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18歳未満との性交等で刑事事件(淫行条例違反)に
18歳未満との性交等で刑事事件(淫行条例違反)に発展する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
会社員のAさんは、SNSを通じて知り合ったVさん(16歳)と実際に会う約束をしました。
Vさんからはっきりとは年齢を確認していませんでしたが、メール等のやり取りで、Vさんが高校生であることは知っていました。
Aさんは、Vさんと食事やカラオケを楽しんだ後に、ホテルでVさんと性交しました。
その後も、AさんはVさんと連絡を取り合っていましたが、突然連絡が取れなくなり不安に思っていたところ、兵庫県川西警察署からAさんに「Vさんとの件について話が聞きたい」との連絡が入りました。
(フィクションです)
18歳未満の者と性交等を行った場合、犯罪が成立し刑事事件に発展するケースがあります。
以下では、18歳未満の者との性交等を行った場合に成立し得る犯罪について説明します。
1.青少年愛護条例違反(淫行条例違反)
都道府県あるいは市町村は、青少年保護育成とその環境整備を目的にした青少年保護育成条例を制定しています。
当該条例において、青少年とは、18歳未満の者をいうとされます。
兵庫県は、「青少年愛護条例」という名称です。
青少年愛護条例を含めた青少年保護育成条例は、青少年との「淫行」を規制する条文、いわゆる「淫行条例」を設けています。
兵庫県青少年愛護条例は、以下のように規定しています。
第21条 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
禁止されているのは、「みだなら性行為又はわいせつな行為」をすること、そして、そのような行為を教え・見せること、です。
「みだらな性行為」に関して、福岡県青少年保護育成条例により規制される「淫行」についてですが、最高裁判所が次のように解釈しています。
本条例10条1項の規定にいう「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。けだし、右の「淫行」を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは、「淫らな」性行為を指す「淫行」の用語自体の意義に添わないばかりでなく、例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものを含むこととなつて、その解釈は広きに失することが明らかであり、また、前記「淫行」を目にして単に反倫理的あるいは不純な性行為と解するのでは、犯罪の構成要件として不明確であるとの批判を免れないのであつて、前記の規定の文理から合理的に導き出され得る解釈の範囲内で、前叙のように限定して解するのを相当とする。(最大判昭60・10・23)
第21条第1項の規定に違反した場合の罰則は、2年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
第21条第2項の規定に違反する行為を業として行った場合の罰則は、50万円以下の罰金です。
また、第21条第2項の規定に違反した場合の罰則は、30万円以下の罰金または科料です。
上の判例が示すように、18歳未満の者との性交等すべてが淫行条例違反となるわけではありません。
結婚を前提として真剣な交際関係にあった場合には、罪とはなりません。
しかし、買春でもなくレイプでもなく、青少年の合意の下に行った場合でも、当事者の年齢差や行為に至るまでの経緯なども考慮して、淫行条例違反に当たるかどうかが判断されるので、単に「交際していました!」という主張だけでは通らないことが多いでしょう。
最近では、ネットを通じて知り合ったというケースが多く見受けられますが、お互いにメールや電話でのやり取りの中で交際関係を認めたとしても、はじめて実際に会った日に性交等の行為に及ぶといった経緯がある場合には、真摯な交際関係にあったというのは難しいでしょう。
いずれにせよ、個々のケースによりどのような対応を行うべきかは異なりますので、淫行条例違反でお困りであれば、刑事事件に強い弁護士に一度相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談や初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。
わいせつ物頒布等事件で逮捕
わいせつ物頒布等罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県美方郡新温泉町に住むAさんは、自分の性器などを撮影したわいせつな画像をインターネットのオークションサイトで販売したとして、兵庫県美方警察署にわいせつ物頒布の疑いで逮捕されました。
Aさんは容疑を認めていますが、今後どのような流れになるのか不安で、弁護士との接見を希望しています。
(フィクションです)
わいせつ物頒布等罪とは
わいせつ物頒布等罪は、刑法第175条に次のように規定されています。
第百七十五条 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。
1.「わいせつ」の意義
判例は、わいせつとは「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」であるとしています。(最判昭26・5・10)
