Archive for the ‘暴力事件’ Category
少年鑑別所収容の回避
少年鑑別所収容の回避に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市垂水区に住む中学生3年生のAさんは、友人Bさんと共謀し、知人のVさんに暴行を加え、所持金3000円を奪ったとして、兵庫県垂水警察署に逮捕されました。
逮捕後、10日間の勾留となったAさんですが、もうすぐ定期試験が控えています。
高校受験を控えたAさんは、家庭裁判所送致後に観護措置がとられ少年鑑別所に収容されれば、定期試験が受けられなくなり、成績に影響するのではないかと心配しています。
(フィクションです。)
少年鑑別所とはどんなところ?
少年鑑別所は、以下のことを行う施設です。
(1)鑑別対象者の鑑別
(2)観護措置等によって収容される者らに対する必要な観護処遇
(3)非行及び犯罪の防止に関する援助
(1)鑑別
少年鑑別所が行う「鑑別」というのは、「医学、心理学、社会学その他の専門的知識及び技術に基づき、鑑別対象者について、その非行又は犯罪に影響を及ぼした資質上及び環境上問題となる事情を明らかにした上、その事情の改善に寄与するため、その者の処遇に資する適切な指針を示すもの」のことです。
少年鑑別所は、様々な観点から、少年がなぜ犯罪・非行に手を染めてしまったのか、その原因について明らかにし、どうすれば再び犯罪・非行に走ることなく更生することができるのかについて見解を示します。
鑑別のために調査すべき事項は、「その者の性格、経歴、心身の状況及び発達の程度、非行の状況、家庭環境並びに交友関係、在所中の生活及び行動の状況」等に関するものです。
少年鑑別所の観護対象者となるのは、以下の者です。
①家庭裁判所、地方更生保護委員会、保護観察所の長、児童自立支援施設の長、児童養護施設の長、少年院の長又は刑事施設の長から鑑別を求められた次の者。
・保護処分または少年法18条2項の措置に係る事件の調査または審判を受ける者。
・保護処分の執行を受ける者。
・懲役または禁錮の刑の執行を受ける20歳未満の者。
②家庭裁判所から次の決定を受けた者
・少年院送致の保護処分。
・少年院仮退院者であって少年院に戻して収容する旨の決定。
(2)観護処遇
少年鑑別所は、観護措置が執られて少年鑑別所に収容される者その他法令の規定により少年鑑別所に収容すべきこととされる者及び収容することができることとされる者を収容し、これらの者に対し必要な観護処遇を行います。
観護措置は、家庭裁判所が少年の調査、審判を行うために、当該少年の心情の安定を図りながら、少年の心身を保護してその安全を図る措置です。
観護措置には、家庭裁判所の調査官の観護に付する在宅観護と、少年鑑別所に送致する収容観護の2種類がありますが、実務上、前者はほとんどとられておらず、観護措置という場合は後者を指すものとされています。
観護措置の要件について、少年法では「審判を行うため必要があるとき」との規定があるのみですが、一般的には、以下の要件を満たす必要があるとされます。
①審判条件があること。
②少年が非行を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること。
③審判を行う蓋然性があること。
④観護措置の必要性が認めあれること。
④の観護措置の必要性については、具体的には、以下のいずれかの事由があるときに認められます。
(a)調査、審判および決定の執行を円滑かつ確実に行うために、少年の身体を確保する必要があること。
(b)緊急的に少年の保護が必要であること。
(c)少年を収容して心身鑑別をする必要があること。
観護措置の期間は、法律上は2週間を超えることはできず、特に継続の必要があるときに1回に限り更新することができるとされていますが、実務上はほとんどの事件で更新がなされているので、通常は4週間となります。
また、家庭裁判所送致前である少年の被疑事件において、検察官は、勾留請求に代えて裁判官に対し観護措置の請求をすることができます。
これを「勾留に代わる観護措置」といいます。
この措置がとられた場合、請求の日から10日間、少年鑑別所に収容されます。
その後、家庭裁判所に送致され、通常はそのまま観護措置がとられ、更に1か月ほど少年鑑別所に収容されることとなります。
少年鑑別所の収容を避けるためには
観護措置がとられると、1か月ほど少年鑑別所に収容されることになります。
その間、少年は学校や職場に行くことはできませんので、少年の社会復帰を妨げてしまうことにもなりかねません。
そこで、観護措置の必要性がない場合や観護措置を避ける必要がある場合には、観護措置を避けるための活動を行う必要があります。
家庭裁判所は、事件が係属している間、いつでも観護措置をとることができます。
しかし、捜査段階から逮捕・勾留されている少年の場合、家庭裁判所に少年が到着してから24時間以内に観護措置をとらなければならないため、送致された日に観護措置がとられることがあります。
そこで、弁護士は、家庭裁判所に送致されるタイミングを見計らい、開廷裁判所に付添人届を提出し、少年について観護措置の要件・必要性がないことや、観護措置を避けるべき事情があることを述べた意見書を提出します。
裁判官や調査官との面談を行い、観護措置の要件・必要性がないこと、観護措置を避けるべき理由を提出した意見書を補充する形でしっかりと主張します。
そうすることで、家庭裁判所に送られてくる書類からでは分からない少年の事情を裁判官や調査官に伝えることができ、観護措置をとるべきか否かを判断する際に考慮してもらえる可能性があります。
捜査段階で身体拘束を受けていない少年が、家庭裁判所に送致された後に観護措置がとられることもあります。
そのため、家庭裁判所に送致される時に、観護措置をとらないよう家庭裁判所に働きかけることも必要でしょう。
このような活動は、少年事件に精通する弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件を数多く取り扱う法律事務所です。
お子様が家庭裁判所に送致され、少年鑑別所に収容されるのではとお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
近隣トラブルで刑事事件に
近隣トラブルで刑事事件に発展する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県宝塚市に住むVさん家族は、1年前に引っ越してきました。
道を挟んだ向かいにあるAさんとも、良好な関係にありました。
しかし、子供がまだ小さいVさんの妻が、町内のイベントの準備に積極的に参加しないことに腹を立てたAさんは、Vさん宅の玄関前で、嫌味を言うようになりました。
最初は嫌味だけでしたが、だんだんとVさん家族の人格を否定するような内容の暴言を吐くようになり、Vさんの妻は怖くて家から出るのもためらうようになりました。
さすがに困ったVさんは、市役所に相談しました。
市役所からAさんに連絡が行った後も、Aさんの嫌がらせ行為は続き、とうとうVさん家族は兵庫県宝塚警察署に相談することにしました。
(フィクションです)
近隣トラブルから刑事事件に発展するのか?
