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18歳未満との性交等:淫行条例違反
18歳未満との性交等を行い刑事事件(淫行条例違反)となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県三田警察署は、県外に住むAさんを兵庫県青少年愛護条例違反の疑いで逮捕しました。
18歳未満であることを知りながら、無料通信アプリで知り合った15歳の少女と性交をした疑いです。
Aさんは、「少女が18歳未満であることは分かっていたが、無理やりしたわけではなく、お互い同意の下でやった。」と話しています。
Aさんは、会社に事件のことが知られるとクビになるのではないかと心配しています。
(フィクションです)
18歳未満の者と性交等をした場合
18歳未満の者と性交や性交類似行為(以下、「性交等」といいます。)を行った場合、犯罪が成立し、刑事事件として手続に付される可能性があります。
該当し得る罪としては、以下のようなものがあります。
1.淫行条例違反
各都道府県は、青少年(18歳未満の者)の保護育成とその環境整備を目的にした条例を制定しています。
兵庫県は、「青少年愛護条例」を制定しており、その第21条は、青少年とのみだらな性行為等を禁止しており、違反者に対する罰則を設けています。
第21条 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
本条例における「みだらな性行為(=「淫行」)」の意義については、福岡県の青少年保護育成条例についてではありますが、最高裁判所の判例で、以下のように解されています。
『「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。けだし、右の「淫行」を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは、「淫らな」性行為を指す「淫行」の用語自体の意義に添わないばかりでなく、例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものを含むこととなつて、その解釈は広きに失することが明らかであり、また、前記「淫行」を目にして単に反倫理的あるいは不純な性行為と解するのでは、犯罪の構成要件として不明確であるとの批判を免れないのであつて、前記の規定の文理から合理的に導き出され得る解釈の範囲内で、前叙のように限定して解するのを相当とする。』(最高裁大判昭60年10月23日)
結婚を前提としたような真剣交際の関係にあった場合には、淫行には当たらず、本条例違反を構成することはありません。
上の事例のように、ネットで知り合った青少年に対して、知り合ってから短期間で性交等に及んだ場合は、真剣な交際にあったとは認められ難いでしょう。
Aさんは、少女が18歳未満であったことは認識していたようですが、「お互いに同意の上での行為」だと主張しています。
しかし、この場合、相手が性交等に同意していたか否かは問題ではなく、相手の青少年を「誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為」をしたか否かが問われているので、Aさんが相手の少女と性交に至る経緯や関係性などを考慮すると、Aさんの行為は「淫行」に当たるり、Aさんが相手を18歳未満だと認識していたのであれば、淫行条例違反が成立することになります。
もし、Aさんが相手を18歳以上だと誤信していた場合には条例違反が成立するのでしょうか。
兵庫県青少年愛護条例は、18歳未満であることの認識に過失があっても処罰するとしています。
6 第17条第1項(同項第4号又は第9号に係る部分を除く。)、第20条第1項若しくは第2項、第21条第1項若しくは第2項、第21条の2、第21条の3又は第24条第2項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第1項又は前3項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。(第30条6項)
例えば、相手が18歳以上を示す身分証明書を提示したため、18歳以上だと信じたけれども、実際には他人の身分証明書で相手は18歳未満であった場合には、相手を18歳以上だと信じるのが通常であるため、故意も過失もなく、上の規定に関わらず罪は成立しません。
しかし、提示された身分証明書がその相手のものではないと気付くような状況であった場合には、過失があったとして、条例違反が成立することになります。
兵庫県青少年愛護条例違反(淫行条例違反)の法定刑は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。
初犯であり、立件された事件数も少ない場合には、罰金となるケースが多いでしょう。
しかし、初犯であっても、複数の事件が立件されており、その犯情も悪い場合には、公判請求され刑事裁判となる可能性もあります。
他方、早期に被害者(実際には、被害者の保護者)との間で示談を成立させることができれば、不起訴処分で事件を終了させる可能性を高めることができます。
ですので、18歳未満の者と性交等を行い、淫行条例違反で被疑者として捜査の対象となっているのであれば、できるだけ早くに弁護士に相談・依頼し、被害者との示談交渉に着手することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が淫行条例違反で逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881へ。
盗撮犯を恐喝し逮捕
盗撮犯を恐喝した場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市兵庫区の駅で、女性を盗撮していた男性から、現金を脅し取った疑いで、兵庫県兵庫警察署は、Aさんを逮捕しました。
