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嫌がらせ行為で迷惑防止条例違反
嫌がらせ行為で迷惑防止条例違反
迷惑防止条例違反(嫌がらせ行為)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
ある日、兵庫県赤穂郡上郡町に住むVさん宅の前に、ビニール袋に入った生ごみが投棄されているのをVさんが発見しました。
その後も自宅前へのごみ投棄は続いたので、Vさんは兵庫県相生警察署に相談することにしました。
Vさんは自宅に防犯カメラを設置したところ、防犯カメラの映像から以前トラブルがあったAさんの犯行であることが判明しました。
兵庫県相生警察署は、Aさん宅を訪れ、迷惑防止条例違反(嫌がらせ行為)の容疑でAさんを逮捕しました。
迷惑防止条例違反~嫌がらせ行為~
迷惑防止条例とは、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」の通称で、盗撮や痴漢を禁止している条例として知られるところです。
この迷惑防止条例が禁止している行為として、第10条の2に「嫌がらせ行為」が定められています。
第10条の2 何人も、正当な理由がないのに、特定の者に対し、執ように又は反復して行う次に掲げる行為(ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成12年法律第81号)第2条第3項に規定するストーカー行為を除く。以下「嫌がらせ行為」という。)をしてはならない。
①つきまとい、待ち伏せし、進路に立ち塞がり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること(身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。次号から第4号までにおいて同じ。)。
②その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
③面会その他の義務のないことを行うことを要求すること。
④著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
⑤電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールその他の電気通信(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第1号に規定する電気通信であって、特定の者に対して通信文その他の情報をその使用する通信端末機器(入出力装置を含む。)の映像面に表示されるようにすることにより伝達するための方法をいう。)の送信をすること。
⑥汚物、動物の死体その他の著しく不快若しくは嫌悪の情を催させるような物又は当該情を催させるようなものを視覚若しくは聴覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第8号において同じ。)その他の記録を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
⑦その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
⑧その性的羞恥心を害する事項を告げ、若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物若しくはその性的羞恥心を害するものを視覚若しくは聴覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を送付し、若しくはその知り得る状態に置くこと。
条文の文言は、ストーカー規制法違反の「ストーカー行為」の定義と似ていますね。
ストーカー規制法の「ストーカー行為」と迷惑防止条例の「嫌がらせ行為」との大きな違いは、その「目的」です。
「ストーカー行為」は、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、その特定の者やその家族等に対して①~⑧の行為を繰り返して行う行為です。
一方、「嫌がらせ行為」は、特定の者に対して①~⑧の行為を繰り返して行う行為を意味し、「ストーカー行為」に当たる行為は除きます。
恋愛感情なく、単なる「嫌がらせ」や「いじめ」として①~⑧の行為を繰り返していた場合には、ストーカー規制法の「ストーカー行為」ではなく、迷惑防止条例の「嫌がらせ行為」となります。
上記ケースにおいて、Aさんは以前Vさんと何らかの問題があったようですので、この問題が恋愛うんぬんではなく、今回の行為も単なる「仕返し」や「嫌がらせ」のつもりであったならば、迷惑防止条例の「嫌がらせ行為」に当たるでしょう。
嫌がらせ行為の法定刑は、6月以下の懲役または50万円以下の罰金です。
常習としての場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金と更に重くなります。
被害者がいる事件では、被害者との示談が事件解決の重要なポイントとなります。
被害者との示談交渉は、弁護士に任せるのがよいでしょう。
迷惑防止条例違反でお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
覚せい剤の所持・使用で逮捕
覚せい剤の所持・使用で逮捕
覚せい剤の所持・使用の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市須磨区に住むAさんは、覚せい剤取締法違反(所持・使用)の容疑で兵庫県須磨警察署に逮捕されました。
Aさんは、逮捕に引き続き勾留となり、接見禁止が付されているため家族と面会することもできません。
Aさんの家族は、「このまま裁判まで身柄拘束されたままなのか、釈放される可能性はないのか。」ととても心配しています。
(フィクションです)
覚せい剤取締法違反の罪
覚せい剤取締法は、「覚せい剤の濫用による保健衛生上の危害を防止するため、覚せい剤及び覚せい剤原料の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用に関して必要な取締を行う」ことを目的とした法律です。
覚せい剤取締法において規制の対象となる「覚せい剤」とは、
・フェニルアミノプロパン、フェニルメチルアミノプロパン及びその塩類
・上と同種の覚醒作用を有する者であって政令で指定するもの
・上の2つのいずれかを含有するもの