刑事事件というと、殺人や傷害、性犯罪に窃盗などといった犯罪をイメージされる方が多いのではないでしょうか。
刑事事件となると、警察が動き出して大事になる。
犯人は逮捕され、裁判にかけられて刑務所に入る。
そのようなイメージからすると、近隣トラブルのような揉め事には警察は介入しないのではないか。
実は、そうでもありません。
一昔前までは、家庭内トラブルや近隣トラブルといった問題には、警察は積極的に介入しようとはしなかったと言われていますが、トラブルの内容によっては刑事事件として立件することもあり、隣人トラブルから刑事事件に発展するケースは少なくありません。
近隣トラブルで多いのが、隣人からの執拗な嫌がらせ行為です。
何らかの出来事がきっかけとなり、隣人からの嫌がらせを受けているケースが多く、嫌がらせを回避するために荷物をまとめて出ていくなんてことが気軽にはできるものではありませんので、被害者は長年に渡って嫌がらせ行為に悩まされ続けていることがよく見受けられます。
このような隣人からの嫌がらせ行為は、迷惑防止条例違反に該当する可能性があります。
迷惑防止条例は、各都道府県により制定されているもので、兵庫県には、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」と題する条例があります。
この条例の第10条の2は、嫌がらせ行為の禁止について定めています。
正当な理由なく、特定の者に対して、執拗に又は反復して「嫌がらせ行為」をすることを禁止しています。
ここでいう「嫌がらせ行為には、次の8つの行為が含まれます。
①つきまとい・待ち伏せ・見張り・押し掛け
人の後を尾行する行為、行く先々で待ち伏せをする行為、自宅や勤務先などで見張る行為、自宅や勤務先などに押し掛ける行為。
②監視していると告げる行為
帰宅直後に「おかえり」などと電話やメールをする行為、その日の行動や服装などを電話やメールで告げる行為。
③面会などの要求
面会などの義務のないことを行うよう要求する行為。
④乱暴な言動
著しく粗野・乱暴な言動をすること。
⑤無言電話、電子メールなどの送付
無言電話や意味不明な声を上げるだけの電話、拒否しているにもかかわらず電話・メールなどを送る行為。
⑥汚物などの送付
汚物、動物の死体、その他の著しく不快・嫌悪の情を催させるような物を送付したり、その知り得る状態に置くこと。
⑦名誉を害する行為
名誉を傷つけるような内容を告げたり、文書などを届けたりする行為、名誉を傷つけるような文章をネットに掲載して伝えようとする行為など。
⑧性的羞恥心を害する行為
性的羞恥心を害する事項を告げたり、その知り得る状態に置いたり、その性的羞恥心を害する文書・図画その他の物を送付、またはその知り得る状態に置くこと。
上のケースでは、AさんがVさん宅の玄関前で暴言を吐くという行為を繰り返しています。
Aさんの行為は、④の嫌がらせ行為、内容によっては、⑦や⑧にも当たる可能性があります。
④の「著しく粗野又は乱暴な言動」というのは、場所柄や一般に期待される礼儀をわきまえないぶしつけな言動や動作または不当にあらあらしい言語動作であって、刑法の暴行や脅迫などに至らない程度のものをいいます。
大声で「バカ」「くそ」などの粗野な言葉を浴びせる行為、家の前で大声を出したり、車のクラクションをうるさく鳴らす行為等が該当します。
このような「嫌がらせ行為」は、ストーカー規制法における「つきまとい等」と類似していますが、「つきまとい等」は、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」をもって行われる必要があります。
迷惑防止条例の「嫌がらせ行為」は、そのような恋愛感情目的がなく、特定の人に対して、執拗・反復して問題の行為を行うことで足ります。
嫌がらせ行為を行い迷惑防止条例に違反した場合、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
このように、迷惑防止条例違反に当たる場合、近隣トラブルから刑事事件に発展する可能性はあります。
迷惑防止条例違反で刑事事件の被疑者となり対応にお困りであれば、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に一度ご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
示談成立で起訴猶予獲得
示談と起訴猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市北区の路上で、タクシー運転手に暴力を振るって怪我を負わせたとして、会社員のAさんが、兵庫県神戸北警察署に傷害の容疑で逮捕されました。
Aさんは、当時酒にかなり酔っていたようで、タクシー代金を巡って言い争いになり、Aさんが運転手に手を出したとのことですが、Aさんは酔っていて記憶がありません。
しかし、車内のレコーダーの映像からもAさんの犯行は確認されており、Aさんも容疑を認めています。
被害者と早期に示談して不起訴にならないかと、Aさんは弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
起訴猶予とは
被害者や目撃者などからの通報を受けた警察は、刑事事件として捜査を開始します。
身体拘束が必要な場合には、犯人を逮捕することもあります。
警察は、捜査を一通り済ませると、事件を検察に送ります。
これを「送致」といいます。
犯人が逮捕されている場合では、逮捕から48時間以内に送致するか、犯人を釈放するかを決めなければなりません。
警察からの送致を受けた検察官は、捜査を遂げた後、事件を処理します。
検察官が行う終局的な事件処理には、「起訴処分」、「不起訴処分」、「家庭裁判所送致」があります。
「不起訴処分」というのは、問題の事件について起訴しないとする処分のことです。
起訴するかどうかは、検察官が決めることになっています。
不起訴処分には、不起訴とする理由により様々なものがありますが、主な4つを以下でご紹介します。
①嫌疑なし
