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通貨偽造罪・同行使等罪で逮捕
通貨偽造罪・同行使等罪で逮捕
通貨偽造罪・同行使等罪で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
会社員のAさんは、自宅でインクジェットプリンターを使い、一万円札10枚を偽造し、偽造した一万円札を使用して兵庫県伊丹市にある店でブランドの時計を購入したとして、兵庫県伊丹警察署に通貨偽造罪・同行使等罪の容疑で逮捕されました。
(フィクションです)
通貨偽造罪とは
10月の増税や来年のオリンピック・パラリンピックの開催を機に、キャッシュレス決済が推進される今日ですが、私たちの生活において、お金は必要不可欠です。
物やサービスを購入するためには、お金を支払う必要があります。
お金には価値があるとの信用があるからこそ、私たちの経済取引は主にお金を用いて行われています。
しかし、もしそのお金の偽物が多く出回り、お金に対する信用が失われたとしたら、私たちの生活は様々な面でうまく回らなくなってしまいます。
そこで、お金の価値やその信用性を守るため、刑法は通貨偽造の罪を規定し、通貨の偽造等を処罰の対象としています。
通貨偽造の罪としては、通貨偽造罪・同行使等罪、外国通貨偽造罪・同行使等罪、偽造通貨等収得罪、以上の罪の未遂罪、収得後知情行使罪、通貨偽造等準備罪が規定されています。
ここでは、通貨偽造罪・同行使等罪について解説します。
通貨偽造罪・同行使等罪は、刑法第148条に次のように規定されています。
第百四十八条 行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。
通貨偽造罪
通貨偽造罪は、行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した場合に成立する罪です。
(1)客体:通用する貨幣、紙幣又は銀行券
「通用する」とは、事実上流通していることではなく、日本において強制通用力を有するという意味です。
古銭や廃貨は強制通用力を失っているので、通貨ではありません。
「貨幣」は、いわゆる硬貨で、「紙幣」とは、政府のは行する貨幣に代用される証券のことですが、現在紙幣は発行されていません。
「銀行券」とは、政府の認許によって日本銀行が発行している貨幣に代用される証券のことで、一般に紙幣と呼ばれているのはこの銀行券です。
通貨偽造罪における「通貨」は、貨幣・紙幣・銀行券の総称です。
(2)行為:行使の目的をもって偽造し、または変造すること
行使目的の「行使」は、神聖な通貨として流通におくことです。
他人に行使させる目的でもよく、行使目的があれば偽造通貨が流通に置かれる有意な危険が発生するので、成立要件とされています。
「偽造」とは、通貨の製造・発行権限を有しない者が、一般人をして、真貨と誤信させるような外観のものを作り出すことをいいます。
ですので、真貨に似てはいるけれども、一般人の注意力をもってすれば真貨と誤認しない場合は偽造ではなく、模造となります。
また、「変造」とは、通貨の製造・発行権限を持たない者が、真貨に加工して真貨に似た物を作成することをいいます。
偽造通貨行使等罪
偽造・変造した通貨を行使、又は行使目的で人に交付し、若しくは輸入した場合に成立する罪です。
(1)客体:偽造又は変造された貨幣、紙幣又は銀行券
行使の目的をもって偽造・変造されたことを必要とせず、また、誰によって偽造・変造されたかは問われません。
(2)行為:行為、行使目的による交付、行使目的による輸入
ここでいう「行使」というのは、偽貨を真貨として流通に置くことをです。
人に対して直接行使される場合だけでなく、自動販売機での使用も行使に含まれます。
「交付」とは、偽貨であることを告げ、又は偽貨であることを知る者に偽貨の占有を移転することをいいます。
また、「輸入」は、国外から国内に搬入することをいいます。
偽造通貨行使等罪は、偽貨を真正なものとして流通に置いた時点でただちに既遂となります。
通貨偽造罪・同行使等罪は、その法定刑が「無期又は三年以上の懲役」であり、裁判員裁判対象事件です。
裁判員裁判は、通常の刑事裁判と異なる手続となりますので、早期に刑事事件に精通する弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
美方郡新温泉町の往来危険事件
美方郡新温泉町の往来危険事件
往来危険罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県美方郡新温泉町のJR山陰本線久谷-浜坂間で、普通電車が、線路上に置かれた石と接触し、緊急停車しました。
乗客約20名に怪我はありませんでした。
異音に気づいた運転手が、線路を確認したところ、線路脇に石の砕粉が残っていました。
兵庫県美方警察署は、何者かが故意に石を線路に置いたとみており、往来危険の疑いで捜査しています。
(実際の事件に基づいたフィクションです。)
往来危険罪とは
あまり聞き慣れない「往来危険罪」とは、どのような犯罪なのでしょうか。
往来危険罪は、刑法第125条に次のように規定されています。
第百二十五条 鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、二年以上の有期懲役に処する。
