Archive for the ‘少年事件’ Category
少年の刑事事件~家庭裁判所送致前~
少年の刑事事件~家庭裁判所送致前~
家庭裁判所送致前の少年の刑事事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市長田区の路上で、帰宅途中の女性に対して背後から抱きつき、胸などを触るなどしたとして、同市に住む中学生のAくん(14歳)が兵庫県長田警察署に強制わいせつの疑いで逮捕されました。
逮捕後、Aくんは勾留に代わる観護措置で神戸少年鑑別所に収容されることになったと連絡を受けたAくんの両親は、今後どのような流れになるのか分からず少年事件に詳しい弁護士に相談の連絡を入れました。
(フィクションです)
少年法第1条は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする旨を規定しています。
少年の犯罪事件は、原則、成人の刑事事件の場合と同様に被疑事件として捜査機関による捜査が行われ、その後、全事件が家庭裁判所に送致されます。
これを「全件送致主義」といいます。
少年法は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑がある場合及び犯罪の嫌疑はなくとも家庭裁判所の審判に付すべき事由がある場合には、全ての事件を家庭裁判所に送致することを義務付けています。
これは、非行事実が軽微なものであったとしても、その背後には様々な問題がある場合が多いため、家庭裁判所に全ての事件を送致させ、そこで行われる少年に対する調査を踏まえて保護処分と刑事処分のいずれが相当かを判断させようという趣旨に基づくものです。
ただし、犯罪の嫌疑がなく、ぐ犯少年にも該当しないときには、不起訴処分に付されることもあります。
少年の刑事事件というのは、「少年の犯罪事件」が
①家庭裁判所に送致される以前の段階における少年の被疑事件
②家庭裁判所から検察官への逆送から刑事裁判所へ公訴を提起される以前の段階における少年の被疑事件
③公訴提起後の被告事件
をいいます。
20歳未満の者であっても、犯罪を犯したと疑われる場合には、成人の場合と同様に逮捕されることがあります。
犯罪を犯した少年を「犯罪少年」といいます。
ただし、14歳未満の者は、刑事責任を問われませんので、犯罪とはならず逮捕されることもありません。
(もちろん、都道府県知事または児童相談所長から家庭裁判所に送致されると、少年審判を受け保護処分が言い渡される可能性はあります。)
犯罪を犯した14歳未満の少年を「触法少年」と呼びます。
犯罪少年が警察に逮捕された後の流れは、基本的に成人の刑事事件と同じです。
逮捕から48時間以内に、検察に送致される、若しくは釈放されます。
検察に送致されると、検察官は少年の身柄を受けてから24時間以内に裁判官に対して勾留請求をする、あるいは釈放するかを決めます。
勾留請求を受けた裁判官は、少年と面談した上で、少年を勾留するか釈放するかを判断します。
勾留となった場合には、検察官が勾留請求をした日から原則10日間、勾留延長が認められると最大で20日間身柄が拘束されることになります。
勾留に代わる観護措置について
少年法は、刑法、刑事訴訟法、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律等の一般法に対する特則を定めている。
身体拘束に関するものでいえば、「拘留に代わる観護措置」の手続が設けられています。
検察官は、刑事訴訟法上の勾留の要件を満たすと判断した場合でも、裁判官に対して、勾留に代わる観護措置を請求することができ、裁判官は、当該措置をとることができます。
勾留に代わる観護措置の手続は、基本的に勾留に関する規定が準用されていますが、以下の点が勾留と異なります。
・身体拘束を伴う少年鑑別所収容の観護措置のほかに、家庭裁判所調査官による観護措置の方法もとることができるとされています。
・勾留は延長することができるのに対し、勾留に代わる観護措置の期間は、検察官の請求した日から10日で、延長は認められません。
・勾留に代わる観護措置として少年鑑別所に収容されていた事件が家庭裁判所に送致された場合、当然に家庭裁判所送致後の少年鑑別所収容の観護措置とみなされます。
少年事件の場合、成人の刑事事件の手続と異なる点もありますので、少年事件については専門の弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
お子様が事件を起こし対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談や初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡を!
