Archive for the ‘刑事事件’ Category

盗品譲受け等事件で故意否認

2019-12-28

盗品譲受け罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県神戸市須磨区の骨とう品店を営むAさんは、盗まれた絵画と知りながら代金を支払って買い受けたとして、兵庫県須磨警察署有償盗品譲受けの容疑で逮捕されました。
Aさんは、「盗品であることの認識がない。」と故意否認しています。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、急いで接見に行ってくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)

盗品譲受け等罪について

盗品譲受け等罪は、刑法第256条に規定されています。

第二百五十六条 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、三年以下の懲役に処する。
2 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、十年以下の懲役及び五十万円以下の罰金に処する。

盗品譲受け等罪の構成要件は、以下の通りです。
【1項】①盗品、その他財産に対する罪にあたる行為によって領得された物を
    ②無償で譲り受けたこと。
【2項】①盗品、その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を
    ②運搬し、保管し、もしくは有償で譲り受け、またはその有償の処分をあっせんしたこと。

◇主体◇

本犯者(窃盗などの犯罪行為を行った者)以外の者が、本罪の主体です。
本犯者が、その犯罪によって取得した物を処分する行為は、通常、本犯についての不可罰的事後行為であり、別罪を構成しないとされます。(最高判昭24・10・1)
共同正犯も正犯として本犯者となるので、本罪の主体とはなりません。
しかし、本犯の共犯者(教唆者・幇助者)は、本罪の主体となります。
なぜならば、共犯行為は本犯に通常含まれる行為とはいえず、盗品罪が不可罰的事後行為といえないからです。

◇客体◇

本罪の客体は、「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」です。
(1)盗品等
「盗品等」とは、財産罪によって取得した財物で、被害者が法律上追求し得る権限を有するものをいいます。
(2)財産罪によって取得した物
本犯は財産罪に限られ、文書偽造罪、通貨偽造罪、賭博罪、賄賂罪などにおいて収受された物は、本罪の客体には含まれません。
本犯は、財産罪に「当たる行為」であればよく、犯罪として成立している必要はありません。つまり、本犯の行為は、構成要件に該当する違法な行為であれば足りるのです。
そのため、無責任能力者の行為であってもよく、親族相盗例の適用される者の間でおこなわれた犯罪によって取得された物も盗品性を失いません。
また、公訴時効が完成しても、被害者に返還請求権が認められる限り、盗品性は失われません。
(3)被害者の追求権
本罪の客体は、被害者が法律上追求しうる権限を有する物でなければなりません。
そのため、民法第192条により第三者が所有権を即時取得した場合には盗品性は消滅します。
しかし、盗品や遺失物は即時取得の要件が具備されたとしても、民法第193条により所有権が元の所有者に残るため、盗難・遺失のときから2年間は盗品性を失いません。
また、加工によって財物の同一性が失われ、所有権が工作者に帰属するときには、民法第246条により盗品性が失われます。

◇行為◇

(1)無償譲受け
「無償で譲受ける」とは、盗品を無償、つまりただで自己の物として取得することをいいます。
使用貸借は、無償ではあるけれども、所有権に基づく処分権を取得していないため、盗品無償譲受け罪は成立せず、盗品保管罪が成立するにとどまります。
(2)運搬
「運搬」とは、委託を受けて盗品の所在を移転することをいいます。
有償・無償、移転の距離の遠近は問いません。
(3)保管
「保管」は、委託を受けて盗品等の保管をすることで、有償・無償を問いません。
保管罪は、継続犯であるので、保管後に盗品であることを知ったが、そのまま本犯のために保管をしていた場合は、本罪が成立することになります。
(4)有償譲受け
「有償で譲り受ける」とは、盗品を売買・交換・責務の弁済等の名目で有償に取得することをいいます。
本犯者から委託を受けたか否かは問われません。
盗品有償譲受け罪が成立するためには、単に契約が成立しただけでは足りず、代金は未払いであっても盗品が引き渡されれば本罪が成立することになります。
また、盗品であることの認識は、契約時にはなかったとしても取得時にあれば足ります。
他方、取得した後に盗品であると認識した場合には、保管罪と異なり有償譲受け罪は成立しません。
(5)有償の処分のあっせん
「有償の処分のあっせん」とは、盗品の有償的な法律上の処分行為(売買、交換、質入れ等)を媒介・周旋することです。
本犯者から委託を受けたか否かを問わず、あっせんそれ自体は有償・無償を問いません。

◇故意◇

盗品譲受け等罪は、故意犯です。
盗品譲受け等罪のどの犯罪類型においても、行為者に客体が「盗品であることの認識」が必要となります。
盗品であることの認識は未必的なもので足ります。
保管罪と運搬罪は継続犯であるため、行為の開始後に認識した場合、認識した以降に犯罪が成立することになります。
一方、有償・無償譲受け罪と有償処分のあっせんの場合は、即成犯であるので、行為の開始時に認識がない場合には犯罪は成立しません。

上のケースにおいて、Aさんは盗品有償譲受け罪に問われています。
Aさんは、「買い取った商品が盗品であるとの認識はなかった。」と故意否認しています。
Aさんが盗品である商品を取得した時に盗品を認識していた場合には、盗品有償譲受け罪が成立するでしょう。
しかし、梱包されたままの商品を複数買い取りに出す場合、買取側も「盗品かもしれないな。」と思ったであろうと判断される余地もあり、未必の故意が認められる可能性もあります。
「盗品とは知らなかった。」と故意否認する場合には、捜査段階で不利な供述がとられないよう、早期に刑事事件に精通する弁護士に取調べ対応について相談することが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。