わいせつ性の判断は、一般社会の良識・社会通念を基準として行われます。
わいせつ性と芸術表現とを区別する基準については、常に論争の的となってきました。
最近では、漫画家の女性が自身の女性器の3Dデータを配ったり、女性器をかたどった作品を展示したとして、わいせつ物頒布やわいせつ物陳列の罪で起訴された事件がありましたが、女性は「芸術活動の一環」であり「わいせつ物」ではないとわいせつ性を争っていました。
第一審では、アダルトショップで展示していた女性器をかたどった石膏が、その着色や装飾によってポップアートの一種ととらえることが可能だとして、アート作品として認めた一方、3Dデータについては、女性器の形状を立体的、忠実に再現しているとしてわいせつ物として認め、有罪となりました。
2.客体
わいせつ物頒布等罪の客体は、わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物、わいせつな電磁的記録その他の記録、です。
「図画」には、写真、映画フィルム、ビデオテープなどが含まれます。
わいせつ画像データを記憶・蔵置させたパソコンネットのホスト・コンピュータのハードディスクは、電磁的記録に係る記録媒体に含まれます。
3.構成要件的行為
わいせつ物頒布等罪の構成要件的行為は、頒布・公然陳列・所持・保管です。
「頒布」というのは、不特定又は多数の人に、わいせつ物を有償または無償で交付することをです。(大判大6・5・19)
「頒布」には、電子メールでわいせつ画像を不特定または多数の人に送信して取得させたり、インターネットを通じてわいせつ画像をパソコンにダウンロードさせる行為も含まれます。
「公然陳列」とは、不特定または多数の人が観覧できる状態に置くことをいいます。(最決平13・7・10)
これには、映画の映写や、インターネットによりホストコンピュータのハードディスクに記憶・蔵置させた画像データを閲覧可能にすることも含まれます。
また、「保管」とは、電磁的記録を自己の管理・実力支配に置くことを意味し、「所持」とは、物を携帯に限らず事実上支配することをいいます。
所持・保管については、有償で頒布する目的が必要となります。
4.故意
判例によれば、文書等の客体がわいせつであるか否かは事実認定の問題ではなく法解釈の問題であるとして、問題となる記載の存在およびその頒布の認識があれば故意が認められ、その記載のある客体がわいせつ性を具備しているとの認識まで必要とするものではないとの立場をとっています。(最大判昭32・3・13)
判例の立場に立てば、客観的にわいせつ性が認められる場合、行為者がわいせつではないと信じていたとしても、違法性の錯誤して故意を阻却しないことになります。
このように、自身では「わいせつ」な物ではないと芸術性を主張したとしても、それが認められずわいせつ物頒布等罪に当たる可能性もあるのです。
ご家族がわいせつ物頒布等事件で逮捕されてお困りの方は、刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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虚偽告訴罪とは
虚偽告訴罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
虚偽告訴の罪について
同居する養女に性的暴行を加えたとして、逮捕・起訴されたAさんは、逮捕時から一貫して容疑を否認していました。
しかし、被害者やその兄の目撃証言が決め手となり、公判では有罪となり、高裁、最高裁を経て懲役12年の実刑判決が確定しました。
ところが、服役中のAさんからの再審請求を受け、検察が再捜査したところ、被害者もその兄も、実は被害を受けておらず、目撃もしていないとことを供述し、男性の関与を否定したのです。
被害者の新しい供述が客観的にも裏付けられ、被害者やその兄の証言が虚偽であったことが明らかになり、Aさんは服役から約3年半後に釈放され、再審ではAさんの無罪判決が言い渡されました。
まるで、ドラマのような話ですが、これは実際にあった事件です。
被害者やその兄は、当時まだ幼く、母親から強く問い詰められたことで嘘をつき、引っ込みがつかなくなったため、虚偽の証言をしたものと考えられます。
裁判は、人ひとりの人生を大きく左右するものですので、このような嘘の発言を行うことは、公正な裁判の実現を妨害する行為です。
刑法には、「虚偽告訴の罪」が規定されています。
第百七十二条 人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上十年以下の懲役に処する。
本罪は、第一次的には国家の審判作用の適切な運用を、第二次的には個人の私生活の平穏を保護法益とすると解されます。
本罪の構成要件的行為は、「人に刑事または懲戒の処分を受けさせる目的」で行う「虚偽の告訴、告発その他の申告をする」ことです。
「人の刑事または懲戒の処分を受けさせる目的」における「人」は、他人のことを指し、実在していなければなりませんが、法人でも構いません。
「刑事の処分」というのは、刑罰だけでなく、少年の保護処分や売春婦に対する補導処分も含まれます。
また、「懲戒の処分」とは、公法上の監督関係に基づいて職務規律のために課される制裁のことをいいます。
「告訴」は、犯罪被害者等の告訴権者による犯罪事実を申告し犯人の処罰を求める意思表示をいい、「告発」は第三者が犯罪事実を申告し犯人の処罰を求める意思表示のことです。
「その他の申告」については、刑事処分を求める請求、懲戒処分を求める申立てが含まれます。