と定義されています。
ですので、覚せい剤取締法が規制の対象としているのは、必ずしも純粋な覚せい剤に限るものではなく、混合されたものであっても「覚せい剤」に当たることになります。
また、覚せい剤が他のものと混合し、覚せい剤の含有量が少量であっても、「覚せい剤」に当たります。
先述したように、覚せい剤取締法は、除外事由なく覚せい剤の輸入・輸出・所持・製造・譲渡・譲受・使用を禁止しています。
ここでは、上記ケースで容疑がかけられている「所持罪」と「使用罪」について説明します。
所持罪
覚せい剤取締法14条は、覚せい剤製造業者等の一定の資格を有する者が所持する場合等を除いて、覚せい剤の所持を禁止しています。
覚せい剤の所持罪は、①「覚せい剤を」、②「みだりに」、③「所持すること」、により成立する犯罪です。
「所持」とは、どのような行為を指すのでしょうか。
「所持」とは、「人が物を保管する実力支配関係を内容とする行為をいうのであって、その実力支配関係の持続する限り所持は存続するものというべく、かかる関係の存否は、各場所における諸般の事情に従い社会通念によって決定されるものである」とされます。(最大判昭30・12・21)
つまり、覚せい剤の所持は、「覚せい剤を自己の支配下に置く行為」となります。
過去の判例では、次のような場合も「所持」が認められています。
・物理的に把持する必要はなく、その存在を認識して管理し得る状態にある場合
・直接所持しなくてもよく、他人の行為を介して自己の所持を実現したと認められる場合
・所有者でない場合
・比較的短時間の携帯にすぎない場合
また、所持罪が成立するためには、「覚せい剤を自己の実力的支配内に置くことを認識していること」(=故意)が必要となります。
覚せい剤と知りつつ自己の実力的支配内に置けばそれだけで所持罪が成立し、積極的に覚せい剤を自己又は他人のために保管する意思や、自己使用又は第三者に使用させる意思などは必要ありません。
所持については未遂罪も処罰されます。
他人から覚せい剤の保管を頼まれ、これを承諾し、覚せい剤を預かり保管するために受け取ろうとした時点で逮捕された場合も、未遂罪が成立することになります。
所持罪の法定刑は、10年以下の懲役です。
営利目的での所持は、1年以上の有期懲役、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金です。
使用罪
覚せい剤の使用は、以下の場合を除いて禁止されています。
・覚せい剤製造業者が製造するため使用する場合
・覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者が施用する場合
・覚せい剤研究者が研究のために施用する場合
・覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者から施用のため交付を受けた者が施用する場合
・法令に基づいてする行為につき使用する場合
このような法定の除外事由がないのに覚せい剤を「使用」してはなりません。
「使用」とは、覚せい剤をその用途に従って用いる一切の行為をいいます。
自分に対して使用している場合だけでなく、人に頼まれて覚せい剤を注射した場合も「使用」したことになります。
むろん、使用罪は故意犯であるため、行為者が「法定の除外事由がないのに、覚せい剤を使用することを認識・認容していることが必要となります。
使用罪の法定刑は、10年以下の懲役で、営利目的での使用は、1年以上の有期懲役、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金です。
このように、覚せい剤取締法違反の罪は非常に重い刑罰が設けられています。
また、覚せい剤事件で逮捕されると、かなりの確率でその後勾留となります。
共犯者との接触を防ぐため、弁護士以外との面会を禁止する接見禁止が付される可能性も高いです。
ご家族が覚せい剤事件で逮捕されてお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。
職務強要事件で逮捕
職務強要事件で逮捕
職務強要罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県加西警察署は、兵庫県加西市に住むAさんを職務強要の容疑で逮捕しました。
Aさんは、同市にある処理施設で、焼却炉の検査に来た県保健所の職員に対して、県の許可が必要ない小型焼却炉として認めさせようと、「これで通せ。殺してやる。」などと脅迫し、職務を強要した疑いがあるとのことです。
Aさんは容疑を否認しています。
(読売新聞オンライン2019年8月7日掲載記事を基にしたフィクションです)
職務強要罪について
職務強要罪は、刑法第95条第2項に規定されています。
第九十五条 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。
本条の第1項には、ニュースでもよく聞く「公務執行妨害罪」が規定されています。
職務強要罪は、公務執行妨害罪と同じく、公務の円滑な遂行をその保護法益(法律によって保護される利益)とするものです。
職務強要罪は、公務員の将来の職務執行に向けられる点で、職務の現実の執行に向けられる公務執行妨害罪とは異なります。
職務強要罪の構成要件は、
①公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、
②暴行又は脅迫を加えたこと
となります。
①「公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために」
職務強要罪の客体である「公務員」とは、「国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員」をいいます。
強要の対象となる処分は、当該公務員の職務に関係のある処分であればよく、職務権限外の処分でもよいとされています。(最判昭28・1・22)
また、職務強要罪の成立には、結果として目的(ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるという目的)が達成されたことは必要ありません。
②「暴行又は脅迫を加えた」
「暴行」とは、人に対する不法な有形力の行使をいい、「脅迫」は、恐怖心を起こさせる目的で他人に害悪の告知をすることをいいます。
職務強要罪と似た犯罪として、「強要罪」があります。
強要罪は、刑法223条に規定されています。
第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。
