Archive for the ‘暴力事件’ Category

処分保留で釈放

2019-08-23

処分保留で釈放

処分保留での釈放について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県川西市の自宅で、当時3歳の長男を暴行し死亡させたとして、傷害致死の容疑で母親のAさんと父親のBさんは兵庫県川西警察署に逮捕されました。
二人は、逮捕後、勾留となりましたが、Aさんは勾留10日満期に、処分保留釈放となりました。
Aさんは、今後どのような流れになるのか、どのような処分となるのか心配しています。
(フィクションです)

処分保留で釈放とは?

ニュースなどで、「容疑者が処分保留釈放となりました。」というような報道を聞かれたことはありませんか?
処分保留釈放」と聞くと、「何も処罰されないの?」、「無実だったってこと?」と疑問に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、「処分保留釈放」について取り上げたいと思います。

保留される「処分」って?

被害届や職務質問、自首などを端緒に事件が捜査機関に認知されると、捜査機関は捜査を開始します。
捜査機関は、犯人であるものを特定し、必要があればその身柄を確保するとともに、証拠を収集・保全します。
すべての事件が、原則として、検察官のもとに集められます。
これらの事件を処理するのは、検察官です。
検察官による終局的な処分には、「起訴処分」、「不起訴処分」、そして「家庭裁判所送致」があります。
「起訴処分」というのは、捜査の結果、起訴が相当であると判断し、検察官が公訴を提起することです。
公訴の提起には、①公判請求、②即決裁判手続の申立、③略式命令の請求、④交通事件即決裁判の請求の4種類があります。
①の公判請求により、ドラマなどでよく見る法廷での審理が行われるわけですが、検察官が起訴した総人員の内、ほとんどが③の略式命令の請求であり、公判請求は割合的にはそれほど多くありません。
次に、「不起訴処分」というのは、検察官が公訴を提起しないとする処分のことをいいます。
犯罪とならない場合、疑わしいがそれを立証するだけの十分な証拠がない場合、証拠はそろっているが様々な事情を考慮して起訴を見送る場合など、様々な理由があります。
最後に「家庭裁判所送致」ですが、少年事件の場合、原則すべての事件が家庭裁判所に送致されますので、検察官が捜査を終了すれば、事件を家庭裁判所に送致します。

このような処分をせずにおくことを「処分保留」といい、これは「起訴しない」ことを意味するものではなく、「起訴するかどうかを未だ決めていない」というまでなのです。

処分保留で釈放となるのはなぜ?

検察官が終局的な処分を決めないまま釈放する理由とは、なんでしょうか。
その理由のひとつは、逮捕した事件の捜査・処分が終わっていない場合です。
逮捕された場合、逮捕に引き続く身体拘束の期間は法律で定められています。
検察官が勾留請求をした日から原則10日で、延長が認められれば最大で20日です。
この期間内に、証拠を収集し、事件処理を行わなければなりません。
しかし、この期間をもってしても処分を決定することができない場合には、処分保留釈放とするのです。
この場合、被疑者を釈放した後も捜査を継続し、処分を決めるのに十分な証拠を集めます。

このように、「処分保留釈放」となったからといって、事件が終了したというわけではありません。
「まだ起訴するかどうか決まっていない」という状態であり、「起訴される可能性はある」のです。
刑事事件の被疑者として逮捕・勾留されたが、「処分保留釈放」となり、今後の流れや対応についてお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
弊所では、無料法律相談初回接見サービスのご予約を24時間専門ダイアルで受け付けております。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

被害者との示談交渉は弁護士に!

2019-08-14

被害者との示談交渉は弁護士に!

被害者との示談交渉について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県尼崎市の居酒屋で会社の同僚と飲んでいたAさん。
店を出て帰路につく途中、すれ違いざまに見知らぬ男性Vさんと肩がぶつかってしまいました。
するとVさんから「どこ見とんねん!」と暴言を吐かれたことにカッとなり、Aさんが「お前からぶつかってきといて、なんやねん!」と言い返し、口論に発展しました。
その最中、AさんはVさんの顔面を殴ってしまいました。
通行人が警察に通報し、兵庫県尼崎南警察署の警察官が現場に駆け付けました。
その後、署で事情を聴くことなり、警察からは、弁護士にVさんとの示談をしてもらったらどうかと言われています。
(フィクションです)

警察庁の統計によると、平成29年における刑法犯の検挙人員の罪名別構成比は、以下の順となっています。

1.窃盗(全体の50.8%)
2.暴行(12.0%)
3.傷害(9.8%)
4.横領・遺失物等横領(8.3%)
5.詐欺(4.6%)

全体の半分を窃盗が占めていますが、暴行や傷害といった暴力事件も刑法犯の中で多いと言えるでしょう。
上の犯罪には、被害者がいます。
このように被害者がいる事件における重要な弁護活動の一つが、被害者との示談交渉です。