被疑者が犯人でないことが明らかなとき、または、犯罪を認定する証拠がないことが明らかな場合には、「嫌疑なし」として不起訴処分となります。
②嫌疑不十分
犯罪が立証するだけの証拠が不十分なため、起訴したとしても有罪となる可能性が低い場合には、「嫌疑不十分」で不起訴処分となります。
③起訴猶予
犯罪を証明する証拠は十分にあり、起訴すれば有罪となる可能性は高いけれど、犯罪の重さや被害者の処罰感情、更生の見込みなど、様々な事情を考慮して、今回は起訴しないとする場合です。
不起訴処分となる多くが、起訴猶予だと言われています。
④親告罪の告訴取消し
告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪について、告訴が取り消された場合には、不起訴処分となります。
示談とは
「示談」というのは、刑事事件の文脈においては、加害者が被害者に対して一定の賠償金を支払う代わりに、被害者が被害届を提出しないなど、当事者間で今回の事件は解決したとする約束のことです。
示談が成立したことによる処分への影響ですが、③の起訴猶予でも述べたように、検察官が処分を決める上で考慮する事情に、被害者の処罰感情があります。
示談が成立しており、被害者が加害者に対して刑事罰を望まない場合には、検察官もそれを考慮し起訴猶予とする場合があります。
もちろん、親告罪ではないのであれば、告訴がなくても公訴を提起することはできますが、その他の事情も考慮した上で、検察官が不起訴処分とする可能性は高いでしょう。
つまり、被害者との間で示談を成立させることができれば、起訴猶予となる可能性を高めることができるということです。
そのため、被害者がいる事件では、被害者との示談交渉が不起訴処分を獲得するための重要な弁護活動のひとつと言えます。
被害者との示談交渉は、弁護士を介して行うのが一般的です。
それは、被害者と加害者がもともと知り合いだった場合を除けば、警察や検察などを通じて相手方の連絡先を教えてもらうことになりますが、加害者が直接被害者と連絡をとり、被害者に供述を変えるように迫るなどの行為に及ぶことをおそれ、捜査機関から被害者の連絡先を教えてもらうことはあまりありません。
仮に、教えてもらうことができたとしても、被害者が恐怖や嫌悪感から加害者と直接連絡をとることを嫌がったり、感情論的になり交渉が難航することがあります。
ですので、代理人である弁護士は、弁護人限りで連絡先を教えてもらうといった被害者に配慮した連絡方法を提案したり、加害者の謝罪の気持ちや示談の意向を冷静に伝えた上で、示談のメリットデメリットを丁寧に説明するなど、被害者の気持ちに寄り添いながら粘り強く示談交渉を行うことが期待されます。
被害者との示談交渉は、刑事事件に精通する弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
量刑不当で控訴
量刑不当を理由とした控訴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
傷害罪で神戸地方検察庁に起訴されたAさんに対して、4月4日、神戸地方裁判所は懲役5年の有罪判決を言い渡しました。
Aさんは、判決を量刑不当を理由に控訴するつもりですが、第一審の弁護人に控訴審もお願いするのか、刑事事件を専門とする弁護士に控訴審の弁護人をお願いすべきか悩んでいます。
(フィクションです)
控訴とは
裁判官といえども、人間である以上、裁判の内容に誤りがあったり、手続上の違法があったりする可能性も否定できません。
そのため、そのような誤りを是正する手段を講じる必要があります。
そのような手段の一つに、「上訴」があります。
「上訴」というのは、裁判を受けて不利益を被る者が、その裁判が確定してしまう前に、上級の裁判所に不服を申し立て、原裁判の変更や取消しを求めることです。
裁判に対する不服申立という点で、身柄解放活動として行う勾留に対する準抗告のような「準抗告」とも共通しますが、「上訴」は「上級の裁判所」に対する不服申立であるのに対して、「準抗告」は、「上級の裁判所」ではなく、「原裁判所とは違う裁判所」に対して行う点で異なります。
「上訴」のうち、第一審判決を不服として高等裁判所へ不服申立を行うものを「控訴」といいます。
控訴の申立てをすることができるのは、第一審判決を受けた当事者である検察官と被告人です。
他にも、被告人の法定代理人や保佐人、第一審の代理人や弁護人は、被告人のために控訴を行うことができます。
検察官は、不当と判断した全ての判決について控訴することができますが、被告人は、自己に利益な内容を主張して申し立てなければなりません。
つまり、原判決よりも重い刑を主張して控訴を申し立てることはできないのです。
控訴ができるのは、第一審判決が宣告された日から14日以内です。
上のケースであれば、4月4日に判決が言い渡されていますので、翌日の5日から数えて14日目である18日までであれば、控訴を申し立てることができます。
控訴が申立てられると、原判決の確定は阻止され、その執行は停止されます。
そして、事件は控訴審に係属します。
控訴を申立てると、定められた期限内に、控訴趣意書を控訴裁判所に提出しなければなりません。
「控訴趣意書」とは、控訴の理由を簡潔に明示した書面です。
控訴審は、書面審理であるため、この控訴趣意書が審理を決する重要な要素となります。
控訴理由は刑事訴訟法377条以下に定められており、法定の控訴理由を主張しなかった場合、決定で控訴が棄却されます。
控訴理由
(1)訴訟手続の法令違反
刑事訴訟法277条および378条に列挙されている訴訟手続の法令違反については、原判決への影響の有無を問わず控訴の理由となります。
このような控訴理由を「絶対的控訴理由」と呼びます。
それ以外の訴訟手続の法令違反は、判決に影響を及ぼすことが明らかであるときに控訴の理由とすることができます。
絶対的控訴理由に対して、後者は「相対的控訴理由」と呼ばれます。
(2)法令適用の誤り
認定された事実に対する実体法の適用を誤った場合、法令適用の誤りに該当します。
認定された事実に対して、適用すべき法令を適用しなかった場合、適用すべきてはない法令を適用した場合、法令の解釈を誤って適用した場合などです。