このように、強要罪は、暴行・脅迫により、人に義務のないことを行わせる等する犯罪です。
職務強要罪と異なるのは、強要罪は結果として被害者において義務のないことを行われたことが必要である点です。
強要罪は未遂犯も処罰されますが、職務強要罪は、例え結果として目的を達成できなかったとしても未遂犯ではなく既遂犯として成立します。
所定の目的で暴行・脅迫を加えた時点で既遂となりますので、上記ケースにおいて、Aさんは保健所の職員に対して、小型焼却炉として自己若しくは会社所有の焼却炉を許可するよう脅迫を用いて強要していますので、既遂となり職務強要罪が成立するものと考えられるでしょう。
兵庫県の刑事事件でお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお気軽にご相談ください。
無料法律相談や初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。
過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪
過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪
過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神崎郡福崎町の道路で、10代の男女5人が乗った軽乗用車が道路脇の縁石にぶつかり横転し、乗っていたVくんが車外に投げ出され、頭などを強く打って死亡し、他の4名も重軽傷を負う事故が起きました。
兵庫県福崎警察署は、運転していたAさんを過失運転致傷の疑いで現行犯逮捕しましたが、軽乗用車の定員は4人で現場の制限速度は時速30キロだったのですが、事故当時は時速80キロほど出していたと供述しており、警察は危険運転致死傷に切り替えて調べることになると言われています。
(実際の事件を基にしたフィクションです)
人身事故で問われる罪とは
乗用車やバイクなどを運転し、人身事故を起こしてしまった場合、免許停止や免許取消などの行政処分の他に、刑事処分が科されるおそれがあります。
人身事故を起こした場合に問われ得る罪は、主に、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下「自動車運転処罰法」といいます。)に規定されています。
1.過失運転致死傷罪
第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
「自動車の運転上必要な注意を怠」った結果、人に怪我を負わせたり、死なせてしまった場合に適用される罪です。
運転をする上の「過失」=「不注意」には、前方不注意やわき見運転、巻き込み確認を怠ったことや、ウィンカーを出さずに車線変更したこと、歩行者の飛び出しに気づかなかったことなどが含まれます。
上記ケースにおいて、例えば、Aさんがわき見運転をして道路脇の縁石にぶつかったのであれば、過失運転致死傷罪が適用されるものと考えられます。
2.危険運転致死傷罪
第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
五 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
六 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
第三条 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。
2 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。
危険運転の類型は、
①酩酊運転致死傷・薬物運転致死傷(第2条第1号)
②準酩酊運転致死傷・準薬物運転致死傷(第3条第1号)
③病気運転致死傷(第3条第2項)
④制御困難運転致死傷(第2条第2号)
⑤未熟運転致死傷(第2条第3号)
⑥妨害運転致死傷(第2条第4号)
⑦信号無視運転致死傷(第2条第5号)
⑧通行禁止道路運転致死傷(第2条第6号)
です。
上記ケースにおいては、Aくんが法定速度30キロのところ80キロで走行していたということですので、かなりのスピードを出していたことが想像されますので、④に該当すると考えられます。
過去の判例では、「進行を制御することが困難な高速度」について、「速度が速すぎるため自動車を道路の状況に応じて進行させることが困難な速度をいい、具体的には、そのような速度での走行を続ければ、道路の形状、路面の状況などの道路の状況、車両の構造、性能等の客観的事実に照らし、あるいは、ハンドルやブレーキの操作のわずかなミスによって、自車を進路から逸脱させて事故を発生させることになるような速度をいうと解される。」と考えられています。(東京高裁判決平成22年12月10日)
上の判例のように、様々な状況に基づき、「進行を制御することが困難な高速度」で車を運転したか否かが判断されることになります。
過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪の法定刑は大きく異なります。
危険運転致死傷罪は成立せず、過失運転致死傷罪となることを客観的な証拠に基づいて立証する必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含む刑事事件を専門に取り扱う法律事務所です。
過失運転致死傷事件・危険運転致死傷事件で加害者となり、その対応にお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談や初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。
強制わいせつ事件と示談
強制わいせつ事件と示談
強制わいせつ事件における示談について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県丹波市に住むAさんは、市内のマンションエレベーター内において、未成年の女性Vさんに対して、無理やり身体を触るなどわいせつな行為をしたとして、兵庫県丹波警察署に強制わいせつの容疑で逮捕されました。
Aさんは容疑を認めており、被害者に対して謝罪と被害弁償をしたいと申し出ています。
接見に訪れた弁護士に、「被害者と示談ができれば処分はどうなりますか?」とAさんは質問しています。
(フィクションです)
強制わいせつ罪とは?