示談について

示談というのは、加害者が被害者に対して相応の弁償金を支払う一方、被害者は被害届や告訴状の提出を行わない、若しくは、それらを取り下げるなど、当事者間では今回の事件は解決したと約束することをいいます。
被害者のいる事件では、事件の早期解決を図る方法として用いられます。

示談を成立させ、被害届や告訴の提出回避や取下げとなれば、被害者の告訴が公訴を提起するためには必要となる親告罪の場合はもちろんのこと、示談成立の有無は検察官が起訴・不起訴を決める際にも考慮される要素となりますので、示談成立により刑事事件を早期に解決する可能性を高めることができるのです。

しかし、示談の締結は1回限りの行為ですので、加害者本人が直接被害者と行うことには注意が必要です。

まず、加害者が被害者に対して示談をしたいと思っても、被害者と連絡をとることは容易ではありません。
特に、被害者とは全く面識のない場合、警察や検察を通じて被害者の連絡先を教えてもらわなければなりませんが、捜査機関は被害者の連絡先を加害者に直接教えることはあまりありません。
また、被害者は、加害者に対して恐怖心や嫌悪感を抱いていることが多く、加害者と直接連絡をとることを望まないケースも多々あります。
まれに、被害者側が加害者と連絡をとることを希望する場合もありますが、当人同士の話し合いは感情的になる傾向がありますし、被害者が一方的に高額な示談金を請求するといったケースもあります。

ですので、被害者との示談交渉には、弁護士を介して行うことが通常です。
弁護士は、示談交渉を数多く経験しているため、交渉のノウハウを持っています。

暴力事件では、被害者が負った怪我について、通院費や治療費などの損害実費を弁償し、精神的損害についても慰謝料を支払うことで示談が成立するケースが多いです。
その示談金の額は、被害者が負った怪我の程度によって異なります。

示談交渉に優れた弁護士に依頼し、適切な法的サポートを受け、加害者と被害者がお互いに納得できるような示談をしましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする法律事務所です。
所属弁護士は、これまで数多くの刑事事件を取り扱ってきており、被害者との示談交渉にも豊富な経験があります。
あなたが、刑事事件を起こしてしまい、被害者への被害弁償・示談をお考えなら、弊所の弁護士にご相談ください。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

刑事事件で不起訴処分

2019-08-06

刑事事件で不起訴処分

刑事事件での不起訴処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県赤穂市のコンビニで面識のない女性に平手打ちをしたとして、店員の通報を受けて駆け付けた兵庫県赤穂警察署の警察官に、会社員のAさんは暴行容疑で現行犯逮捕されました。
Aさんは、事件当時相当酒に酔っており、コンビニに寄って買い物をしている最中、店内にいた被害女性に声をかけたところ、反応が冷たかったので手を出したようです。
Aさんは、事件当時の記憶が曖昧ですが、店内の防犯カメラの様子からも自分が被害者に手を出したことが明らかで、酔いが冷めてからは猛省しており、被害者への謝罪と被害弁償を希望しています。
Aさんの父親が身元引受人となり、Aさんは逮捕翌日の夜に釈放となりました。
Aさんは、被害者との示談交渉や今後どのような流れになるのかについて刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

不起訴処分について

被疑者を起訴するか否かの判断は、検察官が行います。
検察官は、捜査を遂げた上で、証拠に基づき犯罪が成立するか、処罰の必要があるか否かを考慮し、事件を起訴するか不起訴にするかを決めます。
起訴しないとする処分を「不起訴処分」といいます。
この不起訴処分には、いくつか種類がありますが、主なものは次の通りです。

(1)罪とならず
犯罪が成立しない場合です。

(2)嫌疑なし
犯罪を認定する証拠がない場合や人違いのケースです。

(3)嫌疑不十分
立証するだけの十分な証拠がない場合には「嫌疑不十分」として不起訴となります。

(4)親告罪の告訴取り下げ
被害者の告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪の場合、被害者が刑事告訴をしたものの、その後告訴を取り下げがあると、検察官は被疑者を起訴することは出来ませんので、不起訴処分とします。

(5)起訴猶予
被疑者が罪を犯したことが事実であり、それを立証する十分な証拠もあるが、被疑者の年齢・境遇・正確、犯罪の内容や軽重、犯罪後の状況、社会に戻した際の更生可能性等を考慮し、検察官が裁量によって起訴を見送るものです。

不起訴処分となれば、起訴されませんので、有罪判決が言い渡されることもありません。
つまり、不起訴処分により「前科」が付くことはありません。
前科が付くと、一定の職業に就くことや資格をとることが出来なくなりますので、前科が付くことは回避したほうが良いでしょう。
ただし、刑事事件の被疑者として捜査対象となった記録(前歴)は残りますので、再犯の場合には初犯とはみなされません。