認定された事実に対する実体法の適用を誤ったことに加えて、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかである場合に、控訴の理由とすることができます。
(3)刑の量刑不当
処断刑の範囲内での刑の量定が不当であることを理由に控訴することができます。
情状事実の誤認や評価の誤りといった裁量的加重減免、酌量減軽、刑種の選択や刑期の長短、刑の執行猶予、罰金の換刑処分、選挙権・被選挙権の停止・不停止等も量刑問題となります。
(4)事実の誤認
原判決の事実認定が論理即、経験則等に照らして不合理である場合であり、その誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであるときに、控訴の理由とすることができます。
(3)量刑不当、および、(4)事実の誤認を控訴理由として申し立てる場合、第一審の訴訟記録および証拠に現れている事実に加えて、一定の限度で控訴審での新証拠に基づく事実を主張することができます。
やむを得ない事由によって第一審の弁論終結前に取調を請求することができなかった証拠によって証明することのできる事実、あるいは、第一審の弁論取穴後判決前に生じた事実であり、量刑不当または事実誤認の控訴理由がある場合には、訴訟記録および原裁判所において取り調べた証拠に現れている事実以外の事実であっても、控訴趣意書に援用することができます。
量刑不当を主張する場合、原判決後に被害者との示談が成立したことは、被告人の有利に働きます。
単に、第一審で主張した事情を繰り返すことでは意味がありません。
量刑相場との対比、余罪の評価が適切であるか、前提事実に誤認がないか、原審の事情で正当に評価されなかったものはないか、被告人に有利となる弁論終結後の事情はないか、など注意深く検討する必要があります。
刑事裁判、控訴についてお悩みであれば、一度刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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喧嘩で刑事事件に~犯罪の成立:違法性阻却事由~
構成要件該当性が肯定された後に問題となる第2の犯罪成立要である違法性(違法性阻却事由)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
仲間内の揉め事が原因で、AさんとVさんとの間で激しい言い争いに発展しました。
次第に、二人は殴り合いの喧嘩に発展しました。
見かねた周囲の人間が二人の間に入り、二人を引き離し、いったん殴り合いは納まりました。
しかし、怒りが納まらないVさんは、なおもAさんに対して執拗に殴り続けてきたため、Aさんは反撃に一発Vさんの顔を殴りました。
すると、Vさんは地面に倒れ動かなくなりました。
すぐに救急車を呼び、Vさんは病院に搬送されましたが、意識不明の重体となっています。
駆け付けた兵庫県西脇警察署の警察官は、Aさんや目撃者らから事情を聞いています。
Aさんは、「Vが喧嘩続けてきたから反撃しただけ。正当防衛になりませんか。」と話しています。
(フィクションです)
犯罪が成立するためには
犯罪は、法律の条文に該当し(これを「構成要件該当性」といいます。)、社会的に許されず(「違法性」)、社会的に非難される(「有責」)行為です。
犯罪が成立するか否かを判断するにあたっては、①構成要件に該当するかどうか、②違法であるかどうか、③有責であるかどうか、と順に検討していく必要があります。
前回のブログでは、構成要件該当性について検討しました。
構成要件に該当するのであれば、次に、違法性や責任を否定する何か特別の事情があるか否かについて検討することになります。
構成要件に該当する行為が認められると、違法性を有することも推定されますが、具体的な事情を検討すると、違法性を欠く場合があり、違法性が阻却される事由があるか否かを検討することとなります。
2.違法性について
「違法性」というのは、形式的には、問題となる行為が法規範に反することをいいます。
構成要件は違法行為類型であると理解する限り、構成要件に該当する行為は、原則として違法であることになります。
しかし、この原則の例外となる特別の事情がある場合には、その違法性が否定され、犯罪は成立しないことになります。
そのような違法性を失わせる特段の事情を「違法性阻却事由」といいます。
違法性阻却事由として刑法に規定されているものとしては、「正当行為」、「正当防衛」、「緊急避難」があります。
ここでは、正当防衛についてみていきましょう。
違法性阻却事由:正当防衛とは
「正当防衛」とは、(1)急迫不正の侵害に対して、(2)自己又は他人の権利を防衛するため、(3)やむを得ずにした行為、のことをいいます。
(1)急迫不正の侵害
①急迫性
侵害は、「急迫」したものでなければなりません。
「急迫」とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味します。
すでに侵害が終了しているときは、その直後であっても急迫性は認められませんが、一旦法益が侵害されても、新たな侵害がさらに加えられる状況があれば、侵害の急迫性を肯定することができます。
また、侵害が予期されたものであった場合でも、判例は、侵害の急迫性は直ちに失われるものではないとする立場をとっています。(最判昭46・11・16)
しかしながら、予期された侵害の機会を利用し、積極的に相手方に対して加害行為を加える意思で侵害に臨んだときには、侵害の急迫性の要件は充たされないとしています。
②不正
「不正」は、違法であることを意味します。
侵害者の行為は有責である必要はなく、構成要件該当行為である必要もないとされています。
要保護性を備えた利益に対する侵害であれば足りると解されます。
(2)自己又は他人の権利の防衛
正当防衛は、「自己又は他人の権利」を「防衛」するために認められます。
正当防衛として許されるのは、侵害者の法益を侵害する場合に限られます。
正当防衛は、防衛行為でなければなりません。