上記のケースにおいて、Aさんは「強制わいせつ罪」という罪に問われています。
強制わいせつ罪は、刑法第176条に規定されています。
第百七十六条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
強制わいせつ罪の構成要件は、以下のとおりです。
①13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いて、わいせつな行為をする。
②13歳未満の男女に対して、わいせつな行為をする。
被害者の年齢によって、わいせつな行為を強要する手段としての暴行・脅迫が必要となるか否かは異なります。
「わいせつな行為」というのは、性的な意味を有し、本人の性的羞恥心の対象となるような行為をいいます。
胸や陰部を触るなどの行為だけでなく、キスも「わいせつな行為」に当たる可能性があります。
わいせつな行為を強要する手段としての暴行・脅迫は、相手方の反抗を抑圧する程度のものである必要はありませんが、犯行を著しく困難にする程度のものであることが必要です。
この判断は、犯人や被害者の年齢、犯行の状況、凶器の有無等に基づいてされます。
なお、暴行自体がわいせつな行為である場合にも、強制わいせつ罪が成立します。
つまり、殴るといった暴行を加えずとも、胸を触るという行為それ自体が強制わいせつ罪の手段でる「暴行」であると同時に「わいせつな行為」でもある場合です。
また、13歳未満の者を13歳以上であると誤信して、暴行・脅迫によらずわいせつな行為をした場合には、故意がなく強制わいせつ罪が成立しないことになります。
強制わいせつ罪の法定刑は、6月以上10年以下の懲役と、罰金刑がなく比較的重い罪です。
示談で不起訴となる可能性は?
強制わいせつ事件は、被害者がいる事件ですので、重要な弁護活動のひとつに被害者との示談交渉があげられます。
示談とは、加害者が被害者に対して相応の弁償金を支払う一方で、被害者は被害届の提出を行わない等、当事者間では今回の事件は解決したと約束することをいいます。
強制わいせつ罪は親告罪ではありませんので、被害者との示談が成立し、告訴が取り下げられたとしても、検察官は公訴を提起することができます。
しかし、被害者との示談が成立しており、被害者からの許しも得ることができている場合には、検察官が公訴を提起しない決定をする可能性が高いと言えます。
被害者との示談交渉は、通常、弁護士を介して行われます。
多くの場合、被害者は加害者と直接連絡をとることを嫌がられますが、弁護士限りであればコンタクトをとり話を聞いてもよいというケースが多くなっています。
また、当人同士で交渉すると、感情論的になり、交渉が決裂したり、不相当に過大な金額での示談解決となってしまう可能性もあります。
弁護士が間に入ることにより、冷静な交渉により両者が納得できる内容での示談締結が図りやすいでしょう。
ですので、ご家族やご友人が強制わいせつ事件で逮捕されてしまいお困りの方、被害者との示談交渉でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の刑事事件専門弁護士にご相談ください。
詳しくは、フリーダイアル0120-631-881までお問い合わせください。
ひき逃げ事件で自首
ひき逃げ事件で自首
ひき逃げでの自首について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
深夜、会社から自宅へ車で帰宅中のAさんは、兵庫県西脇市の交差点で右折しようとした際、横断道路を渡っていた自転車に気づかず、自転車と接触してしまいました。
接触後、一旦停車し自転車を見たところ、倒れた自転車を起こしている被害者を確認しました。
「自分で自転車を起こせるくらいだから大したことないだろう。」と思い、Aさんはそのまま自宅へ向かって走り去りました。
帰宅したAさんは、事故のことが気になり、兵庫県西脇警察署に出頭しようかと考え始めました。
この場合、出頭は自首となるのか、出頭すれば逮捕されるのか、いろいろと心配になってきたAさんは、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
ひき逃げとは?
人身事故を起こしたにもかかわらず、被害者の救済や警察への報告をすることなく、現場から立ち去る行為を「ひき逃げ」といいます。
ひき逃げによって成立する犯罪は、道路交通法違反です。
道路交通法第72条第1項は、次のように規定しています。
第七十二条 交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。
同条は、次の2つの義務について定めています。
①救護措置義務
交通事故があったときは、運転手や同乗者は、車の運転を停止し、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置をとらなければなりません。
車両等の運転停止、負傷者の救護、道路における危険防止のいずれかでも義務を怠ることにより、当該義務違反となります。
②事故報告義務
上の救護措置義務をとった場合に、運転手に警察官に対して事故について報告しなければなりません。
ひき逃げ事件の上記ケースでは、①の救護措置義務違反が成立することになります。
自首が成立する要件とは?