不起訴処分となるには

被害者がいる事件では、被害者との示談が成立しているか否かといった点が、不起訴処分を獲得する上では非常に重要です。
親告罪では、被害者との示談を成立させ、告訴を提起しない若しくは告訴を取り下げてもらうことで、検察官は不起訴処分としますし、親告罪でない場合でも、被害者との示談の有無は検察官が起訴・不起訴を判断する上で重量な考慮要素となります。
ですので、刑事事件を起こしてしまったら、早期に被害者との示談交渉を開始する必要があるのです。
しかし、被害者との示談交渉を加害者やその家族が直接行うことはお勧めできません。
一般的に、被害者は加害者に対して恐怖心や嫌悪感を抱いていることが多く、加害者に連絡先を教えることはあまり多くありませんし、仮に連絡先を教えたとしても、当事者同士の交渉は感情的になりやすく交渉が難航する傾向にあります。
被害者との示談交渉は、弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士限りであれば連絡先を教えてもよいと回答する被害者も多く、被害者の連絡先を教えてもらえる可能性があります。
また、弁護士を介することで、冷静な話し合いができ、示談を円滑に成立させることも期待できるでしょう。

示談交渉を弁護士に依頼することで、このようなメリットがあります。

刑事事件を起こし、被害者対応にお悩みであれば、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
これまで数多くの示談交渉を行ってきた刑事事件専門弁護士が無料で法律相談を行います。
無料法律相談のご予約は、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

駅員への暴力行為で現行犯逮捕

2019-08-01

駅員への暴力行為で現行犯逮捕

駅員への暴力行為現行犯逮捕となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県神戸市長田区の駅の改札口で、自動改札機にICカード乗車券をかざして出ようとしたところ、残高不足で出入り口が塞がれてしまいました。
酔って気が大きくなっていたAさんは、ICカードにチャージすることなく、そのまま閉じたバーを無理やり通り抜けて外に出ました。
それを見ていた駅員のVさんが、Aさんに声をかけ、支払いを済ませるよう求めたところ、Aさんはカッとなり、Vさんの胸を強く押し、Vさんは態勢を崩し床に倒れるかたちになりました。
他の駅員が兵庫県長田警察署に通報し、Aさんは駆け付けた警察官に暴行の容疑で現行犯逮捕されました。
(フィクションです)

駅員に対する暴力行為

駅のホームなどで、「駅員に対するこ暴力行為は犯罪です!」といったことが書かれたポスターを見られたことがあるでしょうか。
日本民営鉄道協会やJR各社などのまとめによると、駅構内や列車内で2018年度に起きた駅員や乗務員に対する暴力行為は630件にのぼるということです。
この数字は、昨年度を比較すると、26件減少しており、2014年度の800件以降は減少しているとのことです。
注目すべきは、暴力行為の加害者の約53%が酒気を帯びていることや、曜日別でみると、週末にかけて増加しており、時間帯別では深夜の発生件数が多くなっています。
ですので、飲酒と暴力行為には相関関係がみられると言えるでしょう。

駅員への暴力行為で成立する犯罪は?

駅員や乗務員に対する暴力行為は、その内容により次のような罪に該当することになります。

暴行罪

刑法第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

人に暴行を加えたが、結果その人が傷害を負わなかった場合には、「暴行罪」が成立する可能性があります。
ここでいう「暴行」というのは、不法な有形力の行使が人の身体に対して加えられる場合をいいます。
相手の身体を押す、叩く、引っ張るなどといった行為だけでなく、狭い四畳半の部屋で在室中の相手方を脅かすために日本刀の抜き身を振りまわる行為、音・光・電流等を行使する場合も「暴行」に含まれます。
暴行罪の故意は、「人の身体に対して有形力を行使することの認識」であり、未必的認識で足ります。

傷害罪

刑法第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

暴行を加えた結果、相手方に傷害を負わせてしまった場合には、「傷害罪」が成立する可能性があります。
結果である「傷害」の概念については、「人の生理的機能に障害を加えること」であると理解されています。
ですので、殴って傷を負わせるといった身体への侵害だけでなく、精神的障害を患った場合も「傷害した」ことになります。
傷害罪の故意については、「傷害罪が暴行罪の結果的加重犯であるので、傷害罪の故意は暴行の認識があれば足りる」と理解されます。

駅員への暴力行為で逮捕される場合

駅員や乗務員に対して暴力行為を行い逮捕される場合の多くが、駅員や駆け付けた警察官に現行犯逮捕されるものです。
現行犯逮捕」は、現に罪を行っている、あるいは行い終った直後の者の場合に、逮捕状なく逮捕できるものです。
現行犯逮捕については、私人についても認められていますので、駅員や目撃者等によってなされることも可能です。
酒に酔っての暴力行為逮捕された場合、酔いが冷めると罪を認め反省していれば、勾留されずに釈放となる可能性もあります。
他方、「覚えていない」「やってない」などと容疑を否認したり、反省の態度がない場合には、逮捕に続き勾留となる可能性も少なくありません。
駅員への暴力行為逮捕されたら、すぐに弁護士に相談し、取調べ対応についてのアドバイスを受けるのがよいでしょう。

ご家族が、酒に酔って駅員暴力を振るってしまい逮捕されたとお困りであれば、刑事事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件専門弁護士が、逮捕された方のもとへ赴き直接接見を行う「初回接見サービス」をご案内させていただきます。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