飲酒運転で逮捕されたら

2019-12-26

飲酒運転をし逮捕される場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県神戸市灘区にある会社へは車で通勤していたAさん。
いつものように車で会社へ行き、会社の駐車場に駐車しました。
その日の夜は、会社の忘年会が予定されており、Aさんは飲酒後は車をそのまま会社に置いて電車かタクシーで帰宅しようと考えていました。
ところが、忘年会後Aさんはいつもより疲れていたため一旦会社に戻り、駐車場に停めていた車の車内で寝ることにしました。
3時間後、目が覚めたAさんは、そのまま車を運転して帰ろうと思い、車を発進させました。
すると、年末警戒にあたっていた兵庫県灘警察署の警察官に車を停止するよう言われ、Aさんは車を停止しましたが、警察官はAさんの飲酒運転を疑い、呼気検査の結果、基準値を上回る数値が出たため、道路交通法違反の疑いで逮捕されました。
(フィクションです)

飲酒運転自体で成立し得る犯罪とは

年末年始のこの時期は、忘年会や新年会でお酒を口にする機会が増えてしまう方が多いのではないでしょうか。
しかし、気を付けなければならないのは、お酒を飲んだら絶対に車を運転してはならない、ということです。

飲酒運転」とは、みなさんご存知の通り、お酒を飲んだにもかかわらず車などを運転することです。
お酒が入った状態では、通常より認知機能が低下し事故を起こしてしまうおそれもありますので、飲酒運転は法律で禁止されています。
今回は、飲酒運転をしてしまった場合に、何の罪に問われ、どのような刑罰を受ける可能性があるのかについて、改めて説明していきます。

道路交通法違反

飲酒運転」を行った場合、例えば上記ケースのように警察官に呼び止められたことにより飲酒運転が発覚した場合のように、交通事故を起こさずとも、道路交通法違反に問われることとなります。
飲酒運転」といっても、道路交通法上は、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2つに分けられます。

1.酒気帯び運転

第六十五条 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。

酒気を帯びた状態で車などを運転した場合、道路交通法違反となります。
しかし、体内にアルコールが保有されている場合であれば必ず処分の対象となるのではありません。
呼気1リットル中のアルコール量が0.15mg未満(もしくは、血液1ml中0.3mg未満)の場合、酒気帯び運転ではありますが、これに対する罰則はありません。
ですので、この場合、罰則とは別に純粋に禁止規定に抵触する、ということになります。

呼気1リットル中のアルコール量が0.15mg以上であれば、刑事処分の対象となり、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、行政処分については、呼気1リットル中のアルコール量が0.15mg以上0.25mg未満の場合は、違反点数が13点となり前歴がない場合でも90日の免許停止、呼気1リットル中のアルコール量が0.25mg以上であれば、25点で免許取り消しとなります。

2.酒酔い運転

呼気1リットル中のアルコール量にかかわらず、アルコールの影響により正常な運転ができない状態で運転した場合には、道路交通法の「酒酔い運転」となります。
これに対する刑罰は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金と酒気帯び運転よりも厳しいものになっています。
お酒をどれだけ飲んでいるかは関係なく、呂律が回っていない、真っすぐ歩けないなど、正常な運転ができない状態であれば「酒酔い運転」に当たります。
酒酔い運転の違反点数は、35点で免許取り消しとなります。

このように、交通事故を起こさずとも、一定程度体内にアルコールを保持したまま車などを運転した場合には、道路交通法違反となり刑罰が科される可能性があります。
ちなみに、自動車だけでなく自転車の場合も同様に道路交通法が適用されますので、ご注意ください。

上記ケースのように、交通事故は起こしていないが、検問などで飲酒運転が発覚すると、その場で現行犯逮捕となることもあります。
飲酒運転により交通事故、特に人身事故を起こした場合には、道路交通法違反のみならず過失運転致傷や危険運転致傷にも問われる可能性もあります。
飲酒運転逮捕されたら、すぐにでも釈放されないかと心配になられるかとは思います。
逮捕後引き続き勾留され長期間の身体拘束となるのは、重大な人身事故を起こした場合や、否認している場合、警察のアルコール検査などを拒否し逃亡した場合などです。
そのような場合には、逮捕後すぐに弁護士に相談・依頼し、身柄解放活動を回避し、長期の身体拘束を回避する必要があるでしょう。
一方、飲酒運転逮捕されたものの48時間以内に釈放となる場合もあります。
しかし、留意していただきたいのは、すぐに釈放されたからといって事件が終了したのではありません。
在宅事件として捜査が進んでいきますので、手続の流れや見込まれる処分、取調べ対応について弁護士に相談し、きちんと対応することが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件・少年事件で対応にお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
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傷害事件で被害届が出されたら

2019-12-24

傷害事件で被害届が出された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県神戸市垂水区に住むAさんは、通勤通学の時間帯に、自宅付近にあるバス停留所近辺に空き缶を投げたところ、通行人の顔に当たってしまいました。
Aさんは誰かに当てるつもりはありませんでしたが、結果として通行人Vさんに空き缶が当たってしまい、Vさんの額に擦り傷を負わせてしまいました。
Vさんは、立腹しており、その足で兵庫県垂水警察署傷害事件で被害届を出しに行くと言っています。
Aさんは、わざと怪我させようと思っていなかったのに傷害罪が成立するものなのか疑問に思っています。
(フィクションです)