刑事事件で逮捕~緊急逮捕~
刑事事件で逮捕~緊急逮捕~
刑事事件の緊急逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県洲本警察署は、殺意を持ち、ゴルフクラブで男性Vさんの頭部を殴ったとして、兵庫県洲本市に住む少年Aくんを殺人未遂容疑で緊急逮捕しました。
Aくんは、「Vさんとトラブルになりカッとなって殴ってしまったが、殺すつもりはなかった。」と供述しています。
逮捕の連絡を受けたAくんの家族は、急いで接見に行ってくれる弁護士を探しました。
(フィクションです)
被疑者の身柄を拘束し、引き続き短時間その拘束を続ける強制処分である「逮捕」には、3種類あり、前回はそのうちの「通常逮捕」について説明しました。
今回は、「緊急逮捕」についてみていきたいと思います。
「逮捕」や「現行犯逮捕」というワードは、ニュースなどで頻繁に耳にしているとは思いますが、「緊急逮捕」についてはあまり聞き慣れない言葉ではないでしょうか。
緊急逮捕とは、一定以上の重大な罪の嫌疑が高い場合、急速を要して、裁判官に対して逮捕状を請求することができないため、ひとまず被疑者の身柄を確保した上で、その後、直ちに逮捕状を請求するものです。
緊急逮捕については、刑事訴訟法第210条に次のように規定されています。
第二百十条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
○2 第二百条の規定は、前項の逮捕状についてこれを準用する。
当該条項の趣旨は、現行犯以外の場合で、犯人であることが明らかであるが、事前に逮捕状が必要であるとすると、その手続をしている間に被疑者が逃亡し、その後の逮捕が極めて困難になる場合もあるため、事実発見の観点から、一定の重い罪について厳重な制限の下に無令状の逮捕を認めた点にあります。
この緊急逮捕は、令状主義との関係で、憲法に反しているのではないかとの議論がありましたが、この点、最高裁判所は、「厳格な制約の下に、罪状の重い一定の犯罪のみについて、緊急やむを得ない場合に限り、逮捕後直ちに裁判官の審査を受けて逮捕状の発行を求めることを条件都市、被疑者の逮捕を認めることは、憲法33条規定の趣旨に反するものではない」とし、その合憲性を認めています。(最大判昭30・12・14)
緊急逮捕をする際には、被疑者に「その理由を告げて」行わなければならないとありますが、「その理由」には被疑事実の要旨および急速を要する事情にあることが含まれます。
緊急逮捕の要件は次の通りです。
①一定の重大犯罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があること。
死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁固に当たる罪が対象となります。
この「罪」は特定されている必要があります。
そして、そのような重大犯罪を犯したことに対して、単なる疑いがあるだけでは足りず、通常逮捕においては「相当な」とあるのに対して、緊急逮捕では「充分な」とあるため、より高い嫌疑が必要です。
②急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないこと。
「急を要し」とは、被疑者が逃走しまたは証拠を隠滅するおそれが高く、逮捕状を請求している時間的余裕がないことをいいます。
③理由の告知をすること。
④逮捕後、直ちに逮捕状請求の手続をすること。
⑤逮捕の必要性があること。
通常逮捕と同様に、逮捕時に逮捕の必要があることが前提となります。
このように、緊急逮捕の要件は通常逮捕よりも厳しいものになっています。
通常逮捕や現行犯逮捕と比べると、緊急逮捕で身柄確保となる件数は少なくなっています。
しかし、緊急逮捕された後の流れも、他の逮捕と同様に、逮捕から48時間以内に警察は被疑者を釈放するか、検察に送致するかを決めます。
警察が検察に被疑者の身柄と証拠書類等を送致した場合、検察官は被疑者を取り調べた上で、被疑者の身柄を受けてから24時間以内に被疑者を釈放するか、裁判官に対して勾留請求を行うかを決定します。
検察官が勾留請求をすると、裁判官は被疑者と面談をし、被疑者を勾留するか、釈放するかを判断します。
裁判官が勾留を決定した場合、検察官が勾留請求をした日から原則10日間、延長が認められれば最大で20日間身柄が拘束されることになります。
そのような長期の身体拘束を避けるためにも、逮捕されたら早期に弁護士に相談し、身柄解放活動に動くのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が刑事事件で逮捕されてお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
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少年事件で不処分
少年事件で不処分
少年事件における不処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
高校1年生のAくんは、兵庫県明石市の路上で帰宅途中の女子中学生のスカート内を盗撮したとして、兵庫県明石警察署に迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されました。
Aくんは逮捕されたものの、両親が身元引受人として警察署に迎えにきて身柄解放となりました。
警察から、「警察と検察で取調べが終わったら、家庭裁判所に事件が送られて、そこで最終的な処分が決定されます。」と簡単な説明を受けたAくん家族は、どのような処分が見込まれるのか不安になり、少年事件に詳しい弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
少年事件については、捜査機関が捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があると判断したときは、すべての事件を家庭裁判所に送致することとされています。
事件が家庭裁判所に送致された後は、少年保護事件として、成人の刑事事件とは異なる手続が進められます。
家庭裁判所による調査・審判を経て、少年の更生に適した終局処分が言い渡されます。
その終局処分は、以下の通りです。
①保護処分(保護観察、児童自立支援施設または児童養護施設送致、少年院送致)
②都道府県知事または児童相談所長送致
③検察官送致
④不処分
⑤審判不開始
不処分とは
裁判所は、審判の結果、保護処分に付することができず、又は保護処分に付する必要がないと認めるときは、その旨を決定しなければなりません。(少年法第23条2項)
この決定を「不処分決定」といいます。
不処分決定の要件
不処分決定は、審判の結果、①保護処分に付することができないとき、又は②保護処分に付する必要がないと認められるとき、になされます。
以下、各々の要件を概観します。