2 灯台若しくは浮標を損壊し、又はその他の方法により、艦船の往来の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。
往来危険罪は、汽車・電車・艦船といった現代の主要交通機関の往来の安全を害する行為を、一般の往来妨害よりも重く処罰するものです。
「鉄道」は、レールだけでなく、構造上これと密接不可分の関係にあり、汽車、電車の走行に直接役立っているものすべて、例えば、枕木、鉄橋、トンネルなど、を含みます。
「標識」は、信号機その他運行のための目標を指します。
また、「灯台」とは、夜間、艦船の航行の利便を図るために灯火をもって示した陸上の標識であり、「浮標」とは、艦船の航行上安全か否かや、水の深さを表示する水上の目標、標示物をいいます。
往来危険罪の実行行為は、鉄道、標識、灯台、浮標を「損壊」し、またはその他の方法で、汽車、電車、艦船の往来の危険を生じさせることです。
「損壊」とは、物理的に破壊して、その効用を損なわせることをいいます。
そして、「その他の方法」とは、上の「損壊」以外の方法で、汽車、電車、艦船の往来の危険を生じさせることをいいます。
その手段や方法は問いません。
判例は、無人電車を使用する行為や、鉄道軌道上に石塊その他の障害物を置くことも「その他の方法」に当たるとしています。(大判大9・2・2)
往来危険罪の成立には、交通の妨害を生じさせた程度では足りず、交通機関の往来に危険な結果を生ずるおそれのある状態を発生させることが必要です。
つまり、汽車・電車・艦船の衝突・脱線・転覆・沈没・破壊など交通の安全を害するおそれのある状態が生じたことが必要となります。
この点、判例は、実害が発生するおそれについては、一般的可能性で足り、その必然性や蓋然性は必要ではないとしています。(大判大11・12・1)
電車の線路上に石塊をおくことにより、その上を走行した電車が脱線し横転する可能性が生じますので、上記ケースでは、損壊以外の「その他の方法」により汽車・電車の往来の危険を生じさせたと言えるでしょう。
いたずらのつもりで線路に石を置いたとしても、往来危険罪という犯罪が成立する可能性がありますので、いたずらでは済まされません。
また、往来危険罪を犯し、よって汽車・電車を転覆させたり、破壊した場合、または艦船を転覆・沈没・破壊させた場合には、より重い往来危険による汽車転覆等罪が成立する可能性があります。
往来危険事件を含めた刑事事件・少年事件でお困りの方は、刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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失火罪で刑事事件に
失火罪で刑事事件に
失火罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県養父市の山林で、Aさんは焚火をしていました。
しかし、その日は風が強く、焚火の最中に火が広がり、山や他人の住宅まで延焼させてしまいました。
兵庫県養父警察署は、失火の疑いで、Aさんへの取調べを開始しました。
(フィクションです)
刑法は、第9章を「放火及び失火の罪」と題して、放火罪と失火罪について規定しています。
まず、放火罪のうち、「現住建造物等放火罪」、「非現住建造物等放火罪」、そして「建造物等以外放火罪」は次のように規定されています。
(現住建造物等放火)
第百八条 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
(非現住建造物等放火)
第百九条 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期懲役に処する。
2 前項の物が自己の所有に係るときは、六月以上七年以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。
(建造物等以外放火)
第百十条 放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
2 前項の物が自己の所有に係るときは、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
これら3罪に共通する実行行為である『「放火」して客体を「焼損」したこと』についてですが、「放火」とは、故意によって不正に火力を使用し物件を焼損させることをいいます。
積極的な放火行為だけでなく、判例は、事故の過失により物件を燃焼させた者が、その既発の火力により建物が焼損されることを認容する意思をもって、あえて必要かつ容易な消火措置をとらないことは、不作為の放火行為といえるとして、不作為による放火行為を認めています。
また、「焼損」の意義については、幾つかの見解が主張されていますが、判例は、火が媒介物を離れ、目的物が独立に燃焼を継続するに至った状態を損傷と解する独立燃焼説を採っています。
一方、失火罪は、次のように規定されています。
第百十六条 失火により、第百八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を焼損した者は、五十万円以下の罰金に処する。
2 失火により、第百九条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第百十条に規定する物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。
失火罪は、