男性から現金を受け取る様子を目撃した、警察官がAさんに職務質問をしたところ、Aさんが逃亡したため、警察官は男性に事情を聞き、その後、Aさんの身柄を確保しました。
Aさんは、「盗撮なんかしとったあいつが悪いんちゃうのか。」と供述しています。
(フィクションです)
恐喝罪について
刑法第249条
人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
◇犯行の対象◇
恐喝罪の客体は、「他人の占有する財物」と「財産上の利益」です。
「財物」は、有体物と、電気など物理的に管理可能なものを含みます。
刑法にいう「占有」とは、財物に対する事実上の支配をいいます。
占有があるかないかを判断するときには、占有の事実と占有の意思を総合して、社会通念に従い判断されます。
物を客観的に支配している場合はもちろんのこと、物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態も「占有」に含まれます。
「財産上の利益」は、財物以外の全ての財産上の利益を指します。
例えば、債務の免除、履行期の延期、債務負担の約束などです。
◇行為◇
恐喝罪の実行行為は、「恐喝し、財物を交付させる」又は「恐喝し、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させる」ことです。
恐喝罪が成立するには、相手方を恐喝し、畏怖した相手方が財産的処分行為を行い、財物又は財産上の利益が交付されるといった、一連の因果関係が必要です。
①恐喝
「恐喝」は、脅迫又は暴行により人を畏怖させることです。
暴行・脅迫は、財物又は財産上の利益の交付に向けられたものでなければなりません。
暴行・脅迫の程度は、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度に至らず、相手方を畏怖させるに足りるものであればよく、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度に達したときには強盗罪となります。
恐喝罪における「脅迫」は、人を畏怖させるに足りる害悪の告知をいい、相手を単に困惑させるにとどまる場合は含まれません。
また、告知された害悪の内容は、必ずしもそれ自体が違法であることを要しません。
例えば、他人の犯罪を知る者が、捜査機関にその犯罪事実を申告する旨告知して、口止め料として現金を提供させた場合も、恐喝罪における「脅迫」に当たるとした判例があります。(最判昭29・4・6)
そのため、上のケースにおいて、Aさんが盗撮犯に対して犯罪行為を指摘したとしても、単なる指摘にとどまらず、捜査機関への申告をしない代わりに金銭を要求するなど、金銭を支払わなければ犯罪行為を捜査機関に申告されてしまうと相手方を畏怖させる害悪の告知をしたのであれば、「脅迫」に当たるでしょう。
②財産的処分行為
恐喝罪が成立するためには、畏怖により生じた瑕疵ある意思に基づいて、物・財産上の利益が交付される必要があります。
財産的処分行為が成立するためには、財産を処分する事実と処分する意思が必要となります。
◇結果◇
相手方の財産的処分行為の結果として、行為者側に財物の占有や財産上の利益が移転することが必要となります。
恐喝行為によって、相手方が畏怖し、畏怖に基づく財産的処分行為によって財物の占有又は財産上不法の利益が行為者又は第三者に移転した時に恐喝罪が完成した(既遂)ことになります。
恐喝罪の成立のためには、①恐喝行為⇒②畏怖⇒③畏怖に基づく財産的処分行為⇒④財物の交付又は財産上不法の利益を得る、の因果の流れが成立することが必要です。
◇故意◇
他人を恐喝して、畏怖に基づく財産的処分行為により、財物又は財産上不法の利益を得、又は他人に得させること及びその因果関係を認識することが必要です。
この故意とは別に、条文にはありませんが、不法領得の意思も判例上認められた要件です。
恐喝事件における弁護活動
(1)被害者対応
被害者がいる事件においては、被害者対応が重要な弁護活動のひとつとなります。
被害者への謝罪・被害弁償が済んでいることや示談が成立しているかどうかといった点は、検察官が起訴・不起訴を判断する際や裁判官が量刑を決める際に考慮される重要な要素だからです。
恐喝事件においても、弁護士は早期に被害者と示談交渉を行い、被害弁償の上、処罰を求めないなどの約束をしてもらえるよう動きます。
示談が成立した場合、不起訴となる可能性が高くなりますし、起訴後であっても、執行猶予となる可能性を高めることになります。
(2)身柄解放活動
逮捕されてしまった場合には、その後に勾留となり長期の身体拘束を強いられないよう身柄解放に努めます。
検察官に対して、勾留の要件を満たしていないことや勾留によって被り得る不利益が大きいことを主張し、勾留請求しないことを求めます。
検察官が勾留請求した場合には、今度は裁判官に対して、勾留の決定をしないよう意見書の提出や面談を通じて説得的に主張し、勾留回避に動きます。
勾留が決定した後であっても、勾留に対する準抗告を行い、早期の身柄解放を目指します。
このような活動は、刑事事件に精通する弁護士に依頼するのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
恐喝事件でご家族が逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881へお電話ください。
少年鑑別所収容の回避
少年鑑別所収容の回避に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市垂水区に住む中学生3年生のAさんは、友人Bさんと共謀し、知人のVさんに暴行を加え、所持金3000円を奪ったとして、兵庫県垂水警察署に逮捕されました。
逮捕後、10日間の勾留となったAさんですが、もうすぐ定期試験が控えています。
高校受験を控えたAさんは、家庭裁判所送致後に観護措置がとられ少年鑑別所に収容されれば、定期試験が受けられなくなり、成績に影響するのではないかと心配しています。
(フィクションです。)
少年鑑別所とはどんなところ?
