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児童虐待で逮捕

2019-09-22

児童虐待で逮捕

児童虐待逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県神崎郡市川町に住むAさんは、娘のVちゃん(3歳)と交際相手のBさんと暮らしていました。
ある日、Vちゃんの様子がおかしいことに気が付いたAさんは、慌てて救急車を呼びましたが、搬送先の病院で死亡が確認されました。
Vちゃんの身体に複数のあざがあることを不審に思った病院は、兵庫県福崎警察署虐待されていた可能性があると通報しました。
AさんとBさんは兵庫県福崎警察署で事情を聞かれていますが、AさんはBさんがしつけで何度かVちゃんに手を挙げていたことがあると供述しています。
Aさんは、Bさんが刑事責任を問われるのか、また自分も何らかの罪に問われるのか心配しています。
(フィクションです)

残念ながら、児童虐待により幼い子供が亡くなるという悲惨な事件が後を絶ちません。
虐待していた大人の多くが、「しつけのつもりだった。」と供述しているようですが、子供に大けがを負わせたり死亡させてしまうようなものは「しつけ」とは言えないでしょう。

児童虐待の防止等に関する法律は、「児童虐待」を、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するもの)がその監護する児童(18歳に満たない者)に対し、次に掲げる行為をすることと定義しています。(同法第2条)

①身体的虐待
児童の身体に外傷を生じ、又は生じさせるおそれのある暴行を加えること。
②性的虐待
児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
③ネグレクト
児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による①、②、④の行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
④心理的虐待
児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

このように、児童虐待の防止等に関する法律は、「児童虐待」を定義し、児童虐待を禁止しています。(同法第3条)
しかし、本法は、児童虐待行為に対しては罰則を設けていません。

児童虐待の防止等に関する法律に定義される「児童虐待」に当たる行為を行った場合、虐待内容により以下のような犯罪に当たる可能性があります。

①身体的虐待
殴る蹴るといった身体的虐待を行った場合の多くは、暴行罪や傷害罪が適用されます。
暴行を加えた結果、児童が死亡した場合には、傷害致死罪、そして殺意があったと認められれば殺人罪が成立する可能性もあります。

②性的虐待
児童に対してわいせつな行為をしたり、裸の写真を撮るなどの行為により、監護者性交等罪や監護者わいせつ罪、児童買春・児童ポルノ法違反が成立する可能性があります。
監護者性交等罪および監護者わいせつ罪は、平成29年7月13日から施行された刑法の一部改正により新設されたものです。
18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者による影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者や性交等をした者は、暴行や脅迫を用いない場合であっても、強制わいせつ罪や強制性交等罪と同様に処罰されます。
「現に監護する者」とは、実際に児童の生活全般にわたって衣食住などの経済的な観点、生活上の指導監督などの精神的な観点から依存、被依存ないし保護・被保護の関係が認められ、かつ、その関係性に継続性が認められることが必要となります。
実親や養親は「現に監護する者」に該当し得るのですが、教師やコーチなどは生活全般にわたった関係性がないので「現に監護する者」には当たらないと考えられています。

③ネグレクト
保護責任者遺棄罪、その結果死亡させてしまうと保護責任者遺棄致死罪が成立するでしょう。

④心理的虐待
身体的虐待でなくとも、暴言を児童に吐き捨てたりすることにより、精神的に障害を負った場合には傷害罪が成立することになります。

上記ケースでは、BさんがVちゃんに対して、しつけと称して暴力を振るっていたとAさんが証言していますので、BさんはVちゃんに対する暴行罪や傷害罪、Vちゃんの死因とBさんの暴行の因果関係が立証できれば傷害致死罪や殺人罪に問われる可能性があります。
一方、Aさんはというと、Aさん自身がVちゃんに暴力を振るうことはなかったとしても、BさんがVちゃんに暴力を振るっていたことを知っておきながら何もしなかった場合には、共同正犯もしくは幇助犯として暴行罪や傷害罪、傷害致死罪などに問われる可能性があるのです。
どのような罪に問われ得るのかは、事案によって異なりますので、児童虐待を疑われているのであれば、刑事事件に詳しい弁護士に今すぐご相談ください。

刑事事件でお困りの方は、刑事事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。

盗撮事件で成立する犯罪とは?

2019-09-21

盗撮事件で成立する犯罪とは?

盗撮事件で成立する犯罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県高砂市にあるスポーツクラブの女性更衣室にカメラを設置し盗撮したとして、兵庫県高砂警察署は、インストラクターとして当該スポーツクラブに勤務するAさんを迷惑防止条例違反の容疑で逮捕しました。
Aさんは、接見に来た弁護士に、盗撮行為は1年前から行っており、水泳教室に参加していた小学生の着替え中にも盗撮していたことを話しています。
Aさんは、今後どのような罪に問われ、最終的にどのような処分を受けることになるのか不安でなりません。
(フィクションです)

盗撮は何罪になるの?