人の身体を傷害する罪には、「傷害罪」と「過失傷害罪」とがあります。
どちらも「人の身体を傷害する」という結果は同じですが、両者の違いは、故意犯であるか過失犯であるかという点です。

傷害罪

傷害罪は、刑法第204条に規定されています。

第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

◇客体◇
傷害罪の客体は、「人の身体」です。
行為者自身の身体の傷害(自傷)は罪となりません。

◇行為◇
傷害罪の実行行為は、「人の身体を傷害すること」です。
傷害」の概念についてですが、判例によれば、「人の生理的機能に障害を加えること」であると解されます。
また、傷害の方法は有形であると無形であるとを問いません。
傷害」に該当する行為として、殴る蹴るなどにより人に怪我を負わせる行為のみならず、怒号等の嫌がらせにより、不安・抑うつ状態に陥れること、性病であることを隠して相手方の性器に自己の性器を押し当て、相手方に性病を感染させたこと、キスマークをつけること、皮膚の表皮を剥離すること、などが含まれます。

◇故意◇
傷害罪は、暴行罪の結果的加重犯であるので、傷害罪の故意は、「暴行の認識」があれば足りると解されます。
つまり、人の身体に対して有形力を行使することの認識であり、未必的認識で足りるのです。
これより、上記ケースに当てはまると、Aさんは積極的に誰かに対して空き缶をぶつけてやろうと思ってはいなかったようですので、一見故意はなかったように思われます。
しかし、通勤通学の時間帯という人が通常よりも多く行き交うであろうと思われる状況において、バス停留所近辺に向かって空き缶を投げるという行為から、「もしかしたら空き缶が誰かに当たるかもしれないけど、いいか。」と思っていた場合には、未必的故意が認められ、傷害罪が成立する可能性があります。

過失傷害罪

過失傷害罪は、刑法第209条に規定されています。

第二百九条 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

◇過失◇
傷害罪との違いは、「過失により」人を傷害する点です。
「過失」とは、不注意に構成要件上保護された法益を侵害することです。
過失傷害罪の場合は、不注意に人を傷害することです。

傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金であるのに対して、過失傷害罪は30万円以下の罰金または科料です。
そして、過失傷害罪は、親告罪であるので、告訴がなければ公訴を提起することができません。
傷害罪は親告罪ではありませんが、被害者との示談が成立した場合、不起訴処分となる可能性が高まり、前科を付けることなく事件を終了させることが期待できるでしょう。
いずれの場合も、怪我をされた被害者の方への適切な対応をとることが、その後の結果にも大きく影響しますので、重要だと言えるでしょう。

傷害事件を起こし、被害者の方との示談交渉にお困りであれば、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

少年による特殊詐欺事件

2019-12-23

少年特殊詐欺事件を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
関東に住む大学生のAくん(18歳)は、「高額バイト」と謳ったネット上のアルバイト募集広告を見て、連絡をとりました。
相手からは、「指示された場所に行って、封筒を受け取るだけで、数万円は稼げる。」と言われ、Aくんは仕事を請け負うことにしました。
Aくんは、Bと名乗る男から電話で兵庫県淡路市にある民家に行き、弁護士の秘書と名乗り封筒を受け取るよう指示を受けました。
Aくんは、指示された民家へ行き、住人である高齢女性から封筒を受け取り、近くのATMで封筒の中に入っていたキャッシュカードで現金50万円を引き出しました。
すると、Aくんは、警戒していた兵庫県淡路警察署の警察官に逮捕されてしまいました。。
Aくんは、「これはいわゆる特殊詐欺だ。」と分かってはいましたが、Bからは「法的に問題ない。」と言われ、自分が警察に捕まることはないと思っていました。
逮捕の連絡を受けたAくんの両親は、遠方に住んでいるためすぐに接見に向かってくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)

少年による特殊詐欺事件

少年による特殊詐欺への関与は後を絶ちません。
マスメディアが、社会問題として特殊詐欺について大々的に取り上げており、頻繁に特殊詐欺犯逮捕のニュースが報道されているにもかかわらず、なぜ少年たちの特殊詐欺への関与がなくならないのでしょうか。
少年特殊詐欺に関与する場合の多くが、いわゆる「受け子」や「出し子」といった役割を担うものです。
特殊詐欺は組織的に行われており、組織の上層部の者が被害者に電話をかけ、被害者の親族や警察官・弁護士・銀行員など社会的に信頼のある者と偽り、被害者からキャッシュカードや現金などを騙し取るよう仕向けます。
これらの役割は、いわゆる「かけ子」と呼ばれます。
一方、騙された被害者から実際に現金やキャッシュカードを受け取り、ATMから現金を引き出す役割は、組織の外部の人間に行わせることが多くなっています。
なぜならば、「受け子」や「出し子」といった役割は、被害者と直接接するため、警察に逮捕されるリスクが大きく、組織の人間には行わせず、外部の人間に委託させるからです。
「簡単に大金が稼げる。」などと甘い言葉で誘惑し、興味を示した者に「受け子」や「出し子」を担わせるのが特殊詐欺のやり方です。
そのような甘い言葉に乗り、特殊詐欺に関与してしまう少年は少なくありません。
組織の者から、「犯罪ではない。」「逮捕されることはない。」「大丈夫。」などと説き、社会経験も少ない少年たちは簡単にそのような言葉を信じ、悪いことをしているかもしれないと思いつつも、犯罪に手を染めてしまう傾向にあります。