マンションのドア壊し建造物損壊

2019-07-29

マンションのドア壊し建造物損壊

建造物損壊罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
高校の同窓会に参加した兵庫県神崎郡神河町に住むAさんは、久しぶりに会った旧友たちと盛り上がり、いつもより多く飲酒していました。
店から自宅まで徒歩で帰宅していたAさんは、泥酔していたため自分のマンションだと思い込み、違うマンションに入ろうとしました。
オートロック式だったので、もちろん鍵を持っていないAさんは入ることができませんでした。
「なんで俺を入れへんのや!」と、マンションのエントランスの自動ドアが開かないことに苛立ちを覚えたAさんは、側溝のふたを投げ、ドアを壊してしまいました。
マンションの近くを通ったタクシー運転手が、自動ドアのガラスが割れていることに気が付き、すぐに通報しました。
兵庫県福崎警察署は、マンションの防犯カメラの映像から、Aさんを割り出し、逮捕状を持ってAさん宅に向かいました。
(フィクションです)

マンションのドアを壊す行為は何罪?

上のケースでは、Aさんはマンションの自動ドアのガラスを割っています。
Aさんの行為は、どのような罪に問われるのでしょうか。

他人の物を壊すといえば、「器物損壊罪」が一番に思い浮かぶ罪名ではないでしょうか。

器物損壊罪について

第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

本罪の客体は、「公用文書等毀棄、私用文書等毀棄、建造物等損壊及び同致死傷に規定するもののほか、他人の物」です。
つまり、「公務所の用に供する文書」、「権利・義務に関する他人の文書や電磁的記録」、「他人の建造物又は艦船」以外の他人の物です。
動産・不動産だけでなく、動物も含まれます。

他人のマンションのエントランスにある自動ドアは、器物損壊罪の客体に該当するのでしょうか。
それとも、「建造物」に当たり、「建造物損壊罪」が成立し得るのでしょうか。

それでは、建造物損壊罪についてみていきましょう。

建造物損壊罪は、他人の建造物や艦船などを損壊する罪です。

第二百六十条 他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

本罪の客体は、「他人の建造物又は艦船」です。
ここでいう「建造物」とは、家屋その他これに類似する建築物を指称し、屋外を有し障壁または柱材をもって支持されて土地に定着し、少なくともその内部に人が出入りすることのできるものであることを必要とします。(大判大3・6・20)
ですので、外塀や門などは建造物ではありません。
器物が建造物の一部を構成しているといえるためには、毀損しなければ取り外しができない状態にあることが必要となります。(大判明43・12・16)
また、適切な工具を使用すれば、損壊せずに取り外しができるのであっても、器物が建造物の一部かどうかは、物と建造物との接合の程度や、物の建造物における機能上の重要性などを総合的に考慮して判断されます。(最決平19.3.20)
天井、敷居、鴨居、屋根、瓦、玄関ドアは建造物の一部となり、畳、ふすま、雨戸、障子などの造作物や建具は、器物損壊罪の客体となると解されます。
よって、マンションの玄関ドアは、建造物の一部に当たり、「器物損壊罪」ではなく「建造物損壊罪」の客体となります。

器物損壊罪の法定刑が3年以下の懲役または30万円以下の罰金であるのに対して、建造物損壊罪のそれは、5年以下の懲役と非常に重くなっています。
また、器物損壊罪は親告罪であるのに対し、建造物損壊罪は非親告罪です。
ですので、被害者の告訴がなくとも刑事事件として成立することになります。
しかし、器物損壊事件の場合と同様に、建造物損壊事件においても、被害者との示談締結が最終的な処分に大きく影響するものと言えます。
建造物損壊事件においては、被害額が高額となるケースもありますし、示談交渉にはそれなりの交渉力をもって臨む必要があるでしょう。
被害者との示談交渉について、一度弁護士にご相談されることをお勧めします。

建造物損壊事件で逮捕された、被害者との示談交渉に困っておられるならば、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件専門の弁護士が、無料法律相談初回接見サービスを行います。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

リベンジポルノと強要罪

2019-07-25

リベンジポルノと強要罪

リベンジポルノ強要罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
SNSを通じて知り合った会社員のAさんと高校生のVさん(17歳)は、1年ほど交際していましたが、別れることになりました。
その後しばらくして、Aさんから「会いたい」と連絡がありましたが、Vさんは断りました。
すると、「会わないというなら、お前の裸の写真や動画をネットに拡散するぞ。」と言い、AさんはVさんに面会を強要しました。
怖くなったVさんは、学校の先生に話し、兵庫県川西警察署に相談することにしました。
兵庫県川西警察署は、Aさんを強要未遂容疑で逮捕しました。
(フィクションです)

リベンジポルノって?