少年鑑別所は、以下のことを行う施設です。
(1)鑑別対象者の鑑別
(2)観護措置等によって収容される者らに対する必要な観護処遇
(3)非行及び犯罪の防止に関する援助
(1)鑑別
少年鑑別所が行う「鑑別」というのは、「医学、心理学、社会学その他の専門的知識及び技術に基づき、鑑別対象者について、その非行又は犯罪に影響を及ぼした資質上及び環境上問題となる事情を明らかにした上、その事情の改善に寄与するため、その者の処遇に資する適切な指針を示すもの」のことです。
少年鑑別所は、様々な観点から、少年がなぜ犯罪・非行に手を染めてしまったのか、その原因について明らかにし、どうすれば再び犯罪・非行に走ることなく更生することができるのかについて見解を示します。
鑑別のために調査すべき事項は、「その者の性格、経歴、心身の状況及び発達の程度、非行の状況、家庭環境並びに交友関係、在所中の生活及び行動の状況」等に関するものです。
少年鑑別所の観護対象者となるのは、以下の者です。
①家庭裁判所、地方更生保護委員会、保護観察所の長、児童自立支援施設の長、児童養護施設の長、少年院の長又は刑事施設の長から鑑別を求められた次の者。
・保護処分または少年法18条2項の措置に係る事件の調査または審判を受ける者。
・保護処分の執行を受ける者。
・懲役または禁錮の刑の執行を受ける20歳未満の者。
②家庭裁判所から次の決定を受けた者
・少年院送致の保護処分。
・少年院仮退院者であって少年院に戻して収容する旨の決定。
(2)観護処遇
少年鑑別所は、観護措置が執られて少年鑑別所に収容される者その他法令の規定により少年鑑別所に収容すべきこととされる者及び収容することができることとされる者を収容し、これらの者に対し必要な観護処遇を行います。
観護措置は、家庭裁判所が少年の調査、審判を行うために、当該少年の心情の安定を図りながら、少年の心身を保護してその安全を図る措置です。
観護措置には、家庭裁判所の調査官の観護に付する在宅観護と、少年鑑別所に送致する収容観護の2種類がありますが、実務上、前者はほとんどとられておらず、観護措置という場合は後者を指すものとされています。
観護措置の要件について、少年法では「審判を行うため必要があるとき」との規定があるのみですが、一般的には、以下の要件を満たす必要があるとされます。
①審判条件があること。
②少年が非行を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること。
③審判を行う蓋然性があること。
④観護措置の必要性が認めあれること。
④の観護措置の必要性については、具体的には、以下のいずれかの事由があるときに認められます。
(a)調査、審判および決定の執行を円滑かつ確実に行うために、少年の身体を確保する必要があること。
(b)緊急的に少年の保護が必要であること。
(c)少年を収容して心身鑑別をする必要があること。
観護措置の期間は、法律上は2週間を超えることはできず、特に継続の必要があるときに1回に限り更新することができるとされていますが、実務上はほとんどの事件で更新がなされているので、通常は4週間となります。
また、家庭裁判所送致前である少年の被疑事件において、検察官は、勾留請求に代えて裁判官に対し観護措置の請求をすることができます。
これを「勾留に代わる観護措置」といいます。
この措置がとられた場合、請求の日から10日間、少年鑑別所に収容されます。
その後、家庭裁判所に送致され、通常はそのまま観護措置がとられ、更に1か月ほど少年鑑別所に収容されることとなります。
少年鑑別所の収容を避けるためには
観護措置がとられると、1か月ほど少年鑑別所に収容されることになります。
その間、少年は学校や職場に行くことはできませんので、少年の社会復帰を妨げてしまうことにもなりかねません。
そこで、観護措置の必要性がない場合や観護措置を避ける必要がある場合には、観護措置を避けるための活動を行う必要があります。
家庭裁判所は、事件が係属している間、いつでも観護措置をとることができます。
しかし、捜査段階から逮捕・勾留されている少年の場合、家庭裁判所に少年が到着してから24時間以内に観護措置をとらなければならないため、送致された日に観護措置がとられることがあります。
そこで、弁護士は、家庭裁判所に送致されるタイミングを見計らい、開廷裁判所に付添人届を提出し、少年について観護措置の要件・必要性がないことや、観護措置を避けるべき事情があることを述べた意見書を提出します。
裁判官や調査官との面談を行い、観護措置の要件・必要性がないこと、観護措置を避けるべき理由を提出した意見書を補充する形でしっかりと主張します。
そうすることで、家庭裁判所に送られてくる書類からでは分からない少年の事情を裁判官や調査官に伝えることができ、観護措置をとるべきか否かを判断する際に考慮してもらえる可能性があります。
捜査段階で身体拘束を受けていない少年が、家庭裁判所に送致された後に観護措置がとられることもあります。
そのため、家庭裁判所に送致される時に、観護措置をとらないよう家庭裁判所に働きかけることも必要でしょう。
このような活動は、少年事件に精通する弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件を数多く取り扱う法律事務所です。
お子様が家庭裁判所に送致され、少年鑑別所に収容されるのではとお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
嫌がらせ行為で迷惑防止条例違反
嫌がらせ行為で迷惑防止条例違反となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県加西市の会社に勤めるAさんは、迷惑防止条例違反(嫌がらせ行為)の疑いで兵庫県加西警察署に逮捕されました。
容疑については、Aさんが、勤務先の会社で、女性社員が使用している個人ロッカーに、体液を塗り付けたハンドタオルを4回置いたというものです。
被害女性が会社を通じて警察に通報し、防犯カメラの映像などからAさんが犯人である疑いが高まりました。
Aさんは、容疑を認めているようですが、Aさんと被害女性は所属部署も異なり面識がありませんでした。
Aさんは、被害女性に謝罪と被害弁償を行いたいと思っています。
(フィクションです。)
嫌がらせ行為で迷惑防止条例違反