さて、Aさんは警察への出頭を考えていますが、すべての出頭が「自首」になるとは限りません。
「自首」が成立するためには、満たさなければならない要件があります。
(1)犯罪を起こした本人自らが自発的に犯罪事実を申告していること。
「自ら自発的に」自分の犯した犯罪を申告しなければならず、取調べで単に犯罪事実を自白しただけでは自首したことになりません。
(2)犯罪を行った本人が自身の罰則や処分を求めていること。
申告内容が、犯罪事実の一部を隠すためにされたものであったり、自己の責任を否定するようなものであったりした場合には、自首は成立しません。
(3)捜査機関に申告していること。
司法警察員または検察官に対して申告している必要があります。
(4)捜査機関が犯罪事実や犯人を特定していない段階で申告していること。
犯罪事実が捜査機関に発覚していない場合や、犯罪事実は発覚していたとしても、その犯人が誰であるか発覚していない場合を含みます。
犯罪事実や犯人が誰であるか判明しているけれども、単に犯人の所在だけが不明である場合は、これに含まれません。
犯罪事実の申告を受けた警察官等が犯罪事実を知らなくても、捜査機関の誰かが犯罪事実を知っていた場合には、自首は成立しません。
これらの要件を充たしてはじめて「自首」が成立することになります。
自首するメリットとは?
(1)刑が減軽される可能性。
自首が成立すると、刑が減軽される可能性があります。
どの程度刑が減軽されるかについても、刑法第68条が定めています。
救護措置義務違反の道路交通法違反の法定刑は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。
有期懲役の場合、長期及び短期の2分の1に、罰金の場合、多額及び寡額の2分の1に減軽されるので、救護措置義務違反の道路交通法違反の場合には、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金の範囲内で刑罰が科されることになります。
しかし、あくまで「刑を減軽することができる」とありますので、絶対的に軽減されるものではありません。
(2)身体不拘束の可能性
また、自首したことそれ自体が、逮捕の要件である逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれを否定する事情となり、逮捕されず在宅のまま捜査が進む可能性もあります。
刑事事件を起こし、自首しようかお悩みであれば、自首する前に一度刑事事件に強い弁護士にご相談されることをおすすめします。
自首するメリット・デメリットを理解し、自首した後の流れや取調べ対応についてしっかりと説明やアドバイスを受けることにより、取調べに対する不安を少しでも和らげることができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件でお悩みの方は、一度弊所(フリーダイヤル0120-631-881)にご相談ください。
外国人事件と退去強制
外国人事件と退去強制
外国人事件と退去強制について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県加古川市の会社に勤務している外国籍のAさんは、大麻を国際郵便で輸入しようとしたとして兵庫県加古川警察署に逮捕されました。
Aさんは容疑を認めていますが、今後どのような流れになり、どのような処分を受けるのか、退去強制となるのか非常に不安です。
(フィクションです)
外国人が刑事事件を起こすと…
外国人が犯罪行為を行った場合でも、取られる手続は通常の刑事事件と同じです。
検察官が被疑者の起訴・不起訴を決定し、公判請求された場合には、公開での審理を経て有罪無罪が言い渡されます。
これらの手続はすべて日本語に基づいて進められますが、日本語を理解することができない方、若しくはある程度は日本語力がある方でも複雑な手続や法律の専門用語などがきちんと理解することが難しい場合には、通訳人を介して手続を進める必要があります。
外国人の方が事件を起こしてしまった場合に、一体今後どのような流れになり、如何なる処分を受けるのか、といったことについて心配なさることでしょう。
言語や文化などの違いから、日本人以上に不安を感じられるでしょう。
そのような場合、すぐに刑事事件に強い弁護士に相談し、丁寧な説明やアドバイスを受けることが重要です。
また、外国人の方が刑事事件を起こしてしまった場合に、懸念されるのが、事件終了後も日本に滞在可能かどうかという点です。
つまり、「退去強制」となるか否かという問題です。
退去強制について
「退去強制」とは、「出入国管理及び難民認定法」に定められた行政処分の一つで、日本に滞在している外国人を強制的に日本から退去させることをいいます。
出国管理及び難民認定法第24条では、日本社会において強制的に退去させるべき者を事由ごとに列挙しています。
上記ケースのように薬物事件に関しては、同法第24条第4項(チ)に規定されています。
チ 昭和二十六年十一月一日以後に麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚せヽいヽ剤取締法、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号)又は刑法第二編第十四章の規定に違反して有罪の判決を受けた者
Aさんは、大麻輸入の容疑で逮捕されており、Aさんは容疑を認めています。
大麻の輸入は、大麻取締法によって規制されていますので、大麻取締法違反で有罪判決を受けた場合には、退去強制事由に該当することになり、退去強制となる可能性があります。