①失火により、現住建造物等または他人の所有に係る非現住建造物等を焼損した場合、
または、
②失火により、自己が所有する非現住建造物等または建造物等以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた場合、
に成立する犯罪です。
「失火」とは、過失により出火させることをいいます。
ここでいう「過失」は、火気の取扱上の落度をいい、出火して目的物を焼損するに至るべき事情があるときに、
①当該事情を認識できたにもかかわらず認識しなかったこと、
②当該事情から出火の危険性がないと軽信したこと、
により出火防止のための適切な手段をとらずに結果を生じさせたことを意味します。
重大な過失による場合は、重失火罪となり、法定刑は3年以下の禁錮または150万円以下の罰金となります。
放火罪の法定刑に比べると、失火罪は50万円以下の罰金刑となっています。
放火罪と失火罪の大きな違いは、故意に火をつけたか否かというところでありますが、先述したように、火をつけるつもりがなく不注意によって火をつけてしまった場合であっても、火災を予防・消火するための積極的措置をとらなければならない立場にいる者が、そのままでは建物等を焼損させてしまう可能性があることを分かっていながら、必要な消化措置をとらなかった、通報しなかったのであれば、「放火」に当たる可能性もあります。
放火罪・失火罪を含め刑事事件でお困りであれば、刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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放火事件で逮捕されたら
放火事件で逮捕されたら
放火事件(現住建造物等放火罪)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県美方郡香美町にある実家に火をつけて全焼させ、不慮の火災を装って保険金の支払いを受けようとしたとして、兵庫県美方警察署はAさんを現住建造物等放火および詐欺未遂の容疑で逮捕しました。
Aさんは、調べに対して、「家を燃やそうと思って火をつけたのではない。脅しのつもりだった。事故だった。」と供述しています。
(フィクションです)
放火罪について
放火罪は、不特定または多数の人の生命、身体、財産に対し、火力によって危険を生じさせる公共危険罪です。
放火罪は刑法に規定されており、放火罪には、幾つかの種類があります。
1.現住建造物等放火罪
第百八条 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
現住建造物等放火罪の構成要件、つまり犯罪として処罰される行為の類型は、
①放火して
②現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船または鉱坑を
③焼損したこと
です。
客体:現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑
「人」というのは、犯人以外の者であって、犯人の家族も含まれます。
「住居に使用」とは、放火行為当時現に犯人以外の人が、起臥寝食の場所として日常的に使用することをいい、放火行為の当時犯人以外の人が現在すると否とを問いません。
「建造物」とは、家屋その他これに類似する工作物であって、土地に定着し、人の起居出入に適する構造を有するものをいいます。
建物の一部のように見えても、毀損せずにとり外すことができるものは、「建造物」ではなく、器物損壊罪の「器物」となります。
例えば、布団、畳、障子、襖、カーテン等は「建造物」には含まれません。
上記ケースでは、Aさんが実家に火をつけたと疑われているわけですが、Aさんがこの家に家族と同居しているしていないにかかわらず、火をつけたときに誰もこの家にいなかったとしても、誰かがこの家で日常的に生活をしているのであれば、「現に人が住居に使用する建造物」に当たります。
行為:放火して客体を焼損すること
「放火」というのは、故意によって不正に火力を使用し物件を焼損することです。
積極的な放火行為に及んだ場合に放火罪が成立することが通常ですが、そうでない場合にも放火罪が成立する場合もあります。
この点、不作為による放火について、判例は、自己の過失により物件を燃焼させた者が、その既発の火力により建物が焼損してしまうことを認容する意思があるにもかかわらず、あえて必要かつ容易な消化措置をとらない行為は、不作為による放火行為といえるとして、不作為による放火を認めています。(最判昭33・9・9)。
ですので、火の不始末などが原因で着火させてしまった本人が、建物等の火が移り焼損させてしまうおそれがあることを知りながら、消火活動や消防署への通報をせずに、そのままにした結果、建物等が焼損した場合には、放火罪が成立することになります。
上記ケースでは、Aさんは火事は事故だったと言っていますが、仮にAさんが積極的に放火したのではなく、何らかの形で建物や媒介物に着火させてしまったとしても、消火活動を行わなかったり、119番通報しせずに放置した結果、実家を全焼させてしまったのであれば、不作為による放火罪が成立する可能性があります。
現住建造物等の「焼損」によって、現住建造物等放火罪は既遂になります。
この「焼損」の意義については、いくつかの見解が主張されていますが、判例は、独立燃焼説の立場を採っています。