一般的に、相手方に了解を得ずに、密かに撮影する行為を「盗撮」といいます。
盗撮犯罪です!」というポスターがあるように、盗撮行為は犯罪です。
しかし、「盗撮罪」なる犯罪はありません。
盗撮の行為内容によって、成立する犯罪は異なりますが、概して次にあげる犯罪に当たることが多いと言えるでしょう。

1.兵庫県迷惑防止条例違反

第3条の2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
(2) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置する行為
2 何人も、集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所(公共の場所を除く。)又は乗物(公共の乗物を除く。)において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為
(2) 前項第2号に掲げる行為
3 何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。

まず、迷惑防止条例で禁止される盗撮は、「公共の場所又は公共の乗物」、「集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所」、そして「浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」に限定されています。
上記ケースでは、スポーツクラブの更衣室での盗撮ですので、迷惑防止条例第3条の2第3項に規定されている「浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」に当たります。
また、禁止される行為は、盗撮のみならず、盗撮目的でカメラ等を向けたり設置したりする行為も含まれます。

以上より、Aさんの盗撮行為は、迷惑防止条例違反となり、その法定刑は6ヶ月の懲役または50万円以下の罰金です。
しかし、常習が認められると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金と加重されます。

2.児童買春・児童ポルノ禁止法違反

さて、Aさんは小学生の着替え中も盗撮したと供述しています。
これについては、児童買春・児童ポルノ禁止法違反が成立するでしょう。
なぜならば、被写体が18歳未満の児童であるからです。

児童買春・児童ポルノ禁止法は、児童ポルノの所持・提供・製造・輸出入等を禁止しています。
児童ポルノ禁止法における「児童ポルノ」とは、以下のものを指します。

写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの (児童買春・児童ポルノ禁止法第2条3項)

上記ケースのように、女児の裸を写したものは、三号に当たる可能性があります。
「衣服の全部又は一部を着けない」とは、社会通念上衣服と認められる物を全く着用していないか、又は衣服の一部を着用していない状態をいいます。
全裸や半裸の状態がこれに当たり、通常の水着を着ている場合にはこれに当たりません。
しかし、半透明又は透明の材質で作られた衣装等を着ている場合には、社会通念上人が着用する衣服とは認められず、「衣服の全部又は一部を着けていない姿態」に該当すると考えられます。
「殊更に」とは、問題となる写真や映像等の内容が性欲の興奮又は刺激に向けられていると評価されるものであることです。
子供が裸で水遊びをしている様子を成長の記録として撮影する場合は、内容が性欲の興奮又は刺激に向けられていると評価されるものでない限り「殊更に」とは言えず児童ポルノに当たりません。
「性欲を興奮させ又は刺激するもの」とは、一般人の性欲を興奮させ又は刺激することをいいます。
一部の人の性欲を興奮させ又は刺激するものであっても、一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものでない限り児童ポルノには当たりません。
例えば、炎暑に半裸でプールで遊んでいる姿をニュースで報道するなどは、一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものとはいいがたく、児童ポルノにはあたりません。

児童買春・児童ポルノ禁止法は、盗撮により児童ポルノを製造することを禁止しており、違反に対する刑事罰を規定しています。
法定刑も、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金です。

以上のように、盗撮した被写体の年齢や盗撮した内容によっては、児童買春・児童ポルノ禁止法違反となる可能性があります。

これらの2つ罪に加えて、盗撮目的で更衣室に侵入した行為について建造物侵入罪が成立します。

盗撮事件であっても、件数も多く、児童買春・児童ポルノ禁止法違反として立件された場合には、公判請求の可能性も高まりますので、早期に弁護士に相談し弁護活動を開始するのがよいでしょう。

ご家族が盗撮事件で逮捕されてお困りであれば、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

クレジットカードの不正利用

2019-09-20

クレジットカードの不正利用

クレジットカードの不正利用について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、Bさんと交際関係にあり、Aさん宅に同棲していました。
Aさんは、Bさんに日常生活で必要なものはAさん名義のクレジットカードで支払ってよいと言われ、日頃からBさんはAさん名義のクレジットカードで買い物をしていました。
(フィクションです)

他人名義のクレジットカードの不正利用

上のケースのように、他人名義のクレジットカードを名義人以外の者が使用して商品等を購入した場合、名義人から当該クレジットカードの使用を許可されていたとしても、何等かの罪が成立し得るのでしょうか。

クレジットカード取引について

クレジットカードである商品を購入した場合、次のような形で取引が行われることになります。
まず、クレジットカード会員がクレジットカード加盟店に有効なクレジットカードを提示し、これに対して加盟店が商品の提供を行います。
当該商品の代金をクレジットカード会社が立替払いし、それによって譲渡された代金債権に基づき、後日クレジットカード会社が当該クレジットカード会員に支払い請求をし、クレジットカード会員がその代金を支払います。
クレジットカード会社は、クレジットカード会員がクレジットカード会社が立替えた商品代金を後から必ず支払ってくれるとの信頼のもとにクレジットカード加盟店に立替支払いをします。
つまり、クレジットカード取引では、クレジットカード会員の個人的信用力に基づいて無担保での信用供与を可能とすることが前提条件となっているのです。