(1)保護処分に付することができないとき
法律上又は事実上、保護処分に付することができない場合の不処分決定で、次のように分けられます。
・非行事実なし:非行事実の存在の蓋然性が認められない場合。
・所在不明等:少年に心神喪失、死亡、所在不明、疾病、海外居住等の事情が生じた場合。
・その他(審判条件が存在しない等)
(2)保護処分に付する必要がないとき
保護処分に付する必要がないときとは、審判の結果、要保護性が認められず、保護処分、児童福祉法上の措置、刑事処分のいずれも必要のない場合の不処分決定です。
・保護的措置:調査・審判の過程で、関係者による働きかけが講じられた結果、要保護性が解消し、再非行の危険性がなくなった場合。
・別件保護中:別件で保護的措置が講じられていたり、保護処分に付されていたりするため、本件ではとくに処分をする必要がないと認められる場合。
・事案軽微:非行事実がきわめて軽微な場合。
不処分決定がなされると、事件は終局します。
不処分決定に伴い、観護措置や試験観察等の中間決定の効力は消滅します。
非行事実に争いのない場合には、保護処分に付する必要がない場合の不処分を目指します。
前述のように、保護処分に付する必要がないときとは、審判の結果、要保護性が認められず、保護処分等が必要がないと判断された場合にさなれるものです。
「要保護性」というのは、審判の審理対象で、以下の3つの要素により構成されると考えられています。
1.再非行の危険性
少年の性格や置かれている環境に照らして、将来再び非行を犯す危険性があること。
2.矯正可能性
保護処分による矯正教育を施すことにより、再非行の危険性を除去できる可能性があること。
3.保護相当性
保護処分による保護が最も有効であり、かつ、適切な処遇であること。
このように要保護性が認められないためには、少年の環境調整を十分に行う必要があります。
少年が将来非行を再び犯すことがないよう、少年をとりまく環境を調整したり、少年の内面への働きかけを行います。
少年事件は様々な点で成人の刑事事件とは異なりますので、少年事件における弁護活動・付添人活動は、少年事件に詳しい弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
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無免許運転と交通保護観察
無免許運転と交通保護観察
無免許運転と交通保護観察について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神崎郡神河町に住む高校3年生のAくんは、免許をとった友人Bくんとレンタカーを借りてドライブに出かけました。
Aくんも車の運転に興味があったことから、「ちょっとだけ運転させて。」といって、Aくんが車を運転することになりました。
すると、兵庫県神崎郡内で交通取り締まりを行っていた兵庫県福崎警察署に車を停止するよう要求され、免許証の提示を求められたことで、Aくんが無免許運転をしていたことが発覚しました。
兵庫県福崎警察署は、Aくんを道路交通法違反の容疑で現行犯逮捕しました。
(フィクションです)
無免許運転により成立する犯罪とは
無免許運転とは、公安委員会の運転免許を受けていないにもかかわらず自動車や原付自転車を運転する行為をいい、運転免許を取得したことがない場合だけでなく、免許停止中の運転や、免許取り消し処分後に免許の再取得なく運転している場合も無免許運転に含まれます。
少年による無免許運転は、その多くが、運転免許自体を取得したことがないのに、自動車等を運転するケースです。
運転免許を一度も取得したことがなく、運転技術も未熟であることから、事故を起こしてしまう可能性も高いと言えるでしょう。
無免許運転は、道路交通法で次のように禁止されています。
第六十四条 何人も、第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第九十条第五項、第百三条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項若しくは第三項又は同条第五項において準用する第百三条第四項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。
無免許運転に対する罰則は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
無免許運転を常習的に行ったいた場合や、人身事故を起こしてしまった場合には、逮捕される可能性が高いと言えるでしょう。
無免許で人身事故を起こした場合には、無免許運転による罪が加重されることになります。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律は、危険運転致死傷罪、発覚免脱罪、過失運転致死傷罪の罪を犯した時に無免許運転をした場合、刑が加重することを規定しています。
少年が無免許運転をした場合~交通保護観察~
少年事件は、原則すべての事件が家庭裁判所に送致されます。
家庭裁判所は、事件受理後、家庭裁判所調査官による調査、審判を経て処分を決定します。
家庭裁判所により決定される終局処分は、次の通りです。
・保護処分(保護観察、少年院送致、児童自立支援施設等送致)
・検察官送致
・不処分
・都道府県知事または児童相談所長送致
・審判不開始
上記処分のうち、保護観察は、少年を施設に収容せず、社会生活を送らせながら、保護観察所の行う指導監督および補導援護によって少年の改善更生を図る社会内処遇の保護処分です。
保護観察には、「一般保護観察」、「短期保護観察」、「交通保護観察」、そして「交通短期保護観察」の4つに分類されます。
交通関係事件の保護観察が、「交通保護観察」と「交通短期保護観察」で、交通関係事件で保護観察決定があった少年のうち交通短期保護観察の処遇勧告がなされない者が、交通保護観察の対象者となります。
交通保護観察を担当する保護観察官・保護しは、交通法規に通じる等、交通保護観察を行うにふさわしい者が選任されます。
必要に応じて、交通法規、運転技術等に関する個別指導、運転技術向上を図るための集団処遇等が行われます。
交通保護観察は、おおむね6ヶ月を経過していることが解除の目安とされ、一般の保護観察よりも短期間で解除されます。
少年の交通事件では、家庭裁判所での処分より刑事処分としての罰金刑に処するほうが教育的効果が高いとして、検察官送致となることも他の少年事件に比べて多くなっています。
お子様が無免許運転で逮捕されてお困りの方は、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
少年事件・刑事事件を専門とする弁護士が、無料法律相談や初回接見サービスを行います。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
強盗と恐喝の区別とは?
強盗と恐喝の区別とは?