独立燃焼説は、火が媒介物を離れ目的物に移り、独立して燃焼作用を継続しうる状態に達した時点を「焼損」とする、という考え方に基づいています。
現住建造物等放火罪の成立には、人が現に住居として使用していること、または他人が現在する建造物であることの認識、そして放火によりその客体を焼損させることの認識があったことが必要です。
現住建造物等放火罪の法定刑は、死刑、無期又は5年以上の懲役と非常に重い犯罪です。
また、現住建造物等放火罪は、裁判員裁判の対象事件となります。
現住建造物等放火罪を含めた刑事事件でお困りの方は、刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に今すぐご相談ください。
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犯人隠匿等事件で逮捕
犯人隠匿等事件で逮捕
犯人隠匿等罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
会社役員のAさんは、スピード違反の疑いで兵庫県加古川警察署から呼び出しを受けました。
Aさんは、知人のBさんに身代わり出頭を頼み、Bさんは了承し、兵庫県加古川警察署に出頭しました。
しかし、後日、BさんがAさんの身代わりで出頭したことが明らかになり、Bさんは犯人隠避罪で逮捕されることになりました。
(フィクションです)
前回のブログで取り上げた「逃亡の罪」とも関連する「犯人隠匿等罪」。
あおり運転で指名手配されていた男をかくまったとして、犯行時に車に同乗していた女が「犯人隠匿等罪」で逮捕されたニュースは、記憶に新しいところではないでしょうか。
犯人隠匿等罪とは
刑法第103条
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
犯人隠匿等罪は、罰金以上の刑にあたる罪を犯した者または拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた場合に成立する犯罪です。
犯人隠匿等罪について規定する刑法第103条の保護法益は、国家の刑事司法作用の適正な運用です。
犯人や拘禁中の者を蔵匿・隠避する行為は、そのような者の発見や身柄確保を妨げ、捜査や審判、刑の執行などに支障をきたすことになり、刑事司法作用が適切に運用できなくおそれを生じさせるからです。
客体
犯人隠匿等罪の客体は、①罰金以上の刑にあたる罪を犯した者、または、②拘禁中に逃走した者、です。
①罰金以上の刑にあたる罪を犯した者
「罰金以上の刑にあたる罪」とは、法定刑に罰金以上の刑が含まれている罪をいいます。
法定刑として拘留や科料だけが規定されている侮辱罪や軽犯罪法違反といった軽微な罪は除外されます。
「罪を犯した者」の意義については、判例は、司法作用を妨害する者を処罰する立法目的に照らし、犯罪の嫌疑によって捜査中の者も含むと解しています。
②拘禁中に逃走した者
逃走罪の主体として処罰の対象となる者である必要はなく、被拘禁者奪取罪の客体として奪取された者をも含みます。
つまり、法令により拘禁された者であって、出入国管理及び難民認定法により入国者収容所等に収容された者も含みます。
行為
犯人隠匿等罪の実行行為は、犯人等を①蔵匿し、または②隠避させることです。
①蔵匿
「蔵匿」とは、官憲の発見・逮捕を免れるべき隠匿場を供給してかくまうことをいいます。
②隠避
「隠避」は、蔵匿以外の方法により官憲の発見・逮捕を免れさせる一切の行為です。
判例によれば、隠避にあたる行為としたものに、逃走するための資金を供与すること、情報を提供したりすること、犯人が偽名を使えるように他人の戸籍謄本等を供与すること、犯人をハイヤーに載せて潜伏予定場所まで送ること、犯人の所在について警察官に虚偽の陳述をすること、参考人が犯人に依頼されて捜査官に虚偽の供述をすること、身代わり犯人として自首すること、などがあります。
故意
客体である被蔵匿者が罰金以上の刑にあたる罪を犯した者であること、または、拘禁中逃走した者であることを認識し、かつ、これを蔵匿・隠避することを認識していなければ、犯人隠匿等罪は成立しません。
罰金以上の刑にあたることの認識については、判例は、単に、実際上、罰金以上の刑にあたる犯人(例えば、殺人犯人、窃盗犯人など)であるといった認識があれば足りるとしています。
上記ケースのような身代わり出頭は、Aさんがスピード違反(速度違反の程度により、法定刑が罰金以上となります)で警察から呼び出されていることを知っていたにもかかわらず、BさんはAさんと偽って、もしくは、Bさんが自分が運転していたと虚偽の供述をして、真犯人であるAさんの発覚を妨げる行為を行っていますので、犯人を隠避したと言え、犯人隠避罪に問われることになります。
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逃走の罪で逮捕されたら
逃走の罪で逮捕されたら
逃走の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
保釈中の逃走、刑務所や留置場からの逃走など、昨今は「逃走」に関するニュースが大きく世間を騒がせました。
今回は、刑法に規定されている逃走の罪についてご紹介していきたいと思います。
逃走の罪は、国家の拘禁作用を保護法益としています。
逃走の罪には、被拘禁者が自ら逃走する場合と、被拘禁者を他者が逃走させる場合とがあります。
1.単純逃走罪