この点、他人名義のクレジットカード不正使用については、この前提条件を偽ることになり、クレジットカード会社に対する詐欺罪が成立することになります。
もし、BさんがAさんに黙ってAさんの財布からAさん名義のクレジットカードをとり、そのカードを使って買い物をしたとすれば、Aさんの財布からクレジットカードをとったBさんの行為が「窃盗罪」、そしてAさんと偽りクレジットカードを使って商品を購入したBさんの行為が「詐欺罪」となると考えられます。
それでは、Aさん名義のクレジットカードの使用をAさんがBさんに許可していた場合であっても、「詐欺罪」は成立する可能性があるのでしょうか。

詐欺罪とは

まずは、詐欺罪がどのような罪であるのか、詐欺罪が規定されている刑法第246条をみていきましょう。

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺罪の構成要件は、次のとおりです。
(1項)①人を欺いて
    ②財物を
    ③交付させたこと。
(2項)①人を欺いて
    ②財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させたこと。

つまり、詐欺罪の成立には、「人を欺いて錯誤を生じさせ、その錯誤に基づいて財物・財産上の利益を交付させること」が必要となります。

他人名義のクレジットカードの不正使用について、判例は、名義を偽っていることで作為による詐欺といえ、また、商品の交付が処分行為といえるとして、1項詐欺罪の成立を認めています。
判例は、「クレジットカードの規約上、会員である名義人のみがクレジットカードを利用できるものとされ、加盟店に対しクレジットカードの利用者が会員本人であることの確認義務が課されているなど判示の事実関係の下では、クレジットカードの名義人に成り済まし同カードを利用して商品を購入する行為は、仮に、名義人から同カードの使用を許可されており、かつ、自らの使用に係る同カードの利用代金が規約に従い名義人において決済されるものと誤信していたとしても、詐欺罪にあたる。」としています。(最決平16・2・9)

このように、名義人からクレジットカードの使用を許可されていたとしても、他人名義のクレジットカードを使用することは、詐欺罪に当たる可能性があるのです。

他人名義のクレジットカード不正使用に限らず、思わぬ行為が犯罪となることもあります。
あなたやあなたの家族が、刑事事件の加害者として取調べを受けており対応にお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

横領事件で事件化阻止

2019-09-19

横領事件で事件化阻止

横領事件事件化阻止について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県朝来市にあるクリニックで経理と受付業務を行っていたAさんは、細工をしクリニックのレジから現金を抜き取る行為を繰り返していました。
Aさんは、家庭の事情でクリニックを先日退職しましたが、その後、クリニック側にAさんの不正が発覚し、クリニックからAさんに問い合わせの連絡が入りました。
「全額返してもらえなければ、兵庫県朝来警察署に被害届を出す。」と言われ、困ったAさんは、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

横領罪とは

刑法上、罪名に「横領」が付くものには、「(単純)横領罪」、「業務上横領罪」、そして「遺失物等横領罪」の3つがあります。

横領罪

第二百五十二条 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。
2 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

本条は、他人の委託に基づいて物を占有している者が、その物を領得する行為を内容とする犯罪です。
本罪の主体は、「他人の物を占有する者」または「公務所の命によって自己の物を保管する者」です。
客体は、「自己の占有する他人の物」または「公務所から保管を命ぜられた」自己の物です。
前者の客体に関して、
①物であること
②自己が占有すること
③その占有が委託に基づくこと
④それが他人の物であること
が必要な要件となります。
ここでいう「占有」とは、物に対して事実上または法律上支配力を有する状態をいいます。
また、占有が、物の所有者または公務所と、行為者との間の委託信任関係に基づくものであることが必要です。
これは、契約に限らず、事務管理、後見などの法律上の規定による場合にも生じます。

次に本罪の行為である「横領」の意義についてですが、判例・通説では、「委託物につき不法領得の意思を実現するすべての行為」を横領というと解されます。
この「不法領得の意思」の内容については、争いがありますが、判例によれば、「他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思」をいうとされます。

業務上横領罪

第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

業務上横領罪は、業務上自己の占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。
業務上の委託に基づいて他人の物を占有する者を主体とし、上の横領罪の業務者であることによる責任の加重規定です。

「業務」とは、「委託を受けて他人の物を管理(占有・保管)することを内容とする業務を反復継続しておこなう地位」を指します。
例えば、質屋、倉庫業者や職務上金銭を保管する役職員などが業務上の占有者です。
上のケースのように、経理業務も行っていたAさんは、業務上の占有者に当たるため、Aさんに対して成立し得るのは、業務上横領罪となるでしょう。

遺失物等横領罪

第二百五十四条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

「遺失物」とは、占有者の意思によらずにその占有を離れ、いまだ誰の占有にも属してないものをいいます。
「漂流物」は、水中にある遺失物のことです。
「占有を離れた」とは、占有者の意思に基づかないでその占有を離れたことを意味します。
忘れ物、落とし物などがこれらに該当します。
トイレやベンチに置き忘れた財布などをとった場合には、遺失物等横領罪となる可能性があります。