少年が特殊詐欺事件で逮捕されたら

20歳未満の少年であっても、特殊詐欺に関与すれば、成人の場合と同様に逮捕される可能性は大いにあります。
逮捕される大半が、事件現場やその付近で警戒していた警察官に現行犯逮捕されるものとなっています。
少年が逮捕されると、逮捕に引き続き勾留となる可能性が高いでしょう。
少年の場合は、勾留に代えて「勾留に代わる観護措置」がとられ、警察署の留置場ではなく、少年鑑別所に収容されることもあります。
捜査段階では、捜査を担当している警察署の留置場やその周辺の警察署の留置場に留置されることになります。
上のケースでは、兵庫県淡路警察署が捜査を担当していますので、同警察署での留置、もしくはその周辺の警察署の留置施設に留置されることになります。
しかし、捜査が終了し、事件が家庭裁判所に送致されると、少年の身柄は少年鑑別所に移ることになります。
家庭裁判所は、事件を受理すると、少年に対して「観護措置」をとるか否かを判断します。
観護措置とは、家庭裁判所が調査・審判を行うため、少年の心情の安定を図りつつ、少年の身体を保護しその安全を図る措置のことです。
ですので、事件が家庭裁判所に送致されると、少年に対して観護措置をとるか否かについて家庭裁判所が判断することになります。
しかし、実務上、捜査段階で逮捕・勾留されていた少年は、家庭裁判所に送致されると観護措置をとられるのがほとんどです。
さて、少年事件の管轄は、「少年行為地、住所、住居又は現在地による」と少年法で定められています。
実務上、事件の捜査を担当した警察署から、その対応する検察庁に事件が送致され、さらにその検察庁に対応する家庭裁判所に送致されますが、家庭裁判所送致後、行為地と少年の住所地が異なる場合には、「保護の適正を期するため特に必要がある」として、少年の住所地を管轄する家庭裁判所に移送されることが多くなっています。
つまり、Aくんは兵庫県淡路市で事件を起こし、兵庫県淡路警察署が捜査を担当しています。
兵庫県淡路警察署は、事件を神戸地方検察庁洲本支部に送致し、神戸地方検察庁洲本支部神戸家庭裁判所洲本支部に送致します。
神戸家庭裁判所洲本支部は、事件を受理しましたが、Aくんの両親も関東のX県に住んでおり、学校もX県である場合、神戸家庭裁判所洲本支部で調査・審判を行うことは、裁判所にとっても、少年や保護者にとっても不便であり、適当ではないため、Aくんの自宅を管轄する家庭裁判所に移送することになります。

特殊詐欺事件は、都道府県をまたいで行われることが多く、逮捕された少年が、住所地から遠く離れた警察署に留置されることも少なくありません。
そのような場合、少年の家族はすぐに少年に会いにいくことは出来ず不安になられることと思います。
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お子様が逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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自転車に火をつける行為は放火罪?器物損壊罪?

2019-12-22

自転車火をつけた場合、如何なる罪が成立し得るのか、放火罪および器物損壊罪の違いを説明しながら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県神崎郡福崎町の集合住宅で自転車が焼けた火事で、兵庫県福崎警察署は、Aさんを器物損壊の疑いで逮捕しました。
逮捕容疑は、〇月△日午後6時頃、集合住宅の共有スペースに停めてあった自転車の前かごに火をつけて壊したということです。
(実際の事件を基にしたフィクションです)

自転車に火をつけた場合、何罪に問われるの?

上のケースでは、Aさんは集合住宅の共有スペースに停めてあった自転車の前かごに火をつけて壊したとの疑いがかけられています。
自転車の前かごに「火をつけて」壊したのだから、「放火罪」が成立するように思えますが、警察は器物損壊の容疑でAさんを逮捕しています。
なぜ放火罪ではなく器物損壊罪が適用されたのでしょうか。

放火罪について

まずは、放火罪についてみていきたいと思います。
刑法は「放火及び失火の罪」として、第108条から第118条まで規定しています。
そのうち、第108条は現住建造物等放火罪、第109条は非現住建造物等放火罪、そして第110条は建造物等以外放火罪について規定しています。

集合住宅の共有スペースに停めてあった自転車の前かごに火をつけた場合、抵触する可能性があるのは第110条の「建造物等以外放火罪」です。

第百十条 放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
2 前項の物が自己の所有に係るときは、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

◇客体◇
本罪の客体は、「現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物・汽車・電車・艦船・鉱坑」や「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物・艦船・鉱坑」以外のすべての物です。
建造物等には当たらない建造物や自動車・バイクなどへの放火に適用されることが多いようです。
自転車の前かごも、本罪の客体に当たるでしょう。

◇行為◇
本罪の実行行為は、火を放って目的物を焼損することです。
「火を放つ」とは、目的物の焼損の原因力を与える行為をいい、媒介物を利用する場合も含まれます。

◇公共の危険◇
本罪が成立するためには、実行行為の結果、「公共の危険」が発生することが必要となります。
「公共の危険」の発生は、放火行為によって一般不特定の多数人をして、所定の目的物に延焼しその生命・身体・財産に対し危害を感ぜしめるにつき相当の理由がある状態をいいます。(大判明44・4・24)
ただ、必ずしも108条および109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく、不特定または多数の人の生命・身体・建造物等以外の財産に対しする危険も含まれるとされます。(最決平15・4・14)

