠は、法令・契約、公的・私的を問わず、職業としてなされるものに限られません。
従業員が仕事上会社から預かる場合の他にも、運送業者が荷主の荷物を預かる場合や部活やサークルの会計担当者が金品を預かる場合も「業務」に含まれます。
また、「横領」とは、委託物につき不法領得の意思を実現するすべての行為をいうものと解するのが通説となっています。
「不法領得の意思」の内容については、争いがありますが、判例では、他人の物の占有者が委託の任務に背いてその者につき権限がないのに、所有者でなければできないような処分をする意思であるとされます(最判昭24・3・8)
上のケースにおいて考えてみましょう。
Aさんが、レジの管理を任されている場合には、Aさんは「業務上他人の物を占有する者」に該当することになります。
また、店の売上金を勝手に自分のものにしているので、「自己の占有する他人の物を横領した」と言え、業務上横領罪が成立し得ると考えられます。
他方、Aさんがレジの管理を任されていない場合はどうでしょう。
窃盗罪
その場合には、窃盗罪が成立する可能性があります。
窃盗罪は、刑法第235条に規定されています。
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
窃盗罪の構成要件は、以下の通りです。
①他人の財物を
②不法領得の意思をもって
③窃取したこと。
「他人の財物」は、「他人の占有する他人の財物」です。
また、「窃取」の意義についてですが、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことです。
このように、窃盗罪の場合は、「他人の占有する他人の財物」を占有者の意思に反して財物の占有を移転することにより成立します。
他人の物を勝手に自分の物にするという点では、業務上横領罪も窃盗罪も同じですが、その者が「自己の占有にある」か、「他人の占有にある」かという点で異なります。
ざくり言えば、人から預かっている物を自分のものにすると業務上横領罪が、預かっていない物を自分の物にすると窃盗罪に問われることになるのです。
もし、あなたやあなたの家族が刑事事件を起こしてしまい、刑事責任を問われているのであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
どのような罪が成立し、どのような流れでどんな処分を受けると考えられるのか、刑事事件専門弁護士がお話を伺った上で、丁寧にご説明いたします。
まずは、フリーダイアル0120-631-881へお電話ください。
窃盗罪と詐欺罪
窃盗罪と詐欺罪
窃盗罪と詐欺罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aさんは、兵庫県たつの市にあるコンビニエンスストアで、100円のホットコーヒーレギュラーサイズを注文しました。
注文を受けた店員は、100円コーヒー用のカップをAさんに渡し、Aさんは100円を支払いました。
Aさんは、カップをコーヒーメーカーにセットし、150円のカフェオレのボタンを押し、カフェオレをカップに注ぎました。
Aさんは度々同様の行為を行っており、その様子を目撃した常連客が店員に報告し、店長は兵庫県たつの警察署に相談しました。
ある日、店にやってきたAさんは、100円のホットコーヒーを購入し、150円のカフェオレをカップに注ぎました。
すると、待機していた兵庫県たつの警察署の警察官に、Aさんの行為は窃盗罪に当たると言われ、警察署へ連れて行かれました。
(実際の事件を基にしたフィクションです)
コンビニコーヒーで刑事事件~窃盗罪?詐欺罪?~
手軽に本格的なコーヒーが楽しめるとあって、コンビニのコーヒーは人気がありますよね。
コンビニのコーヒーはセルフ方式となっており、まずレジでコーヒーの種類や大きさを伝え、料金を払い、専用のカップを受け取ります。
そして、専用機器にカップをセットし、自分が注文した商品のボタンを押す。
簡単なプロセスですが、初めての人にとっては、「どのボタンを押せばよいのか分からない」、何回か使用している人でも「押し間違えてしまいそう」という意見が少なくありません。
しかし、わざと購入したものではない飲料をカップに注いでしまったら?