防衛行為といえるためには、客観的に防衛行為としての性質を有していることに加えて、防衛の意思でその行為がなされることが必要となります。
判例は、防衛意思の内容について、相手の加害行為に対し憤慨・逆上して反撃をしたからといって、直ちに防衛の意思を欠くものではなく(最判昭11・12・7)、攻撃の意思が併存していても防衛の意思は認められる(最判昭50・11・28)と、防衛の意思についての解釈を示しています。
しかしながら、攻撃を受けたのに乗じ積極的な加害行為にでたなどの特別な事情がある場合には防衛の意思が否定され(最判昭46・11・16)、防衛の名を借りて侵害者に対し積極的に攻撃を加える行為は防衛の意思を欠く(最判昭50・11・28)、としています。
(3)やむを得ずにした行為
正当防衛として違法性が阻却されるためには、防衛するために「やむを得ずにした行為」であることが必要です。
正当防衛の成立要件として、①必要性と②相当性の両方を必要とされます。
①必要性
「やむを得ずにした行為」というためには、必ずしもその行為が唯一の方法である必要はなく、また、厳格な法益の権衡も要求されませんが、少なくとも相手方に最小の損害を与える方法を選ぶことを要するものと理解されています。
②相当性
許容される防衛行為には限度があり、防衛行為としてどのような手段がとられたのかという点に着目して、その相当性が判断されます。
喧嘩闘争における正当防衛について
さて、喧嘩においても正当防衛が成立し得るのでしょうか。
喧嘩が発展し、双方が、攻撃や防御を繰り返す連続的行為となった場合、「喧嘩両成敗」として正当防衛は成立しません。
しかし、攻撃や防御を繰り返す連続的行為が崩れた場合、例えば、当初は素手で喧嘩していた相手方が、急に刃物を持ち出して攻撃したことに対して反撃した場合や、けんかが一旦収まったにもかかわらず、相手方がなおも攻撃を続けてきたことに対して反撃した場合などは、正当防衛が成立する余地があるとされます。
喧嘩の一部分だけを切り取って判断するのではなく、一連の事態を全体的に観察し正当防衛が成立する余地があるか否かが判断されるのです。
上のケースでは、いったん喧嘩が収まったにもかかわらず、Vさんが再度Aさんを執拗に殴り始めたため、これに反撃するためにAさんがVさんを殴った、というものです。
喧嘩が一度収まっているところ、攻撃と防御の連続的行為が崩れたとみて、さらにAさんの加害行為が急迫不正の侵害に対して、自己の権利を防御するためにやむを得ずにした行為であると判断されれば、Aさんの正当防衛が認められ犯罪は成立しないことになります。
正当防衛が成立する余地があるかについては、事件の内容によりますので、刑事事件に強い弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
傷害事件で被疑者となり対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
喧嘩で刑事事件に~犯罪の成立:構成要件該当性~
殴り合いの喧嘩で犯罪が成立する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
仲間内の揉め事が原因で、AさんとVさんとの間で激しい言い争いに発展しました。
次第に、二人は殴り合いの喧嘩に発展しました。
見かねた周囲の人間が二人の間に入り、二人を引き離し、いったん殴り合いは納まりました。
しかし、怒りが納まらないVさんは、なおもAさんに対して執拗に殴り続けてきたため、Aさんは反撃に一発Vさんの顔を殴りました。
すると、Vさんは地面に倒れ動かなくなりました。
すぐに救急車を呼び、Vさんは病院に搬送されましたが、意識不明の重体となっています。
駆け付けた兵庫県西脇警察署の警察官は、Aさんや目撃者らから事情を聞いています。
Aさんは、「Vが喧嘩続けてきたから反撃しただけ。正当防衛になりませんか。」と話しています。
(フィクションです)
犯罪が成立するためには
社会的に許されず、避難されるべき行為は、多々ありますが、その中でも刑罰を加えるとしたものについては、あらかじめ法律の条文という形で私たち国民に提示されています。
芸能人の不倫騒動が、ニュースで大きく取り沙汰されている昨今ですが、不倫自体は社会的に許されず、社会的に避難されるべき行為ではありますが、犯罪ではありません。
犯罪は、法律の条文に該当し(これを「構成要件該当性」といいます。)、社会的に許されず(「違法性」)、社会的に非難される(「有責」)行為です。
犯罪が成立するか否かを判断するにあたっては、①構成要件に該当するかどうか、②違法であるかどうか、③有責であるかどうか、と順に検討していく必要があります。
1. 構成要件該当性
構成要件の意義については、様々な見解がありますが、「立法者が犯罪として法律上規定した行為の類型」をいうとするのが基本的な理解となっています。
構成要件は、それを構成する構成要件要素により成り立っています。
構成要件要素は、個別の犯罪ごとに異なりますが、一般的には、①行為の主体、②行為、③結果、④行為と結果との間の因果関係、⑤故意・過失、です。
喧嘩の場面では、通常、暴行罪や傷害罪が成立することが多いでしょう。
喧嘩の末に、相手方が亡くなってしまった場合には、傷害致死罪、場合によっては殺人罪が適用されることがあります。
ここでは、傷害罪の構成要件に該当するか否かを検討します。
傷害罪
傷害罪は、刑法204条に規定されています。
第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
傷害罪は、他人の身体に対する侵害を内容とする犯罪です。
ですので、本罪の客体である「人の身体」は「他人の身体」であるのた、後者自身の身体の傷害は罪とはなりません。
さて、傷害罪の行為は、人の身体を「傷害」することです。
「傷害」というのは、人の生理的機能に障害を加えることです。
傷害は暴行によって生じることが多いのですが、暴行によらない傷害もあり、怒号等の嫌がらせによって、不安・抑うつ状態に陥れることも傷害に当たります。
傷害の方法については、有形無形を問いません。
また、傷害罪は故意犯です。