「兵庫県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(以下、「迷惑防止条例」といいます。)は、その10条の2で、「嫌がらせ行為」を禁止しています。
迷惑防止条例で規制されるのは、「正当な理由がないのに、特定の者に対し、執ように又は反復して行う」「嫌がらせ行為」です。
ここで言う「嫌がらせ行為」というのは、次の8つの行為のことです。
①つきまとい、待ち伏せ、進路への立ち塞がり、住居・勤務先・学校などの付近での見張り・押しかけ。
②行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
③面会その他義務のないことを行うよう要求すること。
④著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
⑤無言電話、拒否されたにもかかわらず何度も電話をする、ファックス、電子メールを送ること。
⑥汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
⑦名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
⑧性的羞恥心を害する事項を告げ、若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し、若しくはその知り得る状態に置くこと。
この「嫌がらせ行為」には、ストーカー規制法第2条第3項に規定するストーカー行為は除かれます。
ストーカー規制法における「ストーカー行為」とは、「同一の者に対し、つきまとい等を反復してすること」です。
「つきまとい等」とは、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系もしくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し」、1号から8号までのいずれかに掲げる行為をすることです。
「つきまとい等」となる対象行為は、嫌がらせ行為のそれと同じです。
しかし、「つきまとい等」には、「恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で、特定の者やその家族等に対して、繰り返し対象行為を行うことが必要となります。
つまり、恋愛感情その他の感情に基づく場合のみ「つきまとい等」となり、それを同一の者に対して反復して行うことで、「ストーカー行為」となります。
Aさんの場合、特定の者に対して、体液を付けたハンドタオルを個人ロッカーに4回置いていました。
体液を付けたハンドタオルを個人ロッカーに置くという行為は、上の⑥に当たるでしょう。
その行為を4回行っていたので、「執拗に」または「反復して」行っていると言えますが、その動機についてはどうでしょう。
Aさんは被害者と面識がなかったようなので、恋愛感情その他の好意の感情に基づくものではなかったかもしれません。
その場合には、ストーカー規制法違反ではなく迷惑防止条例違反が成立するに留まります。
被害者がいる事件では、被害者対応の如何により処分の結果が大きく変わります。
早期に被害者への謝罪及び被害弁償、示談を成立させることにより、不起訴処分で事件を終了できる可能性が高まります。
被害者対応は、弁護士に任せるのがよいでしょう。
加害者との直接交渉を望む被害者はそう多くありません。
交渉に着手できたとしても、感情的になり交渉が難航してしまいがちです。
他方、弁護士を介して行うことで、冷静な交渉を、そして、両者が納得のいく内容での示談成立が期待できます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
迷惑防止条例違反事件を起こし対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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ぐ犯少年にも対応する弁護士
ぐ犯少年について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県揖保郡太子町に住むAさん(16歳)は、地元の高校に進学しましたが、学校に馴染むことが出来ず、2か月で退学してしまいました。
その後、家族とも言い争うことが多くなり、Aさんは実家を出て、知り合いの家で生活するようになりました。
生活費を稼ぐために風俗店でアルバイトしたり、援助交際をしていました。
ある夜、繁華街でうろついていたAさんを兵庫県生田警察署が補導し、ぐ犯少年として神戸家庭裁判所に送致されました。
(フィクションです。)
ぐ犯少年とは
家庭裁判所の審判の対象となる少年は、3種類に分けられます。
(1)犯罪少年
14歳以上20歳未満で罪を犯した少年。
(2)触法少年
14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年。
(3)ぐ犯少年
ぐ犯事由があり、その性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年。
ぐ犯事由には、次の4つがあります。
①保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
少年が、保護者の正当な監督を必要とする行状があるにもかかわらず、法律上及び社会通念上保護者の正当な監督に服しない行動傾向があることです。
②正当な理由がなく家庭に寄り付かないこと。
少年の性格、年齢、家庭の状況等を総合して、少年が家庭に戻らないことに正当な理由がない場合をいいます。
家庭内で少年が身体的・精神的虐待を受けている場合や、少年が職を求めて家庭を飛び出した場合などは、正当な理由なく家庭に寄り付かないことには当たりません。
③犯罪性のある人もしくは不道徳な人と交際し、またはいかがわしい場所に出入りすること。
犯罪を犯すきっかけとなるような好ましくない交際をし、または教育上子供を立ち入らせるべきではない場所に出入りすることです。
例えば、暴力団や暴走族などの反社会的集団に所属したり、不良仲間と交際したりすることや、不健全な風俗営業や遊行施設などに出入りすることなどです。
④自己または他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