強盗罪と恐喝罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県川辺郡猪名川町の公園で、会社員の男性Vに因縁をつけて金銭を巻き上げようと、Vに対して少年Aは、「ちょっとお金貸してくれませんか?痛い目にあいたくないでしょ。」と鉄バットを手に持った状態でVを脅し、所持金5千円を奪いました。
しかし、少年Aは、Vがもっと金を持っているだろうと思い、「まだ持ってるんやったら、出してくれへん?」と言ったところ、Vがこれを拒否したので、その場でVの顔面等に対して殴る蹴るの暴行を加えて傷害を負わせ、抵抗できなくなったVから現金2万円を奪って逃走しました。
Vはすぐに最寄りの交番に駆け込み、警察官に被害届を出しました。
兵庫県川西警察署は県内に住む少年Aを強盗致傷の容疑で逮捕しました。
(フィクションです)
カツアゲで成立し得る犯罪とは?
1.恐喝罪
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
恐喝罪は、人を恐喝して財物を交付させた場合、及び、人を恐喝して、財産上不法の利益を得、又はこれを他人に得させた場合に成立する犯罪です。
「恐喝」とは、暴行又は脅迫により被害者を畏怖させることをいい、恐喝は財物又は財産上の利益の交付に向けられたものでなければなりません。
恐喝罪が成立するためには、被害者の意思に基づいて交付行為がなされることが必要となり、畏怖状態を生じさせる暴行・脅迫の程度は、被害者の反抗を抑圧するに至らないものでなければなりません。
つまり、相手方からの暴行・脅迫によって恐れおののいた被害者が、仕方なく自己の財物を相手方に渡したり、支払いを免除する等の財産上不法の利益を得させることが必要となります。
2.強盗罪
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
強盗罪は、暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強手した場合、及び、暴行又は脅迫を用いて、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた場合に成立する犯罪です。
強盗罪における暴行・脅迫の程度は、判例及び通説によれば、「被害者の反抗を抑圧する程度」のものであることが必要です。
その程度に達していない場合には、強盗罪ではなく恐喝罪が成立するにすぎません。
強盗罪が成立するためには、暴行・脅迫により、被害者の反抗を抑圧して財物を奪取する(=強取)が必要となるのです。
反抗が抑圧された被害者から、その意思に反して財物を奪取する行為、反抗が抑圧された被害者が差し出した財物を受け取る行為、反抗を抑圧され、逃げ出した被害者が放置した物を取る行為も「強取」に当たります。
また、強盗犯人が人を負傷・死亡させた場合には、強盗致死傷罪が成立します。
強盗致死傷罪は、刑法第240条に次のように規定されています。
第二百四十条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
強盗犯人(既遂・未遂を問わない)が、人を負傷させた場合に、強盗致傷罪が成立します。
死傷の結果は、強盗の手段である行為から生じることを要するとの立場もありますが、判例・通説は、死傷結果は、強盗の機会に行われた行為から生じたもので足りるとする立場をとっています。
法定刑は無期又は6年以上の懲役と厳罰が定められています。
通常、カツアゲ行為であれば恐喝罪が成立します。
上記ケースでは、最初にAは、被害者Vに対して、鉄バットで威嚇しながら金銭を出すように申し付けて脅しています。
この脅迫に畏怖したVは、Aに持っていた5千円を渡しています。
この一連の行為は、恐喝罪が成立します。
さて、その後、更に金を巻き上げることができると思ったAは、再度Vに対して脅迫した上で金銭を要求していますが、Vが拒否したため、Vが抵抗できなくなるまで暴力を振るい傷害を負わせ、Vから現金2万円を奪っています。
この第二の行為に用いられた暴行は、Vの反抗を抑圧する程度のものであり、抵抗できなくなったVから現金を奪っているため、もはや恐喝罪ではなく強盗罪、今回は強盗の結果Vに怪我を負わせていますので、強盗致傷罪が成立するでしょう。
第一の行為では、恐喝罪が、第二の行為では強盗致傷罪が成立することになりますが、同一の被害者に対する同一の犯意に基づく金銭奪取犯罪であるため、恐喝罪は強盗致傷罪に吸収され、強盗致傷罪のみによって処罰されることになるでしょう。
カツアゲ事件で見込まれる処分は?
強盗致傷罪は、刑事事件であれば裁判員裁判の対象となる犯罪です。
少年事件であっても、カツアゲ事件が恐喝罪に当たる場合、共犯がいたり凶器を用いたりと犯情が悪いという場合を除いて、いきなり少年院送致となるケースはそう多くありません。
しかし、強盗罪や強盗致傷罪となれば、初犯であっても少年院送致が言い渡される可能性は高まります。
お子様が強盗致傷事件で逮捕されてお困りであれば、少年事件を数多く取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に今すぐご相談ください。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡を!
