Archive for the ‘刑事事件’ Category
特殊詐欺事件で接見禁止解除に成功
特殊詐欺事件における接見禁止解除について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
大学生のAくん(20歳)は、特殊詐欺の受け子として犯罪に関与したとして、兵庫県川西警察署に詐欺の疑いで逮捕されました。
警察から逮捕の連絡を受けたAくんの両親は、すぐにAくんとの面会を希望しましたが、警察官からは「勾留がつくまでは会えない。」と言われました。
翌日の夜に、警察官から勾留の連絡がきましたが、接見禁止が付いていて親でも面会できないと言われ、Aくんの両親は驚きました。
そこで、何とか面会することができないかと思い、刑事事件に強い弁護士に相談しに行くことにしました。
(フィクションです)
接見禁止とは?
逮捕から勾留の間は、原則ご家族の方であっても、逮捕された方と面会することはできません。
勾留が決定すると、ご家族の方も面会することができます。
おおむね、平日の9時から17時までの間に15~20分ほど面会室でアクリル板越しに逮捕されたご家族と会うことができます。
ただし、面会は一日に一組限定で、時間も制限されている上に、立会いの警察官が同席することになります。
そうであっても、ご家族のことが心配ですので、限られた時間であっても直接会いたいと留置場所まで赴かれる方が多くいらっしゃいます。
さて、さきほど、勾留となればご家族との面会が可能だといいましたが、そうでない場合もあることに留意が必要です。
勾留後に「接見禁止」決定がなされると、ご家族の方は被疑者と面会することができないことがあります。
これは、勾留されている者が成人か少年かによって異なります。
成人の場合、弁護人、刑事収容施設視察委員、外国籍の場合にはその国の国籍国の外交官以外との接見や文書の授受が禁止されます。
他方、少年の場合には、上の接見可能な者に加えて、多くの場合、両親との接見が接見禁止対象から外れていることがあります。
この接見禁止が付される理由は、大きく分けて3つあります。
①住所不定であったり、重大な犯罪を犯した者であるなど、逃亡するおそれがある。
②被疑者が容疑を否認しており、証拠隠滅や共犯者などとの口裏合わせの可能性がある。
③組織犯罪の場合も、証拠隠滅や口裏合わせをするおそれがある。
組織的な詐欺事件であると疑われる場合には、接見禁止となるケースがほとんどです。
先述のように、接見禁止が付されている場合であっても、被疑者・被告人の弁護人または弁護人になろうとする者として、弁護士との接見は可能です。
被疑者は、外部との接触が断たれ、連日の取調べにより、身体的にも精神的にも大変な負担を感じられることでしょう。
そのような中で、弁護士との接見により、ご家族への伝言やご家族からの伝言を伝えることができ、また取調べ対応についてアドバイスを受けることができます。
また、弁護士は、接見禁止解除に向けた活動も行います。
接見禁止が付された場合の活動
接見禁止を解除し、ご家族との面会を可能にするため、弁護人は、次のような活動を行います。
(1)準抗告・抗告
裁判所に対して、接見等禁止決定の取消または変更を請求します。
準抗告・抗告が認められると、接見禁止が解除され、その後被疑者・被告人と家族が接見できるようになります。
(2)接見禁止処分の解除申立て
接見禁止処分について解除を申し立てる権利は、被疑者・被告人、弁護人に認められた権利ではなく、裁判官の職権発動を促す「お願い」になります。
一般人である配偶者・両親などの近親者については、罪証隠滅のおそれが低く、これらの近親者について一部解除を申し立てると、解除が認められることが多くなっています。
このような活動は、刑事事件に精通した弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が、特殊詐欺事件で逮捕され、勾留後に接見禁止が付されており面会できずにお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
詳しくは、フリーダイアル0120-631-881までご連絡ください。
薬物事件で強制採尿
薬物事件での強制採尿について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市中央区を警ら中の兵庫県生田警察署の警察官は、路上を歩いている男性が挙動不審な行動をとったため、男性に対する職務質問を開始しました。
薬物使用を疑った警察官は、男性に任意での尿検査を提案しましたが応じなかったため強制採尿したところ、覚せい剤の陽性反応が出たので、男性を逮捕しました。
逮捕された男性は、「強制採尿は違法だ。」と主張しています。
(フィクションです)
薬物事件における尿鑑定
薬物の使用事犯においては、被疑者の尿を採取し、採取した尿から薬物の反応が出るかどうかの鑑定をすることは、薬物事犯として起訴するためにも非常に重要な証拠となるため、必要不可欠な手続です。
しかしながら、被疑者の立場からすれば、尿鑑定の結果によって自分が逮捕、起訴されるおそれがあることから、進んで自分の尿を提出することを嫌がることも少なくありません。
薬物を使用したと疑われる者に対して、尿鑑定を行うために尿を採取する行為は、捜査の実行であり、証拠の収集であって、きちんと法律に基づいたやり方で行われなければなりません。
捜査は、任意捜査と強制捜査に分けられます。
任意捜査というのは、任意処分による捜査のことです。
法律は、捜査は、できるだけ任意捜査によるべきとし、強制処分による捜査(強制捜査)は特別の必要がある場合にのみ許されるとの考えにあります。
ですので、薬物の使用事犯についても、可能であれば被疑者の同意の下に尿を採取し鑑定にかけるべきです。
強制採尿について
上のケースのように、薬物の使用が疑われている場合に、被疑者が尿の採取を拒否する場合が少なくありません。
そのような場合、強制処分として「強制採尿」が行われることがあります。
強制採尿とは、尿道にカテーテルを挿入して強制的に尿を採取する捜査手法のことをいいます。
強制採尿は強制処分ですので、事前に令状を得ることが前提となります。