性的に悪い習慣があったり、人格を損なうみだらな行為などといった社会的・倫理的観念に反する降雨意を自ら行い、または他人にさせるような行動傾向があることをいいます。
具体例としては、風俗店で働く、援助交際をするなどです。
これらのぐ犯事由のいずれかに該当すれば足りますが、いずれも一定期間にわたる行状、性癖であることが求められます。
ぐ犯は、犯罪には至っておらず、成人であれば処罰の対象となりません。
しかし、少年法は、今だ犯罪行為まで至っていない不良な行為をしている少年を早期に発見し、適切な保護を加えることにより、少年の健全な育成を図るとともに、犯罪の発生を未然に防ごうとしていることから、ぐ犯少年を審判の対象としています。
家庭裁判所に送致された後は、犯罪少年の場合と同様の手続がとられます。
観護措置の必要があれば観護措置がとられますし、調査官による調査が行われ、審判が開かれ決定が言い渡されます。
犯罪ではなく、犯罪行為の前段階と評価されることから、軽い処分で済むと思われることが多いのですが、事案によっては要保護性が高いことも多く、観護措置がとられる可能性もあります。
また、終局処分についても犯罪少年の場合と同様ですので、要保護性が高い場合には少年院送致のような重い処分が決定することもあります。
そのため、ぐ犯事件の付添人活動においても、犯罪少年と同様に、要保護性を解消するために十分な活動を行う必要があります。
ぐ犯少年についても少年事件に強い弁護士に相談・依頼するのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件を数多く取り扱う法律事務所です。
お子様がぐ犯少年として家庭裁判所に送致されて対応にお困りであれば、弊所の弁護士に今すぐご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。
盗撮事件で逮捕されたら
盗撮事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
会社員のAさんは、兵庫県西宮市の駅構内の階段で、女性のスカート内にスマートフォンを差し入れ盗撮したとして、兵庫県甲子園警察署に迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、早期釈放と前科回避に向けてすぐに動いてくれる弁護士を探しています。
(フィクションです。)
盗撮で問われる罪とは
スマートフォンのカメラ機能を利用して行う盗撮や、小型カメラを靴やペンに仕込んで行う巧妙な盗撮など、様々な方法で盗撮は行われています。
もちろん盗撮は犯罪です。
盗撮は犯罪であることは、よく知られたところですが、盗撮が何の罪に当たるかについてまでご存じの方はそう多くありません。
法律上、「盗撮罪」という罪はありません。
盗撮行為は、各都道府県が定める迷惑防止条例で禁止される「卑猥な言動」に当たることが多く、迷惑防止条例違反という罪が成立する可能性があります。
兵庫県の迷惑防止条例は、その第3条の2において、「卑わいな行為等」を禁止する規定を定めています。
同条で禁止される行為は以下の通りです。
(1)公共の場所・乗物における「人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動」および「正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で、写真機等を設置する行為」の禁止
「公共の場所」は、不特定多数の者が自由に出入りし利用できる場所のことで、「道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場、飲食席、遊戯場その他の公共の場所」です。
同様に、「公共の乗物」とは、不特定多数の者が、自由に利用することができる乗物をいいます。
つまり、誰でも行ける(いる)ことができる場所・乗物のことです。
そのような場所で、「人に不安を覚えさせるような卑わいな言動」をしたり、「人の通常衣服で隠されている身体や下着を撮影するために、写真機を設置」することが禁止されています。
「人に不安を覚えさせるような卑わいな言動」というのは、「社会通念上、性的道着観念に反する下品でみだらな言動または動作」をいいます。(最高裁判例)
盗撮は、この「卑わいな言動」に当たります。
盗撮に加えて、盗撮目的での写真機の設置も規制対象となります。
(2)公共の場所・乗物を除く、集会所、事業所、タクシーその他の不特定多数の者が利用するような場所・乗物において、「人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為」や「人に不安を覚えさせるような卑わいな言動」をしたり、「人の通常衣服で隠されている身体や下着を撮影するために、写真機を設置」することが禁止されています。
公共の場所・乗物だけでなく、その他の不特定多数の人が利用するような場所・乗物での、盗撮および盗撮目的での写真機等の向ける行為・設置行為も規制対象です。
(3)浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を受けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置することを禁止しています。
以上のように、兵庫県迷惑防止条例は、盗撮が行われた場所を「公共の場所・乗物」に限定しておらず、また、盗撮のみならず盗撮目的でのカメラ等を向ける行為や設置行為も禁止対象としています。
そのため、盗撮しようと思って、スマートフォンなどをスカート内に差し向け、現に下着などは撮影できていない場合であっても、条例違反が成立することになります。
盗撮事件における弁護活動
盗撮事件における主な弁護活動は、早期釈放に向けた身柄解放活動と不起訴処分獲得を目指す活動です。
1.身柄解放活動
逮捕された場合、逮捕から48時間以内に、警察は、逮捕された人を釈放するか、それとも検察に証拠書類とともに送るか決めます。
検察に送致された場合、検察官が逮捕された人の身柄を受けてから24時間以内に、その人を釈放する、もしくは勾留請求を行います。
検察官が勾留請求すると、裁判官が、勾留するか否かの判断を下します。
勾留が決定した場合、逮捕された人は、検察官が勾留請求した日から原則10日間身柄が拘束されることになります。