横領罪の事件化阻止

横領罪をはじめとする犯罪を犯し、事件が被害者に発覚すると、多くの場合警察に通報・報告することにより、刑事事件として捜査が開始されることになります。
しかし、横領事件、特に業務上横領事件の場合には、被害者に多大な経済的損害が発生しており、加害者が横領した金額を回収することが被害者にとって最優先事項となることがほとんどです。
警察に被害を訴え、加害者が刑事事件の被疑者・被告人として刑事罰を受けたとしても、加害者が横領した金額がすべて被害者に戻ってくるとも限りません。
ですので、被害者が警察に被害を申告する前に、横領した金額を返済すること(もしくは、返済する約束)が出来れば、被害者が警察に被害届等を出さないと約束してもらえる可能性も十分あるのです。
このように、被害弁償を行う代わりに被害届の提出などを行わないとし、当該事件に関しては当事者間で解決したとする約束を「示談」といいます。
この示談に向けた話し合いは、当事者間で行った場合には、感情論で交渉が円滑に進まないなどのデメリットもありますので、示談交渉には弁護士を介して行うのがよいでしょう。

横領事件でお困りであれば、横領事件も取り扱う刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスについては、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

未成年者誘拐で逮捕

2019-09-18

未成年者誘拐で逮捕

未成年者誘拐事件での逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
インターネットのオンラインゲームで知り合った女子高生を自宅に連れ込んだとして、未成年者誘拐の疑いで、兵庫県たつの警察署は会社員のAさんを逮捕しました。
Aさんは、女子高生に対して「家に来ないか」などと言って誘惑し、Aさんの自宅マンションに1泊させたとの疑いです。
帰宅しない女子高生の母親が心配して兵庫県たつの警察署に相談したことで事件が発覚しました。
Aさんは、「無理やり連れてきたわけではありません。」と供述してます。
(フィクションです)

未成年者誘拐とは~被誘拐者の同意の有無~

インターネットを通じて見知らぬ人と簡単に連絡が取りあえる昨今。
インターネットで知り合った未成年者を呼び出し、自宅や宿泊施設に一緒に泊まり、「未成年者誘拐事件」で逮捕されるというニュースを耳にします。

未成年者誘拐罪は、欺罔や誘惑を手段として、未成年者の意思に反しない態様で自己または第三者の事実的支配化におく犯罪です。(刑法第224条)

家出をしている少女を自宅に宿泊させるケースが多いようですが、家出をしている少女自身もお金をかけずに雨風をしのげる場所を探しているため、見知らぬ男性であっても自宅に泊まることに同意していることがほとんどです。
つまり、被害者とされる未成年者が加害者宅に泊まることに同意しているわけですが、被害者の同意があっても未成年者誘拐の罪が成立するのでしょうか。

結論から言うと、未成年者本人の同意があっても、未成年者誘拐罪は成立します。
これは、同罪の保護法益には、未成年者の自由だけでなく、保護者の監護権も含まれると理解されているからです。(大判明43・9・30)
保護監督者の承諾がない限り、未成年者本人が同意していたとしても、保護監督権が侵害されているので、未成年者誘拐罪は成立すると考えられます。

また、本罪が成立するためには、相手が未成年者であることを知っていたことが必要となります。

未成年者誘拐罪の法定刑は、3月以上7年以下の懲役です。
起訴された場合には、実刑判決を受ける可能性があります。
しかし、不起訴や執行猶予となれば、実刑を回避することができます。
そのためには、被害者との示談を成立させることが重要となります。
というのも、未成年者誘拐罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪だからです。

未成年者誘拐事件における示談交渉は、未成年者の保護者を相手方とすることになります。
一般的に、保護者は加害者に対して激しい処罰感情を抱いている場合も多く、冷静で粘り強い交渉が必要不可欠です。
そのような示談交渉は、刑事事件における示談交渉に豊富な経験を持つ弁護士に依頼されるのがよいでしょう。

未成年者誘拐事件でご家族が逮捕された方、被害者との示談交渉にお困りの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件専門弁護士が、無料法律相談初回接見サービスを行います。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

債務不履行と詐欺罪

2019-09-17

債務不履行と詐欺罪

債務不履行詐欺罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、会社の経営がうまくいかず、知り合いから会社の運営資金200万円を借りていました。
しかし、その借金を返すことができないため、知人のVさんから運営資金200万円を借り、経営が軌道に乗れば必ず返済することを約束しました。
その後、Vさんが借金の返済を迫っても、Aさんは、「必ず返す。あともう少し資金があれば、経営がうまくいくんだ。」と更なる借り入れを申し入れる始末でした。
そのうち、VさんはAさんと連絡がとれなくなってしまいました。
いつまで経っても返済する様子がないことに業を煮やしたVさんは、Aさんに対して、債務不履行による損害賠償の請求を裁判所に申し立てました。
それでも何ら連絡のないことに腹を立てたVさんは、「Aさんは元々返すつもりがなく借りたのではないか?」と疑いはじめ、兵庫県宍粟警察署詐欺の疑いで被害届を提出することにしました。
(フィクションです)