第九十七条 裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、一年以下の懲役に処する。
単純逃走罪は、期待可能性の程度が低いため、法定刑は低くなっています。
単純逃走罪の主体は、「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者」です。
「裁判の執行により拘禁された既決の者」というのは、確定判決によって、刑事施設に拘禁されている者のことです。
具体的に言えば、懲役・禁錮・拘留に処せられ拘禁されている者、死刑の言渡しを受けて執行に至るまでの間拘置されている者、罰金又は科料を納めることができず一定期間労役場に留置されている者です。
「裁判の執行により拘禁された未決の者」とは、勾留状によって、刑事施設又は警察留置場に拘禁されている被告人又は被疑者をいい、逮捕された者は含まれません。
単純逃走罪の行為である「逃走」とは、拘禁から離脱すること、つまり、看守者の実効的支配から脱することを意味します。
刑事施設等の外へ脱出するなど、看守者の実効的支配を脱した時点で既遂となります。
2.加重逃走罪
第九十八条 前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
加重逃走罪の主体は、①刑法97条(単純逃走罪)に規定する者、又は②勾引状の執行を受けた者、です。
②については、一定の場所に引致するために発せられる勾引状の執行を受けた被告人、身体検査の対象者、証人などが該当します。
ここでいう「勾引状」は、一定の場所で身体の自由を拘束する令状を広く指すとの理解より、逮捕状により逮捕された被疑者、収容状・勾留状の執行を受けたが拘禁される以前の者などを含むとの見解が有力とされています。
加重逃走罪の行為は、①拘禁場若しくは拘束の為の器具を損壊し、②暴行若しくは脅迫により、又は③2人以上通謀して、逃走することです。
3.被拘禁者奪取罪
第九十九条 法令により拘禁された者を奪取した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
「法令により拘禁された者」とは、確定判決により刑事施設に拘禁されている者、勾留状によって刑事施設・警察留置場に留置されている被疑者・被告人、勾引状の執行を受けた者、逮捕状により逮捕された被疑者、収容状・勾留状の執行を受けた者、現行犯逮捕された被疑者、緊急逮捕され逮捕状が発せられる前の者、逃亡犯罪人引渡法上の拘禁・仮拘禁に付された者、出入国管理及び難民認定法により入国者収容所等に収容された者などが含まれます。
「奪取」は、被拘禁者を自己又は第三者の実力的支配化に移すことをいいます。
4.逃走援助罪
第百条 法令により拘禁された者を逃走させる目的で、器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為をした者は、三年以下の懲役に処する。
2 前項の目的で、暴行又は脅迫をした者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
逃走援助罪は、法令により拘禁された者を逃走させる目的で、器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為をした場合に成立します。
現実に逃走させたことは必要ではなく、逃走の危険を有する行為が行われたことで足ります。
5.看守者等による逃走援助罪
第百一条 法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者を逃走させたときは、一年以上十年以下の懲役に処する。
看守者や護送者が拘禁者の逃走を援助したさいに成立する罪で、看守者・護送者を主体とする逃走援助罪の加重的形態です。
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公務執行妨害で現行犯逮捕
公務執行妨害で現行犯逮捕
公務執行妨害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aさんは、兵庫県神戸市西区の駅で駅員に暴行したとして兵庫県神戸西警察署に公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕されました。
Aさんは、当時酒に酔っており、ICカードをかざしても改札が開かないことに腹を立て、対応した駅員に対して殴るなどの暴行を加えたということです。
逮捕の知らせを受けたAさんの家族は、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探しています。
(実際の事件を基にしたフィクションです)
公務執行妨害罪について
公務執行妨害罪は、刑法第95条1項に規定されており、公務員によって執行される職務を保護法益とするものです。
刑法第九十五条 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
公務執行妨害罪は、①公務員が、②職務を執行するにあたり、③公務員に対して暴行又は脅迫を加えた、場合に成立する罪です。
①公務員
「公務員」は、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員です。
外国の公務員は、含まれません。
さて、上記ケースでは駅員に対して暴行を加えたことが問題となっていますが、この場合、駅員は「公務員」に該当するのでしょうか。