過去の裁判例(最決昭55・10・23)が、捜索差押許可状によって行うことができると判断して以来、実務に置いてはこの決定に従った運用がされています。
この判例によれば、「被疑事件の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、犯罪の捜査上真にやむをえないと認められる場合には、最終手段として、適切な法律上の手続を経てこれを行うことも許されてしかるべきであり、ただ、その実施にあたっては、被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な配慮が施されるべきものと解する」としています。
つまり、判例は、強制採尿について、
①犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められる場合に、
②最終的手段として、
③適切な法律上の手続を経て、
④被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な考慮が施される限り
許される、との立場を採るものと言えるでしょう。
また、強制採尿の手続について、判例は、「右の適切な法律上の手続について考えるのに、体内に存在する尿を犯罪の証拠物として強制的に採取する行為は捜索・差押の性質を有するものとみるべきであるから、捜査機関がこれを実施するには捜索差押令状を必要とすると解すべきである」としていますが、「右行為は人権の侵害にわたるおそれがある点では、一般の捜索・差押と異なり、検証の方法としての身体検査と共通の性質を有しているので、身体検査令状に関する刑訴法218条5項が右捜索差押令状に準用されるべきであって、令状の記載要件として、強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠であると解さなければならない。」としています。
強制採尿に求められる要件を欠くような方法で行われた場合には、違法な捜査であることを主張していく必要があります。
強制採尿を行うに当たっては、職務質問で薬物使用が疑われ、被疑者の同意の下、最寄りの場所まで連行し、そこで尿を採取するという流れではなく、上のケースのように、尿採取を拒否したため強制採尿を行う必要が生じる場合もあります。
そのような場合、警察官は令状請求のために関係書類を作成し裁判所に提出するなど法律に従って様々な手続きを踏む必要があり、実際に令状を手にするまで時間がかかります。
そうすると、職務質問をした場所に被疑者を長時間留めておくことになりやすく、留めておくための手段も強度なものになりやすいので、違法性が問題となることがあります。
以上の様に、強制採尿を実施するにあたっては様々な要件を満たしていることが必要となります。
それらの要件を満たしていない、つまり違法だと主張する場合、単にその旨を主張するだけでは捜査機関や裁判所を納得させることはできません。
きちんと客観的な証拠に基づいて主張を展開する必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、薬物事件を含む刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
薬物事件でご家族が逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
あおり運転に対する罰則強化
あおり運転に対する罰則強化について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県佐用郡佐用町の高速道路を走行していたVさんは、後方車両に車間距離を極端に詰められていたため、左車線に車線変更しました。
しかし、後方車両もすぐさま車線変更しVさんの車の後ろにつけ、再び車間距離を極端に詰めてきました。
あおり運転だと思ったVさんは、危険を感じ、途中のサービスエリアで降り、警察に通報しました。
Vさんから報告を受けた兵庫県高速道路交通警察隊は、あおり運転をしたと思われる車を発見し、運転手のAさんから事情を聞いています。
(フィクションです)
あおり運転が原因で痛ましい事故が発生するケースが増えたことをうけ、あおり運転に対する罰則強化の動きが強まりました。
そして、今月には、あおり運転に懲役刑を科す道路交通法改正案が閣議決定されました。
早ければ今年の夏までに施行される見通しだということです。
現行法におけるあおり運転に対する罰則
現行法は、「あおり運転」の定義を定めていませんが、あおり運転は、一般に、道路を走行する自動車等に対して、周囲の運転手が嫌がらせ等の目的で運転中に煽ることにより、道路における交通の危険を生じさせる行為のことをいいます。
現在、道路交通法は、急ブレーキや車間距離を極端に詰める行為、幅寄せなどの行為を禁止しており、違反者に対しては、反則金の他に、罰則も設けています。
以下、あおり運転に該当する主な違反について説明します。
1.車間距離保持義務違反
あおり運転の典型は、他車との車間距離を極端に詰めるものです。
このような行為は、道路交通法上の車間距離保持義務違反となります。
第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。
自分の車と前を走行している車との間は、万が一前の車が急に停止した場合であっても、その車に衝突することがないよう、しっかり空けておかなければなりません。
しかし、前を走る車との距離を極端に詰めて煽る運転は、この義務に違反することになります。
車間距離保持義務違反の罰則は、高速自動車道上の違反については3月以下の懲役または5万円以下の罰金、一般道では5万円以下の罰金です。
2.進路変更禁止違反
急に車線変更などして、後ろから進行してくる車が急ブレーキや急ハンドルで避けなければならないようにするあおり運転は、進路変更禁止違反となります。
第二十六条の二
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない
道路交通法第26条の2第2項の進路変更禁止違反の罰則は、5万円以下の罰金です。
3.急ブレーキ禁止違反
危険防止を理由としない、不必要な急ブレーキをかけるあおり運転は、道路交通法上の急ブレーキ禁止違反に当たります。