借金を踏み倒すと…

「会社の経営がうまくいかない…」、「生活が苦しい…」等の理由で貸金業者や知人等からお金の借り入れをされた経験がある方も少なくないと思います。
借りる際には、「きちんと借りたお金を返す」と約束するのですが、いつまで経っても貸したお金を返してもらえないというケースも残念ながらあります。
借金を踏み倒した場合、債権者は債務者に対してどのような手段を講じ得るのでしょうか。

1.債務不履行による債務履行請求・損害賠償請求~民事事件~

お金の貸し借りの約束は、債権者と債務者との私人間の約束です。
当該約束内容には、お金を借りた者(債務者)はお金を貸した者(債権者)にいついつまでに借りたお金を返すことが含まれています。
この約束により、債務者には、借りたお金を返す「義務」が生じるわけですが、借りたお金を返さない行為は、その約束に違反する行為、つまり、借金を返済する義務を怠ることとなります。
故意または過失によって自分の債務(この場合の債務は、お金を借りた者がお金を貸した者に借りたお金を返すという義務)を履行(実行)しないことを「債務不履行」といいます。
そして、債務を履行しない場合には、法的な責任=債務不履行責任が債務者に生じます。
債務不履行責任が生じた場合、債権者は債務者に対して、完全な履行を請求すること、契約に基づく債務の場合には契約を解除すること、債務不履行から生じた損害賠償を請求することができます。
よって、お金を貸したがいつまでたっても返済されない場合には、債権者が貸金返金請求(債務履行請求)訴訟や債務不履行により生じた損害賠償請求訴訟を裁判所に起こすことが予想されます。

2.詐欺罪による被害届等の提出~刑事事件~

先述しましたが、借金の貸し借りというのは私人間のやりとりですので、私人間の消費貸借契約から生じた紛争は民事事件として取り扱われます。
しかし、「最初から返すつもりがないにもかかわらず、相手方に返すと嘘をついてお金を借りた」場合に限っては、詐欺罪として刑事事件へ発展する、ということがあります。

詐欺罪は、「人を欺いて財物または財産上不法の利益を詐取する」犯罪です。
詐欺罪の成立には、①欺く行為をして、②それに基づき相手方が錯誤に陥り、③その錯誤によって相手方が処分行為をし、④それによって財物の占有が移転または利益が移転するといった一連の関係性がなければなりません。
借金返済が問題となる場合、①の欺く行為があったかあったのか、つまり、相手方を騙す行為があったのかどうかがポイントとなります。
つまり、返済する意思がない、返済する能力がないにもかかわらず、あるかのように装い、相手方を騙してお金を借りたのであれば、欺罔行為に当たることになります。

実際にはそのような人の心の中を立証することは困難です。
しかし、その時の金銭状況を示す客観的な証拠があれば、返済する意思も能力もなかったことを立証することは可能です。
借金の返済踏み倒しで刑事事件に発展する可能性も0ではありません。

詐欺罪の疑いがかけられている方やご家族が詐欺事件で逮捕されてしまいお困りの方は、今すぐ刑事事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件専門の弁護士による無料法律相談初回接見サービスをご案内いたします。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までお問い合わせください。

少年事件における示談

2019-09-16

少年事件における示談

少年事件における示談について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県養父市に住むAくん(15歳)は、市内の商業施設内のエスカレーターで女子高校のスカート内にスマホを差し入れ盗撮しました。
女子高生の隣にいた友人がAくんの盗撮に気づき、「あなた友達のスカートの中を盗撮してましたよね!?」と言って、腕を掴んできました。
Aくんは、そのまま警備員室に連れていかれ、兵庫県養父警察署から駆け付けた警察官に警察署に連れて行かれ、取調べを受けることになりました。
警察からAくんの両親に連絡が入り、その日の夜には両親が迎えに来て釈放となりました。
Aくんの両親は、被害者の方に謝罪と被害弁償をしたいと考えており、警察にもその意向は伝えています。
(フィクションです)

示談とは

示談は、加害者が被害者に対して謝罪や被害弁償を行うことにより、被害者と加害者間では今回の事件は解決したとする合意のことです。
刑事事件においては、被害者感情が重視される昨今、告訴がなければ公訴を提起することが出来ない親告罪の場合のみならず、被害者がいる事件において、検察官が起訴・不起訴を決める際に考慮される要素のひとつとなっています。
被害者との示談が成立したからといって、検察官は必ずしも不起訴にするわけではありませんが、当事者間で示談が成立している場合には、不起訴処分で事件を終了することが多くなっています。
勿論、法定刑が重い犯罪や、犯行が悪質であったり、比較的軽微な犯罪であっても件数が多い場合には、被害者との示談が成立していたとしても、検察官が起訴(略式起訴も含め)に踏み切ることは大いにあります。

少年事件における示談

先述のように、成人の刑事事件では、被害者との示談が成立しているか否かは、不起訴処分を獲得する上で重要なポイントとなります。
それでは、少年事件において示談はどのような効果があるのでしょうか。