有罪判決ですから、執行猶予判決であってもアウトです。
退去強制事由に該当する場合、特別な事情がない限りは、退去強制させられることとなります。
ただし、日本人の配偶者がいる場合や、日本人の子がいる場合などは、在留特別許可が認められることもあります。
先述の通り、薬物犯罪で有罪判決を受けたことは、退去強制の要件になっていますが、判決の確定までが必要です。
執行猶予付き判決が言い渡された場合、判決宣告時には勾留からも解放され、退去強制事由にも当たらないため、身体拘束は解かれます。
判決が確定した後に、入国管理局から出頭を命じる呼び出しが来て、退去強制の手続がすすめられます。
一方、実刑判決が言い渡された場合には、原則として、日本国内の刑務所に服役することになります。
刑期満了後又は仮釈放後に入国管理局に移送され、強制送還を待つことになります。
退去強制事由は様々で、事件内容や滞在資格によっては退去強制とならないこともあります。
ですので、外国人の方が事件を起こしてしまった場合には、刑事事件及び退去強制手続にも詳しい弁護士に相談されるのがよいでしょう。
ご家族が事件を起こし逮捕・勾留されてお困りであれば、刑事事件・少年事件を数多く取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。
危険ドラッグ~薬物の認識~
危険ドラッグ~薬物の認識~
危険ドラッグの薬物の認識について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県三田市に住むAさんは、兵庫県三田警察署の家宅捜索を受けた後に、三田署へ連行され、医薬品医療機器等法違反の容疑で逮捕されました。
取調べでは、知人のBさんから購入した危険ドラッグについて聞かれましたが、Bさんからは「合法なもので、リラックス効果があるアロマのようなもの」だと聞いていたAさんは、それが危険ドラッグだとは知らなかったと供述しました。
しかし、取調べでは「違法薬物の認識があっただろう」と詰められており、どう対応すればよいか分からず困っています。
(フィクションです)
危険ドラッグとは?
覚せい剤や大麻が法律で厳しく規制されていることは、みなさんご存知のことと思います。
有名人による薬物事件が相次いで報道される昨今、薬物に対する認識も高まっています。
それでは、「危険ドラッグ」についてはどの程度その危険性を認識されているのでしょうか。
覚せい剤は覚せい剤取締法で、大麻は大麻取締法で規制されていますが、「危険ドラッグ」は危険ドラッグ取締法なるもので規制されてはいません。
「危険ドラッグ」は、医薬品医療機器等法で規制されています。
一般的に「危険ドラッグ」は、覚せい剤、大麻、麻薬、向精神薬、あへん及びけしがらなどの規制薬物または医薬品医療機器等法第2条15項に規定する指定薬物に化学構造を似せて作られ、これと同様の薬理作用を有する物品と定義されます。
規制薬物や指定薬物を含有しない物品であるといいながら、実は違法な成分が含まれていたり、違法な成分が含まれていないけれども規制薬物や指定薬物よりも有害な成分が含有している場合もあり、非常に危険なものです。
「危険ドラッグ」には、乾燥植物片状、粉末状、液体状、固体状と様々な形態があり、「合法ハーブ」「アロマ」「リキッド」「お香」などと称して販売されています。
ネットでも簡単に購入することもできるため、それほど危険なものではないと誤認し、輸入する、使用するケースも少なくありません。
このような「危険ドラッグ」自体を医療機器等法が規制しているわけではなく、同法における「指定薬物」に該当する「危険ドラッグ」が規制対象となります。
指定薬物とは?
それでは、医療機器等法でいう「指定薬物」とはどのようなものなのでしょうか。
医療機器等法第2条15項は、以下のように「指定薬物」について定義しています。
15 この法律で「指定薬物」とは、中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用(当該作用の維持又は強化の作用を含む。以下「精神毒性」という。)を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物(大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)に規定する大麻、覚せヽ いヽ剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)に規定する覚醒剤、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)に規定する麻薬及び向精神薬並びにあへん法(昭和二十九年法律第七十一号)に規定するあへん及びけしがらを除く。)として、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう。
このような指定薬物については、疾病の診断、治療又は予防の用途や人の身体に対する危害の発生を伴うおそれがない用途として厚生労働省令で定めるもの以外の用途に供するために製造し、輸入し、販売し、授与し、所持し、購入し、若しくは譲り受け、又は医療等の用途以外の用途に使用することを禁止されています。
違反に対する罰則は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその両方です。
業として行った場合は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はその両方と加重されます。
規制薬物との認識がない場合は?