申告方法は、口頭であると書面とであるとを問いませんが、検察官や司法警察職員、懲戒権者に対して行われることが必要です。
申告は、自発的に行われたものでなければなりません。
そのため、捜査機関や懲戒権者らによる取調べを受けて虚偽の回答をすることは、申告にはあたらないとされます。
ここでいう「虚偽」とは、「客観的真実に反すること」をいいます。(最決昭33・7・31)
この点、主観的に真実に反しても、保護法益の観点からは処罰に値しないからです。
申告した事実は、刑事処分・懲戒の成否に影響を及ぼすようなものであることが必要です。
そして、捜査機関や懲戒機関の職権発動を促すに足るべき程度に具体的であればよいとされます。
また、本罪の主観的要件について、「申告事実が虚偽であることの認識」の他に、「人の刑事・懲戒の処分を受けさせる目的」が必要となります。
まず、「申告事実が虚偽であることの認識」に関しては、判例は、未必的認識で足りるとしており、「この申告事実は、客観的事実に反するかもしれない」との認識があった場合も故意があったものとされます。
そして、「人の刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的」における姥久手kの内容をいかに解するかという点ですが、これについて判例・通説は、人が刑事・懲戒処分を受けさせる結果発生の未必的認識で足りるとする立場をとっています。
以上のような要件に該当した場合、虚偽告訴罪は成立し、3月以上10年以下の懲役が科される可能性があります。
虚偽告訴罪をはじめとした刑事事件を起こし対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
数多くの刑事事件・少年事件を専門に扱った経験のある弁護士が、しっかりと対応します。
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あおり運転で刑事処分
あおり運転で刑事処分を受ける場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
他車の走行を著しく妨害する「あおり運転」は、人身事故につながることも多く、社会問題として大きく取り沙汰されてきました。
理不尽なあおり運転の末、尊い命が犠牲になる何とも痛ましい事件も起きており、あおり運転に対する取締り強化や厳罰化を望む声が高まっています。
警察庁は、あおり運転にあたる行為を新たに道路交通法で定め、厳しい罰則を設ける方針を打ち出しているようです。
さらに、あおり運転と認定されれば免許取消となる厳しい行政処分とする方針も固めたようです。
あおり運転にあたる行為を行った場合、どのような罪に問われ刑事処分の対象となるのでしょうか。
あおり運転行為自体について成立し得る罪
「あおり運転」の定義について、法律上明確に定められたものはありません。
しかし、道路を走行する自動車等に対して、車間距離を極端に詰めたり、ハイビームでパッシングをしたり、並走して幅寄せをしたりすることで、相手の自動車等を威嚇する危険な運転行為を指すものと一般的に理解されています。
このような危険な運転行為は、「道路交通法」において禁止されており、違反行為に対しては罰則も設けられています。
(1)車間距離保持義務違反
車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。(道路交通法第26条)
自車の前方に他車が走行している際には、当該他車が急にブレーキを踏んだとしても、それに追突するのを回避できる車間距離を空けて走行しなければなりません。
車間距離保持義務違反に対する罰則は、高速道路上の場合は3月以下の懲役または5万円以下の罰金、その他の道路上の場合は5万円以下の罰金です。
(2)進路変更禁止違反
第二十六条の二 車両は、みだりにその進路を変更してはならない。
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。
3 車両は、車両通行帯を通行している場合において、その車両通行帯が当該車両通行帯を通行している車両の進路の変更の禁止を表示する道路標示によつて区画されているときは、次に掲げる場合を除き、その道路標示をこえて進路を変更してはならない。
一 第四十条の規定により道路の左側若しくは右側に寄るとき、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のためその通行している車両通行帯を通行することができないとき。
二 第四十条の規定に従うため、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のため、通行することができなかつた車両通行帯を通行の区分に関する規定に従つて通行しようとするとき。(同法第26条の2)
1項は、正当な理由ない進路変更を禁止したもので、進路変更に関する原則的な規定です。
正当な理由というのは、法令の規定に従って進路を変更するとき、危険を防止するため進路を変更するとき、警察官の命令によって進路を変更するときなどです。
2項は、後者との関係における進路変更の禁止について定めており、現実に他車に危険を生じさせるような進路の変更を禁じています。
3項は、道路標示による進路変更の禁止について規定しています。
車両通行帯が設けられている場合、その車両通行帯が「進路変更の禁止」を表示する道路標示で区画されているときは、原則その道路標示をこえて進路を変更することは禁止されています。