結論から言うと、成人の刑事事件のように、被害者との示談の有無により最終的な処分が大きく違ってくるというわけではありません。

少年事件の手続には、不起訴処分といった処分はありません。
捜査機関による事件の捜査が終了すると、原則すべての少年事件は家庭裁判所に送致されることになっています。
これを「全件送致主義」といいます。

家庭裁判所に送致されると、調査・審判を経て終局処分が言い渡されます。
審判において審理されるのは、「非行事実」と「要保護性」です。
前者は、少年が何をしたかということですが、後者は、①犯罪的危険性(少年の性格や環境等に照らして、将来再び非行に陥る危険性があること)、②矯正可能性(保護処分による矯正教育を施すことで当該少年の犯罪的危険性を除去できる可能性)、③保護相当性(保護処分による保護が当該少年に対して最も有効かつ適切な処遇・手段であること)から構成されてます。
少年が行った行為が重い罪に当たるものであっても、要保護性が低い又はないと判断されれば、少年院送致といった収容措置がとれらないこともあるのです。
この点、刑事事件と異なります。

さて、示談成立によって家庭裁判所が決定する終局処分が大きく変わるわけでないのであれば、少年事件において被害者と示談をする必要がないのでしょうか。
いいえ、そうではありません。
少年が行った行為によって被害者がどれだけ苦しい思いをしたのかを理解させ、被害者に対する心からの謝罪をさせることを通じて、少年ははじめて内省を深めることができるのです。
この内省を深めるということが、少年の更生につながるので、要保護性の解消という点で重要なのです。
そこで、付添人である弁護士は、早期に被害者対応を行い、謝罪や被害弁償等をおこなうよう少年や保護者に働きかけを行います。
しかし、そこで留意する必要があるのは、単に示談金を支払い示談書を作成したということだけでは、要保護性の観点から評価されることにはつながらない、ということです。
重要なのは、少年や保護者が被害者の負った苦しみを理解し、いかに誠意をもって被害者に謝罪し被害者の被害回復に努めたかです。

少年事件の手続は、成人の刑事事件と異なります。
お子様が事件を起こして対応にお困りであれば、少年事件を数多く取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

観護措置の回避に向けた活動

2019-09-15

観護措置の回避に向けた活動

観護措置回避に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県伊丹市に住む中学生のAくん(15歳)は、通学中の電車内で盗撮行為を行ったとして、兵庫県伊丹警察署に迷惑防止条例違反の容疑で逮捕されました。
Aくんの両親が身元引受人となり、Aくんはその日の夜には釈放となりました。
Aくんには他にも複数の盗撮を行っており、ネットで知り合った相手に裸の画像を送らすなど児童ポルノ禁止法違反に該当するような行為をおこなっていたことが明らかになってきました。
Aくんの母親は、知り合いから「捜査段階で身体拘束を受けていなくても、家庭裁判所の裁判官と面談するということで家庭裁判所に行ったら、そのまま少年鑑別所に収容された子の話を聞いた。」と聞き、Aくんのお母さんは、Aくんも少年鑑別所に収容されることになるのか不安です。
(フィクションです)

観護措置とは

捜査機関による捜査が終了すると、原則として、すべての少年事件は家庭裁判所に送致されます。
被疑者段階で逮捕または勾留されている少年が家庭裁判所に送致されると、家庭裁判所は、裁判所に到着したときから24時間以内に「観護措置」をとるか否かを決定します。
観護措置」とは、家庭裁判所が調査、審判を行うために、少年の心情の安定を図りながら、その身柄を保全するとともに、緊急に少年の保護が必要である場合に、終局決定に至るまでの間、暫定的に少年を保護するための措置です。
監護措置には、家庭裁判所の調査官の観護に付する措置と少年鑑別所に送致する措置の2種類があります。
しかし、実務上、前者の措置はほとんどとられず、観護措置という場合には、後者を指します。

観護措置は、少年法において「審判を行うため必要があるとき」にとられると定められているのみですが、次のような要件が必要であると解されています。

①事件の係属
事件が観護措置をとる家庭裁判所に係属していること。
②審判条件
審判条件が満たされていること。
③審判に付すべき事由があることの蓋然性
審判に付すべき事由(非行事実・ぐ犯事由等)が認められることの蓋然性がある。
④審判開始決定を行う蓋然性
審判開始が見込まれる事件であること。
⑤観護措置の必要性
次のいずれかが認められることが必要。
(ア)身柄確保の必要性
   住所不定または逃亡のおそれがあるなど、少年の出頭を確保する必要がある場合や、証拠隠滅のおそれがあり、証拠保全のためには必要である場合。
(イ)緊急保護のための暫定的身柄確保の必要性
   自殺や自傷のおそれがある場合、家族から虐待を受けている場合、暴力団などの反社会的活動を行う集団の悪影響から保護する必要がある場合など。
(ウ)収容鑑別を実施する必要性
   少年の心身の状況や性格傾向などを考慮し、継続的な行動観察や外界と遮断された環境で鑑別する必要がある場合。