「危険ドラッグ」を「合法」「違法でない」ものと言われ所持・使用したというケースも少なくありません。
犯罪が成立するためには、所持・使用等していたものが規制薬物であると認識していたことが必要となります。
ですので、規制薬物の認識がなければ罪に問うことはできません。
といっても、単に「合法だと思っていました!」と言うだけで責任を免れることは難しいのです。
「ちょっと怪しいけど、ま、いっか。」と少しでも違法なものかもしれない程度の認識があれば罪は成立する可能性があります。
使用した状況や入手した経緯などから、規制薬物であると想像できたはずだと判断されることもありますので、危険ドラッグで逮捕されたらすぐに弁護士にしましょう。
弁護士に事件の詳細を説明し、取調べに対してどのように対応すべきかについてきちんとアドバイスを受けることが何よりも大切です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、薬物事件にも対応する刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族が危険ドラッグで逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所にご相談ください。
お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。
処分保留で釈放
処分保留で釈放
処分保留での釈放について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県川西市の自宅で、当時3歳の長男を暴行し死亡させたとして、傷害致死の容疑で母親のAさんと父親のBさんは兵庫県川西警察署に逮捕されました。
二人は、逮捕後、勾留となりましたが、Aさんは勾留10日満期に、処分保留で釈放となりました。
Aさんは、今後どのような流れになるのか、どのような処分となるのか心配しています。
(フィクションです)
処分保留で釈放とは?
ニュースなどで、「容疑者が処分保留で釈放となりました。」というような報道を聞かれたことはありませんか?
「処分保留で釈放」と聞くと、「何も処罰されないの?」、「無実だったってこと?」と疑問に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、「処分保留で釈放」について取り上げたいと思います。
保留される「処分」って?
被害届や職務質問、自首などを端緒に事件が捜査機関に認知されると、捜査機関は捜査を開始します。
捜査機関は、犯人であるものを特定し、必要があればその身柄を確保するとともに、証拠を収集・保全します。
すべての事件が、原則として、検察官のもとに集められます。
これらの事件を処理するのは、検察官です。
検察官による終局的な処分には、「起訴処分」、「不起訴処分」、そして「家庭裁判所送致」があります。
「起訴処分」というのは、捜査の結果、起訴が相当であると判断し、検察官が公訴を提起することです。
公訴の提起には、①公判請求、②即決裁判手続の申立、③略式命令の請求、④交通事件即決裁判の請求の4種類があります。
①の公判請求により、ドラマなどでよく見る法廷での審理が行われるわけですが、検察官が起訴した総人員の内、ほとんどが③の略式命令の請求であり、公判請求は割合的にはそれほど多くありません。
次に、「不起訴処分」というのは、検察官が公訴を提起しないとする処分のことをいいます。
犯罪とならない場合、疑わしいがそれを立証するだけの十分な証拠がない場合、証拠はそろっているが様々な事情を考慮して起訴を見送る場合など、様々な理由があります。
最後に「家庭裁判所送致」ですが、少年事件の場合、原則すべての事件が家庭裁判所に送致されますので、検察官が捜査を終了すれば、事件を家庭裁判所に送致します。
このような処分をせずにおくことを「処分保留」といい、これは「起訴しない」ことを意味するものではなく、「起訴するかどうかを未だ決めていない」というまでなのです。
処分保留で釈放となるのはなぜ?
検察官が終局的な処分を決めないまま釈放する理由とは、なんでしょうか。
その理由のひとつは、逮捕した事件の捜査・処分が終わっていない場合です。
逮捕された場合、逮捕に引き続く身体拘束の期間は法律で定められています。
検察官が勾留請求をした日から原則10日で、延長が認められれば最大で20日です。
この期間内に、証拠を収集し、事件処理を行わなければなりません。
しかし、この期間をもってしても処分を決定することができない場合には、処分保留で釈放とするのです。
この場合、被疑者を釈放した後も捜査を継続し、処分を決めるのに十分な証拠を集めます。
このように、「処分保留で釈放」となったからといって、事件が終了したというわけではありません。
「まだ起訴するかどうか決まっていない」という状態であり、「起訴される可能性はある」のです。
刑事事件の被疑者として逮捕・勾留されたが、「処分保留で釈放」となり、今後の流れや対応についてお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
弊所では、無料法律相談や初回接見サービスのご予約を24時間専門ダイアルで受け付けております。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
少年事件における環境調整②~環境調整の重要性~
少年事件における環境調整②~環境調整の重要性~
少年事件における環境調整の重要性について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