その間は、学校や職場に行くことはできませんので、最悪の場合には退学や懲戒解雇となるおそれがあります。
そのような事態を回避するためにも、勾留が決定する前に、検察官に対して勾留請求しないよう、裁判官に対して勾留を決定しないよう働きかけることが重要です。
そのような働きかけにもかかわらず、勾留が決定してしまった場合であっても、その決定に対する不服申立を行い、できる限り早期に釈放となるよう身柄解放活動に従事します。
2.不起訴獲得を目指す活動
被疑者を起訴するか否かは、検察官が決めます。
起訴され、有罪判決が言い渡され刑罰が科されると、前科が付くことになります。
前科を回避するためには、検察官が今回の事件については起訴しない旨の決定をする、つまり不起訴処分で事件を終わらせる必要があります。
盗撮事件であれば、初犯であり、犯行が悪質でなく、被疑者との示談が成立している場合には、不起訴処分となる可能性は高いでしょう。
そのため、被害者との示談を成立させることが重要です。
このような弁護活動は、盗撮事件を含めた刑事事件・少年事件に精通する弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
ご家族が盗撮事件で逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。
運転手役は共同正犯?幇助犯?②
運転手役が共同正犯となるか幇助犯となるかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aは、先輩Bから、Bと知り合いのCを指定された場所まで送り迎えをするよう頼まれました。
兵庫県養父市のとある事務所までBとCを車で送り、その場で待機していました。
BとCは、帽子を被りマスクを着用した姿で車を降り、15分後、大きな袋に荷物を詰めて戻ってきました。
そして、AはBとCを指定された場所まで送り届けました。
Aは、Bから謝礼として3万円を受け取りました。
後日、兵庫県養父警察署がAさん宅を訪れ、窃盗容疑でAさんを逮捕しました。
(フィクションです。)
共謀共同正犯の成立は、
①共同実行の意思の連絡(=共謀)、
②犯行実現への強い動機、関心、利害があり、これに基づいて犯行を実現するのに重要な役割を果たすこと、
③共謀者の少なくとも1人による実行
が要件となります。
共謀共同正犯が成立する場合、すべての者が正犯として処罰されることになります。
一方、共犯の一種である幇助犯は、正犯の犯罪行為を容易にするなど、手助けをする行為を行った者をいいます。
2.幇助犯について
幇助犯については、刑法第62条に次のように規定されています。
正犯を幇助した者は、従犯とする。
幇助犯の成立要件は、
(1)正犯者を幇助すること(幇助行為と幇助の犯意)
(2)正犯が犯罪を実行すること
(3)幇助の因果関係
の3つです。
(1)正犯者を幇助すること
①幇助行為
正犯の犯罪行為を手助けすること。
その手段や方法に制限はありません。
道具や場所などの提供といった有形的な方法や、犯行場所の情報提供や精神的に決意を維持させるなどの無形的な方法でも構いません。
②幇助の犯意
正犯の犯罪行為を手助けする意思があること。
正犯者が幇助の意思に気が付いていない場合でも幇助犯は成立します。
(2)正犯が犯罪を実行すること
幇助行為の対象となる正犯は、不作為犯でもよいのですが、過失犯は含まれません。
また、幇助意思に基づき幇助したとしても、正犯が実行しない場合は幇助犯は成立しません。
(3)幇助の因果関係
幇助が正犯の実行に役立った、容易にした場合でないと幇助犯は成立しません。
幇助行為が正犯者の実行行為を物理的・心理的に容易にすれば足りるとされます。
幇助犯は、正犯の刑が減軽されます。
運転手役は、共同正犯か?幇助犯か?
それでは、侵入盗の運転手役は、共同正犯(共謀共同正犯)となるのか、それとも幇助犯となるのか、について考えてみましょう。
共謀共同正犯と幇助犯の要件を比較してみると、「正犯意思があるか否か」という点が両者の違いであることに気付くでしょう。
つまり、犯行実現への強い動機、関心、利害があって、これに基づき、犯行を実現するために重要な役割を果たしているか否か、という点です。
侵入盗の実行行為は、BおよびCが行っており、Aは実行行為ではない「送迎行為」を行いました。
「送迎行為」は実行行為ではありませんので、当該行為を行ったAは、窃盗の幇助犯となるのか、それとも共謀共同正犯となるのかが問題となります。
繰り返しになりますが、共謀共同正犯と幇助犯の要件の違いは、「正犯意思があるか否か」という点ですので、ここで2つを区別するために、「送迎行為」が「正犯意思に基づく行為」か否かを検討する必要があるわけです。
つまり、正犯意思に基づく場合は窃盗の共謀共同正犯、正犯意思に基づかない場合は窃盗の幇助犯となるのです。
そこで、Aについて、①犯行実現への強い動機・関心・利害があるか、②犯行を実現するために重要な役割を果たしたか、を検討する必要があります。
①犯行実現の強い動機・関心・利害がある場合
事前に分け前の約束に基づいて送迎行為をしている場合や、組織的な窃盗グループの一員で、組織の指示に従って送迎行為をしている場合などは、犯罪実現の強い動機・関心・利害があると考えられます。
②犯行の実現に重要な役割を果たした場合
送迎行為は、実行行為(窃盗)を直接援助する行為とは言えません。
しかし、盗品を持って現場からすぐに逃走するためにはAの送迎行為、一般的に犯行の実現に重要な行為であると言えます。
Aが、事前にBから、侵入盗の計画について聞いていた、もしくは、Bの話からAが侵入盗について認識していたり、報酬についても事前に決められていた上で、Aが運転手役を積極的に担ったのであれば、共謀共同正犯が成立すると考えられるでしょう。
一方、AとBとの関係から、Aが運転手役を引き受ける以外に選択肢がなかった場合には、幇助犯にとどまる可能性もあります。
共謀共同正犯が成立する場合に科され得る刑罰と幇助犯が成立する場合の刑罰とは異なりますので、どちらが成立するかによりその後の処分が大きく変わることになります。
刑事事件でお困りの方は、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
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運転手役は共同正犯?幇助犯?