以上のような要件を満たし、観護措置がとられた場合、原則2週間、実務上は4週間少年鑑別所に収容されることとなります。

観護措置を回避する活動

観護措置は長期間の収容となるため、少年は学校や職場を休まざるを得ず、後の生活に大きな影響を及ぼしかねません。
そのため、付添人である弁護士は、家庭裁判所が観護措置を決定する前に、観護措置をとらなうよう意見書を提出したり、裁判官と面談するなどし、観護措置回避に向けて動きます。
逮捕・勾留により捜査段階から身体拘束を受けている場合には、事件が家庭裁判所に送致されたタイミングで、意見書を提出し、裁判官が少年と面談する前に少年が抱える事情を考慮してもらう必要があります。
また、捜査段階で身体拘束を受けていない場合でも、事件内容や少年の性格等から観護措置をとる必要があると判断されるケースもありますので、この場合も事件が家庭裁判所に送致された段階で、観護措置をとらないよう説得的に主張する必要があります。

先述しましたが、観護措置がとられると約1か月少年鑑別所に収容されることになるので、その間学校や職場に行くことができないという不利益が生じてしまうことになります。
しかし、観護措置をとることにより、少年を外界と切り離した環境に置くことで、少年が自分のしてしまった行為やその原因についてゆっくりと考えることができ、ひいては少年の真の反省、そして更生に資するといった面もあります。

お子様が事件を起こし、観護措置がとられるのではないかとご心配されているのであれば、少年事件に詳しい弁護士にご相談され、お子様の更生にとってどのような方法が適するのか、一緒に考えてみてはいかがでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件・刑事事件を専門とする法律事務所です。
少年事件でお困りであれば、弊所までご連絡ください。

商標法違反で略式手続

2019-09-14

商標法違反で略式手続

商標法違反事件での略式手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
某有名ブランドのロゴを使用した商品をネット販売していた兵庫県加東市に住む会社員のAさん。
ある日、警察官がAさん宅を訪れ、商標法違反事件で捜索・差押えを行った後に、Aさんは警察に連れていかれ、逮捕令状を提示されました。
その後、勾留が決定したAさんは、勾留期限の満期前に検察官から略式手続の話を聞くこととなりました。
(フィクションです)

偽ブランドの販売で商標法違反

商標法は、事業者が、自分の会社の取り扱う商品やサービスを他の会社のものと区別するために使用するマークである「商標」を保護する法律です。

私たちが日頃商品の購入やサービスを利用する際、それらの「名前」や「マーク」を見て選びますよね。
それは、私たちが商品等の「名前」や「マーク」が信頼する会社の商品等であると認識しているからです。
ですので、勝手にある商品の「名前」や「マーク」をコピーして、品質の悪い商品に使ったのであれば、その「名前」や「マーク」の会社は消費者の信頼を失うことになります。
このような事業者が自己の取り扱う商品・サービスを他人のものと区別するために使用するマークを「商標」といいます。

商標法は、商標権または専用使用権を侵害した者は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することを定めています。(商標法第78条)
「商標権」とは、商標登録を受けている商標を指定した商品またはサービスについて排他的独占的に使用できる権利をいいます。
「専用使用権」というのは、設定行為で定めた範囲内において、指定した商品・サービスについて登録商標を排他的独占的に使用できる権利です。
「商標権の侵害」は、他人の登録商標をその指定した商品・サービスについて使用する行為や、他人の登録商標の類似範囲において使用する行為を意味します。
使用権限のない者が、指定された商品・サービスについて商標登録を受けている商標である登録商標と同一の商標を使用した場合は、商標権の直接侵害行為となります。
例えば、服の首部分のタグに商標を表示する、お菓子の包装紙に商標を表示してお菓子を包装する行為などは、直接侵害行為です。

また、商標法は、商標権又は専用使用権を侵害する行為と「みなされる行為」を行った者については、5年以下の懲役若しくは500万円いかの罰金に処し、又はこれを併科すると定めています。(商標法第78条の2)
商標権の侵害とみなす行為には、他社のブランドの「名前」や「マーク」に似た商標を使う、他者の商標に指定されている商品やサービスに似た商品・サービスを商標登録する、他社の商標に指定された商品・サービスに似た商品・サービスをその他社の商標の付いた包装紙で包装して人に渡す行為などが含まれます。

略式手続とは

略式手続」とは、簡易裁判所が、原則として、検察官の提出した資料のみに基づいて公判を開かず、略式命令により罰金または科料を科す手続をいいます。
略式手続の趣旨は、事件が比較的軽微であり、被告人にとって公判に出頭することが必要ではなく、また迅速な裁判が期待できる等被告人にとって利益になること、当事者に一定の場合に手続処分権が認められること、簡易手続により訴訟経済にも益することが挙げられます。

略式手続の特徴は、
・略式命令の請求は、公訴の提起と同時に書面でおこなわれる。
・被疑者が略式手続によることについて異議がないことを書面であきらかにしなければならない。
・必要な書類・証拠物は起訴状と共に裁判所に提出される。
・略式命令では、100万円以下の罰金または科料を科すことができる。
こと等です。