少年事件と学校への連絡
少年事件と学校への連絡
少年事件における学校への連絡について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県佐用郡佐用町の商業施設内のエスカレーターで、女子中学生のスカート内を盗撮したとして兵庫県内の私立中学校に通う中学生のAくん(14歳)が兵庫県佐用警察署に迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されました。
警察署で取調べを受けたAくんでしたが、その日の夜にAくんの両親が身元引受人として警察署まで迎えに来て身柄釈放となりました。
幸い学校を休むことなく釈放となりましたが、警察から事件について学校に連絡がいくのではないかとAくん家族は心配しています。
(フィクションです)
少年事件の流れについて
20歳未満の者が刑罰法令に触れる行為を行い、警察などの捜査機関に発覚すると少年法に基づく手続に従って事件が処理されることになります。
少年の年齢によって、事件処理の流れは異なりますが、ここでは14歳以上の20歳未満の少年(「犯罪少年」)について説明していきます。
捜査段階の手続は、ほとんど成人の刑事手続と同様であり、少年であっても逮捕される可能性はあります。
逮捕された場合、逮捕から48時間以内に警察が少年を釈放するか、それとも検察に送致するかを決めます。
Aくんのケースでは、逮捕はしましたが、取調べ後にAくんを釈放しています。
警察は、Aくんを検察に送致し勾留する必要はないと判断したのでしょう。
他方、警察が少年を検察に送致した場合、少年の身柄を受けた検察官は、少年の取調べを行った上で、逮捕に引き続き身柄を拘束する必要があるか否かを少年の身柄を受けてから24時間以内に決定します。
検察官が少年を勾留する必要があると判断した場合、検察官は裁判所に対して勾留請求を行います。
検察官からの勾留請求を受け、裁判官は少年と面談した上で、少年を勾留する要件が満たされているか否かを判断し、勾留決定または勾留却下決定を下します。
兵庫県では、1日で検察への送致から勾留決定まで行われます。
このように、捜査段階ではほぼ成人の刑事事件と同じ流れとなりますが、検察官は勾留の代わりに「勾留に代わる観護措置」を請求することができ、裁判官が当該措置を決定した場合には、少年の収容先は警察署の留置場ではなく少年鑑別所となり、収容期間も10日間と延長はありません。
捜査機関による捜査が終了すると、事件は家庭裁判所に送られます。
家庭裁判所に送致されると、家庭裁判所はいつでも「観護措置」をとることができます。
観護措置は、少年の身柄を少年鑑別所に移し、審判のために必要な調査や心身鑑別などを行う措置です。
観護措置の期間は概ね1か月で、捜査段階で身体拘束を受けていた場合には、引き続き観護措置がとられる傾向にあります。
事件が学校に伝わる可能性は?
事件が学校に伝わる経緯としては、概ね、①家族からの連絡、②警察からの連絡、③家庭裁判所からの連絡、の3つでしょう。
①は、事件が発覚した早い段階で、少年の家族が学校に相談することにより発覚するケースです。
逮捕・勾留により長期間の身体拘束を受ける場合には、学校に休む旨の連絡をしなければなりませんが、数日であれば体調不良などでごまかすことは可能でしょうが、10日間となると本当のことを話さずにはいられない状況になるでしょう。
②については、逮捕された時点で警察から学校にその旨連絡がいくケースです。
逮捕されると必ず警察が学校に連絡するということではありませんが、警察と学校との間で一定の事柄については相互に連絡をしましょうとする取り決めが交わされていることがあります。
「警察・学校相互連絡制度」というのは、都道府県の警察本部と教育委員会が協定を結び、児童生徒の健全育成を目的として、警察と学校が連絡をとりあう制度です。
兵庫県においても、県や各市の教育委員会が兵庫県警察本部と協定を結び、本制度を運営しています。
この制度によって、少年や保護者が知らないうちに、警察から学校に連絡が入り、事件のことが学校側に発覚してしまう可能性があります。
私立の学校の場合には、このような協定を結んでいないことが多く、すぐには連絡がいかない場合もあります。
最後に、③についてですが、家庭裁判所の調査官が調査の一環として、少年の所属校や所属していた学校に「学校照会書」を送ることがあります。
調査官は、少年の性格や家庭環境、交友関係、学校の状況などを調査する必要があるため、少年の通ってた学校や現在在籍している学校に学校での少年の様子や成績などを調べるのです。
「学校には知られたくない」、「知られてしまうと退学になるおそれがある」と心配される方も多くいらっしゃると思います。
お子様が事件を起こしてしまい対応にお困りであれば、少年事件を数多く取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
初回無料法律相談のご予約、初回接見サービスのお申込みは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
少年事件における示談
少年事件における示談
少年事件における示談について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県養父市に住むAくん(15歳)は、市内の商業施設内のエスカレーターで女子高校のスカート内にスマホを差し入れ盗撮しました。
女子高生の隣にいた友人がAくんの盗撮に気づき、「あなた友達のスカートの中を盗撮してましたよね!?」と言って、腕を掴んできました。
Aくんは、そのまま警備員室に連れていかれ、兵庫県養父警察署から駆け付けた警察官に警察署に連れて行かれ、取調べを受けることになりました。
警察からAくんの両親に連絡が入り、その日の夜には両親が迎えに来て釈放となりました。
Aくんの両親は、被害者の方に謝罪と被害弁償をしたいと考えており、警察にもその意向は伝えています。
(フィクションです)
示談とは
示談は、加害者が被害者に対して謝罪や被害弁償を行うことにより、被害者と加害者間では今回の事件は解決したとする合意のことです。