共同正犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aは、先輩Bから、Bと知り合いのCを指定された場所まで送り迎えをするよう頼まれました。
兵庫県養父市のとある事務所までBとCを車で送り、その場で待機していました。
BとCは、帽子を被りマスクを着用した姿で車を降り、15分後、大きな袋に荷物を詰めて戻ってきました。
そして、AはBとCを指定された場所まで送り届けました。
Aは、Bから謝礼として3万円を受け取りました。
後日、兵庫県養父警察署がAさん宅を訪れ、窃盗容疑でAさんを逮捕しました。
(フィクションです。)
共同正犯と幇助犯
1.共同正犯について
2人以上の行為者が、意思の連絡に基づき、共同して犯罪を実現する場合を「共犯」といいます。
「共犯」にも、2人以上の者が共同して犯罪を実行する「共同正犯」、他人をそそのかして犯罪実行の決意を生じさせ、その決意に基づいて犯罪を実行させる「教唆犯」、実行行為以外の行為で実行行為者の実行行為を容易にさせて犯罪を実現する「幇助犯」とがあります。
「共同正犯」は、2人以上の者が、共同して犯罪を実行するもので、すべての者が正犯として処罰されます。
共同正犯が成立するためには、
(1)共同実行の意思に基づき、
(2)共同実行の事実
が必要となります。
(1)共同実行の意思
2人以上の者が、共同してある特定の犯罪を行おうとする意思を「共同実行の意思」といい、この意思の連絡が必要となります。
共同実行の意思の連絡を「共謀」といいます。
共同実行の意思は、必ずしも犯行の細部にわたって認識していたことまでも必要とされません。
(2)共同実行の事実
共同実行の意思の連絡に基づいて、共謀者の全部又は一部が犯罪の実行行為をおこなったことが必要となります。
共同正犯の成立には、(1)共同実行の意思、そして、(2)共同実行の事実が必要となるのですが、共同実行の事実を欠いた場合でも、共同実行の事実がある場合と実体的に共同実行したのと変わりない関与をした場合には、共同正犯が成立します。
これは、いわゆる「共謀共同正犯」といいます。
共同実行の事実と変わらない関与をした場合とは、①犯行実現への強い動機、関心、利害があり、②これに基づいて犯行を実現するのに重要な役割を果たした場合です。
①犯行実現の強い動機・関心・利益
利益の分配があること、犯罪の実現によって利益を得る関係にあること、暴力団・過激派・会社犯罪のような組織犯罪であることなどから、犯罪実現に強い動機・関心・利益があるか否かが判断されます。
②犯罪の実現に重要な役割を果たした
時間的・場所的に実行行為に近接し、実行行為を直接援助する行為や、実行行為を直接援助する行為とは言えないけれど、犯行遂行上、重要かつ不可欠な行為を担った場合には、犯罪の実現に重要な役割を果たしたと考えられます。
以上のように、実行行為を行っていない場合であっても、共謀共同正犯が成立し、正犯と同じように処罰されることがあります。
共謀共同正犯の場合、実行していないため、本当に犯罪の共謀をしたのかについて争われることがあります。
例えば、上のケースにおいて、Aさんが共謀共同正犯の成立を争う場合には、Aさんが、共同実行の意思を欠いており、共謀共同正犯が成立しないことを主張することがあります。
そのような場合には、単に「共同実行の意思はない!」と述べるだけではなく、客観的な証拠に基づいて説得的に主張していかなければならず、刑事事件に精通する弁護士による弁護が必要となるでしょう。
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業務上横領事件で起訴回避
業務上横領事件で起訴回避に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県丹波篠山市にある会社で経理業務を担当していたAさんは、管理していた現金を横領していました。
家庭の都合でAさんが会社を退職した後に、横領に気づいた会社は、すぐにAさんに連絡しました。
「全額返済してくれないなら、兵庫県篠山警察署に被害届を提出する。」と言われたAさんは、このまま業務上横領で起訴されてしまうのかと心配しています。
(フィクションです)
業務上横領罪とは
業務上横領罪は、①業務上の委託に基づき、②自己の占有する他人の物を、③横領する犯罪です。
①業務上
「業務」というのは、委託を受けて他人の物を占有または保管する事務を反復継続して行う地位のことを意味します。
例えば、質屋や倉庫業者、職務上金銭を保管する役職員などが、業務上の占有者です。
上記ケースでは、Aさんは、会社で経理を担当していたので、「業務上」の要件を満たすでしょう。
②自己の所有する他人の物
これは、業務と関連して理解自己が占有する他人の物を指します。
「占有」とは、物に対して事実上または法律上支配力を有する状態のことをいいます。
他人から預かった金銭を預金した者や小切手振出をゆだねられた者は、その人の金銭が入っている預金を占有していると理解されます。
③横領
「横領」の意義については、不法領得の意思を実現する一切の行為と理解する「領得行為説」と、委託の趣旨に反する権限逸脱行為と理解する「権限行為説」とが主張されていますが、判例及び通説は、前者の「領得行為説」の立場を採っています。
この説によれば、横領とは、「委託物につき不法領得の意思を実現するすべての行為」を含みます。
ここでいう「不法領得の意思」というのは、「他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その者につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思」をいいます。
よって、領得行為説において、「横領」行為は、「不法領得の意思を表現する一切の行為」のことで、売買、贈与、質入れ、抵当権の設定、消費、着服などが含まれます。
「不法領得の意思」は、自己のために領得する意思に限定せず、行為者と特殊の関係を有する第三者に領得させる意思があってもよいとされます。
委託者本人のために物を処分した場合、原則としては「不法領得の意思」は認められませんが、その処分が委託の趣旨に反し許されないものであるときには、不法領得の意思が認められます。
また、処分したものを後日補填する意思があった場合でも、「不法領得の意思」が認められることがあります。
上記ケースにおいて、Aさんがもっぱら自分のために使う目的で、会社のお金を着服していたのであれば、業務上横領罪が成立すると考えられます。