第二十四条 車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。
急ブレーキ禁止違反の罰則は、3月以下の懲役または5万円以下の罰金です。
道路交通法改正案におけるあおり運転に対する罰則
今月閣議決定された道路交通法改正案は、あおり運転を妨害運転罪として新たに定めます。
同案には、他車の通行を妨害する目的で、交通の危険を生じさせるおそれのある方法で、通行区分違反、急ブレーキ禁止違反、車間距離保持義務違反、進路変更禁止違反、安全運転義務違反等の一定の違反行為をした場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金とする内容が盛り込まれています。
また、妨害運転により、高速自動車道等において他車を停止させるなどして道路における著しい交通の危険を生じさせ場合には、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される旨も規定されています。
以上の様に、あおり運転に対する罰則が強化された場合、逮捕・勾留で身体拘束が長期化する可能性や、略式手続ではなく公式裁判が請求される可能性も高くなるでしょう。
あおり運転や交通事件で対応にお困りの方は、交通事件も取り扱う刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
痴漢事件で勾留に対する準抗告認容で釈放
痴漢事件で勾留に対する準抗告認容で釈放される場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
酒に酔った会社員のAさんは、兵庫県加古郡播磨町の路上で、女性のお尻を服の上から触るなどし、通報を受けて駆け付けた兵庫県加古川警察署に逮捕されました。
警察署に連行されたAさんは、酔いが冷め、真摯に反省しています。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、すぐに釈放されるのか不安でたまりません。
(フィクションです)
痴漢事件で逮捕された場合の流れ
痴漢事件で逮捕された場合、通常の刑事事件と同じ流れとなります。
逮捕から48時間以内に、警察は被疑者を釈放するか、または証拠物や関係書類と共に被疑者の身柄を検察庁に送致します。
被疑者の身柄を受けた検察庁は、身柄を受けてから24時間以内に、担当検察官が被疑者の取調べを行った上で、被疑者を釈放するか、それとも当該被疑者に関して勾留請求を行います。
検察官が勾留請求をした場合、今度は被疑者の身柄は裁判所に移り、裁判官と面談します。
その後、裁判官は当該被疑者を勾留するか否かを判断します。
勾留となれば、検察官が勾留請求をした日から原則10日間、延長が認められれば最大で20日間の身体拘束となります。
兵庫県では、通常、警察から検察庁に送致された日に、勾留まで決定してしまいます。
つまり、たった一日で勾留が付くかどうかが決まってしまうのです。
勾留となれば、長期間身柄が拘束されることになり、その間学校や会社には行くことができません。
ですので、事件が学校・会社に発覚し、退学や懲戒解雇となる可能性が高くなってしまいます。
痴漢事件で逮捕された場合の身柄解放活動
長期間の身体拘束を回避するため、弁護士は以下のような身柄解放活動を行います。
(1)勾留決定前
勾留が決定する前の段階においては、検察官や裁判官に対して、勾留をしないよう働きかけます。
具体的には、警察から検察庁に被疑者の身柄が送致された段階で、担当検察官に対して、勾留の要件を充たさないことを主張し、当該被疑者について勾留請求を行わないよう、意見書を提出するなどして働きかけます。
検察官が勾留請求した場合には、今度は勾留状を発付する裁判官に対して、被疑者に対して勾留しないよう意見書を出します。
これらの働きかけは、あくまでお願いという形ですが、検察官や裁判官が把握していない被疑者に有利な事情などを提示することで、勾留の要件を充たさないとして検察官が勾留請求をしない、若しくは裁判官が検察官の勾留請求を却下する可能性も十分あります。
(2)勾留決定後
勾留が決定してしまった後でも、勾留という裁判に対する不服申し立てを行うことができます。
これを勾留に対する「準抗告」といいます。
準抗告は、身柄拘束や接見に関する処分、証人や通訳人の費用負担など裁判官による裁判(決定)に対する不服申立手続で、法律で被疑者や弁護人に認められているものです。
勾留は、1人の裁判官によってなされますが、準抗告についての判断については、勾留決定をしていない3人の裁判官によってなされます。
準抗告を申し立てる場合も、勾留の要件を充たさないことを主張する必要があります。
・罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること。
・定まった住居を有しないこと。
・罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること。
・逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があること。
加えて、上のような理由がある場合でも、被疑者を勾留する利益と、これにより被る被疑者の不利益を比較衡量した結果、被疑者を勾留する必要があることが求められます。
容疑を認めている場合には、逃亡や罪証隠滅のおそれがないことに加え、勾留することにより被る被疑者の不利益が著しいことから、勾留の要件を充たしていないと主張することになります。
例えば、被疑者と被害者の接点がなく、被疑者が被害者に供述を変えるよう迫る可能性がないこと、家族の監視が期待でき、家族も仕事もあるので逃亡する可能性はないこと、勾留されることで仕事を失い、家族の生活に支障をきたすおそれがあることなどを述べます。
勾留に対する準抗告が認容されれば、被疑者は釈放されます。
釈放される時期が早ければ早いほど、早期に社会復帰することができ、退学や懲戒解雇といった不利益を回避する可能性を高めることができます。
ご家族が痴漢事件で逮捕され、早期釈放とならないか心配されているのであれば、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
常習累犯窃盗で逮捕