「故意」とは、「罪を犯す意思」のことをいいます。
傷害罪の場合、暴行罪の結果的加重犯の場合も含むと解する立場が通説となっており、傷害罪の故意は暴行の認識があれば足りるとされます。
殴り合いの喧嘩の場合、相手を殴るという暴行を加えていますが、積極的に相手方に怪我を負わせてやろうと思っていないとしても、殴ることで怪我を負っても構わないと思っていたのであれば傷害の故意が認められます。
そもそも、傷害罪の場合には暴行の認識があれば足りますので、相手に手を出していることで傷害の故意が認められます。
上のケースでは、双方が殴り合う喧嘩ですので、両者ともに暴行を加えていますが、AさんがVさんを殴り、そのことが原因で意識障害に陥ったのであれば、Aさんの行為は、傷害罪の構成要件に該当することになるでしょう。
構成要件に該当するのであれば、次に、違法性や責任を否定する何か特別の事情があるか否かについて検討することになります。
構成要件に該当する行為が認められると、違法性を有することも推定されますが、具体的な事情を検討すると、違法性を欠く場合があり、違法性が阻却される事由があるか否かを検討することとなります。
違法性阻却事由として刑法が定めるものに、「正当防衛」があります。
この言葉は、みなさんもご存知だと思います。
次回は、この正当防衛について解説します。
喧嘩から刑事事件に発展することは少なくありません。
目撃者や被害者が警察に通報することで、事件が警察に発覚することが多いようです。
相手が因縁をつけてきたからかっとなって…、相手が手を出してきたから…、など様々な事情がその背景にあることもありますが、喧嘩で相手に怪我を負わせた場合、傷害事件の被疑者となる可能性も大いにありますので、一時の感情で動くことには注意しましょう。
傷害事件で被疑者となり対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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DV事件で刑事事件に発展したら
DV事件で刑事事件に発展した場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県南あわじ市に住むAさんは、ある夜、妻のVさんと家計のことや子供の教育について口論となりました。
会社の飲み会で帰宅が遅くなったAさんに、Vさんは暴言を吐くので、カッとなったAさんは、Vさんに対して殴る蹴るの暴行を加えました。
Vさんは、そのまま家を出て、近所の交番に駆け込みました。
その後、警察官がAさん宅に訪れ、Aさんに事情を聞いた後、兵庫県南あわじ警察署に連れていってしまいました。
「警察に説教してもらって反省すればいいわ。」と思っていたVさんでしたが、警察からAさんを逮捕したとの連絡を受けて、驚いています。
(フィクションです)
DV事件で刑事事件に発展する可能性は?
配偶者や子供、交際相手などに暴力を振るった場合、暴行罪や傷害罪といった罪に問われる可能性があります。
一昔前までは、家庭内の問題への介入に警察は消極的でしたが、DV事件から殺人や傷害致死といった大きな事件に発展するケースが増え、今日では警察もDV事件に対して厳しく対処しています。
警察に事件が発覚する経緯としては、次のようなものが挙げられます。
●子供に暴力を振るい、身体にあざや怪我が残った場合、学校が不審に思い、児童相談所などに報告することで、事件が発覚する。
この場合、子供は児童相談所に一時保護される可能性があります。
また、児童相談所から警察に連絡がいき、警察は被疑事件として捜査を開始するでしょう。
被疑者と被害者の関係性から、身体拘束の必要性が生じ、逮捕される可能性も否定できません。
●配偶者や交際相手が、直接警察に通報・相談することで、事件が発覚する。
暴力を受けた配偶者や交際相手が、警察などに通報・相談することで、刑事事件に発展するケースも少なくありません。
診断書や被害届を提出した場合には、警察は刑事事件として捜査に着手します。
被害届を提出するケースでは、DV被害を受けた配偶者や交際相手が関係解消を望んていることが多いでしょう。
しかし、相手に反省してもらおうと警察に通報・相談した場合であっても、状況によっては駆け付けた警察官により被疑者が現行犯逮捕される可能性もあります。
DV事件で逮捕されたら
DV事件で逮捕されたら、通常の刑事事件と同様の手続を踏むことになります。
逮捕から、48時間以内に、被疑者は釈放される、若しくは、検察に送致されることになります。
検察に送致されたら、今度は検察官が被疑者の身柄を受けてから24時間以内に被疑者を釈放するか、あるいは勾留請求を行うかを決めます。
検察官が勾留請求した場合、裁判官は勾留するか否かを判断します。
勾留となれば、検察官が勾留請求をした日から原則10日間、延長が認められれば最大で20日間身柄が拘束されることになります。
このように、逮捕から比較的短時間で勾留の有無が決まってしまいます。
配偶者や交際相手の身体拘束まで求めていない場合、長期身体拘束によって生じうる解雇等の不利益は、被疑者だけでなく被害者やその家族も被ることになってしまいます。
このように、被害者が刑事事件化や被疑者の身体拘束を望まない場合には、その旨をきちんと捜査機関や裁判所に理解してもらうことが重要です。
その結果、早期釈放や不起訴で事件を終える可能性を高めることができるでしょう。
他方、配偶者や交際相手が被疑者との関係解消を望んでおり、身体拘束について特に不利益がない場合には、逮捕後勾留となり、身体拘束が長期化する可能性があります。
しかし、相手方との示談を成立させることにより、事件を早期に終了させ、釈放となる可能性もあります。
離婚や交際関係解消が絡んだ示談交渉は、当人同士や家族同士で行うと、感情的になり上手く進まないことが多々ありますので、そのような交渉は弁護士を介して行うのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお悩みであれば、弊所の弁護士に一度ご相談ください。
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少年事件の中間処分:試験観察