業務上横領事件で起訴を回避するためには
業務上横領事件で捜査機関が刑事事件として捜査を開始する場合、その多くが、被害者からの被害届や告訴を受理したことによります。
ほとんどの場合、被害者が横領に気が付いた時点で、警察に相談する前に、被疑者を呼び出し事情を聞き、横領額の返済を求めることになります。
横領した者に刑事処分が下ったところで、被害が回復されなければ被害者にとって意味がありませんので、まずは被害弁償がなされることを優先するのです。
警察に事件が発覚する前に、被害弁償が完了すると、被害者によっては、問題となっている横領の件について被害届の提出や告訴をしないこともあります。
しかし、早期の被害弁償が叶わない場合や、被害者の処罰感情が強い場合には、捜査機関に被害届を提出、あるいは告訴をすることもあります。
警察が被害届や告訴を受理すると、捜査を開始することになります。
最終的に、起訴するか否かの判断は、警察ではなく検察官が行います。
起訴された場合、かなりの確率で有罪となりますので、公判請求にしろ、略式起訴にしろ、前科が付く可能性は高いでしょう。
そのため、検察官が起訴しないように早期に動く必要があります。
業務上横領事件において、起訴を回避するためには、何よりもまず、被害弁償がなされていることが重要なポイントとなります。
業務上横領罪は財産犯にあたるため、被害が回復したか否かという点が起訴・不起訴を判断する際に考慮されます。
起訴を回避するためには、早期に被害弁償をすることが重要です。
被害弁償を行うにあたって、被害者との交渉が求められますが、当事者同士の交渉は、感情論的になり交渉がなかなか進まないこともありますし、お互いに主張する横領額が大きく異なることもあります。
そのため、業務上横領事件において、交渉を円滑にすすめるために、弁護士を介して行われることが多くなっています。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、業務上横領事件も含めた刑事事件を専門とする法律事務所です。
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痴漢事件で前科回避に動く弁護士
痴漢事件で前科回避に向けた弁護活動について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
JR神戸線の姫路行快速電車に乗車していた会社員のAさんは、隣に座っていた若い女性の太ももを触るなどの痴漢行為を行いました。
垂水駅で下車したAさんは、後ろから誰かに声を掛けられ、振り返ると車内で隣に座っていた被害女性でした。
「痴漢しましたよね。一緒に来てください。」と腕を掴まれて、そのまま駅の事務室に連れていかれました。
その後、Aさんは兵庫県垂水警察署で取調べを受け、翌日に釈放されました。
Aさんは、自分の軽率な行為を反省しており、今回の事件で前科が付いてしまうのか心配しています。
(フィクションです)
前科について
刑事事件を起こし、被疑者となってしまった場合、必ずしも前科が付くわけではありません。
前に罪を犯して、有罪の判決を受けたことを「前科が付く」といいます。
前科の定義については、法律で定められたものがあるわけではありませんが、一般的には有罪判決を受けた事実を「前科」と理解されています。
このように、前科は、有罪判決を受けた場合に付くことになります。
有罪判決を受けたというのは、公開の法廷で審理を受け、裁判官から有罪判決の言い渡しを受けた場合に限らず、略式手続で略式命令を受けた場合も含みます。
前科が付くことによって生じる影響とは、以下のようなものが考えられます。
①再犯した場合に処分が重くなる
残念ながら、再び罪を犯してしまった場合、初犯としては扱われず、受ける処分が重くなることになります。
②資格が制限される
前科が付くことにより、ある一定の資格を取得すること、もしくは、資格を取得している場合には資格がはく奪されることがあります。
資格の種類や前科の内容によっては、必ず資格が取得できなくなったり、取り消されたりするようなものもあります。
例えば、弁護士は、執行猶予が付いていても禁固以上の刑に処せられた場合には、資格を取り消されることになります。
③海外への渡航が制限される
国によっては、前科を有していることが入国やビザの取得できないことがあります。
前科を回避するためには
上のような不利益が生じる前科を回避するには、不起訴を獲得することが重要です。
「不起訴」というのは、公訴を提起しないとする処分のことです。
不起訴処分には、①罪とならず、②嫌疑なし、③嫌疑不十分、④起訴猶予の種類があります。
不起訴となる場合の多くが、④の「起訴猶予」です。
起訴猶予は、被疑者が犯罪を犯したという証拠が十分あり起訴することも可能であるが、被疑者の性格・年齢・境遇、犯罪の軽重・情状、犯罪後の情況を考慮し、起訴する必要がないと判断され、不起訴となることです。
上のケースでは、Aさんは容疑を認めていますので、起訴猶予での不起訴の獲得を目指すことになるでしょう。
起訴猶予を獲得するためには、被疑者が反省していることや、被害者との示談が成立していることなどが重要なポイントとなります。
示談が成立することによって、被疑者の反省の態度を示すことにもなりますし、被害者との和解が成立しているとして被疑者にとって有利な材料にもなります。
示談交渉は、通常、弁護士を介して行います。
罪証隠滅の関係で、加害者が、警察から被害者の連絡先を教えてもらうことは稀ですし、被害者は加害者に対して怒りや恐怖の感を抱いていることが多いので、連絡先を教えることを拒否したり、連絡をとることができたとしても、感情的になり交渉がうまく進まないことが多いのです。
ですので、弁護士を介して冷静に交渉を行うことにより、当事者両方が納得のいく内容での合意締結が期待されます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、痴漢事件も含めた刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
痴漢事件を起こしてお困りの方、示談交渉でお悩みの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
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