刑事事件においては、被害者感情が重視される昨今、告訴がなければ公訴を提起することが出来ない親告罪の場合のみならず、被害者がいる事件において、検察官が起訴・不起訴を決める際に考慮される要素のひとつとなっています。
被害者との示談が成立したからといって、検察官は必ずしも不起訴にするわけではありませんが、当事者間で示談が成立している場合には、不起訴処分で事件を終了することが多くなっています。
勿論、法定刑が重い犯罪や、犯行が悪質であったり、比較的軽微な犯罪であっても件数が多い場合には、被害者との示談が成立していたとしても、検察官が起訴(略式起訴も含め)に踏み切ることは大いにあります。
少年事件における示談
先述のように、成人の刑事事件では、被害者との示談が成立しているか否かは、不起訴処分を獲得する上で重要なポイントとなります。
それでは、少年事件において示談はどのような効果があるのでしょうか。
結論から言うと、成人の刑事事件のように、被害者との示談の有無により最終的な処分が大きく違ってくるというわけではありません。
少年事件の手続には、不起訴処分といった処分はありません。
捜査機関による事件の捜査が終了すると、原則すべての少年事件は家庭裁判所に送致されることになっています。
これを「全件送致主義」といいます。
家庭裁判所に送致されると、調査・審判を経て終局処分が言い渡されます。
審判において審理されるのは、「非行事実」と「要保護性」です。
前者は、少年が何をしたかということですが、後者は、①犯罪的危険性(少年の性格や環境等に照らして、将来再び非行に陥る危険性があること)、②矯正可能性(保護処分による矯正教育を施すことで当該少年の犯罪的危険性を除去できる可能性)、③保護相当性(保護処分による保護が当該少年に対して最も有効かつ適切な処遇・手段であること)から構成されてます。
少年が行った行為が重い罪に当たるものであっても、要保護性が低い又はないと判断されれば、少年院送致といった収容措置がとれらないこともあるのです。
この点、刑事事件と異なります。
さて、示談成立によって家庭裁判所が決定する終局処分が大きく変わるわけでないのであれば、少年事件において被害者と示談をする必要がないのでしょうか。
いいえ、そうではありません。
少年が行った行為によって被害者がどれだけ苦しい思いをしたのかを理解させ、被害者に対する心からの謝罪をさせることを通じて、少年ははじめて内省を深めることができるのです。
この内省を深めるということが、少年の更生につながるので、要保護性の解消という点で重要なのです。
そこで、付添人である弁護士は、早期に被害者対応を行い、謝罪や被害弁償等をおこなうよう少年や保護者に働きかけを行います。
しかし、そこで留意する必要があるのは、単に示談金を支払い示談書を作成したということだけでは、要保護性の観点から評価されることにはつながらない、ということです。
重要なのは、少年や保護者が被害者の負った苦しみを理解し、いかに誠意をもって被害者に謝罪し被害者の被害回復に努めたかです。
少年事件の手続は、成人の刑事事件と異なります。
お子様が事件を起こして対応にお困りであれば、少年事件を数多く取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
観護措置の回避に向けた活動
観護措置の回避に向けた活動
観護措置回避に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県伊丹市に住む中学生のAくん(15歳)は、通学中の電車内で盗撮行為を行ったとして、兵庫県伊丹警察署に迷惑防止条例違反の容疑で逮捕されました。
Aくんの両親が身元引受人となり、Aくんはその日の夜には釈放となりました。
Aくんには他にも複数の盗撮を行っており、ネットで知り合った相手に裸の画像を送らすなど児童ポルノ禁止法違反に該当するような行為をおこなっていたことが明らかになってきました。
Aくんの母親は、知り合いから「捜査段階で身体拘束を受けていなくても、家庭裁判所の裁判官と面談するということで家庭裁判所に行ったら、そのまま少年鑑別所に収容された子の話を聞いた。」と聞き、Aくんのお母さんは、Aくんも少年鑑別所に収容されることになるのか不安です。
(フィクションです)
観護措置とは
捜査機関による捜査が終了すると、原則として、すべての少年事件は家庭裁判所に送致されます。
被疑者段階で逮捕または勾留されている少年が家庭裁判所に送致されると、家庭裁判所は、裁判所に到着したときから24時間以内に「観護措置」をとるか否かを決定します。
「観護措置」とは、家庭裁判所が調査、審判を行うために、少年の心情の安定を図りながら、その身柄を保全するとともに、緊急に少年の保護が必要である場合に、終局決定に至るまでの間、暫定的に少年を保護するための措置です。
監護措置には、家庭裁判所の調査官の観護に付する措置と少年鑑別所に送致する措置の2種類があります。
しかし、実務上、前者の措置はほとんどとられず、観護措置という場合には、後者を指します。
観護措置は、少年法において「審判を行うため必要があるとき」にとられると定められているのみですが、次のような要件が必要であると解されています。
①事件の係属
事件が観護措置をとる家庭裁判所に係属していること。
②審判条件
審判条件が満たされていること。
③審判に付すべき事由があることの蓋然性
審判に付すべき事由(非行事実・ぐ犯事由等)が認められることの蓋然性がある。
④審判開始決定を行う蓋然性
審判開始が見込まれる事件であること。
⑤観護措置の必要性
次のいずれかが認められることが必要。
(ア)身柄確保の必要性
住所不定または逃亡のおそれがあるなど、少年の出頭を確保する必要がある場合や、証拠隠滅のおそれがあり、証拠保全のためには必要である場合。
(イ)緊急保護のための暫定的身柄確保の必要性
自殺や自傷のおそれがある場合、家族から虐待を受けている場合、暴力団などの反社会的活動を行う集団の悪影響から保護する必要がある場合など。
(ウ)収容鑑別を実施する必要性
少年の心身の状況や性格傾向などを考慮し、継続的な行動観察や外界と遮断された環境で鑑別する必要がある場合。
以上のような要件を満たし、観護措置がとられた場合、原則2週間、実務上は4週間少年鑑別所に収容されることとなります。