進路変更禁止違反(2・3項)の罰則は、5万円以下の罰金です。
(3)急ブレーキ禁止違反
車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。(同法第24条)
「危険を防止するためやむを得ない場合」とは、走行している車両の直前に歩行者が飛び出してきた場合や、左側端を通行していた自転車が走行している車両の直前に急に右折をはじめ入ってきた場合、道路の損壊や道路上の障害物をその直前で発見した場合など、目前で危険を防止するためにはやむを得ない場合を指します。
急ブレーキ禁止違反の罰則は、3月以下の懲役または5万円以下の罰金です。
このように「あおり運転」に該当するような行為は、道路交通法違反となる可能性があることがご理解いただけたと思いますが、これ以外にも、「あおり運転」行為それ自体が刑法上の「暴行罪」に当たる場合があります。
(4)暴行罪
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。(刑法第208条)
ここでいう「暴行」の意義についてですが、「他人の身体に対する有形力の行使」であると解されます。
殴る蹴るといった相手方に対する直接の身体的暴力行為のみならず、音・光・電流等を行使する場合も「暴行」に含まれます。
ですので、相手の車に物理的にぶつからなくとも、車間距離を接近されたり、幅寄せしたりする方法により威嚇した場合には、その行為が「暴行」にあたると判断される可能性もあるのです。
以上のように、いわゆる「あおり運転」行為を行った場合には、刑事処分が科される可能性もありますので、くれぐれも運転には注意しておきたいものです。
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大麻の営利目的輸入で逮捕
大麻の営利目的輸入について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県加古郡稲美町に住むAさんは、大麻を営利目的で輸入したとして逮捕されました。
輸入した大麻製品は約50グラムと多く、Aさんは営利目的で輸入したとの疑いがもたれています。
Aさんは、調べに対して大麻の輸入に関しては認めていますが、営利目的であったことは否認しています。
(実際の事件を基にしたフィクションです)
有名人の薬物事件は、マスコミにも大きく取り上げられます。
その多くは、規制薬物の所持や使用などですが、中には薬物を海外から密輸するケースも少なくありません。
今回は、大麻の密輸事件についてどのような罪に問われ得るのかについて説明していきます。
大麻輸入罪
大麻取締法は、大麻の栽培・輸出入・所持・譲渡・譲受などについて必要な取締を行う法律です。
覚せい剤などの規制薬物とは異なり、大麻の使用自体は禁止されていません。
大麻の輸出入に関しては、以下のように規定されています。
第四条 何人も次に掲げる行為をしてはならない。
一 大麻を輸入し、又は輸出すること(大麻研究者が、厚生労働大臣の許可を受けて、大麻を輸入し、又は輸出する場合を除く。)。
第二十四条 大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
大麻をみだりに輸入した場合、7年以下の懲役が科せられる可能性があります。
また、営利目的に大麻を輸入した場合には、法定刑は加重され、10年以下の懲役、または情状により10年以下の懲役と300万円以下の罰金が科される可能性があるのです。
このような加重処罰規定が設けられているのは、財産上の利得を目当てとして犯罪を行うことが道義的に厳しく非難に値するというだけでなく、一般にその行為が反復・累行され、規制薬物の濫用を助長・増進させ、国民の保健衛生上の危害を増大させる危険性が高いため、それだけ違法性が高いためだとされます。
「営利の目的」というのは、「犯人自らが財産上の利益を得、または第三者に得させることを動機・目的とする場合をいう」と解されます。
ですので、営利の目的は、単なる認識だけでは足りず、犯罪の積極的動因となっている場合であることが必要とされます。
大麻取締法違反が成立するためには、故意が必要となります。
つまり、大麻取締法違反の行為をしている認識・認容がなければならないのです。
大麻の輸入であれば、「大麻」を「輸入」することを認識・認容していることです。
規制薬物に関する認識は、その物が依存性のある薬理作用をもつ有害な薬物であることを未必的であれ認識していれば足ります。
大麻取締法違反においても、大麻に関する認識は、それが大麻であることを未必的にせよ認識していれば足ります。
大麻の学名や成分、薬理効果などについて正確に把握している必要はなく、大麻という名称の他にもマリファナなどの認識で足ります。
大麻が大麻取締法により規制されていることを知らなかった場合は、法の不知にあたり、アサが大麻取締法の規制を受ける大麻に該当することを知らなかった場合は、あてはめの錯誤にとどまり、それ自体で故意を阻却するものとはなりません。
大麻の単純所持の場合、初犯であればいきなり実刑が言い渡される可能性はそう高くはありません。
しかし、営利目的での大麻輸入した場合には、前述のように法定刑も加重され、初犯であっても実刑となる可能性は高いでしょう。
営利目的を否認しているのであれば、単にそのように主張するだけでは、輸入した量から考えても、なかなか合理的な主張とはならないでしょう。
客観的な証拠に基づき営利目的ではない旨の主張をしっかりとしていくことが重要です。