犯罪が成立し、刑事責任が問われる可能性があるのです。
上記ケースをみてみましょう。
Aさんは100円を支払ってホットコーヒーのレギュラーサイズを購入しました。
店員も、Aさんが注文した通り、ホットコーヒーレギュラーサイズの専用カップを渡しました。(①)
しかし、Aさんは、ホットコーヒーレギュラーサイズのボタンではなく、150円のカフェオレのボタンを押して、カフェオレをカップに注ぎました。(②)
上のケースでは、この行為が、「窃盗罪」に問われています。
窃盗罪
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
犯罪が成立するためには、構成要件に該当し、違法性が認められ、かつ、責任能力があることが必要です。
構成要件というのは、刑罰法規によって定義された犯罪行為の類型であり、窃盗罪を例にとれば、「他人の財物を窃取した」ことが構成要件です。
「他人の財物」とは、「他人の占有する他人の財物」のことで、自己の財物といえども、他人の占有に属し、または公務所の命令によって他人が看守しているものは、他人の財物とみなされます。
不動産については、刑法第235条の2の客体となるので、窃盗罪の客体からは除かれます。
ここでいう「占有」というのは、「人が財物を事実上支配し、管理する状態」をいいます。
また、「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいうと解されています。
窃取の方法や手段に制限はありません。
欺罔行為を手段とする場合、窃盗罪が成立するのか、或いは詐欺罪が成立するのかが問題となります。
詐欺罪
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
詐欺罪の構成要件は、以下の通りです。
1項…人を欺いて、財物を交付させた。
2項…人を欺いて、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた。
詐欺罪は、人を騙して、それによって相手が錯誤に陥り、その錯誤によって相手方が処分行為をし、財物の占有を移転又は行為者或いは一定の第三者が不法に財産上の利益を取得することにより成立します。
財物奪取の手段として人を騙しても、占有移転行為時に瑕疵ある意思に基づく占有移転がなければ、窃盗罪が成立することになります。
つまり、詐欺罪と窃盗罪の区別は、占有移転が被害者の意思に基づく処分行為によるか否かということによります。
この点、上記ケースでは、店員から100円用のカップの交付を受けた①の場面において、100円のコーヒーを買うとみせかけて150円のカフェオレを注ぐつもりで、店員を騙してカップの交付を受けたのであれば、店員は瑕疵ある意思に基づいて100円のカップの占有をAさんに移転しているので、子の場合には詐欺罪が成立するでしょう。
しかし、この時点で相手を騙す意図がなければ詐欺罪は成立しません。
一方、①の場面で騙す意図がなく、実際にカップにコーヒーを注ぐ②の場面で、コーヒーを注ぐべきであるのに、わざと150円のカフェオレを注いだのであれば、窃盗罪となるでしょう。
この場合、店員から財物が交付されたのではなく、機械から財物を取得したのですから、人を騙す行為はこの場面ではありません。
もちろん、窃盗罪の場合にも、故意がなければ犯罪は成立しません。
窃盗罪の成立には、主観的要件として、他人の財物を窃取することの認識(故意)のほかに、不法領得の意思(権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用、処分する意思)を要求するのが判例および通説となっています。
たかが50円のことですが、理論上は犯罪が成立する可能性もありますし、実際に逮捕された事例もあります。
コンビニコーヒーの件に限らす、ご自身の行った行為が犯罪と成り得るのかお悩みであれば、刑事事件に強い弁護士にご相談されてはいかがでしょう。
お問い合わせは、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所のフリーダイアル0120-631-881まで。
窃盗事件で間接正犯
窃盗事件で間接正犯
窃盗事件での間接正犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県芦屋市のコンビニで、Aは、幼稚園児の実の子供Bに商品棚に並んでいたパンを渡し、「これもって外に出てて。」と言い、Bは会計を済ませずにパンを店外に持って出ました。
売上金額と商品の在庫数が合わないことから、店長が防犯カメラをチェックすると、子供が会計せずにパンを外に持ち出している姿と、その後に続く女性の姿を確認しました。
後日、AとBが再度来店した際に、店長は兵庫県芦屋警察署に通報し、Aさんは駆け付けた警察官に逮捕されました。
(実際の事件を基にしたフィクションです)
間接正犯とは
犯罪とは、「構成要件に該当する、違法で有責な行為」をいいます。
つまり、犯罪が成立するには、以下の要件を満たす必要があるのです。
①問題となる行為が構成要件に該当すること。
②構成要件に該当する行為が違法であること。
③構成要件に該当し、違法である行為が有責に行われたこと。
要件①の構成要件については、様々な見解がありますが、基本的には「立法者が犯罪として法律上規定した行為の類型」と理解されます。