◇故意◇
客体に放火して焼損することの認識に加えて、「公共の危険」の発生についての認識を要するかいなかについて、学説には争いがありますが、判例は不要との立場をとっています。(最判昭60・3・28)

さて、建造物等以外放火罪が成立するポイントとして、「公共の危険」の発生の有無があります。
公共の危険が発生しなかった場合、客体が他人所有のものであり、焼損が器物損壊罪における「損壊」といえる程度に達していれば、「器物損壊罪」が成立することになります。
過去の判例では、具体的状況のもとで、人家等との距離、人家等の構造や材質、火力の程度、被害物件の状況、可燃物の有無や天候などといった周囲の状況を考慮し、一般人の蓋然性判断を基準に危険発生の有無が判断されています。

上のケースは、集合住宅の共有スペースに停めてあった自転車の前かごを放火していますが、当該客体に放火することで、住居スペースなどにも燃え移り不特定多数の人や物に損害を与えるおそれがあったと判断されれば「建造物等以外放火罪」が成立する可能性があります。
一方、そのような「公共の危険」を生じさせたとまでは言えないと判断されれば、「器物損壊罪」が成立することになります。
「建造物等以外放火罪」の法定刑は、1年以上10年以下の懲役であるのに対し、「器物損壊罪」は3年以下の懲役または30万円以下の罰金若しくは科料と大きく異なります。

自身の行った行為が如何なる罪に当たるのか、一度刑事事件に強い弁護士にご相談されてはいかがでしょう。

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器物損壊事件で逮捕されたら

2019-12-21

器物損壊事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県西脇市のアパートの窓ガラスに石のようなものが投げつけられ窓ガラス2枚が割られるという事件が発生しました。
住人のVさんが、兵庫県西脇警察署に通報したことで事件が発覚しました。
付近の防犯カメラの映像から、県内に住むAさんの犯行である可能性が浮上しました。
Aさんは、兵庫県西脇警察署の任意同行に応じ、容疑を認めたため、その後器物損壊の容疑で逮捕されることとなりました。
警察は、AさんとVさんとの間に何らかのトラブルがあったとみて調べているとのことです。
(フィクションです)

器物損壊罪について

器物損壊罪は、刑法第261条に規定されています。

第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

器物損壊罪は、他人の物を損壊・傷害した場合に成立する犯罪です。

◇客体◇

器物損壊罪の客体は、公用文書等、他人の私用文書等、建造物・艦船以外のすべての物です。
「公用文書等」とは、刑法第258条の客体である「公務所の用に供する」文書のことで、その作成者、作成の目的等にかかわらず、現に公務所において使用に供せられ、または使用の目的で保管されている文書のことをいいます。
「私用文書等」は、刑法第259条の客体である「権利又は義務に関する他人の文書または電磁的記録」を指し、権利義務の存否、得喪、変更等を証明する文書・電磁的記録のことです。
また、「建造物・艦船等」は、刑法第260条の客体であり、「建造物」とは、家屋その他これに類似する建築物であって、屋蓋を有し、障壁または柱材で支持され、土地に定着し、その内部に人が出入りすることができることが必要となります。「艦船」は、軍艦および船舶を意味します。
これらのものに該当しないすべての物が、器物損壊罪の客体となります。
土地などの不動産、動物も本罪の客体に含まれます。

◇行為◇

器物損壊罪の構成要件的行為は、「損壊」または「傷害」です。
「損壊」とは、物質的に物の全部または一部を害し、または物本来の効用を失わせる行為をいいます。
判例は、食器に放尿する行為、他人の挿苗を引き抜き投棄した行為などが「損壊」に当たるとしています。
「傷害」は、動物を毀損することで、物理的に殺傷する場合だけでなく、動物としての本来の効用を失わせる場合も含みます。
例えば、鯉を流出させる行為や、仕切網のロープを解いて捕獲したイルカを逃す行為も「傷害」に当たるとされます。

◇故意◇

器物損壊罪が成立するためには、故意に「他人の物を損壊・傷害」していなければなりません。
つまり、客体が他人の所有に属すること、および当該行為によって客体を物理的に毀損し、または客体の効用を害することの認識が必要となります。

器物損壊事件で逮捕されたら

器物損壊罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪です。
ですので、器物損壊に問われ、容疑を認めているのであれば、被害者との示談を成立させることが何より重要です。
被害者との示談が成立し、告訴を取下げてもらえれば、事件を早期に解決することができます。
つまり、被害者との示談成立により、終局処分として不起訴を獲得し、逮捕されている場合には釈放となります。
しかし、被害者との示談交渉は、加害者やその家族が直接しないほうがよいでしょう。
なぜなら、捜査機関から被害者の連絡先を教えてもらえることは稀ですし、被害者が直接連絡することを拒否する場合も多いからです。
ですので、弁護士を代理人とし、被害者との示談交渉を行うのが一般的です。

刑事事件を起こし、被害者との示談交渉にお困りであれば、刑事事件に精通する弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りの方は、弊所の弁護士にいますぐご相談ください。
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自殺関与罪で逮捕されたら