大麻取締法違反事件でご家族が逮捕されお困りであれば、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
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偽証教唆で逮捕
偽証教唆について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aさんは、兵庫県神崎郡神河町内の有料道路を走行中、制限速度を時速42キロオーバーの時速102キロで走行していたところ、兵庫県警高速警備隊に発見され、道路交通法違反(速度超過)容疑で検挙されました。
Aさんは、捜査段階から被疑事実を否認しており、神戸地方検察庁姫路支部はAさんを道路交通法違反で起訴しました。
Aさんは公判で、「自分の車を追い抜いた別の車と勘違いされた」と主張しており、同乗していたBさんが証人としてAさんの主張と同様の発言をしました。
しかし、証人の証言を不審に思った検察が捜査を続けたところ、Bさんが「Aさんから口裏合わせを依頼された」と供述したので、Aさんを偽証教唆容疑で、Bさんを偽証容疑で逮捕しました。
(実際の事件を基にしたフィクションです)
偽証の罪とは
上記ケースでは、Aさんらは偽証罪に問われています。
あまり聞き慣れない罪名ですが、偽証罪とはどのような罪なのでしょうか。
刑法第百六十九条
法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。
偽証罪の保護法益は、国の審判作用の適正な運用です。
裁判などで嘘の証言がなされると、公正な裁判を行うことが出来ませんから、そのような虚偽の証言がなされないよう、法律により宣誓した証人の偽証を処罰するものです。
主体:法律により宣誓した証人
「法律により」とは、法律の根拠に基づいて、という意味です。
直接法律に規定されている場合や、命令その他の下位立法の規定のある場合も含まれます。
「宣誓」は、有効に行われることが必要となります。
構成要件的行為:虚偽の陳述をすること
「虚偽の陳述」の意義については、主観説と客観説との間で争いがあります。
前者は、「虚偽」とは証人の記憶に反することとし、後者は、客観的事実に反すること、と解します。
判例は、証言の内容たる事実が真実に一致し、もしくは少なくともその不実であることを認めることはできない場合でも、証人がことさらにその記憶に反する陳述をなすときには偽証罪が成立する、として主観説を採っています。(大判大3・4・29)
主観説を採る場合、証人が思い違いをして、結果として客観的な事実と異なる証言をしたとしても、本人がそれが真実だと思い込んでいる場合には、偽証罪に問われないことになります。
共犯関係
刑事被告人が自己の刑事被告事件について、他人を教唆して協議の陳述をさせた場合、偽証罪の教唆犯が成立するか否か、つまり、刑事被告人は偽証罪の正犯とはなりえないのに、教唆犯になり得るのか、が問題となります。
「教唆」とは、他人を唆して犯罪を実行する決意を生じさせることをいいます。
教唆犯は、人を教唆して犯罪を実行させた場合に成立します。
判例・通説は、被告人が、自己の刑事事件に関し他人に偽証を教唆した場合、被告人自身に黙秘権があるからといって、他人に虚偽の陳述をするよう教唆したときは偽証教唆の責を免れないとして、偽証教唆罪の成立を肯定しています。(最決昭28・10・19)
共犯事件は、罪証隠滅のおそれがあると認められ逮捕後勾留となる可能性が高いと言えるでしょう。
偽証罪を含めた刑事事件でお困りであれば、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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不正指令電磁的記録に関する罪(不正指令電磁的記録作成等罪)とは
不正指令電磁的記録に関する罪(不正指令電磁的記録作成等罪)とは
不正指令電磁的記録に関する罪(不正指令電磁的記録作成等罪)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
不正指令電磁的記録に関する罪(いわゆる、コンピュータ・ウイルスに関する罪)は、平成23年の改正により刑法に新たに設けられた罪で、不正指令電磁的記録作成等罪と不正指令電磁的記録取得等罪から成ります。
不正指令電磁的記録作成等
第百六十八条の二 正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録
2 正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。
3 前項の罪の未遂は、罰する。
(ア)不正指令電磁的記録作成・提供罪(本条1項)
本罪は、不正指令電磁的記録等を作成・提供する罪です。
構成要件は、
①正当な理由がないのに
②人の電子計算機における実行の用に供する目的で
③第1号または第2号に掲げる電磁的記録その他の記録を
④作成し、又は提供した
ことです。
①正当な理由の不存在
「正当な理由がないのに」というのは、「違法に」という意味です。
住居侵入罪の規定にもみられる「正当な理由の不存在」要件ですが、これは違法であることが本罪の成立要件であるという、当然のことを条文上明記したものです。
②目的
作成・提供罪は、目的犯です。
「人の電子計算機における実行の用に供する目的」が必要となります。