少年審判の審理対象~非行事実と要保護性~
「非行事実」は、刑事裁判における「公訴事実」に該当するものです。
「要保護性」というのは、以下の3つの要素により構成されるものと理解されます。
①再非行の危険性
少年の性格や環境に照らして、将来再び非行を犯す可能性があること。
②矯正可能性
保護処分による矯正教育を施すことによって再非行の危険性を取り除くことができる可能性があること。
③保護相当性
保護処分による保護が最も有効かつ適切な措置であること。
審判では、上の「非行事実」と「要保護性」の両方が審理されます。
そのため、少年事件では、犯罪行為の軽重が直接量刑に影響する成人の刑事事件と異なり、非行事実が軽微であっても、要保護性が高い場合には、少年院送致といった身体拘束を伴う処分が選択されることがあります。
他方、非行事実は重い罪名の付くものであっても、要保護性が解消され、社会内での更生を図ることが少年の健全育成のために適切であると判断されれば、保護観察といった社会内処遇が選択されることもあります。
そのため、「要保護性の解消」は少年事件においては非常に重要な要素となるのです。
少年事件における環境調整の重要性
上述のように、要保護性が低ければ低いほど、少年を身体拘束して更正する必要がなくなるというわけですが、要保護性の解放に向けては「環境調整」がとても重要な役割を果たします。
「環境調整」というのは、保護者の関係の調整、就業先の開拓、帰住先の確保等、少年の社会復帰を円滑にするために少年をとりまく環境を調整することをです。
つまり、少年が更生に向けて生活するために必要な環境を整えることです。
この環境調整は、少年本人への働きかけ、家庭や学校、職場などへの働きかけ、交遊関係の調整、被害者への対応といった多岐に渡る活動を含みます。
(1)少年本人への働きかけ
少年本人が真に事件、そして自分自身と向き合うことができなければ、どんなに外部的環境調整に尽力したとしても、要保護性を解消することは難しく、少年の更生にはつながりません。
自分が何故今回の事件を起こしてしまったのか、それにより誰を傷つけてしまったのか、二度と同じ過ちを繰り返さないためにはどうすべきなのか等、しっかりと考えていかなければなりません。
勿論、このようなことを考え、答えを見つけることは、少年のみでは容易ではありません。
少年の家族や、学校の先生方、家庭裁判所の調査官など、協力してくれる大人はいます。
また、弁護士は弁護人・付添人として、少年が事件や自分自身の問題と向き合いあえるよう支援し、解決策を見出せるよう共に考えていきます。
(2)家庭への働きかけ
家庭は少年にとって最も身近な環境であり、家庭内の問題が非行の背景にあることが多く、家庭への働きかけは環境調整をする上でも重要であると言えるでしょう。
弁護士は、少年と保護者との間に入り仲介役的な役割を担うこともあれば、両者に対して問題点を指摘したり改善のアドバイスをしたり学校の先生のような役割を担うこともあります。
勿論、これらは弁護士から一方的に行うものではなく、少年や保護者との話し合いを重ね、ともに考える中で行うものです。
(3)学校や職場への働きかけ
学校に在籍している少年の場合、今後も在籍できるか、学校側が少年を受け入れて適切な指導をしてくれるかどうかは、少年の更生を考えるうえで重要な事項です。
公立の学校は、警察・学校相互連絡制度によって警察から学校に逮捕の連絡がいってることがあります。
学校に知られている場合には、学校側に少年事件の手続や少年が真摯に反省し更生に向けて努力している点などを報告し、少年を積極的に受け入れてくれるよう協力を求めます。
学校が事件について把握していない場合、私立学校のように事件を起こしたことを知れば退学処分とするようなところもあるため、学校に知られないように働きかける必要もあるでしょう。
働いている少年についても、学校と同様、少年が職場で働き続けることができるよう職場の上司などに協力を求めていきます。
(4)交遊関係の調整
少年の交遊関係が事件の背景にある場合もそう少なくありません。
ケース②のように薬物事件では、恋人や友人から勧められて薬物に手を出すといったケースも多く、薬物を断つためにはこのような関係を解消する必要があります。
ケース②では、Aさんは交際相手の勧めで大麻に手をだしているわけですので、この交際相手との関係を終わらせることはもとより、大麻の入手先を知っている場合には、入手先とも一切連絡をとれなくするなど、薬物に関連する関係を一切断ち切る必要があるでしょう。
(5)被害者への対応
成人の刑事事件のように、被害者との示談成立により、不起訴処分で事件終了というわけにはいきませんが、被害者への謝罪・被害弁償、示談が成立していることにより、少年が事件を真摯に反省し、被害者にも配慮していると判断される要素にはなります。
勿論、少年が反省せず、単に形式上被害弁償をしたという事実だけでは、要保護性を解消させる要素となり得ません。
ケース①の盗撮事件のように、被害者がいる事件では、一刻も早く被害者に被害弁償を!と急がれる場合がありますが、形だけの被害弁償を急ぐのではなく、少年自身が真に反省し、被害者に対してきちんと謝罪する気持ちを持つことができてから、それに基づいて被害者対応を行うことが、要保護性の解消につながるでしょう。
このように、少年事件においては、成人の刑事事件とは異なる視点で対応しなければならないことも多くあります。
そのため、少年事件については、少年事件に精通する弁護士に相談されることをお勧めします。
お子様が事件を起こし対応にお困りであれば、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。