観護措置を回避する活動
観護措置は長期間の収容となるため、少年は学校や職場を休まざるを得ず、後の生活に大きな影響を及ぼしかねません。
そのため、付添人である弁護士は、家庭裁判所が観護措置を決定する前に、観護措置をとらなうよう意見書を提出したり、裁判官と面談するなどし、観護措置回避に向けて動きます。
逮捕・勾留により捜査段階から身体拘束を受けている場合には、事件が家庭裁判所に送致されたタイミングで、意見書を提出し、裁判官が少年と面談する前に少年が抱える事情を考慮してもらう必要があります。
また、捜査段階で身体拘束を受けていない場合でも、事件内容や少年の性格等から観護措置をとる必要があると判断されるケースもありますので、この場合も事件が家庭裁判所に送致された段階で、観護措置をとらないよう説得的に主張する必要があります。
先述しましたが、観護措置がとられると約1か月少年鑑別所に収容されることになるので、その間学校や職場に行くことができないという不利益が生じてしまうことになります。
しかし、観護措置をとることにより、少年を外界と切り離した環境に置くことで、少年が自分のしてしまった行為やその原因についてゆっくりと考えることができ、ひいては少年の真の反省、そして更生に資するといった面もあります。
お子様が事件を起こし、観護措置がとられるのではないかとご心配されているのであれば、少年事件に詳しい弁護士にご相談され、お子様の更生にとってどのような方法が適するのか、一緒に考えてみてはいかがでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件・刑事事件を専門とする法律事務所です。
少年事件でお困りであれば、弊所までご連絡ください。
少年事件で保護観察処分
少年事件で保護観察処分
少年事件における保護観察処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県淡路市に住む高齢女性の自宅を訪れ、弁護士の秘書を装い、女性から現金100万円を騙し取ったとして、少年Aくん(17歳)が兵庫県淡路警察署に詐欺罪で逮捕されました。
Aくんは、逮捕・勾留後に家庭裁判所に送致され、少年審判を受けることになりました。
Aくんの両親は、審判で少年院送致が言い渡されるのではないかと不安でなりません。
(フィクションです)
少年と特殊詐欺事件
兵庫県警察によると、兵庫県における特殊詐欺の認知件数は、平成26年度以降増加しており、平成30年中には773件となっています。
交付形態は、振込型や現金送付型は減少する一方、現金手交型、キャッシュカード手交型、電子マネー型が増加しています。
増加している手交型のように、被害者に直接会いに行って現金やキャッシュカードなどを受領する役割は「受け子」と呼ばれており、受け子役は犯罪組織の内部の者ではなく、外部の者に担わせることが多くなっています。
ネットの掲示板などで「高額アルバイト募集」などと謳い外部から特殊詐欺に加担する者を募るわけですが、20歳未満の者(以下、「少年」といいます。)が受け子として事件に関与したケースは少なくありません。
少年は、「荷物を受け取るだけで数万稼げるなんて…」「友人や先輩から誘われたし…」と、安易な気持ちで特殊詐欺に加担してしまうケースが多く見受けられます。
このような特殊詐欺の裏には、犯罪組織が存在しており、最も警察に捕まりやすい「受け子」や「出し子」の役割を少年たちに担わせ、自分たちは足がつかないようにしているのです。
言葉巧みに少年たちを勧誘し、利用する大人たちが背後にいるのです。
特殊詐欺事件における処分傾向
少年(20歳未満の者)が犯罪行為を行った場合、原則、少年法に基づいた手続に従って処分が決定されます。
処分は、家庭裁判所の調査や審判を経て、少年の更生に適したものが下されることになります。
家庭裁判所が言い渡す終局処分には、次のようなものがあります。
①保護処分(保護観察、少年院送致、児童自立支援施設等送致)
②検察官送致
③不処分
④都道府県知事または児童相談所長送致
⑤審判不開始
少年事件であっても、組織的な詐欺に関与したことが疑われる場合には、初犯であっても、逮捕・勾留される可能性が高く、家庭裁判所に送致された後も、そのまま少年鑑別所に収容される割合が高くなっています。
また、勾留と同時に、弁護士以外の者との面会等を禁止する接見禁止が付される可能性もあります。
また、少年に前歴や補導歴がないとしても、終局処分として少年院送致が言い渡される可能性があります。
そのような処分を回避するため、できるだけ早期に弁護士に相談・依頼するのがよいでしょう。
保護観察処分
特殊詐欺の少年事件では、弁護士は、少年院送致を回避し保護観察処分となるよう弁護人・付添人として活動することになります。
保護観察処分は、少年が保護観察官や保護司の指導監督の下、社会内で更生できると判断された場合に付される保護処分です。
保護観察に付された場合、少年は決められた遵守事項を守りながら家庭等で生活し、保護観察官や保護司と定期的に面会し現状報告した上で、彼らから生活や交友関係などについて指導を受けることになります。
保護観察の期間は、原則として、少年が20歳に達するまでです。
ただし、決定時から少年が20歳になるまでの期間が2年に満たない場合は、2年となります。
また、少年の改善更正に役立つと判断される場合には、期間を定めて保護観察を一時的に解除することもあり、保護観察継続の必要性がなくなったと認められるときは、保護観察は解除されます。
少年事件では、付添人である弁護士が、少年が社会内での更生が期待できることを客観的な証拠を提示し、裁判官に説得的に主張するなどの付添人活動を行います。
具体的には、少年が自らの行為を反省しているなど少年自身の更生可能性や、家族や学校・職場の協力を得て少年の周囲の更生環境が整っていることを主張していきます。
お子様が逮捕されてお困りであれば、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
少年事件・刑事事件を専門とする弁護士が無料法律相談や初回接見を行います。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