「実行の用に供する」というのは、不正指令電磁的記録を、電子計算機の使用者にはこれを実行しようとする意思がないのに実行され得る状態に置くことをいいます。
③客体
本罪の客体は、(a)「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」、および(b)「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録」です。
ここでいう「人」は、犯人以外の者で、「電子計算機」とは、自動的に計算やデータ処理を行う電子装置のことをいいます。
パソコンやサーバ、スマートフォンの他、そのような機能を有するものは電子計算機に該当します。
パソコン等を使用する際に、あるプログラムが、使用者の「意図」に沿う又は反する動作をさせるものであるか否かが問題となりますが、その場合の「意図」については、個別具体的な使用者の実際の認識を基準として判断するのではなく、当該プログラムの機能の内容や機能に関する説明内容、想定される利用方法等を総合的に考慮して、その機能について一般的に認識すべきであると考えられるところを基準として規範的に判断することになります。
ですので、ソフトウェアのある機能について単に利用者が知らなかった場合、通常その機能について使用者が認識できるようになっているのであれば、使用者の意図に反する動作とはなりません。
加えて、「不正な」指令であるというためには、あるプログラムの機能を踏まえて、社会的に許容し得るものでないことが必要です。
「電磁的記録」は、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものと定義されます。
つまり、電磁的記録というのは、一定の記録媒体の上に情報やデータが記録・保存されている状態を表す概念であり、情報やデータそれ自体や記録媒体そのものを指すものではありません。
また、(b)の「不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録」とは、「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える」ものとして実質的に完成しているが、そのままでは電子計算機において動作させることができる状態にないものをいいます。
④行為
本条1項が処罰対象とする行為は、「作成」と「提供」です。
「作成」とは、当該電磁的記録等を新たに記録媒体上に存在するに至らしめることをいいます。
「提供」とは、不正指令電磁的記録等であることの情を知った上で、これを自己の支配下に移そうとする者に対し、これをその支配下に写して事実上利用し得る状態に置くことです。
このような定義より、提供罪については、先述した「人の電子計算機における実行の用に供する目的」の「実行の用に供する」は、提供の相手方以外の第三者であって、それが不正指令電磁的記録であることを認識していな者の電子計算機で実行され得る状態に置くことを指します。
(イ)不正指令電磁的記録供用罪(本条2項)
本罪は、不正指令電磁的記録を供用する罪です。
構成要件は、
①正当な理由がないのに
②前項第1号に掲げる電磁的記録を
③人の電子計算機における実行の用に供した
ことです。
②客体
本罪の対象は、先述した作成・提供罪の客体の(a)に限られています。
③行為
本罪の処罰対象とする行為は、「人の電子計算機における実行の用に供する」ことで、不正指令電磁的記録を、電子計算機の使用者にはこれを実行しようとする意思がないのに実行され得る状態に置くことです。
不正指令電磁的記録に関する罪(不正指令電磁的記録作成等罪)を含め刑事事件でお困りであれば、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談や初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。
偽造有価証券行使事件で逮捕
偽造有価証券行使事件で逮捕
偽造有価証券行使事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市兵庫区にある金券ショップの店長が、最近店で買い取った5千円のギフトカード10枚が偽物であることに気づきました。
店長はすぐに兵庫県兵庫警察署に通報し、同署は捜査を開始しました。
ほどなくして、警察は県内に住むAさんをはじめとした計6人を偽造有価証券行使などの疑いで逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、面会を申し入れましたが、面会することができず不安になり、刑事事件に精通する弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
有価証券偽造の罪について
刑法第18章は、有価証券の偽造・変造・虚偽記入等を処罰するものです。
第百六十二条 行使の目的で、公債証書、官庁の証券、会社の株券その他の有価証券を偽造し、又は変造した者は、三月以上十年以下の懲役に処する。
2 行使の目的で、有価証券に虚偽の記入をした者も、前項と同様とする。
第百六十三条 偽造若しくは変造の有価証券又は虚偽の記入がある有価証券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者は、三月以上十年以下の懲役に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。
本章における「有価証券」とは、財産上の権利が証券に表示され、その表示された権利の行使につきその正面の占有を必要とするものをいいます。(最判昭32・7・25)