2019-12-20

自殺関与(教唆・ほう助)罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県丹波篠山市に住むAさんは、交際相手のVさんと結婚の約束をしていました。
しかし、Vさんの両親に二人の結婚を強く反対されたため、二人は将来を悲観し、心中することにしました。
Aさんは、ホテルで青酸カリを用意し、Vさんに渡しました。
Vさんは青酸カリを飲み込み、死亡しました。
AさんもVさんの後を追い青酸カリを飲み込んだのですが、ホテルの従業員に発見され、一命を取り留めました。
兵庫県篠山警察署は、Aさんの様態が回復するのを待って、Vさんに対する自殺ほう助の疑いで取り調べをするとのことです。
(フィクションです)

自殺関与罪とは

自殺をすること自体は、犯罪ではありません。
ですので、自殺した人が何か罪に問われることはありません。

しかし、自殺の手助けをしたり、自殺をするようそそのかしたりする場合には、刑事責任が問われる可能性があります。
刑法第202条は、自殺関与罪および同時殺人罪について規定しています。

第二百二条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。

本条の前半部分が「自殺関与」の罪に関する規定で、後半部分が「同意殺人」の罪に関するものです。

自殺関与罪には、意思能力ある者を教唆して自殺させる「自殺教唆罪」と、意思能力のある者の自殺行為をほう助して自殺させる「自殺ほう助罪」の2つがあります。

◇客体◇
本罪の客体は、「人」です。
「人」は自殺の意味を理解し、自由な意思決定の能力を有する者であることが必要です。
ですので、意思能力を欠く幼児や心神喪失者を自殺させる行為、強制により自殺させる行為は、自殺関与罪ではなく殺人罪の間接正犯となります。

◇行為◇
本罪の構成要件的行為は、「教唆」すること、または「幇助」することです。
「教唆」とは、自殺意思のない者に、故意に基づく何らかの用いて自殺意思を起こさせることをいいます。
「幇助」とは、すでに自殺を決意している者に対してその自殺行為を援助し、自殺を容易にさせることをいいます。

「自殺教唆罪」と「自殺幇助罪」の違いは、自殺をする人が既に自殺を決意しているかどうかという点です。
自殺関与罪は、未遂も処罰されます。

上記事例では、AさんVさんともに話し合いの末自殺することを決意しています。
Aさんが青酸カリを準備し、Vさんに手渡し、Vさんはそれを飲み死亡しています。
Vさんは既に自殺を決意しており、Aさんは青酸カリを準備することにより自殺を容易にしたと言えますので、自殺ほう助罪が成立するものと考えられます。

それでは、もしAさんが最初から自分は自殺するつもりなど一切なかった場合にはどうなるのでしょうか。
例えば、AさんはVさんと婚約していたものの、他の女性と恋仲になりVさんとは別れるつもりであったが、Vさんはそのようなことに同意しないため、AさんがVさんと結婚すると決めたように装い、両親の反対があることを利用し、Vさんに心中を持ち掛けたとしたら。
このような場合には、殺人罪に問われることになります。
判例によれば、「被害者は被告人の欺罔の結果被告人の追死を予期して死を決意したものであり、その決意は真意に添わない重大な瑕疵ある意思であることが明らかである。そしてこのように被告人に追死の意思がないにもかかわらず被害者を欺罔し被告人の追死を誤信させて自殺させた被告人の所為は通常の殺人罪に該当する。」としています。

自殺幇助罪は、先述したように6月以上7年以下の懲役又は禁錮という重い法定刑が設けられています。
起訴された場合には、正式公判に臨むことになります。
しかし、背景事情として酌量の余地があるような場合には、弁護士がその点を客観的証拠とともに説得的に主張することで、実刑を回避し執行猶予付き判決獲得を目指します。
そのような弁護活動は、刑事事件を専門とする弁護士にお任せされるのがよいでしょう。

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刑事事件で正当防衛を主張

2019-12-17

違法性阻却事由の正当防衛について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県明石市の路上で、いきなり背後から知らない男性に抱きつかれたAさんは、必死に抵抗しようとしました。
しかし、男性は果物ナイフをAさんに突きつけ、「だまらんと、これで殺すぞ。」などと脅し、Aさんを人気のない河川敷に連れて行き、押し倒しました。
男性は、Aさんの身体を触り、服の中にも手を入れてきたので、Aさんは「このままじゃ犯される。」と思った時、男性が果物ナイフを手から離し地面に置いていることに気が付きました。
とっさに、Aさんはその果物ナイフを手に取り、男性の太ももに刺しました。
痛みで男性がひるんだ隙にAさんは急いで逃げ、最寄りの駐在所に駆け込みました。
兵庫県明石警察署が現場に駆け付けた時には、男性はすでに意識がなく、搬送先の病院で死亡が確認されました。
警察は、Aさんを傷害致死の容疑で神戸地方検察庁に送検しました。
(実際の事件を基にしたフィクションです。)

犯罪が成立するには

「犯罪」は、一般的に、「構成要件に該当する、違法で有責な行為」と理解されています。
つまり、犯罪が成立するためには、以下の要件を充たしていなければなりません。
①人の行為であること。
②法律により犯罪として決められた行為類型(構成要件)に該当すること。
③構成要件に該当する行為が違法であること。
④構成要件に該当し、違法である行為が有責に行われたこと。

上記ケースの場合、Aさんに対して傷害致死罪が問えるか否かが問題となっています。
傷害致死罪は、刑法第205条に以下のように規定されています。

第二百五条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。

傷害致死罪の構成要件は、人の身体を傷害した結果、人を死なせることです。
Aさんは、男性が所持していた果物ナイフで男性の太ももを刺し、大量出血で死なせてしまったということであれば、傷害致死罪の構成要件に該当していると考えられるでしょう。
しかし、Aさんは、男性に果物ナイフで脅された上で襲われていたため、どうにかして逃げなければという思いから、視界に入った果物ナイフで男性の太ももを刺した、ということですが、このことは③の違法性の要件を充たさないと言えるのでしょうか。