交際している間に撮影した交際相手の裸や性行為の写真・動画などは、信頼している相手だから悪用されることはないと信じていませんか?
10~20代の若者の間では、自身の裸の写真を相手に送ったり、性行為の様子を撮影することに同意した経験がある人の数が、他の年齢より多く、知識や経験が乏しく、その危険性を十分に理解していないことが多いようです。
そのような写真や動画は、交際関係が終わっても、データを完全に削除しない限り、相手の手元に残るということをきちんと理解しなければなりません。
近年、交際中に撮影した相手方の裸の写真などをネットに投稿するなどと言って、元交際相手に対して復縁を迫ったり面会するよう求める行為が増えてきています。
このように、離婚した配偶者や別れた元交際相手が、相手から別れを切り出されたことや要求を拒否されたことの仕返しとして、相手の裸の写真や動画など、相手が公開するつもりのない私的な性的画像を無断でネットに公開する行為を「リベンジポルノ」といいます。

リベンジポルノに関連する犯罪とは?

1.リベンジポルノ防止法違反

「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」(以下、「リベンジポルノ防止法」)は、リベンジポルノを規制しています。

第三条 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。
3 前二項の行為をさせる目的で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し、又は私事性的画像記録物を提供した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

リベンジポルノ防止法でいう「私事性的画像記録」というのは、
・性交または性交類似行為
・他人が人の性器等を触る行為または人が他人の性器等を触る行為
・服の全部または一部を着けていない姿で、殊更に人の性的な部位が露出されたり強調されたりしているものであって、性欲を興奮させまたは刺激するもの
を撮影した画像で、第三者に見られることに同意が得られていないものです。

このような画像をネットの掲示板などに投稿する行為は、リベンジポルノ防止法違反となります。

2.強要罪

刑法第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。

性的な画像を公開することで、相手方の名誉を棄損すると脅し、面会や交際などといった義務のないことを行わせる行為は、強要罪にあたります。
強要罪は未遂でも処罰されます。

3.児童ポルノ法違反

画像等の被写体が18歳未満である場合は、児童ポルノに該当し、児童ポルノ製造・所持罪が成立するでしょう。
また、それらの画像等をネット上に載せた場合には、児童ポルノ公然陳列罪となり、その法定刑は5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその併科と非常に重い罪に問われることとなります。

他にも、「性的な画像をばらまくぞ」と脅した場合には脅迫罪が、公開したことで名誉が毀損されたとして名誉棄損罪が成立する可能性もあります。

いずれにせよ、相手の気持ちを無視し、自己の欲求を満たすためにリベンジポルノに走ることはやめましょう。

もし、あなたがリベンジポルノで刑事事件の被疑者として警察に取り調べを受けているのであれば、今すぐ刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
被害者がいる事件では、被害者との示談成立が事件解決に最も有効な手段です。
当事者が直接交渉するのではなく、弁護士を介して行うことで、円滑に示談交渉を進めることができるでしょう。
特に、元配偶者や交際相手といった関係性にある場合には、当事者間での交渉は難航しますので、弁護士を介して行うことをお勧めします。

刑事事件でお困りであれば、刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

示談成立で不起訴に

2019-07-23

示談成立で不起訴に

示談成立での不起訴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
会社の同僚と兵庫県美方郡香美町にあるバーを訪れたAさん。
お酒も入り、店のマスターや同僚との話も盛り上がり楽しい時間を過ごしていたのですが、店に来ていた他の客Vさんが、店の女性従業員にちょっかいをかけており、従業員やマスターは対応に困っていました。
そこで、AさんはVさんに「店の子も嫌がっるから、いい加減にしとき。」と言うと、Vさんは「お前誰やねん。しゃしゃりでてくんなや。」と言ってきたため、2人は口論になりました。
Aさんは、Vさんの挑発的な態度に我慢できなくなり、顔面を拳で一発殴ってしまいました。
口論が激しくなってきた際にマスターが兵庫県美方警察署に通報しており、駆け付けた警察官にAさんとVさんは別々に警察署に連行されました。
Aさんは、相手を殴ったことを素直に認めており、警察に事の経緯も正直に話しています。
警察官から、「相手と示談したらどうか。弁護士に相談してみたら。」と言われ、示談交渉を任せられる弁護士を探しています。
(フィクションです)

示談について

被害者がいる事件では、事件を穏便に解決する手段として、被害者との示談が挙げられます。
示談というのは、加害者が被害者に対して相応の弁償金を支払う一方、被害者は被害届の提出を行わないなど、当事者間では今回の事件は解決したと約束することです。
示談を成立させ、被害者が加害者に対して処罰を求めないとなれば、警察や検察官はそれ以上事件について捜査を行うことをせず、事件終了とする可能性が高いと言えるでしょう。

しかし、加害者が直接被害者と示談交渉することはお勧めできません。
警察が加害者に対して、被害者の連絡先を教えてくれることはあまりなく、加害者が直接被害者に連絡することができないからです。
加害者が被害者に働きかけて罪証隠滅を図るおそれもありますし、被害者が加害者に対して自分の連絡先を教えることを拒むことも多いのです。
また、元々被害者と知り合いで連絡先を知っていたとしても、当事者が直接交渉することで、感情論的になり、交渉が難航することが多いので、当事者間での交渉は好ましくないでしょう。
一般的に、示談交渉は弁護士を介して行います。
弁護士限りということであれば、連絡先を教えてもよいという被害者も多いですし、弁護士からの話を聞くうちに、処罰感情が高い被害者も徐々に示談意向を示すようになるケースもあります。
ですので、被害者との示談交渉は、加害者本人ではなく、代理人である弁護士に任せるのがよいでしょう。