その証券が取引上流通性を有すると否とを問いません。
具体的には、乗車券、定期券、宝くじ、郵便為替証券などです。
他方、切手、無記名提起預金証書、郵便貯金通帳、ゴルフクラブの入会保証金預託証書は有価証券に当たらないとされます。
さて、上記ケースで問題となっている「ギフトカード」についてですが、これは、商品やサービスの購入代金支払いの際に利用するための一定金額の価値を有するカード型の金券であり、「有価証券」に該当します。
1.有価証券偽造・変造罪
本罪の構成要件的行為は、行使の目的で、有価証券を「偽造し、又は変造」することです。
「偽造」とは、作成権限のない者が、他人の名義を冒用して有価証券を作成することをいいます。
形式や外観において一般人が真正な有価証券であると誤信する程度のものであることが必要となります。
「変造」とは、権限を有しない者が、真正に成立した他人名義の有価証券の非本質的部分に変更を加えることをいいます。
これもまた、一般人が真正なものとして誤信する程度の外観・形式を備えていることが必要です。
また、主観的要件として、故意の他に「行使の目的」が必要です。
「行使の目的」とは、その用法に従い、真正なものとして使用する目的をいいます。
2.有価証券虚偽記入罪
行使の目的をもって、有価証券に虚偽の記入をする罪です。
「虚偽記入」の意義について、判例は、既成の有価証券に対するかどうかにかかわらず、有価証券に真実に反する記載をするすべての行為を指すものであり、手形に関しては、基本的な振出行為を除いた、いわゆる附属的手形行為の偽造等をいうものと理解するのが相当であるとしています。
3.偽造有価証券行使等罪
本罪は、偽造もしくは変造の有価証券または虚偽の記入がある有価証券を「行使・交付・輸入」する犯罪です。
「行使」は、偽造・変造または虚偽の記入をした有価証券を真正または内容の真実なものとして使用することです。(大判明44・3・31)
通貨偽造の場合と異なり、流通におくことは必要とされません。
そのため、事故の資産信用状態を誤信させるために、見せ手形として使用する場合も行使にあたります。
「交付」とは、情を知らない他人に偽造・変造または虚偽の記入をした有価証券であることの情を明かして、または情を知っている他人にこれを与えることをいいます。
なお、「交付」および「輸入」は、「行使の目的」で行われることが必要です。
以上の罪に関する法定刑は、懲役刑のみとなっており、重く処罰される可能性があります。
また、複数人で共謀し犯行に及んでいることも多く、逮捕・勾留となれば、接見禁止が付く場合もあるでしょう。
ご家族が偽造有価証券行使事件で逮捕されたら、すぐに刑事事件に精通する弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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刑事事件(水道汚染罪)で取調べ
刑事事件(水道汚染罪)で取調べ
水道汚染罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県相生市にある賃貸マンションに設置された受水槽に入り泳いでいたとして、水道設備会社の従業員AさんとBさんは、兵庫県相生警察署で取り調べを受けました。
警察からは、受水槽で遊泳する行為は、水道汚染罪にあたるため刑事事件として捜査していると言われました。
今後の流れや取り調べ対応について不安を感じたAさんは、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(実際の事件に基づいたフィクションです)
受水槽で遊泳する行為は何の罪になるの?
少し前に起きた事件ですが、福岡県にある賃貸マンションの屋上に設置された受水槽で、施工を依頼した水道設備会社の従業員らが遊泳している様子を撮影した動画が流出した事件がありました。
遊び半分でやった行為だとは思いますが、このような行為も犯罪に当たる可能性があることに注意が必要です。
それでは、受水槽で遊泳する行為は、一体どのような罪に問われ得るのでしょうか。
水道汚染罪
水道汚染罪は、刑法第143条に規定されています。
第百四十三条 水道により公衆に供給する飲料の浄水又はその水源を汚染し、よって使用することができないようにした者は、六月以上七年以下の懲役に処する。
水道汚染罪は、水道浄水またはその水源を汚染し、公衆の飲用を阻害する行為を処罰するものです。
「水道」とは、浄水をその清浄さを保ったまま一定の地域・場所に導くための人工的施設・設備をいいます。
人の飲料に適し得る程度の清潔な水を「浄水」といいます。
人工の全く加えられていない天然の水路は、そこを流下する浄水を人が飲料として使用していても水道にはあたりません。
「公衆」とは、不特定または多数人のことであり、1世帯程度では足りないと解されます。
「供給する飲料の浄水」は、水道施設・設備の中にあって供給途上にある飲料としての浄水を意味します。
また、「水源」とは、水道に流入する以前の水のことです。
「汚染」の意義についてですが、浄水を不潔にする一切の行為を含みます。
毒物など人の健康を害するような物を用いる場合は、浄水毒物等混入罪(刑法第144条)が成立することになりますので、それ以外の方法によるのであればその如何は問われません。
そして、「使用することができない」状態というのは、物理的・生理的・心理的なものであるとを問いません。