昔はJRは国鉄で、駅員も公務員でしたが、今は民間となっていますので、公務員には該当しません。
一方、市営地下鉄などの公営交通は、地方自治体の交通局が運営しており、その職員は、基本的に公務員となります。
但し、ところによっては業務を外部に委託している場合もあります。
②職務を遂行するにあたり
「職務」の範囲については、権力的公務に限るか、それとも非権力的公務をも含むのかが問題となります。
この点、判例は、公務執行妨害罪における「職務」は、権力的・強制的なものであることを必要とせず、ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれるとしています。
「執行するに当たり」の意義について、職務を執行する際にという意味と理解されています。
判例は、具体的・個別的に特定された職務の執行の開始から終了までの時間的範囲、及びまさに当該職務の執行を開始しようとしている場合のように当該職務の執行と時間的に接着しこれと切り離し得ない一体的関係にあるとみることができる範囲内の職務行為に限るとしています。
③暴行・脅迫
公務執行妨害罪における「暴行」とは、公務員の身体に対し直接であると間接であるとを問わず、公務員の身体に向けられた不法な有形力の行使をいいます。
例えば、司法巡査が現行犯逮捕の現場で証拠物として差し押さえ、同所に置いた覚せい剤注射液入りアンプルを足で踏みつけて損壊する行為は、司法巡査の職務の執行を妨害するに足る暴行であり、その暴行は間接的に司法巡査に対するものというべきであるとして、暴行に当たるとした判例があります。
公務執行妨害罪における「脅迫」は、人を畏怖させる害悪の告知を広く含みます。
公務執行妨害罪における暴行・脅迫は、それによって現実に職務執行妨害の結果が発生したことを必要とせず、妨害となるべきものであればよいとされます。
公務執行妨害事件は、酔っ払って気が大きくなっていたり、ついカッとなり感情的に公務員に手を出してしまうケースが多く、そのような場合には、その現場で現行犯逮捕されるケースも多くなっています。
相手が警察官である場合はなおさら、その場で逮捕されることになります。
飲酒や一時的な感情により犯してしまいやすいため、本人がちきんと反省し、証拠隠滅や逃亡のおそれがない場合には、逮捕に引き続き長期の身体拘束となる可能性は高くはないでしょう。
しかし、逮捕から勾留までの間は、被疑者の家族であっても面会することはできませんので、逮捕された方はどのように対応すればよいのか、今後どのような流れになるのか非常に不安な気持ちでいらっしゃるでしょう。
そのような場合であっても、弁護士であればいつでも制限なく逮捕された方と面会(接見)することができます。
ご家族が公務執行妨害で逮捕されお困りであれば、いますぐ刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談や初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。
刑事事件で執行猶予
刑事事件で執行猶予
刑罰の種類と執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県加西警察署に詐欺容疑で逮捕された会社員のAさんは、借金返済のためにネットで募集していた高額アルバイトに応募し、いわゆる「受け子」として特殊詐欺に関与していました。
警察からは、正式裁判になると言われているAさんは、どうにか実刑判決は避けられないものかと、接見にきた弁護士に執行猶予について聞いています。
(フィクションです)
刑罰にはどんなものがあるの?
刑罰は、犯罪に対する反作用であり、犯罪を行った者に対して科される制裁であるとされます。
刑法および特別刑法において「刑」とされる刑罰は、刑法第9条に定められる主刑または付加刑としての7種類の刑を指します。
第九条 死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。
「主刑」とは、独立に科し言い渡すことができる刑罰をいい、「付加刑」とは、主刑に付加してのみ科し言い渡すことができる刑罰をいいます。
刑罰を科せられることによって受刑者がはく奪される法益という観点から、刑罰を種類分けすると、次のように分けられます。
(1)生命刑:受刑者の生命を剥奪する刑罰(死刑)
現行法上最も重い究極の刑罰です。
死刑は、刑事施設内において、絞首して執行されます。
(2)自由刑:受刑者の自由を剥奪する刑罰(懲役刑、禁錮刑、拘留刑)
①懲役
懲役は、最も主要な刑罰ですが、死刑に次ぐ重い刑罰となっています。
「所定の作業を行わせる」点で禁錮や拘留とは異なります。
無期及び有期の場合があり、有期は1月以上20年以下とされています。
ただし、有期懲役を加重減軽する場合には、30年にまで引き上げることができ、1月未満に引き下げることができます。
②禁錮
所定の作業がない点で懲役と異なりますが、希望により許可されることもあります。
③拘留
30日未満の短期自由刑で、軽微な犯罪に対する刑として定められています。
(3)財産刑:受刑者から一定額の財産を剥奪する刑罰(罰金刑、科料刑、没収)
①罰金
1万円以上の財産刑です。
②科料
千円以上1万円未満の軽微な財産刑で、軽微な犯罪に対する刑として定められています。
罰金・科料を完納することができない場合には、労役場に留置されます。
③没収
上の主刑に付加して科される財産刑で、物の所有権を剥奪して、国庫に帰属させる処分をいいます。