示談が成立すれば

被害者との示談が成立した場合、以下のような結果が期待できます。
①事件化阻止
捜査機関が介入する前に示談が成立した場合には、事件化を阻止することができます。
警察が捜査を開始する前に、示談が成立しているので、被疑者として警察から取調べを受けることはありません。
②不起訴(起訴猶予)
既に被害者から被害届が出されているなど、事件が捜査機関に発覚している場合であっても、早期に示談を成立させることで、検察官が不起訴として事件を終了させる可能性を高めることになります。

不起訴とは

被疑者を起訴するか否かは、裁判官ではなく検察官が決めます。
検察官が起訴しないとする処分を「不起訴処分」といいます。
不起訴処分には、①罪とならず、②嫌疑なし、③嫌疑不十分、④起訴猶予の種類があります。
不起訴となる場合の多くが、④の「起訴猶予」です。
起訴猶予は、被疑者が犯罪を犯したという証拠が十分あり起訴することも可能であるが、被疑者の性格・年齢・境遇、犯罪の軽重・情状、犯罪後の情況を考慮し、起訴する必要がないと判断され、不起訴となることです。
起訴猶予を獲得するためには、被疑者が反省していることや、被害者との示談が成立していることなどが重要なポイントとなります。
示談が成立することによって、被疑者の反省の態度を示すことにもなりますし、被害者との和解が成立しているとして被疑者にとって有利な材料にもなります。

このように、被害者がいる事件では、早期に示談を成立させることで、不起訴処分を獲得する可能性を高めることができます。
刑事事件の加害者となり対応にお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談のご予約は、フリーダイヤル0120-631-881まで。

保釈制度について

2019-07-07

保釈制度について

保釈制度について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
覚せい剤取締法違反の疑いで兵庫県須磨警察署に逮捕されたAさんは、その後、窃盗、傷害でも再逮捕されました。
Aさんは、覚せい剤取締法違反、窃盗、傷害で神戸地方検察庁に起訴されました。
第一審では、神戸地方裁判所は懲役18年9月の実刑判決を言い渡しましたが、Aさんは控訴し、その後保釈されました。
(実際の事件を基にしたフィクションです)

保釈制度

控訴審中に保釈されていた実刑確定者が収監に抵抗して刃物を持ったまま逃走するという事件が起きたことは、ニュースでも大々的に報じられていますので、多くの方がご存知のことと思います。
この事件を契機に、保釈制度について注目が集まっているようです。
そこで、今回のブログでは保釈制度について説明してみたいと思います。

保釈って何?

保釈」というのは、一定額の保釈保証金の納付を条件として、被告人に対する勾留の執行を停止し、その身柄拘束を解く裁判とその執行のことをいいます。

さて、保釈によってその執行を停止する「勾留」についてはご存知でしょうか。
勾留は、被疑者または被告人を拘禁(身柄を拘束)する裁判およびその執行のことです。
逮捕から48時間以内に警察は被疑者を釈放するか検察へ送致するかを決定します。
警察から検察へと被疑者の身柄が送致されると、検察官は被疑者の身柄を受けてから24時間以内に、釈放するか裁判所に対して勾留請求をするかを決めます。
検察官からの勾留請求を受けて、裁判官は被疑者を勾留するか否かを判断し、勾留決定を行います。
勾留期間は、検察官が勾留請求した日から原則で10日間、延長が認められれば最長で20日間の身体拘束となります。
これは、起訴前の勾留であり、「被疑者勾留」と呼ばれます。
検察官は、勾留期間中に被疑者を起訴するか否かを判断します。
検察官が被疑者を起訴すると、その段階から被疑者は「被告人」という立場になります。
起訴後の勾留を「被告人勾留」といいます。
被疑者段階で検察官の請求により勾留されていた者が、勾留期間中に同一の犯罪事実について起訴された場合には、起訴と同時に被疑者勾留は、自動的に被告人勾留に切り替わります。
被告人勾留の期間は、公訴の提起があった日から2か月とされており、特に必要がある場合は1か月ごとに更新されます。
長期間の身体拘束は、被告人に大きな影響を及ぼすことは容易に想像できるでしょう。

被疑者勾留は保釈が認められませんが、被告人勾留については保釈が認められます。
ですので、検察官が公判請求した場合には、すぐに保釈請求を行い、身柄解放に向けて動く必要があります。

保釈保証金っていくらになるの?