少年事件の中間処分である試験観察について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神崎郡市川町に住む少年Aくん(16歳)は、高校に進学したものの学校に馴染めず入学から2か月で辞めてしまいました。
Aくんは、中学時代に不良仲間とバイク窃盗で逮捕され、神戸家庭裁判所姫路支部で保護観察が言い渡された過去があります。
高校を辞めてからも不良仲間とつるむようになり、共同危険行為で逮捕され、保護観察となった矢先、今度は傷害事件で逮捕されてしまいました。
Aくんの家族は、今度は少年院送致となるのではないかと心配して、少年事件に詳しい弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
少年保護事件の処分
20歳未満の者(以下、「少年」といいます。)が事件を起こした場合、基本的には、家庭裁判所に事件がおくられ、家庭裁判所の調査・審判を経て、何らかの処分が決定されます。
家庭裁判所の取り扱う非行少年に対する事件を「少年保護事件」と呼びます。
家庭裁判所が少年保護事件について行う決定には、事件自体について判断し、最終的な少年の処分を決定する「終局決定」と、終局決定前の中間的な措置としてなされる「中間決定」とがあります。
「終局決定」としては、次の5種類があります。
①審判不開始
②不処分
③保護処分(保護観察、児童自立支援施設又は児童養護施設送致、少年院送致)
④検察官送致
⑤知事又は児童相談所長送致
そして、「中間決定」には、移送決定、観護措置決定、審判開始決定、検察官関与決定などがありますが、ここでは「試験観察決定」について説明します。
試験観察とは
前述の通り、「試験観察」は終局決定前の中間的な措置です。
少年法は、家庭裁判所は、保護処分を決定するため必要があると認めるときは、決定をもって、相当の期間、少年を調査官の観察に付することができると定めています。
これが、「試験観察」と呼ばれるものです。
試験観察は、少年に対する終局決定を留保し、少年の行動等を観察するために、中間決定をもってとられる措置です。
この試験観察制度の機能については、①調査の機能、そして、②少年の性格矯正・環境調整を図る機能、の2点であると言われています。
①調査の機能
保護処分には、「保護観察」、「児童自立支援施設又は児童養護施設送致」、「少年院送致」と社会内処遇のものから矯正施設内処遇のものまで身体拘束という点だけでも異なる処分が設けられています。
決定された処分は、例外的な場合を除いては取消し・変更はされません。
ですので、少年審判においては、少年の要保護性に関する資料をしっかりと調査し、少年の行動等も観察した上で、慎重かつ適切な判断がされなければなりません。
ですが、審判までの期間では見極めるのに不十分なこともありますので、少年にとって適正な処分は如何なるものか慎重に見極めるためにも十分な調査をする必要があり、試験観察制度が持つ機能のひとつです。
②少年の性格矯正・環境調整を図る機能
試験観察は、終局処分が一旦保留されている状態であり、少年に心理的な影響を与え、更生を促す効果が期待されます。
いわゆる「プロベーション」の一形態といわれます。
試験観察の要件について、少年法は、「保護処分を決定するため必要があるとき」としか規定していません。
しかし、一般的には、以下の4つの要件を満たす必要があるとされます。
①保護処分に付する蓋然性があること。
②直ちに保護処分に付することができないか、または相当でない事情があること。
③調査官の観察活動が必要であり、かつ、その結果、適切な終局決定ができる見込みがあること。
④相当期間内に観察目的を達成する見込みのあること。
試験観察の期間については、「相当の期間」としか少年法には定められていませんが、在宅試験観察の場合、3~4か月程度、補導委託の場合には4~6ヶ月程度となっています。
少年院送致が見込まれる事件であっても、試験観察となったのにち保護観察で社会復帰できる可能性も大いにあります。
お子様が事件を起こし対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
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カスタマー・ハラスメントで強要事件
カスタマー・ハラスメントで強要事件に発展する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県赤穂郡上郡町にある飲食店で、食事をしていたAさんは、注文した料理が運ばれてこないことに腹を立て、対応した従業員に罵声を浴びせ始めました。
Aさんの罵声を聞いた店長が、Aさんをなだめようと間に入りましたが、その態度に激昂したAさんは、「この店、どないなっとんねん!客に対してしっかり謝罪せんかい!お前、土下座で謝罪せんかい!誠意みせんと、この店潰したるでな!」と土下座を強要してきました。
困りかねた店長は、兵庫県相生警察署に通報しました。
警察署から駆け付けた警察官は、Aさんに話を聞いています。
(実際の事件に基づいたフィクションです)
カスタマー・ハラスメントで刑事事件に!?
「○○ハラスメント」といった言葉が浸透してきた昨今、カスタマー・ハラスメントで迷惑を被った、対応に困ったといった経験をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。
従業員に対する暴言や土下座強要、ネットへの誹謗中傷の書き込み、客による常識を越えた悪質なクレームや迷惑行為を「カスタマー・ハラスメント」といいます。
店側のミスに対する正当な苦情であれば、店側もそれを真摯に受け止めサービスの向上に努めますが、通常の苦情を越えた悪質なクレームは、時に犯罪行為となる場合もあることに注意が必要です。
上記ケースのように、見せのサービスに対して苦情を訴えることから始まっていますが、Aさんは店長に土下座をして謝罪するよう求めています。
このような土下座強要は、刑法の「強要罪」に当たる可能性があります。
強要罪とは?