構成要件該当性が認められる場合には、行為者が実行行為を自ら行い結果を直接引き起こす場合(直接正犯)と、他人に行わせ、その他人によって結果が引き起こされる場合(間接正犯)とがあります。
間接正犯は、外見上、実行行為を自ら行っていないにもかかわらず、自らが行った場合と同視するものであるので、如何なる場合に同視し得るのかが問題となります。
間接正犯が認められるためには、他人の行為を「自己の犯罪実現のための道具として利用した」といいうることが必要となります。
それでは、どのような場合に他人の行為を「自己の犯罪実現のための道具として利用した」といえるのか、以下類型ごとに説明します。
(1)被害者の行為の介入
行為者の行為後、自由で瑕疵のない意思に基づく被害者の行為が介入した場合、間接正犯の成立は認められません。
しかし、行為者が被害者の行為をもたらし、その被害者に構成要件的結果についての認識が欠ける場合、被害者が欺罔により錯誤に陥っている場合、被害者の行為を強制した場合には間接正犯が成立します。
(2)非故意行為の介入
行為者が、構成要件的結果について故意のない媒介者の行為を介入させた場合、媒介者を「道具のように利用」して構成要件を実現させたとみることができ、間接正犯の成立を肯定することができると解されます。
(3)責任なき行為の介入
行為者が意思能力を欠く者を媒介して構成要件的結果を生じさせた場合、その者を思うがまま「道具のように利用」していたといえるので、間接正犯が成立すると解されます。
媒介者が責任能力が欠ける者(心神喪失)であっても、この者が是非弁別能力に欠けるときには、間接正犯が成立するものと解されます。
媒介者が14歳未満の刑事未成年者の場合であっても、是非弁別能力があるときには、意思の抑圧などの事情が存在しない限り、間接正犯の成立を肯定することはできません。
(4)構成要件非該当行為の介入
媒介者に構成要件要素である身分や目的がないため、媒介者の行為に構成要件該当性を肯定することができない場合、媒介者に結果を引き起こす認識・意思があったとしても間接正犯が成立し得ると考えられてきました。
上記ケースのように、幼稚園児に指示し窃盗行為をさせた場合には、当該児童は意思能力を欠く者であり、児童を「道具のように利用」したといえるので、Aの間接正犯は成立すると考えられるでしょう。
このように、直接自分が実行行為に着手していなくとも、正犯として刑事責任が問われることもあります。
どのような場合に間接正犯が成立するのかは、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
兵庫県の窃盗事件で間接正犯に問われてお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐお問い合わせください。
フリーダイアル0120-631-881まで今すぐご連絡を!
美人局で逮捕
美人局で逮捕
美人局で逮捕される場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Vさんは、出会い系サイトで知り合った女性Aさんと会う約束をしました。
Vさんは既婚者で、Aさんも既婚者であるが現在別居中だと聞いていました。
VさんとAさんは、食事のあと、ホテルへ行き肉体関係を持ちました。
ホテルから出ると、Aさんの夫だと名乗るBが突然現れ、「俺の嫁になにしてるんや!お前、独身か?結婚しとるんやったら、お前んとこの嫁に言うぞ!」と言い、金銭で和解することを持ち掛けられました。
妻にバレるのを恐れたVさんは、言われた通り金銭で解決することに合意し、手持ちの3万円を支払いました。
その後、Bと名乗る男から、更に金を無心する連絡が続き、困ったVさんは、兵庫県加西警察署に相談しました。
捜査の結果、AとBは、これまで同じような手法で多くの被害者から金銭を巻き上げていることが分かり、AとBを恐喝の疑いで逮捕しました。
(フィクションです)
美人局で問われ得る犯罪とは?
美人局とは、一般的に、ターゲットとなる男性に対し、男女が共謀して金銭をゆすり取る行為をいいます。
出会い系サイトで出会った女性と性的関係を持った直後に、夫や両親と名乗る男性から因縁をつけられ、事件解決名目で金銭を要求するケースが多くみられます。
未成年者がかかわる場合、18歳未満の少女と性的関係を持つことが刑罰法令に触れる可能性があることを逆手にとり、警察沙汰にしないことを条件に多額の金銭を要求するといった手法が多くなっています。
被害者側も、未成年者と性的関係を持った事実を公にされることを嫌いますので、美人局であると疑っても、被害を警察に相談・報告することが出来ないという点があるようです。
美人局は、恐喝罪・詐欺罪・脅迫罪・強要罪・暴行罪・傷害罪・強盗罪などに該当する可能性があります。
強盗罪
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
強盗罪における「暴行・脅迫」は、「相手方の反抗を抑圧するにたりる程度のもの」であることが必要となります。
そのような強度の暴力や脅迫で相手の反抗を抑圧し、相手の意思によらずに財物を自己または第三者の占有に移した場合には、強盗罪が成立することになります。
暴行・脅迫と財物奪取との間に因果関係が必要となるのです。
上記ケースでは、BがVさんに暴行・脅迫を用いて、Vさんから金銭を奪い取ったのであれば、強盗罪に問われるでしょう。
恐喝罪