保釈保証金を預ける代わりに身体拘束をとくのが「保釈」ですので、裁判官・裁判所が保釈を許可したとしても、保釈保証金を納付しなければ被告人は釈放されません。
保釈保証金の額は、犯罪の性質・情状、証拠の証明力、被告人の性格や資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な額でなければなりません。
重大な犯罪を行い実刑が見込まれる場合には、逃亡を防止するため保釈保証金額が高くなりますし、被告人の経済力から高額でなければ逃亡を躊躇させる抑止力としての効果は望めませんので、その場合も高額となります。
しかし、そのような事情がない場合、一般的な相場は150~200万円となっています。

保釈はいつからいつまで?

先述したように、検察官が公判請求した時点から保釈請求を行うことはできます。
保釈請求書を提出後、裁判官・裁判所は、検察官からの意見を聴いた上で判断を下します。
その後、許可がでれば、許可書を受領し、裁判所の出納係に保釈保証金を納め、検察官が釈放指揮をとってから被告人が釈放されるという流れになります。
判決期日に実刑判決が言い渡されると、保釈は失効し、判決後すぐに身柄が拘束されることになります。
しかし、一審判決後に再度保釈請求をし、認められた上で保釈保証金を納めれば再び釈放されることは可能です。

保釈中に逃亡したら?

保釈保証金は、没収されなければ判決後に返還されます。
保釈保証金が没収される場合とは、①保釈が取り消されたとき、そして②刑の言渡しを受け、その判決が確定した後に、執行のために呼び出しを受けても正当な理由なく出頭しないときや逃亡したとき、です。
刑が言い渡される前に逃亡した場合にも、保釈が取り消される可能性がありますので、保釈後に被告人や受刑者が逃亡すれば、保釈は取り消され、保釈保証金が没収されるということになります。

刑事事件でご家族が逮捕・勾留され、保釈による身柄解放をお望みであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

児童虐待で逮捕

2019-07-05

児童虐待で逮捕

児童虐待での逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
数年前に妻と離婚し、それ以来男手一つで3人の子供を育ててきたAさん。
しかし、子供が言いつけを守らない時には手を挙げることもしばしばありました。
ある時、子供Vくんが反抗的な態度に出たことに腹を立てたAさんは、Vくんの頬を思いっきり拳で2~3発殴ってしまい、Vくんの顔にあざが出来てしまいました。
翌日、Vくんの顔のあざに気づいた学校の先生が、校長に報告し、学校から児童相談所に報告が行くことになりました。
Vくんは児童相談所に一時保護されており、児童相談所から連絡を受けたAさんは警察に逮捕されるのではないかと不安です。
(フィクションです)

児童虐待は犯罪か?

保護者が、子供に対してしつけと称して手を挙げてしまった場合、その行為は犯罪に当たるのでしょうか。

まず、「児童虐待」とは何か?という点ですが、これについては児童虐待の防止等に関する法律(以下、「児童虐待防止法」といいます。)第2条に定義されています。

第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。

一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。

二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。

三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。

四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

子供に対し身体的な暴力を加えることは、上の第1号に該当することになります。
児童虐待防止法は、その第3条において、児童に対する虐待を禁止しています。
しかし、児童虐待防止法は、児童虐待をした者に対する罰則を設けていません。

刑事手続では無罪推定原則があること、そして、逮捕・勾留、裁判、刑罰執行という事態が、子供の実際の監護養育にとってかえって好ましくない場合もあるので、児童虐待に該当するすべての行為に対して刑事的対応がなされるわけではありません。
一方、児童虐待防止法は、「児童の親権を行う者は、児童虐待に係る暴行罪、傷害罪その他の犯罪について、当該児童の親権を行う者であることを理由として、その責めを免れることはない。」と14条2項において明記しています。
身体的虐待の場合、子供を殴る行為は暴行罪、それにより怪我をさせた場合は傷害罪、さらに子供を死亡させてしまった場合には傷害致死罪または殺人罪の刑事責任が問われる可能性があります。
児童虐待ではなくしつけであったとの主張が多くなされていますが、親権者の懲戒権との関係について判示した裁判例に以下のものがあります。

9歳の子供の両手を針金で縛り押入内に入れて、トイレや食事以外を除く10数時間も継続して閉じ込めて放置したという事案において、親権者からの懲戒権の行使であるとの主張に対して、「到底一般社会人の首肯できる妥当な懲戒行為としては認められず、即ち正当な懲戒権行使の限度を超えたもの」として、逮捕監禁罪の成立を認めました。(東京高判昭35・2・13)

しつけと児童虐待との明確な線引きというのは、そう容易ではありませんが、一般的に懲戒権行使の範囲を超える行為をみなされると虐待行為として刑事的責任が問われることになります。

児童虐待で逮捕される可能性は?