没収の対象となるのは、以下のものです。
・偽造通貨行使罪における偽造通貨など、犯罪行為を組成した物。
・殺人に使用された凶器であるナイフなど、犯罪行為のために用い、又は用いようとした物。
・通貨偽造罪における偽造通貨など、犯罪行為によって生じた物、又は賭博によって得た金銭など、犯罪行為によって得た物、犯罪行為の報酬として得た物。
・犯罪行為によって生じた物、犯罪行為によって得た物、犯罪行為の報酬として得た物の対価として得た物。
没収は、その物が共犯者を含む犯人以外の者に帰属しない場合に限り許可されます。
有罪判決が言い渡されると、上のような刑罰が科される可能性があるわけですが、検察官に起訴され、有罪となった場合、必ずしも言い渡された刑罰がすぐに執行されるわけではありません。
執行猶予とは
執行猶予とは、一定の期間他の刑事事件を起こさないことを条件として、刑の執行を猶予する制度をいいます。
執行猶予付きの判決が言い渡された場合、すぐに刑務所に行くことはなく、執行猶予期間中に無事に経過すれば、裁判官から言い渡された刑罰を実際に受けなくて済むのです。
執行猶予の対象となる要件は、
①前に禁固以上の刑に処せられたことがない者、
②前に禁固以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑に処せられたことがない者
について、3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金を言い渡す場合となります。
しかし、以上の要件は執行猶予の対象となる要件であり、執行猶予を付けるか否かは、裁判官が決めます。
上の要件を満たしており、かつ、「本人が反省している」「犯罪が悪質でない」「執行猶予を付しても再犯のおそれがない」といった情状が考慮され、執行猶予を付けるか否かを判断します。
刑事事件を起こし、有罪となった場合でも、執行猶予により直ちに刑務所に入ることなく社会に復帰することができるのです。
執行猶予とならないかお困りの方は、刑事事件に精通する弁護士に執行猶予獲得に向けた弁護活動を依頼されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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強制わいせつ致傷事件で裁判員裁判
強制わいせつ致傷事件で裁判員裁判
強制わいせつ致傷事件と裁判員裁判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県川西市に住むVさんは、アルバイトが終わり最寄駅から自宅まで徒歩で帰宅していました。
すると、人気のない場所で、突然背後から何者かに羽交い絞めにして引き倒され、「大声出したらしばくからな。」と言われ、服の中に手を入れられ胸を鷲掴みにされました。
Vさんは必死に抵抗したため、犯人はそのまま走り去っていきました。
Vさんは引き倒された際に膝や腕に怪我をしていました。
Vさんは兵庫県川西警察署に被害届を提出し、同署は捜査に着手しました。
後日、兵庫県川西警察署は、市内に住むAさんを強制わいせつ致傷の容疑で逮捕しました。
「強制わいせつ致傷事件は裁判員裁判対象事件やからな。」と警察から言われたAさんは、接見に訪れた弁護士に裁判員裁判について質問しました。
(フィクションです)
強制わいせつ致傷罪について
強制わいせつ致傷罪は、強制わいせつ罪または強制わいせつ未遂罪を犯し、その結果人を負傷される犯罪です。
強制わいせつ致傷罪は、強制わいせつ罪には暴行・脅迫という手段をもって実行され、被害者に致傷結果が生じることが多いため、これを重く処罰するものです。
強制わいせつ致傷罪の法定刑は、無期または3年以上20年以下の有期懲役です。
裁判員裁判とは
通常、裁判は、裁判官が行います。
これは、民事事件も刑事事件も変わりありません。
しかし、一定の事件については、裁判官3名と、一般市民から選ばれた裁判員6名の合計9名で裁判が開かれます。
このような裁判のことを「裁判員裁判」といいます。
裁判員裁判対象事件は、①死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる事件、そして、②法定合議事件(短期1年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪の事件の一部)であって故意の犯罪により人を死亡させた事件(①に当たるものを除く)です。
殺人罪や放火罪は①に当たり、傷害致死罪は②になります。
また、法定刑に死刑又は無期の刑がある事件は、人が死亡したかどうかを問いませんから、殺人未遂罪も①によって対象事件となります。
これらに対し、過失運転致死罪は、故意の犯罪ではありませんから、①②のいずれにも当てはまらず、裁判員裁判対象事件ではありません。
Aさんは、強制わいせつ致傷罪で起訴される可能性がありますから、そうなればAさんは裁判員裁判で裁かれることになります。
裁判員裁判の進み方
裁判員裁判は、通常の裁判とは異なる進み方をします。
通常の裁判では、法廷に裁判官・検察官・弁護人・被告人が出席したうえで、公開の法廷で議論が進められます。
これに対し、裁判員裁判では、実際の裁判が開かれる前に、公判前整理手続という手続きが行われます。
公判前整理手続とは、裁判員に実際に審理をしてもらう前に、裁判官・検察官・弁護人の三者により、本件事件の争点や、実際に裁判に提出する証拠を整理する手続きをいいます。