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
「恐喝」とは、脅迫・暴行を手段として、その反抗を抑圧するに足りない程度に相手を畏怖させ、財物の交付を要求することをいいます。
この恐喝行為の結果、畏怖した相手の処分行為に基づく交付によって、財物を取得した場合に、恐喝罪は成立します。
強盗罪との違いは、暴力・脅迫の程度、そして相手の処分行為の有無です。
脅迫の結果、Vさんが畏怖を原因としてBに金銭を渡したのであれば、恐喝罪となるでしょう。
詐欺罪
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
人を欺いて財物を交付させる犯罪です。
詐欺罪は、①欺く行為をして、②それに基づき相手方が錯誤に陥り、③その錯誤によって相手が処分行為をし、④それによって財物の占有が移転し、⑤財産的損害が生じる、一連の相当因因果関係にあることが必要となります。
美人局の場合、恐喝罪との違いは、「錯誤に基づく財産的処分行為」であるか「畏怖に基づく財産的処分行為」かという点です。
相手が18歳未満ではないのに18歳未満だと虚偽の事実を示して、児童買春が成立するとして示談金を求めるケースでは、詐欺罪が問われる可能性もあります。
美人局事件でも、事案によって成立する罪名は異なりますので、一度刑事事件に強い弁護士にご相談されることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、ご家族が美人局事件で逮捕されている場合には、刑事事件専門弁護士が接見を行う「初回接見サービス」をご案内させていただきます。
詳しくは、フリーダイアル0120-631-881まで。
窃盗罪と詐欺罪
窃盗罪と詐欺罪
窃盗罪と詐欺罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
主婦のVさんは、神戸市灘区の商店街で買い物をしていると、見知らぬ女性たちから声を掛けられました。
女性たちは、「あなたには悪い霊がついている。すぐに除霊しないと、子供が死ぬことになる。」と言われ、Vさんは指示された通り、急いで自宅から貴金属品や現金などを新聞紙に包み、バックに入れて商店街に戻りました。
女性たちは、「今から除霊するから、目をつぶって。」と言われ、Vさんは目をつぶりました。
その後、女性たちはVさんにバックを返し、「これで大丈夫。悪い霊はいなくなった。」と言って去っていきました。
Vさんが家に帰ってバックの中身を確認すると、貴金属や現金が他の物と取り換えられていたことが分かり、慌てて兵庫県灘警察署に被害届を出しに行きました。
同署は、窃盗事件として捜査を開始しました。
(実際の事件を基にしたフィクションです。)
窃盗罪と詐欺罪の違い
上記ケースでは、犯人たちがVさんを「騙して」Vさんの財物をとったことから、「詐欺罪」に問われるのでは?と思われる方が少なくないのではないでしょうか。
まず、詐欺罪とはどのような場合に成立するのか、以下説明していきます。
詐欺罪
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
詐欺罪の基本的な構成要件(犯罪類型)は、「人を欺いて財物を交付」させることです。
つまり、①欺く行為をして、②それに基づき相手方が錯誤に陥り、③その錯誤によって相手方が処分行為をし、④それによって才物の占有が移転し、⑤財産的損害が生じることが必要となります。
①欺く行為
「欺く」というのは、一般人をして財物・財産上の利益を処分させるような錯誤に陥らせることをいいます。
「人」を欺くものでなければならないので、機械に対して虚偽情報を入力した場合には、詐欺罪にいう「欺く行為」にはあたりません。
②錯誤
錯誤は、財産的処分行為をするように動機付けられるものであればたります。
③処分行為
相手方の錯誤に基づく財産的処分行為により財物の占有を取得することです。
処分行為には、財産処分の意思と財産を処分する事実とが必要となります。
④財物の移転
財産の占有が移転することを「財物の移転」といいます。
⑤財産的損害
詐欺罪は財産罪であるため、被害者に何らかの財産的損害が生じたことが成立要件として必要となります。
さて、上記ケースで詐欺罪が成立するか?ということですが、Vさんは犯人に「除霊をしなければ子供が死ぬ」と言われ信じ込んでいます。
除霊のために現金や貴金属を持ってくるよう言われ、Vさんはそれらを自宅から持ってきて犯人に手渡しています。
しかし、Vさんはあくまでその場で除霊をしてもらうために現金や貴金属を持ってき、商店街で除霊のために財物を犯人に手渡しました。
Vさんは、犯人らが「除霊をしている」という点について誤信をして目をつぶっており、「財物に対する自己の占有を解き、これを犯人に終局的に移転することを容認する意思」があったとまでは言えず、「人を欺いて財物を交付」させたことにはなりません。
よって、詐欺罪は成立しません。
窃盗罪
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
窃盗罪の基本的な構成要件は、「他人の財物を、不法領得の意思をもって、窃取」することです。
「他人の財物」とは、他人の占有する他人の財物のことで、「占有」とは、人が財物を事実上支配し、管理する状態をいいます。
この「占有」は、占有の事実と占有の意思という2つの要素により構成されます。