略式手続のメリットは、正式裁判に比べて身体拘束期間が短くなることや、刑罰が罰金で済むことが挙げられます。
一方、デメリットは、有罪判決を受けていることになるので、前科がつくこと、そして、略式起訴される場合、審理は書面だけで行われるので、法廷で自分の言い分を述べるということができないということです。

このように、略式手続にはメリットとデメリットがあります。
事件によっては、略式手続が最善の場合も、そうでない場合もあります。

商標法違反で逮捕されてしまった、略式手続についての説明を受けたが同意すべきかお悩みであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

客引きで逮捕

2019-09-13

客引きで逮捕

客引きでの逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県神戸市兵庫区の繁華街で、Aさんは通行人に対して、「キャバクラどうですか?そこのXという店です。今なら5,000円ポッキリ。」などと、通行人の真横を沿って歩きながら声をかけ続けていました。
すると、声をかけた通行人が、「警察や。迷惑防止条例違反で現行犯逮捕や。」といってAさんを逮捕しました。
Aさんは、キャバクラXの経営者Bさんから、客を勧誘して連れてくるよう依頼され、1人連れてくる毎に3,000円の手数料を支払うことが約束されていました。
(フィクションです)

上の客引きで成立する犯罪は?

繁華街の路上で、通行人に対して、飲食店や風俗店の客になるよう勧誘する「客引き」行為は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、「風営法」という。)違反となるほかに、迷惑防止条例違反が成立する可能性があります。

風営法で禁止される客引き行為

風営法は、22条1号において、風俗営業者に対して客引きを禁止しています。

第二十二条 風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
一 当該営業に関し客引きをすること。
二 当該営業に関し客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。

風営法における「客引き」行為とは、相手方を特定して営業所(お店)の客となるように勧誘することをいいます。
ですので、通行人に対して店の名前を告出さずに「お時間ありませんか」などと声をかけるだけでは「客引き」には当たりません。

風営法違反(客引き)の主体は、「風俗営業を営む者」です。
許可を受けて風俗営業を営む者は「風俗営業者」と風営法大2条2項で定義されていますので、「風俗営業を営む者」には、許可を得て風俗営業を営む者だけでなく、無許可で風俗営業を営む者も禁止の対象となります。
営業者自身が行う場合だけでなく、従業員や営業者から依頼を受けた者が客引きを行う場合も、風営法違反となります。

第五十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第二十二条第一項第一号若しくは第二号(これらの規定を第三十一条の二十三及び第三十二条第三項において準用する場合を含む。)、第二十八条第十二項第一号若しくは第二号(これらの規定を第三十一条の三第二項の規定により適用する場合を含む。)又は第三十一条の十三第二項第一号若しくは第二号の規定に違反した者

第五十六条 法人の代表者、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者が、法人又は人の営業に関し、第四十九条、第五十条第一項又は第五十二条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑を科する。

従業員らが客引き行為を行い風営法に違反した場合、当該従業員らだけでなく、営業者に対しても罰金刑が科せられることになる点で注意が必要です。

迷惑防止条例で禁止される客引き行為

第4条 何人も、公共の場所において、不特定の者に対して、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 次に掲げる行為について、客引き(ウに掲げる行為に係る利用者に対する勧誘を含む。)をすること。
ア 人の性的好奇心をそそる見せ物、物品若しくは行為又はこれらを仮装したものの観覧、販売又は提供
イ 歓楽的雰囲気を醸し出す方法で異性の客をもてなして飲食をさせる行為又はこれを仮装したものの提供
ウ 人の性的好奇心をそそる行為を提供する営業又は歓楽的雰囲気を醸し出す方法で異性の客をもてなして飲食をさせる営業に関する情報の提供
(略)
(6) 第1号、第3号及び第4号に掲げるもののほか、人の身体又は衣服を捕らえ、所持品を取り上げ、進路に立ちふさがり、身辺に付きまとう等の執ような方法で客引きをし、又は役務に従事するよう勧誘すること。

迷惑防止条例で禁止されている客引き行為は、「公共の場所」において、「不特定の者に対して」行うものです。
風営法と異なり、主体は制限されていません。
また、客引きは営業の一環としてなされていることまでは必要とされていません。
このように迷惑防止条例のほうが適用範囲が広く、客引き行為で現行犯逮捕する場合も、まずは迷惑防止条例違反で逮捕し、風俗営業者との共謀や支配従属関係が認められるか否かを検討するケースが多くなっています。

上のケースでは、Aさんは、キャバクラ店Xの経営者Bさんから手数料をもらう約束をし、X店の営業に関して客引きをすることを了承し、繁華街の道路上で、通行人に対して「キャバクラどうですか?そこのXという店です。今なら5,000円ポッキリ。」などと、通行人の真横を沿って歩きながら声をかけ続けて、X店の客になるよう勧誘したというものなので、Aさんの行為は、風営法違反および迷惑防止条例違反が成立することになり、客引き行為で2つの罪が成立することになります。
この場合の処罰は、最も重い刑により処断されることになります。

ご家族が刑事事件で逮捕されたのであれば、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。

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