このような手続きの中で、事件の争点や、重要な事実が整理され、裁判員には、最初から争点や判断の対象が提示されるようになっています。
公判前整理手続を経た事件の場合、この手続きが終結した後には、特別の事情がない限り新たな証拠の提出が許されなくなります。
このように、裁判員裁判は、裁判員には負担が少ないように設計されていますが、当事者の立場から見れば、適切な時期に適切な主張をしなければならないという制度になっています。
裁判員裁判には、刑事事件に強い弁護士に弁護を依頼されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に取り扱っており、裁判員裁判を経験した弁護士も多数所属しております。
ご家族が裁判員裁判対象の事件を起こしてしまいお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
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覚せい剤取締法違反で起訴~公判手続の流れ~
覚せい剤取締法違反で起訴~公判手続の流れ~
公判手続の流れについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市須磨区に住むAさんは、覚せい剤取締法違反の疑いで兵庫県須磨警察署に逮捕されました。
逮捕・勾留後に、神戸地方検察庁は同罪で神戸地方裁判所に公判請求を行いました。
Aさんは、公判手続の流れについて、弁護人に説明を受けています。
(フィクションです)
検察官が裁判所に対して公判請求を行うと、裁判所、検察官、被告人・弁護人が出席し公開の法廷で審理を行うことになります。
公判期日における手続は、(1)審理手続、そして、(2)判決の宣告手続とに大きく分けられます。
1.審理手続
審理手続は、①冒頭手続、②証拠調べ手続、③弁論手続から成ります。
①冒頭手続
冒頭手続とは、(a)人定質問、(b)起訴状朗読、(c)権利告知、(d)被告人および弁護人の陳述という手続からなるものです。
人定質問
裁判長は、出席した被告人に対し、人違いでないことを確かめるため、被告人の氏名・年齢・職業・住所・本籍などを質問します。
起訴状朗読
人定質問に続いて、検察官が起訴状を朗読します。
これは、裁判所に対して審理の対象を、被告人に対して防御の対象を明らかにするために行われるものですので、起訴状に記載されている公訴事実、罪名、罰条が朗読されます。
権利の告知
裁判長は、被告人に対して、黙秘権やその他の権利を告知します。
被告人および弁護人の陳述
裁判長は、被告人および弁護人に対し、被告事件について陳述する機会を与えなければなりません。
この際に、被告人に対し、起訴状の記載内容に間違いはないどうかを尋ね、公訴事実の認否をさせ、争点を明確にします。
②証拠調べ手続
裁判所が書証や証人等の証拠を取り調べる手続で、最初に検察側から立証が行われ、その後被告人側の立証が行われます。
証拠調べ手続は、検察側の立証が先立ち、(a)冒頭陳述、(b)証拠調べ請求、(c)証拠調べ請求に対する意見、(d)証拠決定、(e)証拠調べとなり、次に弁護側の立証に移り、(a)証拠調べ請求、(b)証拠調べ請求に対する意見、(c)証拠決定、(d)証拠調べ、(e)被告人質問という流れとなります。
冒頭陳述
証拠調べの始めに、証拠により証明すべき事実を明らかにするための手続です。
これは、証拠調べの冒頭で検察官に事件の全貌を明らかにする主張を行わせることにより、裁判所に対し、審理方針の樹立及び証拠の関連性等の判断材料を提供するとともに、被告人の防御の便に資するようにする趣旨に基づくものです。
検察官の冒頭陳述の後に、裁判所の許可を得て、被告人・弁護人も冒頭陳述をすることができます。
証拠調べ請求
検察官、被告人及び弁護人の請求に基づき証拠調べの請求がなされます。
証拠調べとは、証人などの尋問、証拠書類・証拠物の取調べ、検証、鑑定などをいいます。
証拠決定
証拠調べ請求に対して、裁判所は、証拠調べの決定または請求却下の決定を行います。
証拠決定を行うにあたって、裁判所は、請求に基づく場合は相手方の意見を聴きます。
証拠調べ
証拠書類や証拠物の取調べ、証人尋問、鑑定人の尋問などを実施します。
被告人質問
被告人は黙秘権を有しているので、終始沈黙したり、ここの質問に対し供述を拒むことができます。
被告人が任意でした供述は、証拠となります。
③弁論手続
証拠調べ手続が終ると、検察官は事実および法律の適用について意見を陳述しなければなりません。
これを「論告」といいます。
検察官が有罪を主張する際、量刑についても意見を述べるのが通常であり、この意見を「求刑」といいます。
被告人・弁護人は、最後に意見を陳述する機会が与えられています。
2.判決の宣告手続
判決は、公判廷において宣告し、これを告知します。
裁判長が、主文および理由を朗読し、または主文の朗読と同時に理由の要旨を告げなければなりません。
公判では、無罪や無実を訴える、執行猶予や減刑を求めるなど争い方も事件により異なります。
公判における弁護活動については、法廷における弁護士の技術が判決結果に大きく影響を与えることになります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
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