浄水に放尿する、異物を混入するといった行為は、それをそのまま飲料として使用することには抵抗があるのが一般的ですから、そのような状態にすれば、「使用することができない」と言えます。
また、一見すると特段の変化を認識することができず、供給を受けた者が汚染の事実を知らずに現に飲料として使用した場合であっても、汚染行為があったことを知ったならば、通常これを飲むことをためらうようであれば「使用することができない」状態となります。
マンションなどに設置される「受水槽」は、水道の配水管から水を引き込み、水道水を貯水する設備です。
飲料用に使われることも多く、常にメンテナンスと管理が必要です。
飲料としても使用される水道水が貯蔵された受水槽に、人が泳いでいたとしたら、その水を誰が飲みたいと思うでしょうか。
通常、そのような行為があったと知れば飲料として使用したいとは思わないですよね。
よって、受水槽で遊泳する行為が水道汚染罪に当たる可能性はあるでしょう。
軽い気持ちで遊び半分で行う行為が、実は犯罪となるなんてこともあるのです。
あなたやあなたの家族が、刑事事件で被疑者として取調べを受けてお困りであれば、刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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住居侵入事件で不起訴
住居侵入事件で不起訴
住居侵入事件で不起訴獲得に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県芦屋市のマンションのベランダに侵入したとして、兵庫県芦屋警察署は、県内に住むAさんを住居侵入の容疑で逮捕しました。
Aさんは容疑を認めていますが、接見に来た弁護士に不起訴処分について質問しています。
(フィクションです)
住居侵入罪とは
刑法
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
住居侵入罪(刑法第130条前段)は、正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入した場合に成立する犯罪です。
住居侵入罪の客体:人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船
(ア)人の住居
「住居」は、人の起臥寝食に使用される場所です。
放火罪に関するものですが、判例は、人の住居に使用する建造物とは、現に人の起臥寝食の場所として日常使用される建造物をいうと解しています。(大判大2・12・24)
使用は、一時的なものでもよく、旅館やホテルなどの客室については、その利用が短時間であっても、起臥寝食に使用されるものである限り「住居」にあたるとされます。(名古屋高判昭26・3・3)
「人の」住居とは、自分が居住者でない住居という意味で、かつて移住していたとしても、住居から離脱した者が、現に居住する者の許諾なく立ち入る場合には、住居侵入罪が成立する可能性があります。
(イ)人の看守する邸宅、建造物、艦船
「人の看守する」とは、人が事実上管理、支配していることをいいます。
「邸宅」は、人の住居の用に供される家屋に付属し、主として居住者の利用に供されるために区画された場所のことで、集合住宅の通路や階段といった共有部分が該当します。
「建造物」とは、住居、邸宅以外の建造物とこれに付属する囲繞地をいいます。
また、「艦船」は、軍艦・船舶のことです。
住居侵入罪の行為:正当な理由がないのに侵入する
(ア)侵入
判例は、管理権者の意思に反した建造物への立入りをいうと解しています。(最判昭和58・4・8)
邸宅・建造物・艦船については、看守者が管理権者となり、住居については、居住者がそれとなります。
住居侵入罪の成否は、立入りについての管理権者の有効な許諾の有無によって決まるため、立入りの許諾が欺罔などによる錯誤に基づいて与えられた場合、有効な許諾が認められるかが問題となります。
この点、判例は、同意があっても、それが錯誤に基づく場合には、住居侵入罪が成立するとの立場に立っています。
例えば、被害者において顧客を装い来店した犯人の申出を信じて店内に入ることを許容したからといって、強盗殺人の目的をもって店内に入ることを承諾したとはいえないので、当該侵入行為は本罪を構成するとした判例があります。(最判昭23・5・20)
(イ)正当な理由がないのに
「正当な理由がないのに」とは、違法にという意味です。
住居侵入は、他の犯罪行為を実行する手段として行われることが多い犯罪です。
多いのが、侵入盗による窃盗罪と住居侵入罪ですが、これらの罪は牽連犯となり、その最も重い刑により処断されることになります。
住居侵入事件で不起訴を獲得するには
住居侵入事件は、住居等に侵入された被害者がいますので、被害者との示談成立に向けた活動は最も重要な弁護活動のひとつです。
被害者との示談が成立した場合には、検察官が不起訴処分で事件を処理する可能性が高くなります。
ですので、住居侵入事件で不起訴処分獲得を目指すのであれば、早期に被害者対応に着手する必要があります。
被害者との示談交渉は、当事者間で行うのではなく、弁護士を介して行うのが一般的です。
住居侵入事件を含めた刑事事件でお困りの方、被害者との示談交渉でお悩みの方は、今すぐ刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
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