児童虐待で警察に通報された場合、逮捕される可能性は高くなっています。
被害者である子供が児童相談所に保護されている場合であっても、その他の家族と共謀して罪証隠滅を図るおそれがあると判断されるためです。
逮捕されたら、原則、逮捕から勾留までの間は家族であっても逮捕された方と面会することは認められません。

ご家族が児童虐待逮捕されたら、すぐに弁護士に接見を依頼するのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする法律事務所です。
ご依頼から24時間以内に逮捕された方のもとに赴き接見を行う「初回接見サービス」をご案内させていただきます。

爆破予告で偽計業務妨害罪

2019-07-01

爆破予告で偽計業務妨害罪

偽計業務妨害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県淡路市に住むVさんは、元交際相手のAさんから、Vさんが住むマンションを爆破するとLINEで爆破予告を受けました。
Vさんは怖くなり、すぐに兵庫県淡路警察署に相談しました。
相談を受けた淡路警察署の警察官は、マンションや周辺に不審物がないか捜索しましたが、何も見つかりませんでした。
後日、警察署はマンション付近にいたAさんを、爆破予告で警察を出動させたとして、偽計業務妨害の疑いで逮捕しました。
(神戸新聞NEXT 2019年6月17日21時25分掲載記事を基にしたフィクションです)

偽計業務妨害罪

上記ケースでは、Aさんは偽計業務妨害の容疑で逮捕されました。
それでは、今回は、偽計業務妨害罪とはいったいどのような犯罪なのかについてみていきたいと思います。

第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

本条の前段は信用棄損罪についての規定であり、後段が「偽計業務妨害罪」についてのものとなります。
偽計業務妨害罪の保護法益(法によって保護される利益)は、人の業務の安全です。
ここでいう「業務」とは、自然人または法人、その他の団体が社会生活上の地位において、あるいはこれと関連して行う職業その他の継続して従事することを必要とする事務をいいます。
この事務は、経済的に収入を得る目的でなくても構いません。

さて、偽計業務妨害罪の客体である「業務」には「公務」も含まれるのでしょうか。
公務については、公務執行妨害罪において、「暴行又は脅迫」という限定された妨害手段に対してのみ保護されています。
一方、業務妨害については、人の業務を①虚偽の風説の流布や偽計(刑法第233条)、②威力(刑法第234条)、③電子計算機損壊等(刑法第234条の2)という妨害手段から広く保護しています。
そのため、公務執行妨害罪で限定的に保護されている公務を業務妨害の罪で保護されている業務に含むことが適切か否かが問題となるのです。
判例は、権力的・支配的性質の公務は業務妨害の「業務」に含まれないが、非支配的公務、特に私企業的な公務は含まれ、非支配的な公務に対しては、公務執行妨害罪と業務妨害罪とが競合的に成立し得るとしています。
つまり、強制力を行使する権力的公務については公務執行妨害罪のみの適用があり、その他の公務については、公務執行妨害罪と業務妨害罪の双方の適用があるのです。
しかし、権力的公務であっても偽計に対しては自力での妨害排除機能が認められないので、偽計業務妨害罪の成立を認める裁判例も多くなっています。
例えば、ネットの掲示板に無差別殺人予告を行い、警察を警戒出動させて本来の警ら業務等を妨害した事例につき、偽計業務妨害罪の成立を認めています。(東京高判平21・3・12)

次に、偽計業務妨害罪の行為についてですが、「偽計の風説の流布」または「偽計を用いて」、「人の業務を妨害する」ことです。
「虚偽の風説を流布」とは、虚偽の事項を内容とする噂を不特定多数の者に知れ渡るような態様において伝達することをいいます。
「偽計」とは、人を欺罔・誘惑し、または他人の無知や錯誤を利用することをいいます。
偽計は「人」に対しての行為を指し、「機械」に対しては含まれません。

ここで、業務妨害罪である「偽計業務妨害罪」と「威力業務妨害罪」を区別する業務妨害手段の違いについて説明したいと思います。
「偽計」は、相手の錯誤を誘発する行為であって、相手の意思を制圧する行為を「威力」といいます。
これらの区別は具体的場面において難しい場合がありますが、判例は概して、それが外見的にみて明らかである、公然と行われた妨害行為が「威力」であり、外見的にみて明らかでない、非公然と行われた妨害行為は「偽計」としています。

では、ここで上記ケースにおける爆破予告が「偽計」若しくは「威力」のどちらに当たるのかについて検討してみましょう。
上記ケースでは、AさんがVさんに対して「マンションを爆破する」と連絡し、怖くなったVさんが警察に通報し、警察が出動したものです。
この事件(業務妨害)の被害者は、通報を受けて不審物の捜索や警戒にあたった警察です。
しかし、Aさんは、被害者である警察に対して直接爆破予告をしていません。
つまり、被害者に対して公然と行われた妨害行為ではないため、当該業務妨害は「偽計」を用いて遂行されたと言えるでしょう。

偽計業務妨害罪で被疑者として取調べを受けた、あるいは逮捕されたら、すぐに弁護士に相談することが大切です。
取調べでどのような供述をするかは、その後の処分にも大きく影響しますので、自己に不利な供述調書を取られないためにも、早期に弁護士に相談し、取調べ対応についてのアドバイスを受けるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、偽計業務妨害事件も含めた刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件でお困りであれば、弊所の弁護士に今すぐご相談ください。

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