常習累犯窃盗について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県たつの警察署は、兵庫県たつの市のスーパーマーケットで商品を万引きしたとしてAさんを常習累犯窃盗の疑いで逮捕しました。
Aさんには盗癖があり、これまで何回か警察につかまって裁判になったことがありました。
しかし、今回は窃盗ではなく常習累犯窃盗での逮捕ということで、連絡を受けたAさんの家族は心配になり、刑事事件専門の弁護士に相談の連絡を入れました。
(フィクションです)
常習累犯窃盗とは
常習累犯窃盗は、盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律(以下、「盗犯等防止法」といいます。)の第3条に規定される犯罪です。
それでは、盗犯等防止法第3条を見てみましょう。
第三条 常習トシテ前条ニ掲ゲタル刑法各条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニシテ其ノ行為前十年内ニ此等ノ罪又ハ此等ノ罪ト他ノ罪トノ併合罪ニ付三回以上六月ノ懲役以上ノ刑ノ執行ヲ受ケ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タルモノニ対シ刑ヲ科スベキトキハ前条ノ例ニ依ル
カタカナが使用されていて読みづらいですね。
盗犯等防止法は、昭和5年6月11日に施行された法律です。
さて、常習累犯窃盗についてですが、
①常習として
②前条に掲げたる刑法各条の罪またはその未遂罪を犯したる者にして
③その行為前10年内にそれらの罪またはそれらの罪と他の罪との併合罪について3回以上、6月以上の懲役の刑の執行を受け、またはその執行の免除を得たる者
について成立します。
①常習として
常習性は、反復して窃盗行為を行う性癖のことをいいます。
つまり、窃盗癖のことで、機械があれば抑止力を働かせることなく安易に窃盗を反復累行するという習癖があることです。
「常習性」があるか否かという判断に際して、裁判所は、(a)被告人の前科の内容(前科の回数や態様)、(b)最終刑から今回犯行に至るまでの期間および被告人の行状、(c)今回犯行の内容(動機、態様)等の事情を考慮して判断します。
②前条に掲げたる刑法各条の罪またはその未遂罪を犯したる者
前条に掲げる刑法各条の罪とは、窃盗または強盗です。
それらの罪の未遂も含まれます。
③その行為前10年内にそれらの罪またはそれらの罪と他の罪との併合罪について3回以上、6月以上の懲役の刑の執行を受け、またはその執行の免除を得たる者
今回問題となっている犯罪を行う前の10年以内に、他の犯罪との併合罪の場合も含んだ窃盗または強盗の罪で6月以上の懲役刑の執行を受けた、もしくは、その執行の免除を得ていたことが必要となります。
例えば、Aさんが2020年3月18日に万引きをしたとしましょう。
この日以前の10年以内に窃盗・強盗で6月の懲役以上の刑の執行を受けている、またはその執行の免除を得ていたのであれば、③の要件に該当することになります。
よくあるのは、最初に執行猶予付き判決が言い渡され、その執行猶予期間中に窃盗事件を起こし、刑務所で服役した後、再び窃盗事件で実刑判決が言い渡され服役し、出所後にまた窃盗事件を起こすというケースです。
具体的に考えてみると、2012年4月1日に窃盗罪により懲役1年(執行猶予3年、同年12月15日取消し)、同年11月16日に窃盗座により懲役10月に、2016年10月1日に窃盗罪により懲役10月にそれぞれ処せられ、それぞれの刑の執行が終った後、2020年3月18日に窃盗を行う場合には、③の要件に該当するということになります。
常習累犯窃盗が成立する場合、法定刑は加重され、窃盗の場合は3年以上の有期懲役が科せられる可能性があります。
しかしながら、常習累犯窃盗の場合には、酌量減軽することが可能ですので、酌量減軽があった場合には、短期が1年6月以上の有期懲役となります。
「酌量減軽」は、情状に酌量すべきものがあるときはその刑を減軽することで、犯情その他の事情を考慮して、裁判官の判断によってなされます。
例えば、窃盗事件では、被害金品が返還されていること、常習性が認められるもののその程度がそれほど強くないこと、被告人が真摯に反省していることなどの諸事情が考慮されます。
酌量減軽となる事情を積極的に主張することで、できる限り刑を軽くするよう動くことが重要です。
常習累犯窃盗事件で対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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略式手続で正式裁判を回避
略式手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市兵庫区の駅構内の階段で、女子学生のスカート内にスマートフォンを差し入れ盗撮したとして、会社員のAさんは迷惑防止条例違反で兵庫県兵庫警察署に逮捕されました。
翌日、Aさんは釈放されました。
ある日、神戸地方検察庁に呼び出されたAさんは、担当検察官から略式手続についての説明を受けました。
そのまま同意していいか判断できなかったAさんは、いったん保留にしてもらい、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
略式手続とは
「略式手続」というのは、簡易裁判所が、その管轄事件につき、検察官の請求のより、公判手続を経ないで、主として検察官の提出した証拠を審査して、一定額以下の罰金または科料を科す簡易裁判手続のことです。
事件の捜査を終えると、検察官は被疑者を起訴するか否かを決めます。
起訴するとした際も、検察官は正式裁判を請求することもできますし、略式命令を請求することもできます。
略式手続の特徴
略式命令の請求は、公訴の提起と同時に書面でしなければなりません。
また、被疑者が略式手続によることについて異議がないことことを書面で明らかにしなければならず、これを略式命令の請求書に添付しなければなりません。
略式手続は、非公開で、検察官が提出する書面や証拠物を審査した上で、略式命令が言い渡されます。
公判請求のように、起訴状一本主義の適用はなく、必要な書類・証拠物も裁判所に差し出さなければなりません。