少年事件における弁護人・付添人の選任
少年事件における弁護人・付添人の選任
少年事件における弁護人・付添人の選任について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県加古郡播磨町に住む中学生のAくん(14歳)は、帰宅途中の女子児童のおしりを服の上から触ったとして、兵庫県加古川警察署に迷惑防止条例違反の疑い取調べを受けました。
逮捕されることはありませんでしたが、どうやらAくんには他にも同様の事件を起こしていたようで、警察からは「あと何度か警察で取調べをした後、検察に送致されて、その後家庭裁判所に事件が送られることになる。」と言われ、今後どのような手続を踏み、どんな処分が言い渡されることになるのか、AくんもAくんの両親も心配です。
Aくんの両親は、少年事件に詳しい弁護士に相談してみようかと話をしています。
(フィクションです)
少年事件の流れ
少年法は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑がある場合及び犯罪の嫌疑はなくとも家庭裁判所の審判に付すべく事由がある場合には、全ての事件を家庭裁判所に送致することを義務付けています。
これの趣旨は、たとえ非行事実が軽微なものであっても、その背後には様々な問題が存在する場合が多く、家庭裁判所に全ての事件を送致させ、そこで行われる少年に対する科学的調査を踏まえて保護処分と刑事処分のいずれかが相当であるかを判断させようとする点にあります。
家庭裁判所に送致される「少年」は、大きく次の3つに分けられます。
①罪を犯した少年(「犯罪少年」)
②14歳未満の者で刑罰法令に触れる行為をした少年(「触法少年」)
③次に掲げる事由があり、その性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年(「ぐ犯少年」)
イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること
ロ 正当な理由がなく家庭に寄りつかないこと
ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人との交際、又はいかがわしい場所に出入りすること
二 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること
①の犯罪少年については、家庭裁判所送致前の捜査段階では、刑事訴訟法が適用されるので、成人の刑事事件の場合とほぼ同様の手続を踏むことになります。
ですので、「被疑者」として捜査の対象となれば、少年は「弁護人」を選任することもできます。
弁護人は、違法・不当な捜査活動がなされないよう監視したり、被害者がいる事件では被害者と示談交渉を行う等、被疑者である少年の権利や利益を擁護する役割を担っており、早期に弁護人を選任し弁護活動を行ってもらうことが重要です。
弁護人は、「国選弁護人」と「私選弁護人」とに分けられます。
ここでいう国選弁護人は、被疑者国選弁護制度を利用し国が選任した弁護人です。
被疑者に対して勾留状が発せられており、被疑者が貧困その他の事由によって弁護人を選任することができない場合に、裁判官に対して国選弁護人の選任を請求することができます。
しかし、被疑者国選弁護の対象事件は、「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件」に限れらますので、上記ケースにおいては被疑者国選弁護の対象事件には当たらないことになります。
一方、少年やその家族によって自由に選任する弁護人を「私選弁護人」といい、費用は自己負担ですが、身柄在宅にかかわらず、どの段階でも選任することが可能です。
先述しましたが、原則すべての少年事件は家庭裁判所に送致されます。
少年事件では、捜査段階の弁護人選任の効力が家庭裁判所に送致された時点で失われ、家庭裁判所送致後に改めて「付添人」として選任される必要があることに注意が必要です。
家庭裁判所送致後、少年の権利を擁護し、その代弁者としての性格と、少年保護事件の目的が適正に実現されるよう家庭裁判所に協力し援助するという役割を付添人は担っています。
この付添人にも、私選付添人と国選付添人とがあります。
少年法は、国選付添人の場合を除き、付添人の資格について特に設けていません。
少年及び保護者は、私選付添人を家庭裁判所に事件が係属した後はいつでも選任することができます。
国選付添人には、次の2つがあります。
①裁量的国選付添人
家庭裁判所は、犯罪少年又は触法少年のうち、死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪に該当する非行に及んだ者について、観護措置がとられており、かつ、弁護士の付添人がいない場合には、事案の内容、保護者の有無その他の事情を考慮して、審判の手続に弁護士である付添人が関与する必要があると認めるときは、弁護士である付添人を付すことができます。
②必要的国選付添人
家庭裁判所は、前述した裁量的国選付添人対象事件のうち、非行事実を認定するための審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときは、決定をもって、審判に検察官を出席させることができ、この決定をした場合において、家庭裁判所は少年に弁護士である付添人がないときは、弁護士である付添人を付さなけらばなりません。
このように、被疑者国選弁護人と同様に、国選付添人対象事件は一定の重大事件に限られており、上記ケースは該当せず、国選付添人を選任することはできません。
少年審判においては、非行事実のみならず要保護性も審理対象となり、非行自体が軽微なものであっても、要保護性が高いと判断されれば、身体拘束を伴う保護処分が言い渡される可能性もあります。
そのような事態を回避するためにも、早期の段階から刑事事件・少年事件に精通する弁護士を弁護人・付添人として選任するのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
お子様が事件を起こしお困りであれば、弊所の弁護士に今すぐご相談ください。