違法性阻却事由:正当防衛について

構成要件に該当する行為について、刑法上の禁止を解除し、違法性を失わせる特段の事情を「違法性阻却事由」といいます。
違法性阻却事由として刑法に規定されたものとしては、
・正当行為
正当防衛
・緊急避難
があります。

ほとんどの方が「正当防衛」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
正当防衛については、刑法第36条に次のように規定されています。

第三十六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

つまり、正当防衛とは、「急迫不正の侵害」に対して、「自己又は他人の権利を防衛するため」「やむを得ずにした行為」です。

1.急迫不正の侵害

◇侵害◇
「侵害」とは、権利を侵害する危険をもたらすものをいいます。

◇急迫性◇
「急迫」とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味します。

◇不正な侵害◇
ここでいう「不正」というのは、違法であることを意味します。

2.自己又は他人の権利

「自己又は他人の権利」の「権利」は、明確な権利性を有するものだけでなく、法律上保護に値する利益であれば足りると理解されています。

3.防衛の意思

正当防衛は、「防衛するため」の行為でなければなりません。
しかし、防衛行為であるためには、客観的に防衛行為としての性質をゆうしていればよいのか、それとも、防衛の意思で当該行為がなされなければならないのか、という問題となります。
判例は、防衛の意思を正当防衛の要件と解しており、憤激・逆上したからといって防衛の意思は直ちに失われず、攻撃の意思が併存していても防衛の意思は認められ得るとしています。
ただし、「攻撃を受けたのに乗じ積極的な加害行為に出たなどの特別な事情」があるときには防衛の意思は否定され、「防衛に名を借りて新会社に対し積極的に攻撃を加える行為」は防衛の意思を欠くと解しています。

4.やむを得ずにした行為

「やむを得ずにした行為」の意義について、正当防衛の成立要件として、必要性および相当性の両方を必要とするのが判例および通説です。

◇必要性◇
「やむを得ずにした行為」というためには、必ずしもその行為が唯一の方法であることまで必要ではなく、また、厳格な法益の権衡も要求されませんが、少なくとも相手に最小の損害を与える方法を選ぶことが求められます。

◇相当性◇
相当性に関して、判例は、どのような「結果」が生じたのかという点よりも、どのような「手段」がとられたのかという点に着目して判断しています。
「素手」対「素手」であったのか、「凶器」対「凶器」であったのか、といったように、行為様態と防衛行為の危険性の比較衡量によって相当性を判断しているものが多くなっています。
相当性については、武器の対等性の他、侵害者・防衛行為者の身体的条件、加害行為の態様、防衛行為の危険性・性質、代替手段の有無等の事情を考慮して判断されます。

上記ケースにおいて、Aさんが正当防衛を主張した場合、「やむを得ずにした行為」の相当性の点が争われるのではないかと考えられます。
ですので、上述した相当性について判断する際に考慮される事情について、被疑者・被告人側に有利な事情を示し、正当防衛が認められるよう動くことが重要です。

そのような活動は、刑事事件に精通した弁護士に任せるのがよいでしょう。
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殺人事件で故意否認

2019-12-16

殺人罪に問われ故意否認している場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、ある夜、神戸市東灘区にある交際相手のVさん宅を訪れました。
しかし、Vさんから別れ話を切り出されたことに腹を立て、Vさんの首を絞めるなどの暴行を加えました。
我に返ったAさんは、Vさんの首から手を放しましたが、Vさんは意識を失っていました。
Aさんは怖くなりその場を後にしました。
後日、兵庫県東灘警察署がAさん宅を訪れ、殺人の容疑でAさんを逮捕しました。
Aさんは、「感情的になり暴力を振るってしまったことは認めるが、Vさんを殺すつもりはなかった。」と容疑を一部否認しています。
(フィクションです)

殺人罪について

殺人罪は、ご存知の通り、「人を殺す」犯罪です。
殺人罪については、刑法第199条に次のように規定されています。

第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

◇客体◇

殺人罪の客体は、「人」です。
行為者を除く自然人を指します。
さて、ここで、客体である「人」であることが、いつから始まりいつ終わるのか、が問題となります。

①人の始期について
人がいつ「出生」したと言えるか、という点については、「一部露出説」という考え方が通説だとされており、判例も同様の立場をとっています。
「一部露出説」というのは、一部が母体から露出した時点で「人」とする考え方です。

②人の終期について
人の終期、つまり、人が死亡したと、いつ言えるのか、という点については、争いがあります。
伝統的には、呼吸・脈拍の不可逆的停止、瞳孔拡大を起訴に総合的に判定する「三徴候説(心臓死説)」が通説とされてきましたが、生命維持・組成の為の技術が発達し、脳幹を含む全脳の機能が喪失しても相当期間、呼吸・循環を人工的に維持することが可能となり、脳機能の喪失をもって死とする「脳死説」が提唱されるようになりました。

◇行為◇

殺人罪の構成要件的行為は、「人を殺す」ことです。
「殺す」とは、自然の死期以前に人の生命を断絶する行為をいい、その手段・方法は問われません。
包丁で人を刺殺するといった方法でも、精神的に追い詰めて被害者に自らを死亡させる現実的危険性の高い行為に及ばせる方法や嬰児に食事を与えず死亡させる行為も「人を殺す」行為に当たります。