略式命令では、100万円以下の罰金または科料を科すことができ、刑の執行を猶予することもできます。
略式命令を受けた者または検察官は、略式命令の告知を受けた日から14日以内に正式裁判の請求をすることができます。
略式手続のメリット・デメリット
被疑者から見た略式手続のメリットは、早期に社会復帰しやすいという点です。
公判請求された場合、裁判所に出廷しなければなりませんし、そのための準備に時間や労力を割くことになります。
また、裁判は公開で行われますので、身から出た錆とは言えども、自身が行った犯罪について世間に知られてしまうことになります。
この点、略式手続であれば、裁判所に何度も足を運ぶ必要はなく、普段の生活にそれほど支障をきたすことなく事件を終了させることができます。
特に、在宅事件であれば、事件について会社に発覚せずに事件が処理される可能性もあるでしょう。
逮捕・勾留されたとしても、略式手続がとられれば、その日に罰金を納めて釈放となりますので、早期に社会に復帰することができ、事件後の生活に大きな支障をきたすのを防ぐこともできます。
一方、略式手続がとられることのデメリットは、前科が付くということです。
略式手続といっても、裁判所に有罪判決が下されて、罰金または科料が科されるので、前科が付くことになります。
前科が付くことで日常生活に直接何らかの不利益が生じるのかと言えばそうではありませんが、ある一定の職に就く場合や資格を得る際に、欠格事由に該当してしまうこともあります。
また、検察官が略式命令を請求する前には、必ず被疑者に略式手続について詳しく説明し、被疑者の了解を得なければなりませんが、略式手続においては、被疑者被告人が自身の主張を行う機会はありません。
以上のように、略式手続には、メリットおよびデメリットがありますので、そられをよく考えた上で、略式手続に同意するか否かを判断しなければなりません。
そうはいっても、刑事手続には疎く、自分のケースではどちらがいいのかすぐには判断できないという方も多くいらっしゃるでしょう。
そのような場合には、略式手続に同意する前に、一度刑事事件に精通する弁護士に相談されるのがよいでしょう。
上のケースのような初犯の盗撮事件であれば、被害者との示談が成立した場合には不起訴処分となる可能性も十分あります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
盗撮事件で不起訴処分に
盗撮事件で不起訴処分となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県伊丹市のゲームセンターで、女子高生のスカート内にスマートフォンを差し入れ盗撮したとして、ゲームセンターの従業員に取り押さえられたAさん。
その後、通報を受けて駆け付けた兵庫県伊丹警察署の警察官に、迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されました。
Aさんは容疑を認めています。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、事件について詳しいことが分からず不安になり、刑事事件に強い弁護士に接見を頼みました。
弁護士から接見の報告を受けたAさんの家族は、不起訴処分の可能性について弁護士に聞いています。
(フィクションです)
不起訴処分とは
目撃者や被害者からの通報、被害届の提出、職務質問などを端緒とし、事件が捜査機関に発覚すると、警察による捜査が始まります。
警察が犯人を特定し、逃亡や罪証隠滅のおそれがあると判断されれば、犯人を逮捕することもあります。
警察は、証拠や関係資料を、身体拘束している場合には犯人の身柄と一緒に、検察庁に送ります。
そして、検察官は警察から送られてきた証拠などを検討し、追加の捜査が必要な場合は、警察に支持し捜査を行います。
捜査を終えると、検察官は犯人を起訴するか否かを決めます。
検察官は、全ての事件について起訴するのではありません。
犯人がある罪を犯したと疑う十分な証拠がある場合であっても、起訴しないとする決定を行うこともあるのです。
起訴しないとする決定を「不起訴処分」といいます。
不起訴処分には、主に以下の種類があります。
①罪とならず
そもそも犯罪が成立しない場合には、罪とはならないので、検察官は不起訴とします。
②嫌疑なし
犯罪を認定する証拠がない場合や人違いのケースがこれに当たります。
③親告罪の告訴取り下げ
被害者等による告訴がなければ公訴を提起することができない罪を「親告罪」といいます。
親告罪について、被害者等が告訴を取り下げた場合には、起訴することができませんので、不起訴となります。
④起訴猶予
犯罪を起こしたことが事実であり、その証拠もあるけれども、犯人の年齢や境遇、性格や犯罪
の軽重、情状、犯罪後の情状などを考慮し、公訴の提起を猶予し不起訴とするものです。
不起訴処分の大半は④起訴猶予によるものと言われています。
犯人が初犯で、自分の罪を認めて素直に反省している場合には、起訴猶予に向けた弁護活動を行うことが重要です。
盗撮事件で不起訴処分を獲得するには
痴漢や盗撮事件では、他の犯罪と比べ起訴猶予が認められる可能性が高いので、起訴猶予での不起訴処分獲得を目指した弁護活動を行います。
被害者のいる犯罪については、被害が金銭面で回復されたか、被害者が被疑者に対してどのような感情を抱いているのかといった点が、検察官が処分を決めたり、裁判官が宣告刑を決めるにあたって重要な意味を持ちます。
ですので、盗撮事件のように被害者がいる場合、起訴猶予に向けた最も有効な弁護活動は、被害者と示談をすることと言えます。
示談は、加害者が被害者に対して被害弁償を行い、被害者からの許しをえ、今回の事件については当事者間で解決したとする合意のことです。
示談交渉を行うにあたって、まずは、被害者の連絡先を把握する必要があります。
通常、事件の担当検察官や警察官を通じて、被害者の連絡先を教えてもらうことになりますが、性犯罪事件の場合、検察官や警察官が被疑者やその家族に被害者の連絡先を教えることはありません。
被疑者が直接被害者と連絡をとることで、罪証隠滅のおそれが生じるからです。