強要罪は、刑法第223条に規定されています。
第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。
強要罪は、相手方またはその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に対して、害を加える旨を告知して脅迫し、または暴行を用いて、人に義務のないことをおこなわせ、または権利の行使を妨害することにより成立する罪です。
◇脅迫・暴行◇
「脅迫」は、脅迫罪のものと同様に、恐怖心を生じさせる目的で、相手方またはその親族の生命・身体・自由・財産に対し、害を加えることを告知することです。
「暴行」は、被害者が畏怖し、そのため行動の自由が侵害されるに足りる程度の有形力の行使であることを要し、かつ、それで足りると解されます。
◇強制・妨害◇
暴行・脅迫を手段として、被害者の意思を抑圧し、義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害することを強要といいます。
「義務のないことを行わせ」た例としては、子守の少女に水入りバケツ等を数十分ないし数時間、胸の辺りまたは頭上に支持せしめたもの(大判大8・6・30)、理由なく謝罪文を書かせたもの(大判大15・3・24)があります。
「権利の行使を妨害する」には、告訴を断念させたもの(大判大7・7・20)、競技大会への出場をやめさせたもの(岡地判昭43・4・30)があります。
Aさんは、注文した料理が提供されていないことに対して苦情を申し立てたようですが、それに対応した店長に対して、土下座での謝罪を要求し、しなければ店を潰すと脅しています。
店を潰す、つまり店長の財産に対し害を加えることを告知していますので、「脅迫」を手段としていますね。
そして、「店を潰す」と脅迫し、店長に土下座して謝罪させようとしていますが、いくら店側にサービスにおける落度があったとしても、土下座という行為を行う「義務」までは発生しませんので、土下座をさせることは「義務のないことを行わせ」ることだと言えるでしょう。
実際に店長が土下座をした場合は、強要罪が成立し、Aさんから脅迫され土下座を強要されたが結局土下座はせずに終わったのであれば、強要未遂となります。
強要罪は、未遂も処罰の対象となります。
店の対応に満足できず、苦情を申し立てることはあっても、カスタマー・ハラスメントで刑事時事件に発展してしまうなんてことのないように、客側もきちんとした態度で対応するべきでしょう。
強要事件のように被害者がいる事件においては、最終的な処分が決められる上で、被害者との間で示談が成立しているか否かが重要視されます。
ですので、早期に被害者との示談交渉に着手する必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件でお困りの方、被害者との示談交渉にお悩みの方は、一度弊所の弁護士にご相談ください。
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介護殺人事件で執行猶予
介護殺人事件で執行猶予を目指す活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
「近所から異臭がする。」と通報を受けた兵庫県福崎警察署は、兵庫県神崎郡神河町にある民家に駆け付けました。
民家の部屋には練炭が置かれており、一酸化炭素が充満していました。
そこに、親子とみられる高齢女性と男性が倒れていました。
救急搬送され、男性は一命を取り留めましたが、高齢女性は既に死亡しており、死因は首を絞められたことによる窒息死であることが分かりました。
男性に事情を聴いたところ、「介護をしていた母が、死にたいと口にしたので、一緒に死のうと思った。」と供述しています。
接見に訪れた弁護士は、Aさんに、今後の手続の流れについて説明しており、執行猶予の可能性についても話をしています。
(フィクションです)
執行猶予について
「執行猶予」とは、裁判で有罪が言い渡された場合、一定の要件のもとに様々な情状を考慮し、その刑の執行を一定期間猶予し、その猶予期間中何事もなく無事に経過すれば、刑の言渡しの効力を失わせるという制度のことです。
有罪となっても、実際に刑罰を受けることはないため、執行猶予が付いているのと付いていないのとでは、裁判後の生活は全く異なります。
執行猶予には、全部執行猶予と一部執行猶予とがありますが、今回は前者について説明します。
当たり前ですが、どんな事件でも執行猶予を付けることができるわけではありません。
執行猶予を付けることができるのは、様々な要件を充たしていなければなりません。
◇執行猶予の要件◇
執行猶予については、刑法第25条に規定されています。
第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
執行猶予の要件は、
(1)①前に禁固以上の刑に処せられたことがない者、あるいは、
②前に禁固以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑に処させらことがない者、であり、
(2)3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しをする場合で、
(3)執行猶予を相当とするにたりる情状があること
です。
(1)の「前に禁固以上の刑に処せられたことがない」とは、これまでに死刑・懲役・禁錮の刑に処する確定判決を受けたことを意味します。
罰金・拘留・科料の前科が何回あっても関係ありません。
(2)の要件について、拘留・科料を言い渡す場合には、その執行を猶予することはできません。
そして、(3)の情状に関しては、犯行方法や犯行態様が悪質ではないこと、犯罪の結果が軽微であること、動機に酌むべき事情があること、被告人に反省が見られること、被害者への被害弁償が済んでいること又は被害者の許しを得ていること、などが量刑の際に考慮される要素です。
また、前に禁固以上の刑の処せられたことがあっても、その執行を猶予された者に、1年以下の懲役・禁錮の言渡しをする場合、「情状に特に酌量すべきものがある」ときは、同様に全部執行猶予となる可能性があります。
これを「再度の執行猶予」といいます。
さて、上記ケースについて検討してみましょう。
まず、Aさんが行った行為に対して、如何なる罪が成立するでしょうか。
Aさんは、母親の介護をしていたようで、その母親が死にたがっていたので、自分も死ぬつもりで母親を殺害した後に、練炭自殺を行ったようです。
母親が既に死を心に決め、自分を殺すようAさんに頼んだのであれば、「同意殺人」罪が成立する可能性があります。
しかし、同意殺人が成立するためには、被殺者が殺人の意味を理解し、死について自由な意思決定能力を有する者であることが必要です。
また、被殺者である人からその殺害を依頼されてこれに応じる、もしくは、被殺者である人から殺害されることについての同意を得た上で殺す行為が対象となりますが、この嘱託・承諾は被殺者本人の意思によるものであることが必要であり、通常の弁識能力を有する者の自由かつ真意に基づいてなされていなければなりません。
ですので、欺罔や威迫に基づく嘱託・承諾は無効となり、この場合は殺人罪を構成することになります。
また、被殺者が自殺意思を有していただけにすぎない場合、行為者と被殺者との間に嘱託・承諾の関係がないため、同意殺人ではなく殺人罪が成立することになります。
Aさんに対して、同意殺人罪が成立する場合、刑罰は6月以上7年以下の懲役・禁錮の範囲で決められます。
法定刑の下限が6月であるので、執行猶予の要件である、「3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しをする場合」にも該当する余地があります。
一方、殺人罪が成立する場合、その法定刑は死刑又は無期若しくは5年以上の懲役ですので、「3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しをする場合」には該当しないことになります。
しかしながら、事件の内容によっては、刑の減軽により執行猶予となったケースもあります。
執行猶予となる可能性があるか否かについては、事件の内容にもよりますので、刑事事件を起こしお困りの方は、一度刑事事件に精通する弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
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