除霊のために財物を一瞬手渡したことにより、Vさんが当該財物を占有していないことにはなりません。
「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことを指します。
財物奪取の手段として人を騙したとしても、占有移転行為時に瑕疵ある意思に基づく占有移転がなければ、窃盗罪が成立することになります。
つまり、詐欺罪と窃盗罪の大きな違いは、「占有移転が被害者の意思に基づく処分行為によるか否か」という点にあるのです。
よって、犯人はVさんの意思に反してVさんの財物の占有を自己に移転したので、窃盗罪が成立するものと考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の法律事務所です。
あなたやご家族が、詐欺事件、窃盗事件で被疑者・被告人となってしまいお困りであれば、一度弊所の弁護士にご相談ください。
詐欺事件で接見禁止
詐欺事件で接見禁止
詐欺事件で接見禁止となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
大学生のAさん(20歳)は、高額アルバイトの募集をSNSで知り、応募することにしました。
Aさんは、Bという男から、兵庫県赤穂市にある家に行き、その家に住む女性からキャッシュカードを受け取るよう指示されました。
Aさんは、指示通り、女性宅に行き、金融庁職員を名乗りキャッシュカードを受けとりました。
すると、Aさんは、女性宅の外に待ち伏せしていた兵庫県赤穂警察署の警察官に詐欺の疑いで逮捕されてしまいました。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、警察にAさんとの面会を希望しましたが、勾留まで会うことはできないと言われました。
その後、勾留の連絡と接見禁止がなされているため会うことができないことが分かり、Aさんの両親はどうしたらいいのか分からず、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
逮捕後の接見・一般面会
あなたが、刑事事件を起こして、警察などの捜査機関に逮捕された場合、一般的に、逮捕された後に勾留されるまでの間は、あなたは家族と面会することはできません。
この間、弁護士であれば、立会人なく、時間制限もなく、逮捕されている被疑者と会う(「接見」)ことができます。
勾留が決定されると、あなたは、あなたの家族と面会することができるのが通例となっています。
しかし、弁護士との接見とは異なり、被疑者の家族などとの面会は、以下のような点で制限があります。
・面会日:平日の月曜から金曜まで
・面会時間:概ね午前9時から午後5時まで
・面会人数:1日に1組3名まで
接見禁止
原則、勾留が決定した後には、被疑者の家族との一般面会が認められることになるのですが、一定のケースでは、勾留後も家族と面会することができない場合があります。
裁判所は、弁護士以外との面会を禁止する「接見禁止」処分を付すことが出来ます。
第八十一条 裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。但し、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押えることはできない。
このように、外部との接見により、罪証隠滅のおそれがあると判断された場合には、勾留後に接見禁止となることがあります。
接見禁止になりやすいケースとしては、以下のような場合が挙げられます。
・共犯者がいる場合
・証拠の確保が未了の場合
・組織的犯罪の場合
・加害者関係者と被害者・目撃者の接触を回避すべき場合
特殊詐欺は組織的に行われていることが多く、特殊詐欺の受け子として逮捕された場合には、勾留後に接見禁止が付されることが多くなっています。
接見禁止により、弁護人または弁護人になろうとする者以外との面会が禁止されます。
また、手紙のやり取りも禁止されます。
逮捕・勾留により身体拘束を受け、外界と処断された生活を余儀なくされる被疑者は、身体的にも精神的にもかなりの影響を被ることになります。
そのような場合に、更に家族に会えないとなると、益々ダメージは大きくなるでしょう。
接見禁止が付された場合の活動
接見禁止を解除し、面会するため、弁護人は、次のような活動を行います。
(1)準抗告・抗告
裁判所に対して、接見等禁止決定の取消または変更を請求します。
準抗告・抗告が認められると、接見禁止が解除され、その後被疑者・被告人と家族が接見できるようになります。
(2)接見禁止処分の解除申立て
接見禁止処分について解除を申し立てる権利は、被疑者・被告人、弁護人に認められた権利ではなく、裁判官の職権発動を促す「お願い」になります。
一般人である配偶者・両親などの近親者については、罪証隠滅のおそれが低く、これらの近親者について一部解除を申し立てると、解除が認められることが多くなっています。
このような活動は、刑事事件に精通した弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が、詐欺事件で逮捕され、勾留後に接見禁止が付されており面会できずにお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
詳しくは、フリーダイアル0120-631-881までご連絡ください。