また、性犯罪の被害者が直接加害者と連絡をとることに応じるケースは少なく、弁護人限りで、加害者には連絡先は伝えないと約束することで、弁護人に連絡先を教えてくれることが多いです。
被害者との示談交渉にあたっては、被害者の感情に配慮しつつ、加害者の謝罪の言葉や被害弁償の意思を誠実に伝える必要があります。
そのうえで、被害者が示談をするメリット・デメリットを丁寧に説明し、被害者および加害者の両者が納得のいく内容で示談が成立するよう粘り強く交渉していかなければなりません。
被害者との示談交渉には、刑事事件や示談交渉に長けた弁護士に依頼されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件を起こしてお困りの方、被害者との示談交渉にお悩みの方は、一度弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
無免許運転で人身事故
無免許運転で人身事故をした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aさんは、免許の更新を受けずに車の運転を続けていました。
ある日、Aさんは車で外出をしていた際、兵庫県朝来市の交差点で右折しようとしたところ、左側からきたバイクと衝突してしまいました。
幸い、Aさんもバイクの運転手も大きな怪我を負わずに済みましたが、通報を受けて駆け付けた兵庫県朝来警察署の警察官に免許の提示を求められ、免許を提示したところ、Aさんの免許が有効期限切れであることが発覚しました。
(フィクションです)
無免許運転で人身事故を起こしたら
無免許運転について
無免許運転とは、公安委員会の運転免許を受けていないにもかかわらず自動車や原付自転車を運転する行為をいい、運転免許を取得したことがない場合だけでなく、免許停止中の運転や、免許取り消し処分後に免許の再取得なく運転している場合も無免許運転に含まれます。
Aさんの場合、運転免許の更新をし忘れています。
つまり、運転免許の更新を受けず、運転資格が停止した人が運転することになるので、Aさんの場合も無免許運転に該当します。
無免許運転は、道路交通法で次のように禁止されています。
第六十四条 何人も、第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第九十条第五項、第百三条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項若しくは第三項又は同条第五項において準用する第百三条第四項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。
無免許運転に対する罰則は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
無免許運転について、交通反則通告制度は適用されませんので、反則金を支払って終わることはできません。
無免許運転による人身事故の場合の刑の加重
上の規定は、無免許運転を行ったことに対するものです。
無免許で人身事故を起こした場合には、無免許運転による罪が加重されることになります。
まずは、人身事故を起こした場合に問われる罪についてみていきましょう。
人身事故を起こした場合、自動車運転処罰法に規定される「過失運転致死傷罪」または「危険運転致死傷罪」が成立する可能性があります。
(1)過失運転致死傷罪
第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
過失によって交通事故を起こし、人を死傷させてしまった場合に成立します。
前方不注意などのちょっとした不注意が原因で人身事故を起こした場合には、過失運転致死傷罪となることが多いのです。
(2)危険運転致死傷罪
第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
五 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
六 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
第三条 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。
2 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。
人身事故でも、飲酒運転、薬物使用運転、技能不足での運転、高速度での運転など、特に悪質な運転が原因である場合には、危険運転致死傷罪が適用される可能性があります。
無免許運転の場合には、過失運転致死傷罪または危険運転致死傷罪よりも刑が加重されることになります。
第六条 第二条(第三号を除く。)の罪を犯した者(人を負傷させた者に限る。)が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、六月以上の有期懲役に処する。
2 第三条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は六月以上の有期懲役に処する。
3 第四条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十五年以下の懲役に処する。
4 前条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十年以下の懲役に処する。
危険運転致傷罪の法定刑は、15年以下の懲役ですが、無免許運転である場合には、6月以上の有期懲役と刑が加重されます。
また、過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金ですが、無免許運転であれば、10年以下の懲役となります。
このように、無免許運転で人身事故を起こした場合、通常の人身事故を起こした場合よりも重い刑が科せられる可能性があります。
刑の減軽や執行猶予の獲得でお困りであれば、交通事件を含む刑事事件に強い弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
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相手を騙して物をとる:詐欺罪or窃盗罪?