◇故意◇

法律に特別の規定がない限り、罪を犯す意思がない行為は処罰されません。
この「罪を犯す意思」というのが、「故意」と呼ばれるものです。
殺人罪の場合、「罪を犯す意思」というのは「人を殺す意思」、つまり、「殺意」があったことが本罪の成立には必要となります。
客体である「人」の認識については、単に「人」であることの認識で足ります。
また、行為の認識については、殺人の手段となる行為により、死の結果が発生可能であることを認識していればよいとされます。
故意は、未必的なもの、つまり、「相手は死ぬかもしれない」という認識や、条件付きのものでも構いません。

故意がなければ、結果として人を死亡させてしまったとしても、殺人罪は成立せず、傷害致死罪が成立するにとどまります。

故意(殺意)の認定は、具体的事情を考慮しつつ行われます。
例えば、凶器の種類、行為態様、創傷の部位・程度といった客観的な事情、動機の有無、犯行前・犯行時の言動、犯行後の言動などを総合的に考慮して判断されます。

また、殺す意思があった場合でも、自分の命を守るためにやむを得ずした行為であった場合には、違法性が阻却され、殺人罪は成立しません。

人を死亡させてしまった場合であっても、必ずしも殺人罪が成立するわけではありません。
しかし、その主張を裁判官や裁判員に適切に伝えることは、刑事事件に精通した弁護士なくして行うことは容易ではないでしょう。
ですので、ご家族が殺人罪に問われ、殺人罪の成立を争いたいとお考えであれば、刑事事件に精通する弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。

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礼拝所不敬罪で刑事事件

2019-12-15

礼拝所不敬罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県宍粟市のお寺で大暴れした檀家のAさんは、通報を受けて駆け付けた兵庫県宍粟警察署の警察官に、礼拝所不敬などの疑いで逮捕されました。
(実際の事件を基にしたフィクションです。)

礼拝所不敬罪とは

あまり聞き慣れない「礼拝所不敬罪」という罪ですが、実は、滅多に行われない犯罪ではないのです。
礼拝所不敬罪で処理された事件としては、有名な写真家が都内の墓地でヌード撮影を行い罰金30万円の略式命令を受けたもの、靖国神社に対する抗議運動で祭祀業務を妨害したとして台湾の立法委員が書類送検されたもの、御神体の滝である世界遺産の那智の滝でロッククライミングしたとして登山家が書類送検されたものなどがあります。

今回は、礼拝所不敬罪についてみていきます。

礼拝所不敬罪は、刑法第188条1項に規定されています。

第百八十八条 神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所に対し、公然と不敬な行為をした者は、六月以下の懲役若しくは禁錮又は十万円以下の罰金に処する。

本罪の保護法益は、国民の宗教的感情及び死者に対する敬虔・尊崇の感情です。

◇客体◇
本罪の客体は、「礼拝所」です。
宗教的な崇敬の対象となるべき場所をいい、その例として、神祠、仏堂、墓所があげられています。
「その他の礼拝所」としては、キリスト教や回教などの教会があげられます。
加えて、原爆慰霊碑やひめゆりの塔のように、一般的宗教感情により尊崇されているものであれば礼拝所に当たるとされています。

◇行為◇
本罪の構成要件的行為は、上述の客体に対して「公然と不敬な行為をする」ことです。
「公然と」というのは、不特定または多数の人に覚知しうる状態の下に置くことをいいます。
実際に他人に覚知される必要はなく、その行為時に不特定・多数の人がその場に居合わせたことは必要とされません。
「不敬な行為とは、礼拝所の尊厳または神聖を冒涜する行為をいいます。

上記ケースでは、Aさんは「お寺で大暴れした」との記載しかありませんが、仏堂で住職や他の檀家の前で、侮辱的言辞を浴びせたり、神体を足げにしたりしたのであれば、礼拝所不敬罪が成立すると考えられるでしょう。

関連する罪として、説教等妨害罪(刑法第188条2項)、墳墓発掘罪(刑法第189条)、死体損壊等罪(刑法第190条)、墳墓発掘したい損壊等罪(刑法第191条)、変死者密葬罪(刑法第192条)があります。

ご家族が礼拝所不敬罪逮捕されたのであれば、すぐに弁護士に相談・依頼され、早期釈放に向けて動くことが重要です。
逮捕されると48時間以内に警察は被疑者を釈放するか、検察に送致するかを決めます。
警察が検察に事件を送致すると、検察は被疑者の身柄を受けてから24時間以内に被疑者を釈放するか、勾留請求をするかと決めます。
検察が勾留請求した場合、請求を受けた裁判官は、被疑者を釈放するか勾留するかを判断します。
裁判官が勾留とした場合には、検察官が勾留請求をした日から原則10日、延長が認められると最大で20日もの間身体拘束を余儀なくされます。
しかし、上述したように、勾留が決定するまでには、3段階の判断が存在します。
つまり、警察が検察に送致するか否か、検察官が裁判官に勾留請求するか否か、そして、裁判官が勾留を決定するか否か、という3つの重要ポイントがあり、各所で勾留をする要件を満たさない旨を客観的証拠と共に書面等で主張し、逮捕された方が早期に釈放となるよう迅速かつ適切に働きかけることが重要です。
このような活動は、刑事事件に強い弁護士に任せるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りであれば、弊所の弁護士に今すぐご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。

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