相手を騙して物をとった場合に、どのような犯罪が成立し得るかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aさんは、兵庫県神戸市西区の宝石店に入り、ショーウィンドウの指輪を見ていたところ、その指輪が欲しくなりました。
Aさんは、店員に対して、指輪を試着させてもらえないかと頼み、店員はAさんに指輪を渡しました。
Aさんは、指輪をはめて、似合うかどうか考えているふりをしていましたが、他の客の対応のために店員が一瞬その場を離れたすきに、Aさんはそのまま店外に逃亡しました。
Aさんがいないことに気づいた店員は、すぐに兵庫県神戸西警察署に通報しました。
(フィクションです)
相手を騙して物をとる行為は、詐欺罪か?窃盗罪か?
相手に嘘をつき、相手から物を取得するケースはいろいろあります。
嘘をついて物を得ることから、詐欺罪が成立することが多いのですが、相手の隙を作るために嘘をつくような場合は詐欺罪ではなく窃盗罪が成立することあります。
まずは、詐欺罪と窃盗罪、それぞれどういった場合に成立するのか、説明していきます。
詐欺罪
刑法第246条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
詐欺罪は、(1)人を欺いて財物を交付させた場合(1項詐欺)、およ(2)人を欺いて、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた場合(2項詐欺)に成立する罪です。
詐欺罪が成立するためには、①「人を欺く行為」をし、それにより②「相手方が錯誤に陥り」、③「物や財産上の利益が交付され」、④「物や財産上の利益が移転する」といった一連の流れがあることが必要となります。
①欺く
欺く、つまり「欺罔」とは、人を錯誤に陥らせる行為のことです。
「人」を錯誤に陥れることが必要なのであって、「機械」を相手とする行為は該当しません。
欺く行為の手段や方法に制限はなく、言語、態度、動作、文章の方法によっても構いません。
また、欺く行為は、相手が本当のことを知れば、財物を交付しないであろうというべき重要な事項に関することでなければなりません。
②錯誤
錯誤は、観念と信念との不一致をいい、財産的処分行為をするように動機ふけられるものであればよく、法律行為の要素の錯誤であると動機の錯誤であるとを問いません。
③処分行為
相手方の錯誤に基づく財産的処分行為により、財物の占有を取得する「処分行為」が、詐欺罪の成立には必要となります。
つまり、嘘を信じた相手方が、財産を処分する意思をもって財産を占有を行為者が取得したことが求められるのです。
④財物の移転
相手方の財産的処分行為の結果として、行為者側に財産の占有が移転すること、または、行為者または第三者が不法に財産上の利益を取得することが必要です。
窃盗罪
刑法第235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
窃盗罪は、「他人の財物を窃取した」場合に成立します。
「他人の財物」とは、「他人の占有する他人の財物」のことで、自己の財物といえども、他人の占有に属し、または公務所の命令によって他人が看守しているものは、他人の財物とみなされます。
不動産については、刑法第235条の2の客体となるので、窃盗罪の客体からは除かれます。
ここでいう「占有」というのは、「人が財物を事実上支配し、管理する状態」をいいます。
また、「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいうと解されています。
窃取の方法や手段に制限はありません。
詐欺罪と窃盗罪の大きな違い
上で見たことを検討すると、詐欺罪と窃盗罪との大きな違いは、詐欺罪には相手方の財産的処分行為があるのに対して、窃盗罪にはそれがないことです。
つまり、詐欺罪と窃盗罪を区別するポイントは、相手方の財産的処分行為があるか否か、更に言えば、財産的処分行為は相手方の錯誤に基づくのですから、行為者の嘘(欺罔)の内容が財産的処分行為に向けられたものか否かという点にあります。
この点を上のケースで考えてみると、Aさんは店員に対して「指輪の試着」を頼んでおり、店員もAさんが「指輪の試着」をするものと信じ、Aさんに指輪を渡しました。
店員は、試着のために指輪を渡しており、Aさんがそのまま持ち去り自分のものにすることまでも許容してはいません。
ですので、店員の財産的処分行為はありません。
また、Aさんが店員に対して「指輪の試着」をしたいと嘘を言ったのは、店員の隙をみて逃走するためのものであり、指輪の引き渡しを求める内容の嘘ではなく、指輪という財物の処分行為に向けられた欺く行為を行っていないため、詐欺罪は成立せず、窃盗罪が成立することになると考えられます。
このように事件の内容によって成立し得る犯罪が異なる場合があります。
刑事事件を起こし、どのような罪に問われるのか分からずご不安な方、その後の対応にお困りの方は、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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強制性交等事件と中止犯
中止犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース①~
兵庫県兵庫県須磨区の路上で、Aさんは深夜に帰宅途中の若い女性を背後から襲い、近くの空き地に連れて行き、服を無理やり脱がした上で、行為に及ぼうとしました。
しかし、女性の悲痛な顔を見たことで、「可哀そうだ。」と我に返ったAさんは、その場から逃亡しました。
後日、兵庫県須磨警察署は、Aさんを強制性交等未遂の疑いで逮捕しました。
(フィクションです)
~ケース②~
兵庫県神戸市須磨区の路上で、Aさんは深夜に帰宅途中の若い女性を背後から襲い、近くの空き地に連れて行き、服を無理やり脱がした上で、行為に及ぼうとしました。
しかし、その夜は非常に寒かったため、女性の身体に鳥肌がたっており、これを見たことで、性欲が減退したAさんは、その場から逃亡しました。
後日、兵庫県須磨警察署は、Aさんを強制性交等未遂の疑いで逮捕しました。
(フィクションです)
中止犯とは
ケース①もケース②も、いずれもAさんは性交するに至らず、いずれも強制性交等未遂罪で逮捕されています。
未遂犯の場合、既遂(最終的に結果まで発生されたもの。強制性交等罪の場合には、実際に性交した場合をいいます)と比較して、その法定刑を減軽することが「できる」とされています(刑法43条)。
強制性交等罪の場合、法定刑は5年以上の懲役ですので、強制性交等未遂罪の法定刑が、2年6月以上の懲役という形で減軽される「こともある」ということになります。
これに対して、「自己の意思により犯罪を中止したとき」は、「刑を減軽し、又は免除する」とされており(刑法43条但書)、単なる未遂犯の場合と異なり、必ず法定刑が減免されることになっています。
このような場合を、一般に、中止犯と呼んでいます。
なお、中止犯は、自己の意思によって犯罪を中止しなければいけませんから、犯罪が既遂に達しているときには中止犯には当たり得ません。
未遂犯であることが前提となります。
中止犯の減免根拠
なぜ中止犯の場合に、刑が必ず減免されることになっているかについては、学説が分かれています。
よく説明に用いられるのは、政策説と呼ばれるものです。
法律は、できる限り結果の発生を避けることを目標としていますが、犯罪の実行に着手した犯人にも、できる限り最後の結果発生前に思いとどまってほしいと考えています。
そのため、「後戻りのための黄金の架け橋」として中止犯規定を設けておき、犯人に対して、犯罪を途中でやめるよう働きかけをしているというのが、この説の内容です。
これだけですべてを説明できるものではないかもしれませんが、中止犯というのは刑事政策的に設けられた規定であることは否定できないように思えます。
任意性
それでは、「自己の意思により犯罪を中止した」とはどのような場面でしょうか。
先ほど述べた通り、中止犯の規定は、刑事政策的な意図に基づいて設定されているものですから、刑の減免をするのに相応しい場面が選択されることになります。
一般に、この要件を「任意性」と呼んでおり、どのような場合が任意に犯罪を中止したといえるのかについて、判例や学説の集積があります。
この点について裁判例では、同じ立場に立たされた一般人であれば、通常犯行の継続を思いとどまらせるような状況であったかどうかということを基準に判断をしているものがあります。
しかし、判例上明確な定義などはなく、個別具体的な場面に応じて判断されるというほかありません。
中止行為
中止犯が成立するためには、「中止した」ことが要件となります。
実行行為自体が途中である場合には、それ以上行為を継続しなければ結果は発生しないため、行為を止めること自体で中止行為といえますが、既に実行行為が終了して結果が発生する前のような場合には、結果発生を防止するような行為を行う必要があります。
例えば、殺人のため、時限爆弾を仕掛けたというような場合には、実際にその爆弾を撤去するなどしなければ、中止行為として認められないということになります。
それでは、それぞれのケースについて中止犯の規定が適用されるかどうかを考えます。
①のケースは、Aさんが被害者の顔を見てかわいそうと考え、犯行を中止したというものです。一旦強制性交等罪に着手した以上、周りに人がいるとか、被害者に抵抗されるというような事情がない限り、犯人にとって、性交することに特段の障害があったとはいえません。
しかし、今回の場合には、かわいそうに思うという、犯人特有の事情により、犯罪の実行を中止ししたといえるでしょうから、
ケース①の場合には中止犯の規定が適用されると思われます。
これに対し、ケース②は、被害者の鳥肌をみて性欲が減退したというものです。
もちろん、この場合も物理的な障害があったというわけではありませんが、同じ状況に置かれた一般人であっても、性欲が減退するということは十分考えられます。
そのため、このような場合まで、中止犯の規定の恩恵を与えることは適当ではありません。
よって、ケース②の場合には中止犯規定は適用されないと思われます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件を起こし、対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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